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長内那由多のMovie Note https://blog.goo.ne.jp/nayutagp01fb-zephyranthes

映画レビュー、俳優論など映画のことを中心としたブログ

最新映画や海外ドラマ、Netflix配信作を中心とした映画レビュー。アカデミー賞予想記事も有り。半期毎に総括ベストテン記事も書いています。「ドラマも同じくらいの熱量で見ていなければ今の映画は語れない!」が最近の信条です。

長内那由多のMovie Note
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2017/03/20

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  • 『グレイハウンド』

    コロナショックによってハリウッドが配信事業へと一気に加速した2020年。新興勢力AppleTV+がソニーから買い付けたのがトム・ハンクス主演の本作『グレイハウンド』だ。第二次大戦時、北大西洋を横断する米英商船団の護衛に当たった米駆逐艦グレイハウンドと、ドイツUボート“グレイウルフ”の死闘を描く海洋アクションだ。となればオールドファンには嬉しい海戦映画の傑作『眼下の敵』を彷彿とさせるが、こちらはドイツ側の描写を一切オミットしてさらに短い91分のランニングタイム。荒れ狂う北大西洋を駆逐艦が突っ伏さんばかりに航行し、爆雷が勢いよく射出され(こんな描写見た事ない)、水しぶきが上がる。だが本作の異質さはそんなスペクタクルや人物描写もほとんど排し、命令と復唱を繰り返す艦内の戦闘行動プロトコルをひたすら描いていることだろう。...『グレイハウンド』

  • 『ワンダーウーマン1984』

    女性監督として史上最高のヒットとなった前作『ワンダーウーマン』の成功を受け、おそらく最大級のクリエイティブコントロールを得たであろうパティ・ジェンキンス監督の渾身の1本だ。今度の舞台は1984年、立ち塞がる敵はなんとドナルド・トランプ!いやいや、石油採掘会社を運営し、神々の力が宿った秘石で人々の心を操るマックス・ロードはDCコミックが1987年に生んだヴィランだ。しかしペドロ・パスカルが大奮闘する本作ではどこからどう見たってトランプである。孤高のバウンティハンターから一転、体重を増やした彼が80年代のダブついたダブルスーツを身にまとい、テレビに向かってニヤければ84年に不動産帝国で栄華を極めたトランプの姿が否が応でもダブるではないか。既に指摘されているようにトランプのビジネスは破たん状態にあり、本作のマックスも...『ワンダーウーマン1984』

  • 『ムーラン』(2020年)

    2020年、物議を醸した1本と言えるだろう。ディズニーは主力作品として強力な宣伝展開を繰り広げたが、新型コロナウィルスの影響により度重なる公開演を余儀なくされ、ついには自社の配信サービス“ディズニープラス”での追加課金によるストリーミングに踏み切った。これは既に感染が収束していた中国での劇場公開で損益をカバーできると見込んでの事だったが、しかし結果は2000万ドル強の興収に留まっている。その背景には主演リウ・イーフェイが香港の「逃亡犯条例」に対して肯定的なコメントをしたことや、イスラム教徒への弾圧が続く新疆ウイグル自治区でロケが敢行され、エンドロールで中国政府へスペシャルサンクスが挙げられている事に批判が集まり、中国政府が国内インターネットで本作の情報をシャットアウトしたことが影響していると言われている。また、...『ムーラン』(2020年)

  • 『ムーラン』(1998年)

    実写リメイク版鑑賞に先立ち見てみたが、なるほど今さら手を加えるまでもない不朽の名作だ。1998年の時点でディズニーがアジアを舞台にしていること、旧来のディズニープリンセスが白馬の王子との結婚をゴールインとしてきた事に対し、ヒロインが自らの手で自分の人生を勝ち取る事は断然“現在=いま”である。特に父に代わって士官したムーランが、男達と同じ猛特訓を重ねて“男の物差し”で測られながら、最終的には自分だけの強さと機知で周囲の敬意を勝ち得る展開は重要だ。もちろん、現在の映画に慣れた身では98年の本作がややスローで、演出の手際もそんなに良くないと感じるかも知れない。それでもおよそ時代設定を把握していたとは思えないエディ・マーフィの現代的でファンキーなボイスアクトは最高だし(この後、『シュレック』で頂点を極める)、当時の最新...『ムーラン』(1998年)

  • 『ウルフウォーカー』

    宮崎駿が『もののけ姫』で「共に生きよう」とアシタカに言わせてから20余年。スタジオジブリの熱烈なフォロアーでもあるアイルランドのアニメーションスタジオ“カートゥーン・サルーン”が新たに自然と人間の対立を描く『ウルフウォーカー』は、より深刻さを増した現在の環境問題が強く反映されている。舞台は13世紀頃と思しきアイルランド。イングランドの侵略によって狼たちの住む古代の森が切り拓かれようとしていた。狩人の父と共にイングランドからやってきた主人公ロビンは、森の奥深くで謎の少女メーヴと出会う。彼女は治癒能力を持ち、眠ると狼に姿を変える“ウルフウォーカー”だった。宮崎御大が(常に)ボーイ・ミーツ・ガールを通じて自然と人類の共生を描いてきたのに対し、『ウルフウォーカー』ではガールズフッドを通じて自然との同化が描かれる。ウルフ...『ウルフウォーカー』

  • 『アイム・ユア・ウーマン』

    今年は『マーベラス・ミセス・メイゼル』最新シーズンの配信がないレイチェル・ブロズナハン主演最新映画。舞台は1970年代、ブロズナハン演じるヤクザの情婦ジーンは夫エディとの子宝に恵まれず、無気力な日々を送っていた。そんなある日、エディはどこからともなく赤ん坊を連れてきて「オマエの子だ」とジーンに託す。だが彼の関心は他にあり、家には怪しげな男達が出入りしていた。そしてエディは突如として失踪。ジーンは彼の部下を名乗る男カルと共に、逃避行に出る事となる。女性監督によるハードボイルドといえば近年、メラニー・ロラン監督の『ガルヴェストン』がなんとも凛々しかったが、本作のジュリア・ハート監督も既にスタイルを確立させており、筋の通った1本だ。映画は初めこそジーンの視点から置かれている状況を明らかとせず、子育てに忙殺されるサイコ...『アイム・ユア・ウーマン』

  • 『マンク』

    コロナショックによってハリウッドの大手メジャーが次々と新作の公開を断念する中、クリストファー・ノーラン監督作『テネット』を公開し、映画ファンへの仁義を果たしたかのように見えたワーナーブラザース。しかし大方の予想通り、製作費を回収する大ヒットに繋がらなかった事から2021年の劇場新作全てを公開と同時に自社の配信サービスHBOmaxでリリースすると発表した。これにノーランや『DUNE』が控えるドゥニ・ヴィルヌーヴらが「何の相談も受けていない」と猛反発、ハリウッドが大きく揺れている。フィルム至上主義者でもあるノーランら作家監督たちが怒りの声をあげる一方、酸いも甘いも知ったスティーヴン・ソダーバーグが「それでも劇場文化は消滅しない」とアカデミー賞の演出まで務める飄々ぶりだ。そしてデヴィッド・フィンチャーの返答はNetf...『マンク』

  • 『フランクおじさん』

    『アメリカン・ビューティー』『シックスフィート・アンダー』で知られる名脚本家アラン・ボールが自らの実体験を基にした本作は心に響く家族映画の小品だ。舞台は1973年、ソフィア・リリス扮する主人公ベスはフランク叔父さんの勧めでNYの大学に進学する。南部の田舎町で育った彼女にとって、NYで文学の教鞭を執るフランク叔父さんは唯一人のジェントリーでインテリジェンスな存在だった。だが不思議と祖父は叔父さんに冷たく当たり、家族でも浮いた存在だった。フランク叔父さんに扮したのはポール・ベタニー。かつて『ビューティフル・マインド』『ロック・ユー!』でメジャーとなった英国出身の個性派も今や49歳。額は後退し、その痩身もやや節くれだって、このフランク叔父さんの抱えた苦しみを滲み出せる年輪が備わった。近年、顔面を赤く塗った彼しか見てい...『フランクおじさん』

  • 『市民ケーン』

    映画史上最高の1本と謳われる本作の技術的革新性について今さら僕が語る意味はないだろう。現在の観客はこれが1941年の作品であり、2020年の映画と比べても技術的にまるで遜色がない事に気付くこともないかもしれない。それでいい。むしろ、2020年に見直すべきはアメリカの精神性を批評するオーソン・ウェルズの先見だろう。映画は謎の言葉“RoseBud=バラのつぼみ”という言葉を遺して死んだ新聞王ケーンの生涯を解き明かす形で進行する。貧しい家庭に生まれ育った彼が、やがて地方新聞社の主筆となり、強烈な発信力で大衆の耳目を集めていく。たゆまぬ努力と強い望みがあれば獲得できるかもしれない富と名声。ケーンはアメリカンドリームの体現者、アメリカのロールモデルなのだ。ウェルズは本作の製作初期、タイトルを『American』にしていた...『市民ケーン』

  • 『仁義なき戦い』

    巻頭早々、終戦直後の広島を撮らえる暴力的なエネルギーに圧倒されてしまった。1973年、深作欣二監督による傑作シリーズの第1弾だ。菅原文太、松方弘樹、渡瀬恒彦、田中邦衛、梅宮辰夫らが一世を風靡するギラつきを放ち、カメラもそのエネルギーを浴びて荒れ狂う。ドスの効いた広島弁の応酬は、今のTVで育った世代には理解不能のカオスだろう。暴力団の仁義なき抗争を描いた本作は、大量の登場人物を捌きながら僅か99分のランニングタイムを怒涛の如く駆け抜けていき、その振り切れたエネルギーは指詰めシーンでついにスラップスティックな笑いにまで転じる。死人が出る度に鳴り響く、津島利明のあのテーマ曲と死亡日時を記したテロップはほとんど様式美の域で、なぜか高揚してしまうのだから面白い。初見で登場人物の整理はほぼ不可能。只々、流れに身を任せて引き...『仁義なき戦い』

  • 『魔女がいっぱい』

    ロバート・ゼメキス監督がロアルド・ダールを映画化、と聞いて師匠筋のスピルバーグがやはりダールの『BFG』を撮った時のような巨匠の余戯を想像したが、意外やフタを開けてビックリだ。舞台は1960年代のアメリカ南部。両親を亡くした黒人少年が祖母の元に引き取られと、かつて『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でマイケル・J・フォックスにチャック・ベリーを盗ませ、『フォレスト・ガンプ』で公民権運動を無かった事にしたゼメキスが初めて黒人主役の映画を撮っているではないか!!(『フライト』のデンゼル・ワシントンは人種について言及のない役であり、人種を超えた類稀なスターなのでここではカウントしない)。これだけでも『魔女がいっぱい』はゼメキスという作家を語る上で素通りできない重要作だ。製作にギレルモ・デルトロが加わっていることも無視で...『魔女がいっぱい』

  • 『スパイの妻』

    黒沢清監督がヴェネチア映画祭で銀獅子賞(監督賞)に輝いた『スパイの妻』はエレガントで、断然“現在=いま”な巨匠の1本だ。映画の舞台は1940年の神戸。貿易業を営む福原は、出張先の満州で偶然にも731部隊による人体実験の証拠を手に入れる。国際世論の場で日本軍の非人道性を訴えようとする彼と、秘密を共有し、スパイに妻になることを選んだ聡子はアメリカへの亡命を試みるのだが…。本作はNHKの出資のもと、8Kで撮影されたTV放映版を劇場公開用に再調整している。高画質のスペックを再現できている劇場はそう多くないだろうが、高明度を前提に作られた本作は衣装、美術とあらゆるプロダクションデザインに監督の目が行き届いており、それは当然、俳優にも同じである。大戦当時の反知性的な日本に対する高橋一生の侮蔑の表情、証拠フィルムを見た蒼井優...『スパイの妻』

  • 『燃ゆる女の肖像』

    18世紀フランス。人里離れた孤島に画家マリアンヌがやって来る。修道院から帰省し、結婚の決まった令嬢エロイーズの嫁入り肖像画を描くためだ。全編に渡って張り詰めた、しかし心地よい空気が漂う禁欲的な演出だ。納戸を叩く風、はぜる薪の音、打ち寄せる潮騒…劇伴は一切排除され、主な登場人物は3人のみ。屋敷にこだます足音は僕らが知る誰かのものだ。カンヌでは脚本賞に輝いたが、セリフは決して多くない。その代わり、クレア・マトンによるデジタル撮影が多くを語る。仕立ての違いまでありありとわかる衣装、年齢も立場も異なる女達の肌質、そしてそこに差す仄かな感情と隠し切れない激情。ぜひ4K撮影のスペックを発揮できる環境で見てほしい。唇と唇を行き交う粘膜まで撮らえた鮮明さに目を見張った。デジタル撮影と史劇がこれほど高い親和性を発揮した映画は稀で...『燃ゆる女の肖像』

  • 『ザ・クラウン シーズン4』

    エリザベス女王の治世を描いてきたNetflixの人気TVシリーズもいよいよシーズン4に突入。今回は記憶に新しい80年代が舞台だ。女王ら王室メンバーは50歳代に差し掛かり、シリーズ当初に見られた“私(わたくし)と責務”といった葛藤を乗り越え、良くも悪くも老成した。シーズン3で名演を見せたマーガレット役ヘレナ・ボナム・カーター、フィリップ役トビアス・メンジーズ(ゲースロのエドミュア公!)のみならず、オスカー女優オリヴィア・コールマンの出番すらやや控えめで、語られるべき物語を終えたシリーズには、これまで見せてきた華やテンションが乏しい。【ロイヤル・プリンセス】イギリス経済の低迷と共にその存在意義を問われつつあった王室にとって、名実共に人気を支えたのがチャールズ皇太子妃であるダイアナの存在だった。今シーズンの目玉の1つ...『ザ・クラウンシーズン4』

  • 『ユートピア~悪のウィルス』

    殺人ウィルスによる世界滅亡を予見したコミック“ユートピア”を巡って、オタク達が悪の組織に立ち向かう…なんだか浦沢直樹の漫画みたいなプロットだが、原作は2013年の英国産同名TVドラマ。2020年に“ウィルスによるパンデミック”を描いただけでもリメイクとしては地の利を得たと言っていいだろう。ショーランナーを務めるのは何と『ゴーン・ガール』『シャープ・オブジェクツ』の原作者ギリアン・フリンだ。所謂“厭ミス”の女王でもあるフリンならではのストーリー展開を期待する所だが、意外や正攻法のエンターテイメント娯楽作になっていて驚いた。引きの強いクリフハンガーと、ハードなバイオレンス描写は今やPeakTVのトレードマークの1つと言える。それだけに、全てがこちらの予測値、期待値を上回ることなく、何とも生煮えなまま全8話を終えてし...『ユートピア~悪のウィルス』

  • 『危険がいっぱい』

    アラン・ドロンが『太陽がいっぱい』に続いてルネ・クレマン監督と組んだ本作は、ジャンルレスな怪作でめっぽう面白い。ドロン扮するイカサマ師のマルクは、マフィアの女房に手を出したせいで命を狙われる。巻頭から拷問描写もハードで、「お、これは本格ハードボイルドか」と身を乗り出した。間一髪、難を逃れたマルクと彼を追うギャングのチェイスアクションも迫力十分。命からがら教会に駆け込むと、そこには美しい未亡人バーバラとその従妹メリンダが慈善活動に訪れていた。マルクは専属運転手として雇われ、彼女らの住む大邸宅に転がり込むのだが…。おっと、ここまで。さながらジョーダン・ピール映画のような後半の転調に黒い笑いが洩れ、やがてそれは引きつる事になるだろう。本作でも美女を手玉に取るドロンの色男ぶりには女性蔑視とも言える女嫌いが見え隠れし、皮...『危険がいっぱい』

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