桜の茶会が終わると宗家は茶会以外の行事で大忙しだった。まずは光翔の小学校入学で、英徳小学部の制服を着た光翔を囲み、庭の桜の下で家族全員の記念撮影。この時も祐子の悪阻は酷くなく、孝三郎と共に入学式に出席することが出来た。建翔の面倒は志乃さんがみることになり、嬉しそうな顔の3人を乗せた西門の高級車が走り去るのを皆で見送った。英徳の制服は有名デザイナーのもので、カバンもランドセルじゃなく共通の通学バッグ...
花より男子の二次小説サイトになります。特に類と 総二郎が大好きですべてハッピーエンドなります。
読むだけでもの足らず、とうとう自分で書いてしまいました。自己満足の表現不足とは思いますが、楽しんでいただけたらと思います。
急いで部屋に戻る途中、何人かの使用人に驚かれた。そのぐらい焦ってたようで、足音や着物の擦れる音が凄まじい・・・志乃さんが何処かで「どうなさったのですか?」と呼びかけてきたのが聞こえたが、それに返事さえせず母屋に向かった。そして部屋に入った途端に鳴り始めたスマホ。それを手に持ったが息が上がってて話す事が出来そうになく、数コールほど待ち、気持ちを落ち着かせてから電話に出た。「おぉ、どうした?」『ごめん、...
階段を上がりきったところで見付けた2人・・・取り敢えず腕は組んでるけど、まだ喧嘩してるみたいだ。それを周りの連中が見てることにも気付いてないのかとゲンナリ・・・仕方ないから2人の真横に行って、態と「随分仲がいいんだね」と言ってやった。そうしたら牧野じゃなくて司の方が真っ赤になって・・・それにはちょっとイラッとした。と言うか、2人が穏やかな雰囲気じゃないから誰も話し掛けない・・・それはそれでいいのか?と思ったり...
お婆ちゃんの片腕を持って、なんとか自宅に到着した。それはかなり古いお屋敷ですごく広い・・・そんな家に1人暮らしをしているようで、門を開けて玄関までが結構遠かった。「おばあちゃん、お家の鍵は?」「いたたたた・・・えっと、そこの植木鉢の下に・・・」「うわ!そんなところに隠してるの?危なくない?」「う~~~~ん・・・もうかれこれ50年間そこに置いてるけどねぇ」「そうなの?じゃあちょっと待ってね・・・私が開けてもいい?...
なんなんだろう・・・花沢さん達から聞いた通り、道明寺さんって日本語が通じない?と言うか、目付きはマジで悪いんだけど、そんなに凶暴そうな人じゃなさそうな気もするし・・・・・よく判らないけど、花沢さんとは違う種類の変人・・・・・・そんな第一印象だった。今、花沢さんと並んでるんだけど、2人ともすごい美形なんだって今更ながらに感動しちゃう。学生時代、この2人が一緒にいたら目立ちまくって大変だっただろうな~と・・・左側を見...
俺が話し掛けると伽耶の緊張も幾分解けたんだろう。それからは自分のゴールデンウィークについて喋りだした。それを聞くと30日は爺様の病院で、その夜に両親から茨城行きを告げられたのだとか・・・病院なら尚更疚しい打ち合わせは出来そうにないなと思った。その爺様も連休中は一時帰宅し、伽耶の叔母が付き添ったという。「4日の夜には病院に戻る予定でしたけど、本当にすごい雨でしたでしょう?だから5日に私が付き添って病院...
あれだけ落とさないようにしなくちゃと言ってたダイヤのUピン・・・まさか、それを花沢さんに落とされて、自分で踏んづけるとは思わなかった。何故不器用なこの人が着けようとしたのか・・・それなら自分でネックレス着ければよかったのに、どうして任せてしまったのか・・・デッカいリムジンに乗ってからも私の頭には砕けたUピンしか思い浮かばなくて・・・1本いくらだったんだろう~~~~っ!!「牧野さん、そんなに心配しなくても大丈夫で...
5日の21時、俺は宗家の裏門に着いた。その時にあの黒いコンパクトカーが停まっていた場所に目を向けたが、そこには車はなかった。ちなみに海ほたるを出てから牧野のマンションに行くまでの間も、追尾してくる車はなかったように思う・・・結果、今日一日俺達は誰からも見張られなかったと言うことだ。「まぁいいけど・・・・・・随分あっさりしてるな」ガレージに車を停めたら、自分の荷物と牧野からもらった小さなぬいぐるみを指に引っ...
メイクが完了して、髪の毛もキレイに結ってもらった。そうしたら鏡の中には別人になった私が・・・・・・引き攣ってる。・・・目がおっきくなってない?これがアイラインの力なのか・・・瞼の周りも睫毛も少しキラキラしてるし、唇だってぷるんぷるん♪自分じゃ絶対に出来ないワザに感動を覚えた。髪の毛は確かにポイントウィッグなんだけど、そんなの全然判んない・・・しかもダイヤのピンが挿されてるからキラキラなんだけど、途中で落としたらど...
遊びに行くと、行きより帰りの方が荷物が多いもの・・・そう思っていたが、今回は帰りの方が荷物が少なかった。クーラーボックスごと隣に肉を渡したし、結局牧野は土産も買ってない。後部座席にあるのはさっき採った苺と、それぞれの鞄だけ・・・「牧野、海ほたるに寄るか?」「・・・別にまだお腹空いてないけど・・・寄る?」「渋滞してるしな・・・このままだと海ほたるに着くのは17時ぐらいじゃね?」「晩ご飯には早いけど、帰ってから作る...
「ご馳走様でした・・・・・・」「あら、牧野様。やはりご気分が優れないのですか?パンを1つ残していらっしゃいますけど」「・・・・・・いえ、その他は美味しくいただきましたので」花沢さんにパンツを見られた・・・しかも、買ってもらった新しいのじゃなくて、前からの相棒でもある苺のパンツ。薄ら赤が見えるだけで、生地が伸びて苺が円に見えていたなんて・・・それにもショックをうけて、やっぱりこの子(パンツのこと)とはお別れしなきゃ、...
キャンプ場を出て暫く走ったが、後ろを付いてくる車が無い・・・それにホッとしたのも確かだが、車を変えた可能性もある。俺はずっと黒いコンパクトカーを探していたから、そうじゃなかったらヤバいと思い始めた。だから館山駅からすぐ近い場所にある「渚の駅 」ってところに立ち寄ることにした。こうすれば客に紛れて俺達を見てる人間が居るかどうかが判る・・・だが、到着してすぐに気配を探ったが・・・そんなヤツは見当たらなかった。「...
次の日の朝、本当にゆっくり起きた俺・・・手を伸ばしてスマホを取り、時間をみたら9時。すぐにあきらからLINEが来てないかと思ったけど、それもなかった。「・・・まだ思い出さないのか・・・・・・協力するって言ったクセに、また彼女と遊んでるんだな?」そんな事をブツブツ言いながら起き上がり、ヨロヨロとバスルームに向かった。そこで軽くシャワーを浴びたら、取り敢えず部屋着に・・・・・・そしてソファーに座ってブランチの時間になるのを...
「西門さん・・・あのさ、頼みがあるんだけど」不意に牧野が真面目な声でそう言った。俺は何故かドキッとして、次の言葉に恐怖を感じ・・・でも顔には出さずに「どんな頼みだ?」と冷静に聞いてみた。牧野は何度か言い難そうに俯き、器用に俺以外のあちこちに視線を移して口籠もる。そんなこいつに呆れて、「言わねぇなら帰り支度するぞ」と言うと「ちょっと待って!」と片手を出した。そんなに言い難いことってなんだろうかと思ったら・・...
あきらが意味深な電話をしてきたから、隠す事も出来ないと思い・・・今日あきらの家に行って青い薔薇をもらった事を話し、ついでに牧野の事も話した。普段そんなに無駄な事を言わない俺なのに、この時ばかりはどうやって説明しようかと考えながら・・・そうしたら俺の話を遮って、『お袋からそんな話は聞いてないけど?』って言われて固まった。えっ、聞いてないって・・・・・・夢子さんから何も聞いてないの?!「で、でもさっき『聞いたぞ~...
「・・・・・・・・・・・・っん・・・・・・」ザザッという波音が聞こえてきて、薄ら目を開けたら・・・見えたのは何にもない壁。クルッと頭を回転させて天井を見たら、そこには見た事もない照明・・・・・・何処だろうって考えていたら、窓に張り付いた木の葉を見て・・・「はっ、そうだ・・・・・・ここ、キャンプ場だった!」ガバッと勢いよく起き上がったのはいいけど、ズキッとした頭・・・その痛みで、慣れないカクテルやビールをかなり飲んだことも思い出した。二...
「いらっしゃい、類君。それに可愛らしいお嬢さんねぇ♪」「夢子さん、この子は牧野つくし。花沢の秘書課勤務で、訳あって連れて来たんですけど気にしないでください」「・・・こ、こんばんは(気にしないでってなんなのよ💢!)」「まぁ、つくしちゃんって言うの?お名前も可愛いのねぇ~♥よろしく~~~♪」私は今、びさく・・・じゃない、美作邸のリビングにいる。ここは花沢邸と同じ豪邸なんだけど、ド派手な装飾が半端ない・・・部屋全体...
葛城への返事・・・それをしていないのは俺にとってラッキーなのに、わざわざ煽るような事を言ってしまった。ーー待って待って待ち草臥れてるけど、余裕を見せてるだけに決まってんだよ。中途半端な気分なら隣を歩かない方がいい・・・・・・そういうの、時間が経てば経つほど残酷だぞーー言った瞬間、しまったと思った。それは数年前の牧野の事に重なるから・・・何のアクションも起こさない司が牧野を放置し、遠距離にもかかわらず束縛したん...
夕方遅くまで特訓を受け、クタクタになった私・・・もう立ってるのもキツくて、大広間の椅子に座り込み、丸テーブルに突っ伏した。そうしたら加代さんが苦笑いして、「夕食は私抜きでのんびり召し上がって下さいな」って・・・それを聞いた瞬間、私の目がパチッ!と開き、ガバッと起き上がってクルッと振り向き・・・「えっ!本当にいいんですか?!」「はい、よろしゅうございますよ。最後ぐらいゆっくりしないと、明日疲れが残りますから...
停電が解消されると、真夜中にもかかわらずオーナーが様子を見に来てくれた。そこで特に問題ないことを話したけど、西門さんが暴風で傘が壊れたことをこの時謝ってくれた。これについては私が散歩中に手放してしまったことを追加で説明し、彼の横で頭を下げた。「いやいや、そんなの全然気にしないで!見たら判っただろうけど、安物のビニール傘だから!それよりも、これ・・・もしかしたらまた停電があるかもしれないから、念の為に...
「・・・今、なんて言いました?」『今日はうちに泊まってって言ったの』「・・・・・・・・・・・・」『加代が前日講習だって言うんだから仕方ないじゃん。午後1時になったら迎えに行くから・・・・・・ふぁ~・・・』この電話はパーティー前日でもある土曜の朝・・・と言っても10時過ぎで、この時間に起きたであろう花沢さんが、寝惚けたような声で無茶苦茶な話をしてきた。あのお屋敷に泊まる・・・この私が?!しかも鬼の加代さんの前日講習?!いやいやい...
平気だから手を離せという牧野の声を無視・・・こいつの気持ちは判ってるが、俺の手の力は緩めるどころか強くなった。この距離感ゼロは4年ぶり・・・空港で倒れそうな牧野を助け起こした時以来だが、今の方がすげぇ近い・・・と言うか、完全に抱き締めてるし。自分の唇にこいつの湿った髪が触れ、たったそれだけの事でガラにもなくドキドキして・・・今、この瞬間に押し倒して自分のものにしてしまえば、なんて悪魔のような声も聞こえたぐらい...
専務の誕生日も過ぎ、4月になった。この花沢物産でも入社式があり、暇な私は総務の皆さんのお手伝い・・・と言うか、花沢さんが挨拶のスピーチをするって言うから、それにくっついてきた。藤本さんが専務の業務代行をしているからここにはいないけど、佐藤さんが彼の身の回りのお世話と原稿なんかの確認、私は完全なる傍観者・・・じゃない雑用。隙間から見る新入社員は絶対に私より頭も良いし、即戦力になりそうだった。「どうかしたの...
小さな窓の外、そこから見えるのは流れ落ちる雨粒と、飛んでガラスに張り付いた木の葉・・・キャンプ場の街灯に照らされる横殴りの雨に、身体の奥底がゾクッとした。天気予報はこんな暴風雨じゃなかったのに・・・そう思うと溜息が出た。古い建物だからなのか、2階とか3階じゃないのに揺れてる気がする・・・でもそれは錯覚なのかもしれない。とにかく得体の知れない恐怖に駆られ、私はカーテンを閉めた。そしてベッドに座り、和室のある...
飛び込んで来たかと思ったら、手渡された封筒入りの30000円。定期代の一部だと言われたけど、それはいいとして・・・まさかの現金が誕プレ?とそっちに目がテンだった。いやいや、そもそもこれはただの返金であって、俺へのお小遣いじゃないし。そんな事を考えていたら、牧野はテーブルの上の特上中華弁当を見て・・・「うわあぁっ♥今日も頼んでいただいたんですか?!」「・・・そのつもりで来たんじゃないんですか?牧野さん、今日は...
「じゃあそろそろ寝ようかな・・・」「おぉ、もう0時過ぎたな・・・寝るか」「おやすみなさい、西門さん」「あぁ・・・・・・」結局3杯のカクテルを飲んだ牧野・・・でもグラスも小さいし、アルコール度数も5%と超軽い。だから酔ったような感じもなく、スッと立ち上がって部屋に向かった。俺はその姿を目で追い・・・『本当に行くのか?』と胸の中でだけ呟いて、その言葉は飲み込んだ。何もなくていい。何も言わなくてもいい・・・・・・ただ、朝までこ...
私が更衣室に入った時、そこでは4人の先輩が火花を散らしていた。みんなそれぞれに持ってるのは上品な箱で、どうやら中身は花沢さんへの誕プレ・・・私のピアスの事なんて眼中にもないらしい。それはそれで苛められずに済むというもの。だから端っこを歩いてロッカーに行き、そこでコソコソ上着脱いだ。「上野さん、随分大きな贈り物ね?そんなの邪魔になるって思わなかったの?」「あら、安藤さん。本当に好きな物を渡す方が喜ばれ...
シャワーを終えると和室に向かった。そこには押し入れからひと組の布団が出してあり、すぐに敷けるようになってた。シャワー前に頼んだTシャツはハンガーに掛けられ、壁の出っ張りに掛けられていた。「・・・まぁ、しょうがねぇな・・・ふた部屋あるんだもんな・・・」そんな正直な言葉が漏れる・・・そして窓を開けると、隣のグループの賑やかな声が雨に混じって聞こえた。窓を開けたのはそんな声を聞くためじゃなく、念の為に侵入者がいない...
3月30日の朝になった。今日は花沢さんの・・・確か、私の1つ上だから、26回目のお誕生日だ♪清々しい晴れの日だったらいいな~と、カーテンを開けると・・・・・・雨。窓の向こうに見えるマンションの庭木がビッショビショ・・・「うそっ!朝からこんなに降ってるの?!」昨日は天気予報なんて見なかった・・・・・・急いでテレビをつけたら、今日は全国的に一日中雨で、午後からは雷雨だそうだ。まぁ、結婚式でもないし、旅行の出発日でもない...
流石、極上の肉を買ったから美味かった。それに牡蠣も海老も、オーナーの野菜も美味かった。こんな風に自分で焼いて食ったり、缶ビールを飲むのも久しぶり・・・横を見れば、空いた缶がもう4本。牧野が2本目を開けたばかりだから、俺1人で3本も飲んだのかと驚いた。しかもまだ手には1本あるし。てか、焼きながらだから顔や手が暑いし、あれから牧野がはしゃぐもんだから、俺も調子にのってしまって・・・「西門さん、ここ炭になって...
「いらっしゃいませ~」「昨日予約した牧野ですけど♪」「あぁ、どうぞどうぞ~~~♪お待ちしていました」「すごい・・・沢山あるんですね~~」私が立ち寄ったのはパワーストーンのお店。自分でアクセサリーを作れるって書いてあったから、昨日ネットで予約しておいたのだ♪花沢さんは何でも持ってるし、何でも買えるし、卵焼きケーキは却下されたし、それなら手作り出来る物をって考えて・・・本当は革製品がよかったんだけど、それは急...
悲鳴を上げた牧野がしゃがみ込み、傘は林の方に飛んで行った。それを取りに行く前に牧野に俺の傘を渡し、柄を持たせようとしたが怯えて動けない。何をそんなに怖がってるんだと驚いたが、こいつの髪がどんどん濡れていくのを見て・・・「おい、牧野!しっかりしろ!!」「・・・・・・っ!!」「雷なんて落ちやしねぇから早く傘を持て!」「・・・・・・あ・・・ご、ごめ・・・」「阿呆、風邪引くぞ!」「西門さん!!」「借り物の傘だから取ってくるだ...
翌日の朝・・・何故だか知らないけど全身筋肉痛で目が覚めた。そして特に足が痛いのは慣れないヒールのせい。上質なパンプスだったからなのか靴擦れのようなものはないんだけど、脹ら脛がパンパンだった。それに足裏も・・・25年間、ほぼぺったんこの靴だったから、流石に10㎝ヒールは地獄だった。でも本番(パーティー当日)もあんな靴で・・・そう思うと、2~3時間のパーティーも憂鬱。しかも殆ど食べられないって事は昨日判ったか...
本当に来てしまったキャンプ場・・・というよりはコテージのような雰囲気だった。想像していたより小綺麗で広く、隣の方からは楽しそうな声が聞こえる・・・それに少しホッとした。でも他のグループは見えないようになってるから、バーベキューしてる匂いと声だけ・・・そして波の音が聞こえるから、海はすぐそこなんだって判った。オーナーさんの話だと、晴れていたら海が見えるところでもバーベキュー出来るようになってるんだとか。それ...
想像以上に厳しい加代さん・・・何をしても彼女の目が怖くて、つい視線が泳いじゃう。取り敢えず、3種類の料理をお皿に乗せたら、次はどうしようかとキョロキョロ・・・「牧野様、次の方の邪魔になりますので、それだけ乗せたら列から移動して下さい」「は、はい!・・・・・・おっと・・・」「慌てて動くとお料理を落としますよ。そしてプレートは両手で持ちません。左手だけにして下さい」「はいっ!」「牧野さん、あのテーブルまで歩きましょ...
東京アクアラインに入る前から既に渋滞・・・これも想定内だったから驚きはしなかったけど、それよりも天気がどんどん悪くなっていくのが不安だった。本当に雨が降りそう・・・スマホで確認した天気予報は小雨だったけど、とてもそんな感じじゃなかった。だから空はますますグレーになり、折角のドライブなのに残念・・・そう思っていたら、西門さんが「そろそろ食おうぜ」って言った。その時間はもう13時30分で、確かに私もお腹がペコ...
藤本さんが手土産渡してる・・・言ってくれれば私だって用意したのに!と、ガックリしてる時に加代さんから「こちらにどうぞ」と言われて、この人に付いて行くことに・・・振り向いたら花沢さんと藤本さんはリビングとは別の方向に歩いて行った。そっちには何があるんだろうと思って足が止まる・・・そんな私に加代さんが、「あちらは大広間があるのですよ」と。「リビングやダイニングは少人数のお客様や、類様のお友達の時にはいいのです...
まさか私の車で行くとは思ってなくて、急に心臓が痛くなった。事故ってこの人に怪我でもさせたらどうしようかと・・・それに、このマンションの駐車場にあんな高級車が停まってるなんて、ご近所さんが見たらビビるだろうし、悪戯でもされたら弁償できない。葛城さんだって驚いてた車なのに・・・そんな不安で押し潰されそうだったけど、西門さんはケロッとした顔で自分の車をロックして、小さな荷物1つを抱えて私の軽自動車の後部座席を...
「やはりご自分でお返しなさい。それが礼儀というものです」「・・・はい、判りました」藤本さんに頼んだ定期代(の一部)の40000円・・・その言葉で返されて、再び私の鞄の中に入れることになった。それまでロッカーには鍵も掛けなかったのに、10万以上入ってるお財布があると思うと当然のようにロック。今日の帰りも引ったくりに遭わないようにしなくちゃ、と思いながら秘書検定の勉強を進めた。・・・でも頭の中には内容が全然入...
4日の朝・・・12時に来るって言うからいつも通りに目覚めた。そしてトースト1枚とカフェオレで簡単に朝ごはんを済ませ、そのあと少しだけの洗濯をして部屋干しして、これまた簡単に掃除もした。窓を開けたら・・・今日は少し曇り空だ。雨にならなきゃいいなと思いながら空を眺めていたら、背中側でTVが『大気の状態が不安定』だと・・・それを聞いて小さな溜息ひとつ。いつもの休日より静かだったから、すぐ下にある駐車場を見たら車が...
お昼休み、私はご飯も食べずに銀行に走った。そして恐る恐る残高を見てみると・・・・・・124080円!!やったーーーーーっ!!初給料ーーーーっ!!私は急いで80円だけ残して124000円を引き出し、買ってもらったお財布に入れた♪今度は急いで近くのサンドイッチ専門店に行き、バゲットサンドを買った。「甘辛タレの照り焼きチキンサンド」と「サーモンとクリームチーズのオープンサンド」と、「ドライフルーツと生クリーム...
予定外の大荷物・・・でも車で出掛ける勇気がなかったし、渋谷なら電車の方が断然便利。だからしょうがないんだけど、荷物が重たくてクタクタになった。そんな感じでマンションに戻り、まずは買った物を広げて再度チェック・・・次に大きな鞄を出して、今買った物のタグを外しながら入れていった。「・・・子供っぽいと思われるかな・・・こんなボーダーTシャツ。もうちょっとオトナっぽいサマーセーターみたいなのが良かった?しかもシャツコ...
「ご馳走様でした~~~~♪」「ご馳走様・・・焦げてたけど美味しかった」「焦がしたの、あなたですから💢!!」今日も元気だ、ご飯が美味い!ってことで夕食?が終わったのは11時。この時間から珈琲はダメだから、温かいお茶を入れた。それを持ってリビングに行き、少しだけ休憩・・・この時、花沢さんに今度会う道明寺さんの写真がないのか聞いてみた。そうしたらあっさり「無い」って言うからドン引き!「えっ?でも友達なんですよね...
西門さんからの電話があった翌日の5月1日。ゴールデンウィーク真っ只中だけど、私はカレンダー通りだから明日も出勤・・・今日は朝から黙々と販促物作りをしていた。新刊の販促物として、書店に置くためのPOP・・・初めはすごく苦手だったけど、最近は慣れてきて我ながら上手くなったと思う。「よし、出来た・・・ラミネートして切らなきゃね」その作業をしながら昨日の言葉を思い出し・・・『4日と5日、本当に館山に行こうぜ。あんな話を...
今日も遅くなった・・・もう時間は21時過ぎで、お腹は鳴るし元気も無い。それに試着もしないのならご飯食べても良かったんじゃ・・・そう思うと悔しくて堪らなかった。早く食べなきゃ、このイライラがどんどん増幅する・・・・・・「花沢さん、晩ご飯どうするんですか?」「・・・さぁ?自宅に帰れば何かあるかも」「確かになんでも出てきそうですもんね💢」「食べなくても平気だし」「えっ?!平気なんですか?」「別に一食抜いたからって死なな...
「おはようございま~~す!」次の日、いつも通りに会社に行き、営業課のフロアに入ると・・・何故か全員が私の方を見ている気がして驚いた。しかも好奇心に満ちた視線・・・「え?」と小さく呟き足が止まった。私が何かしでかしたのかと考えたけど、自分の成績がイマイチだっただけで、一昨日は何も問題が起きていない。どうしてそんな目で見られなくてはならないのかと立ち竦んでいると、仲良くしている飯塚さんが真横に来て、私の手を...
そんなに遅い時間じゃないけど、前と同じように裏口から入った。そうしたらあの時の店長さんらしき人が「いらっしゃいませ、花沢様」と言って、(花沢さんにだけ)笑顔を見せて出迎えてくれた。それには別にムカつく事もなく💢、前と同じくスタッフ専用の通路から応接室のような部屋に入ると・・・「うわぁ!可愛い~~~♪」そこは前と違って、スーツではなく色とりどりのドレスがずら~~~~~~~っと並んでいた。シックな黒、ド派...
胃がキリキリと痛むような感覚・・・西門さん達と出会ってもう3時間も経つのに、この空気に慣れない。身体がガチガチで、ナイフを持ってもそれが震えて、お皿の上で音を立てそうで怖かった。美味しそうなお肉が出ても、その味が判らない・・・。どうしても色味のない自分の爪が気になる。左の人差指の横には切り傷・・・昨日会社の書類で切ったところだ。またお肉が上手く切れない・・・私の動かし方が悪いから?今、気が付いたけど右の手首に...
道明寺ホールディングスの道明寺司様・・・そう言われても、その人の事を知らない私はキョトン。「それは誰ですか?」って聞いたら、花沢さんのお友達だそうだ。そう言えば総務の人にそんな名前を出されたような・・・と思ったけど、あんまり覚えてない。で、どんな人なのかと聞いたら・・・「ん~~、とにかく暴れん坊かな。凶暴で顔が怖いし、いきなり怒鳴ったり殴ったりするかも」「あまり近寄れないですよね」「は?そんな危険人物で近...
そのお店は”大人っぽい雰囲気で、あまり気取った店じゃない”と言われたのにそうじゃなかった。むしろドレスコードがないのが不思議なくらい・・・こんな格好で入るのは気が引けて、西門さん達が私達と一緒にいるのは恥ずかしいんじゃないかと焦った。でも葛城さんはそんな事気にしてないみたいで、「電話で予約した葛城ですが」なんて平然としてる。スタッフの男性も、カジュアルな私と彼に訝しげな目を向けるわけでもなく普通に対応...
「まぁ、類様、どうなさったのです?それに牧野様も・・・あら、藤本様もご一緒で?」「加代、少し会議をするから2階には来ないで」「こ、こんばんは~~、加代さん。昨日はお世話になりました~~」「ご無沙汰しております、野村加代さん。夜分遅くにお邪魔して申し訳ありませんが、早く終わらせて帰りますので」その時間は22時30分。2人を連れて屋敷に戻ったら、当然のように加代は「会議?!」と驚いていた。そんな彼女には...
葛城さんの車は駐車場を出た。そして代官山の方に向かって移動・・・私は窓の外を見て、西門さんの赤い車を探した。あんなに目立つ車は滅多に走らないから、遠目にでも判るんじゃないかと・・・そうしたら、葛城さんに「どうかした?」って、また聞かれて焦った。今日、何回その言葉を言われただろう・・・きっと変に思われてるに違いない。途端に窓の方に向けていた身体を戻し、真っ直ぐ前を見て誤魔化した。気不味さと恐怖と・・・でも少しだ...
どうしてこうなったんだか・・・・・・。確かに今日の夜にはマンションに集まることになったけど、ご飯は「私の手料理」なんて。しかも藤本さんのリクエストでオムライス。まさかのオムライス・・・あの人がオムライス!!あの顔でオムライ・・・・・・・・・いや、言い過ぎか。そして花沢さんのひと言でデミグラスソースのオムライスになり、私は帰り道で足りない材料を買うことになった。もちろんお金は藤本さんから1万円もらった。380円しか持...
葛城が言った「デート」って言葉にカチンときた。が、すぐに俺がどうこう言う立場にないことを思い出し、それまでの苛立ちを胸の奥底に隠した。牧野と俺は友人・・・・・・それ以上でもそれ以下でもない。同性なら親友になれたかもってぐらいの仲・・・・・・多分、こいつもそう思ってるはずだ。だから強張っていた表情筋を緩め、いつもの笑顔を作っていた。そして俺の方はと言うと、腕にそっと触れた伽耶が、「こちらは?」と聞いて来た。「あ...
「牧野さん、12時になったから休憩したら?」「あ、は~~~い」秘書室の会議室で、今日も朝から秘書検定の勉強中・・・そんな私に佐藤さんが声を掛けてくれたから、ゆっくり立ち上がってフロアに戻った。そこに居たのは極僅かな男性の先輩達・・・安藤さん達は全員お出掛けで助かった。「・・・はぁ・・・」「あれ?牧野さん、顔色悪いけど大丈夫?」「あはは・・・ずっと文字を見てたら疲れちゃって」「そうだよね~、午後からは書類整理、頼...
美術館から出ると、俺達は真っ直ぐ駐車場に向かうはずだった。だが、ここで急に伽耶が駅の中にあるショッピングセンターに寄りたいと言いだし、そっちに足を向けた。「申し訳ありません、総二郎様。ちょうどそこに母が好きなお店があって、かや織のストールを母の日にプレゼントしようと思いまして・・・」「いえ、構いませんよ。かや織ですか・・・夏にはいいでしょうね」「あら、ご存じなのですか?」「えぇ、向こう側が透けるほど薄い...
牧野はお婆様の部屋のあちこちを調べ始めた。机の引き出し、本棚の中、チェストの引き出し・・・もちろん俺に断わってからだけど、そこを開けては「何もないなぁ~」と。それは当たり前。今、牧野が調べた所は俺だって見てる。しかも引き出しを開けるための鍵の在処を教えてくれるのが宝石達・・・だからお婆様の宝物がこの部屋から簡単に出てくるはずがない。そう言うと、「ですよね~~」と苦笑いしてた。「ドラマとか映画でよくあるじ...
今日は汗ばむほどの陽気・・・少し歩いただけで汗が滲む。日傘を持ってくれば良かったな、と片手で顔を隠しながら歩いた。そして動物園の西側に入ってすぐ、子ども連れの人達中心に沢山集まっていたのはパンダの展示。とても近づけないので苦笑いして通過し、少し早いけど休憩所に向かった。そこは藤棚があって、その下には既に沢山の人が・・・でも丁度2人なら座れるスペースを見付けて、葛城さんがそこを取ってくれた。私も汗を拭いな...
お肉料理までとにかく散々な目に遭った。私の前のテーブルクロスだけ汚れがすごい・・・そして花沢さんのお皿は見事に綺麗。お手本と言われたけど、彼を見る暇はあんまりなかった・・・と言うか、肝心な時にこの人はさっさと食べてた。私のペースに合わせて食べてって加代さんも言ってたのに💢「それでは牧野様、これが最後ですわ。デザートと珈琲でございます」「うわぁ、美味しそう♥」「おほほほほほ、ちゃんとしたお席では嬉しくても叫...
駅前の駐車場に車を入れたら、私達は並んで動物園までの道を歩いた。開園は9時半だけど、私達が着いたのはその15分前・・・でも、もう沢山の人が並んでた。それを待つ間も葛城さんが重たい鞄を持ってくれて、逆に私は申し訳なくて・・・でも、この人は嬉しそうに「このぐらい軽いって」と笑ってくれた。こんな人混み・・・恋人なら腕ぐらい持つのかもしれないけど、私にはそれがまだ出来なくて・・・勇気を出して掴んだとしても、その先に進...
加代さんって人がにこやかに「お料理はもう出来上がっておりますからね」と言い、花沢さんは固まってる私に「前にも話しただろ?テーブルマナーだよ」と・・・いやいやいや!テーブルマナーって!今度のパーティーは立食って言ったじゃん!!「花沢さん?!私が勉強していたのは立食のマナーで・・・」「あぁ、それも今度やるよ。でもマナーの基本はテーブルだろ。だから初めにそっちからね」「類様から聞いております。牧野様は今までそ...
28日は月末近くて大忙しだった。勤務を終えたのは21時で、それから急いでマンションに戻った。でも部屋には入らずに車に乗り込み、すぐに向かったのは深夜まで開いてる近所のスーパー。そこで残り少ない食材の中から、お弁当に出来そうな物を買い込み、帰宅したのはもう23時だった。「まぁ、仕方ないよね・・・手の込んだ物は作れないけど、葛城さんなら許してくれるかな・・・」お風呂の準備をした後でお弁当の下拵えをして、それ...
一体この会社に何をしに来てるのやら・・・・・・そんな疑問をゴクンと飲み込んで、今日も業務終了。秘書課の仕事なんてほぼしてないんだけど、指導係が藤本さんだからなのか、みんな何も言わない。それに最近はお姉様達も忙しそうで、私に嫌がらせなんてしてこない。3月末が決算で、4月からは新しい年度・・・その関係で本部長さん達も忙しいみたい。上司が忙しいと当然秘書も忙しくなり、常務が長期出張だから安藤さんも居ないし・・・って...
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桜の茶会が終わると宗家は茶会以外の行事で大忙しだった。まずは光翔の小学校入学で、英徳小学部の制服を着た光翔を囲み、庭の桜の下で家族全員の記念撮影。この時も祐子の悪阻は酷くなく、孝三郎と共に入学式に出席することが出来た。建翔の面倒は志乃さんがみることになり、嬉しそうな顔の3人を乗せた西門の高級車が走り去るのを皆で見送った。英徳の制服は有名デザイナーのもので、カバンもランドセルじゃなく共通の通学バッグ...
夏美さんが呆然としてる・・・・・・流石に自分でも不味いコトしたと思ってる。でも流れた玉子は拾えなかったし、真ん中の穴みたいなところ(ディスポーザー)にス~~~っと落ちていき・・・「どうしましょう、夏美さん・・・」「残った玉子は4個ですから、小さめのを作りましょうか💦」「ごめんなさい・・・」「大丈夫です!これも慣れですからね!」でも玉子をキレイに割ることは覚えたので、気を取り直して玉子4個を割った。そして夏美さんに...
翌日の紅葉の野点では、家元夫人のお茶席で祐子さんと一緒にお手伝いをした。まだまだ阿吽の呼吸とはいかないけど、とにかく自分の出来ることを頑張るしかない。2人とも家元夫人と色違いの着物で、それだけで周りの人達には意味が判ったようでザワザワしたけど・・・それでも笑顔を絶やさず、大失敗をしないことだけを願いながら。野点茶会が始まって2時間後にやってきた花沢類と美作さんは、何故か総二郎のお茶席じゃなくて家元夫...
「はぁ~~~~~!12時になったぁ!」「社食に行く?今日の日替わり、なんだったっけ?」「池上君、今日は13時30分には芝崎産業に行くから遅れるなよ~~」「はい、すぐに飯食ってきます!」「花沢課長、キリがいいところで食事にしませんか?」「・・・ん」・・・なんとか午前中の業務終了。俺も昼食に行こうと席を立った。他の社員のように社食に行ってもいいんだけど、俺の場合は周りにいる社員の方が気にするってことで、いつ...
1時間後・・・・・・クタクタになった私達は母屋に戻っていた。後援会の皆様への挨拶は道明寺達のおかげで滞りなく終わり、むしろ後半はこの人達によって私達の結婚が西門流にとってもこの上ない幸運だと言わんばかりに盛り上がってた。総二郎の親友なんだから特別顧問的な役割は続くのに、オマケに私の後ろ盾だなんて・・・家元ご夫妻も彼らとニコニコしながら会話し、「今日はどうもありがとうね~」なんて言ってる。そして鬼みたいな顔...
マンションに戻ったのは11時30分。ここで夏美さんが「すぐにご飯を炊きましょう」って言いながら、さっき買ってきた食料品の中からお米を取り出した。「お米を・・・たく?」「えぇ、炊飯器で炊くんです。これも忘れました?」「・・・・・・あ、あは・・・あっははははは!」「簡単ですからすぐに思い出せますよ」野菜を炊いたものなら知ってるけど、基本私達のご飯は玄米を蒸して強飯にしたり、水をたっぷり入れて煮るお粥がほとんどだっ...
「つくし様、終わりましたわ」「・・・ありがとうございます、志乃さん。うわぁ・・・私じゃないみたい///」「うふふ、よくお似合いですわ。では総二郎様をお呼びしますね。お客様もすでにお待ちのようですので」「・・・・・・は、はい!」今日は後援会の皆さんとの顔合わせの日・・・家元夫人から譲り受けた色留袖を着て、ドキドキしながら控えの間で待っていた。総二郎が選んでくれたのはすごく綺麗な袷の色留袖で、地色は象牙色、柄はすべて手...
夏美さんとホームセンターに行くと、真っ直ぐ向かったのは「キッチン○○」ってことろ。(↑○○=用品だが、まだ漢字が読めない)そこにはキラキラした(金属)ものが沢山あるんだけど、私には何のことやら・・・だから全部彼女に任せることにした。まずは”包丁”・・・「このまえ買ったかどうか忘れたんですけど、2つあっても良いと思うので」「は~~い」「ぺティナイフも買いましょうか」「・・・は、は~~い」(←わかっていない)夏美さんが...
お義母様との話し合いが終わった翌日から、私はいただいた着物を着て本邸を歩くことになった。そしてここではお義母様から家元夫人に呼び方も変更・・・自分1人では何をしていいのかわからないので、常に家元夫人にくっついていた。玄関の花を変えたりするぐらいなら緊張はしないけど、生徒さんが来たときに挨拶するのは心臓が破裂しそうになる。なんたって生徒さんの半数は名家のご令嬢・・・今はフリーの総二郎がお目当てなんだもん。...
サンルームとやらに干された3日分の下着・・・白に鴇色(ときいろ・ピンク)に空色・・・乾いたらこれを畳んだらいいとのこと。でもそれを何処に仕舞うのかしら?この部屋には唐櫃(からびつ)もないんだけど・・・。出典:e国宝「どこに仕舞っても自由だと思いますけど、確かにお部屋にタンスはないみたいですね~」「服は向こうに置いてあるんですけど・・・」「あぁ、クローゼットですね?でもこんなに広い脱衣場があるし、ここにも棚がある...
つくしと葵が退院してから1ヶ月が過ぎた。梅雨の晴れ間で、気温もそう高くない日・・・・・宗家には客人が来ていた。それは神楽木裕也夫妻で、その手には葵のための祝い着があった。淡い黄色から赤への暈かしがあり、美しい配色の毬に組紐、そして熨斗目が描かれたもので、華やかな芍薬や桜なども。金彩も施され、煌びやかさもある極上のもの。それを見るつくしや祐子は目がテン・・・お袋は涙ぐみながらそれを手に持った。その場には親父...
「まだ始まっていない・・・とは・・・?」「えっと・・・・・・つくしさん、成人してますよね?」「せいじん?」「大人・・・ですよね?」”せいじん”・・・つまりそれが大人って意味?私達の頃は男性は「加冠の儀」つまり「元服」、女性は「裳着の儀」ってのがあった。元服は帝であればおおよそ11歳から15歳まで、皇太子であれば17歳までに行われてたけど、通常14歳前後が多かったみたい。元服式には「理髪の役」と「加冠の役」の役目があって、まず...
出産がこれほどまでに大変だったとは・・・・・・光翔の時には立ち会わなかったからわからなかったし、正直美涼の苦しみや痛みまで考えなかった気がする。でもつくしの様子を見ていると、彼女も必死に産んでくれたのだと・・・・・・もう少し感謝の言葉をかけてやれば良かったと思った。と同時に、これだけの思いをして生んだ光翔を愛おしく思えなかったことに対して疑問が湧いたが・・・「・・・総二郎、どうかした?」「あ、いや・・・なんでもない。...
夏美さんが来てくれたので安心して全身の力が抜けた・・・けど、この人に色々と教えてもらわないといけないので、「よろしくおねがいします!」と元気よく挨拶♪中に入ってもらって、まずは・・・・・・何をする?「え~~~~~と・・・」「あぁ、お茶とか珈琲とかはいいですよ。仕事で来てるので気を遣わないで下さい」「・・・(あぁ、お茶を出すものなのね?そもそも炭汁(珈琲)は作れないし)・・・あはは///すみません」現代社会を知らないフリ...
5月31日は土曜日で、一颯の保育園はお休み。光翔くんの幼稚園もお休みで、子供達は朝から庭で遊んでいた。あんな風に走ったり飛んだり、しゃがんだりが身軽で羨ましい・・・と、自分のお腹をさすりながらそれを眺めて・・・・・・「・・・つくし、平気か?」「へ?あぁ~~~、うん、まだ平気」「陣痛が来る前に入院してもいいんじゃねぇの?」「そんなの病院に迷惑だよ。陣痛間隔が15分ぐらいで行く人もいるんだし」「でも・・・・・・」「そん...
「おはようございます、花沢課長///」「課長、今日も素敵なスーツですね~~♪」「・・・・・・・・・」「無口だけどそこがまた///」←ただの無愛想「ねぇねぇ、今日は少しワイルドな髪型じゃない?」←ただの寝癖「「「花沢課長、おはようございます~~~♪」」」「あぁ、おはよう・・・・・・」「「「きゃあああ🧡今日はご挨拶できたぁ🧡」」」そんな声もほとんど耳に入らず、床の大理石タイルに視線を落として歩いた。頭の中では1人にしてしまった...
墓参りから1週間が過ぎ、明日は桜の茶会。今回もつくしは準備だけで、当日は子供達の世話係。まだ後援会に何も話していないので、姿を見せないように離れで過ごすことにしていた。が、祐子は茶会終了後に挨拶するために数日前からその練習をしていた。お袋から譲り受けた着物を着て、光翔にも着物を着せて・・・その時は流石に一颯の事が気になったが、子供なのであまり深くは考えていないようで助かった。むしろ面倒くさいことをせ...
翌朝、やっぱり私はベッドから落ちて寝ていた。でも類がそこにマットレスってのを敷いててくれたので、今日は身体が痛くないなぁ~と思いながら身体を起こすと・・・もう類はこの部屋にはいなかった。「・・・あ、今日から仕事に行くって言ってたっけ・・・」いつまでも寝てるから、起こさずに出かけたのかと思って飛び起た私。その時にズボンの裾を踏んで転けそうになりなからも、ドアを開けて隣の部屋に行くと・・・・・・「おはよう、つくし」...
桜の茶会の10日前・・・彼岸の日に神楽木家に向かった。車中にはお袋の姿もあり、つくしが後部座席で一颯の相手をし、お袋は助手席。運転席の俺も少しばかり緊張するが、まだ祖母に慣れていない一颯のためにはこの方がいいだろうと思ったからだ。お袋は紫地の江戸小紋に紹巴織の名古屋帯。春らしい着物ではなかったけど、品があり、墓参りに相応しいものだった。「ねぇ、ママ。かぐらぎのおじちゃんはなんのお仕事してるの~?」「...
その日の夕ご飯も誰かが持って来てくれた物をレンジでチンして食べることになった。何度もやったから温めは完璧🧡そしてコンロでお湯を沸かすことも出来るようになった。ここでまた初めての物が出てきたんだけど・・・すごく軽くて四角くて、スカスカしてる?「類、これはどうやって食べるの?このまま囓るの?」「それはフリーズドライの卵スープだよ」「・・・・・・?」「あぁ、フリーズドライって言うのは真空凍結乾燥って意味で・・・・・・わ...
「・・・・・・・・・ママは・・・・・・まいあのこと・・・」「どうした?」「・・・・・・なんでもなぁ~い」「・・・・・・・・・・・・」小さな子どもの相手など苦手なはずの司・・・だが、それがつくしの子どもだからなのか、その淋しそうな表情が気になったのだろう。つくしが戻って来ていないのに、双子を連れて会場横にあるルーフトップテラスに出た。そこはさながら小さな公園のように仕立てられていて、芝生にはベンチが置かれていた。真音はそこに設置されてい...
梅雨が明けた7月後半。この頃は庭木の手入れで野田は忙しくなる。梅雨明けの前と後では天候が大きく変化し、新しい枝の生長も一段落。これからの暑さの備え、風通しをよくしたり、光がまんべんなく当たるように剪定していかなくてはならない。春に花が咲いた木には「お礼肥え」を与えたり、茶花でよく使うナツツバキにも肥料が必要。それまでよく雨が降っていたのに、急に降らなくなって水分バランスが悪くなることから、木が弱る...
招待客の視線が類の家族に集まった。何故なら、隣にいるのは1年と少し前に行われた類の結婚式とはちがう女性だから・・・だがその理由は既に知れ渡っているので、ここで改めて類が紹介するという形になっていたのだ。美央のことも「花沢家の被害者」というニュアンスで伝わっている。そしてすでに彼女も本来の家族と過ごしていることも、あの事件の時にそれとなく報道されていたため、ここでは説明しない。それよりも真利愛と一緒に...
「サッちゃ~~~~~ん!!」野田さんから話を聞いて、今サッちゃんがいるという母屋の一室にダッシュで向かった。どうやらそこで使用人さんの制服でもある夏の着物を準備しているとか♪その部屋の襖をパーンと開けると、目の前に年配の使用人さんとサッちゃんが!その顔を見ただけで嬉しくなって、「おめでとう~~~!」と言って両手を広げたら・・・「うわああああぁっ!つくし様、飛び付かないで下さいっ!!」そう言って、彼女も...
類の社長就任記念パーティー当日。類は朝早くから会場入りしていたが、つくし達は式典に参加しないのでパーティーが始まる1時間前に会場に行くことにしていた。その頃には真利愛もすっかり元気になっていたので、先日用意した可愛らしいドレスに着替えていた。勿論真音もスーツに着替えていたが、上着を着るのは窮屈だろうからと、シャツとズボン姿でソワソワしていた。普段は動きやすい格好で走り回っているので、蝶ネクタイが鬱...
確かに・・・・・・確かに、祥一郎は「妊娠している」とは言ってない。「妊娠してないよな?」と言っただけで、俺の早とちりだ。そう・・・俺が早とちり&勘違いしたまでだ💢!!でも、もう少し説明を加えてくれても良かっただろうに!しかもさっき・・・『つくしちゃんから聞くと誤解するだろうから言っておくけど』『は?』『あの子がスケート初心者だったから両手握って教えたけど、他意はないから』『・・・・・・・・・』『スケート靴履かせるときも...
類が帰宅したのは21時。すぐに使用人から真利愛のことを聞き、部屋に入る前に加代のところに行くと、そこでは真音がウトウトしていた。スーツのまま真音を抱き上げると、安心したのかすぐに肩に顔を乗せて目を閉じる真音・・・類はそのまま夕食後の様子を聞くこととなった。「じゃあつくしが子供部屋に?」「はい、付き添うと仰いまして・・・風邪かどうかもわかりませんから、取り敢えず真音様を私の部屋でお預かりしましたの」「主治...
「・・・・・・・・・総二郎・・・お前、ちょっと・・・」「つくしちゃんは大丈夫なの?!」祥一郎が何か言い掛けた時、同時に特別室のドアが開いて、お袋が飛び込んで来た。しかも付き人が誰もいない・・・家元夫人が1人で外出なんて普段なら有り得ないが、それほどこの人もつくしと「孫」が心配だったんだろうと・・・俺はベッドに横たわるつくしの手を握ったままで、お袋はその手前にいた祥一郎を突き飛ばす勢いで俺の横に走ってきた。そしてつくし...
「こら、真音!遊び終わったらおもちゃは片付けなさいって言ってるよね?」「うわ!ママがおこったぁ~~~~!」「もうっ!人に任せちゃダメなのよ?そんな事するならもうおもちゃで遊ばせないんだから!」「やだやだぁ~~~!」「はい、じゃあ片付けて。いくらあなた達のプレイルームだからって、散らかしたままはダメなのよ?」「・・・・・・おこりんぼ!」「なんですって?!」「うわああぁ、またおこる~~~~っ!!」1階奥のプ...
『つくしちゃんがスケート場で倒れたんだ!今から救急車で西門の主治医の病院に運ぶから、お前もすぐに来い!』つくしが・・・・・・倒れた?一瞬何のことか判らず、思考回路停止・・・でも祥一郎は冗談を言うヤツではないし、その声はマジだった。しかも電話の向こうから聞こえるのは『返事はありません!』とか『病院まで何分ですか?』とか・・・そんな雑音が耳に入った途端に背中がゾクッとした。『お連れさんですか?救急車に同乗願います...
ドレス選びが終わると本格的になったのは英語とフランス語の挨拶だ。これはつくしだけではなく真音と真利愛もなのだが、子ども達は類が教えることになった。つくしには専属の家庭教師がつき、パーティーまでの間、毎日英語とフランス語の講習を受けることに・・・勿論簡単な日常会話のみだが、それでも気が重かった。そんな梅雨の晴れ間の、とある日曜のこと。リビングの真ん中で家族が輪になり、類による子ども達へのレッスン開始だ...
ラーメンを食べたら、まずは手袋を買いに行った。この季節に手袋なんてって思ったけど、作業服の販売店に行くとカラー軍手が売られてるからって・・・「しかも250円ぐらいで買えるんだよ」って爽やかに言われ、最近”○千万円”って言葉に慣れてるせいで逆に驚いてしまった。と言うか、祥一郎さんって西門家の血が入ってるのだろうか・・・?それともあの家を出ると金銭感覚が通常値にもどるのか?じゃあもしかして・・・私の方がバグってる...
それから数日間、つくし達は大きな問題もなく過ごしていた。少しばかり増えたことと言えば、真利愛と真音にパーティーでの挨拶を教えることだった。いくらこの豪邸に住んでいた真利愛でも、ビジネスパーティーには出席したことはない。真音に至っては堅苦しい服を着ることですら初めてだ。だからと言って3歳児に完璧なマナーなど出来るはずもないので、可能な範囲でのこと。特別な講師を招くわけでもなく、加代が教えるのだが、そ...
翌朝・・・サッちゃんは早朝から仕事だから、私が目を覚ましたときにはもう部屋にいなかった。その部屋を見たら、私の荷物がドーンとド真ん中に・・・前に使っていた部屋だけど、今はサッちゃんと野田さんの部屋だから男性用品もあるし、さり気なく結婚式の写真も飾ってあるしで、私はすごく迷惑なことをしたんだな・・・と。なんたって昨日は総二郎と大喧嘩・・・それを新婚のサッちゃんに八つ当たりしまくった気がする。「頭痛いなぁ・・・身体...
その日はいつもより早く帰宅出来そうだったため、類は加代に電話をして、子ども達と一緒に食事をすると話した。すると加代から聞かされたのは今日の昼間の出来事・・・「えっ、真利愛とつくしが?」『はい。そんなに酷い喧嘩ではありませんが、つくし様を突き飛ばすような事をしてしまって・・・』「そう・・・・・・それでつくしは?」『必死に真利愛様を宥めておいででした・・・』「真利愛は?」『まだ謝ってはおられませんが、そのあとは真音...
夕食時、考ちゃんは茶道教室・夜間の部があるとのことでいなかったけど、その席には祥一郎さんが♥見飽きた顔じゃなくて、長男さんがいることを家元夫妻も喜んでるみたい♪特に家元夫人はお母さんの顔になってるし~。「どうなの?お仕事は上手くいってる?」「もうどのくらい手術したんだ?」「まだ勤務して数年だし、そんなに言えるほどじゃないって」「あら、じゃあ一人前とは言えないの?」「欧米だと一人前の心臓外科医になるに...
「つくし、何しているの?」「ん~?えへへ・・・・・・子ども達の服を縫うの。その型紙を作ってるんだよ~」「服・・・つくしが作るの?」「うん!それとね、ぬいぐるみ達の服とか、ランチョンマットとか・・・あ、類のはブルーだよ♪」「くすっ、今日は機嫌がいいんだね」「へっ///?あぁ・・・うん、まぁね~」真音と真利愛が寝てしまった後で類が帰宅し、つくしはその時もテーブルの上に型紙を広げていた。類はそれを覗き込んだが全く判らない...
なんとか巨大迷路を抜け出し、出口前で合流したのは16時。そこに道明寺さんはいなくて、私たちはアイスを食べながら待つことに・・・するとしばらくして数人のスタッフさんに連れられて、ブスッとした彼が戻ってきた。どうやら巨大迷路を破壊したことで、お説教&損害賠償の話があったらしいけど、道明寺さんは「全部立て直してやる!」と即答したらしい。スタッフさんもこの人が道明寺ホールディングスの人(経営側)だとわかり、...
その日の夕方・・・土曜だったので類は早めに帰宅できた。当然それを迎えに出たのは真利愛と真音で、「ぱっぱ~~!」と飛び付いたのは真利愛だ。真音も同じようにしたい様子だったが、真利愛の勢いに負けるのと、まだ素直に類に触れることが出来なかった。そんな真音に気が付いて、類はいつも真利愛の後で真音も抱き上げた。「うわ・・・真音、少し重くなった?」「ほんと?ぼく、大きくなった?」「まいあは~?まいあも大きくなったぁ...
巨大迷路の入り口に立つと、そこには2つのコースがあった。1つは体力勝負のアスレチックコース、もう一つは仕掛けを解いていく知力コース。迷路としての建物は1つだけど、中の通路は巧みに入り組んでいるため2つのコースが交わることはないそうだ。そのどっちに行くかってことで、再びジャンケンすることに。勝った方が好きな方を選ぶことにして、総二郎と道明寺さんがジャンケンすることとなった。「行くぞ、司!」「・・・そん...