第二十四話 実王寺の正体(後編) 実王寺が話し終えたあと、部屋は沈黙で包まれた。 やがて淀屋がおもむろに口を開いた。 「なるほど、全てアンタが原因やったってわけか」 「そう取られても仕方がないな」、実王寺がいう。 「実王寺さんの人生って楽しかったか」、淀屋がいう。 ...
第二十三話 実王寺の正体(前編) ひとしきり沈黙した後、実王寺は話し始めた。 「私は代々、相場師の家に生まれた。 私の家には代々、女性と籍を入れないという暗黙のルールがあった。 理由は籍を入れれば守りに入る、守りに入れば相場では勝てないからだ。 君の母親は良家のお嬢...
第二十ニ話 実王寺との再会(後編) 淀屋の家へ招かれた実王寺は家の中を見回していた。 「何や、じろじろ見とらんと、その辺に座ってや」淀屋がいう。 淀屋の家は、以前に来たときと一変していた。 家電や家具は必要、最低限のものしか置いていなかった。 居間である和室の中央に...
第二十一話 実王寺との再会(前編) 淀屋は大学を卒業した。 だが成績優秀だった淀屋は大学院へ進むことにした。 淀屋の研究テーマは、金融工学だった。 淀屋は投資に関する工学的研究を究めたいと考えていた。 金融工学は新しい学問領域であるといわれるが、その淵源は マンハッ...
第二十話 金融のプロ(後編) 地方銀行勤務の男の目に変わった求人広告が目に止まった。 新聞折込の求人チラシの片隅にその求人はあった。 給与は年棒制で、今と同じ年収を維持できる。 年齢不問、土日祝日は休み、交通費全額支給。 だが職種が問題だった。 募集している職種は...
第十九話 金融のプロ(前編) その男は長年、地方銀行で中小企業への融資審査を行なってきた。 財務諸表すら作っていない中小企業も数多くあった。 融資さえ受けられれば、何とかなると思っている。 融資を申し込む時点で貴様らは終わっている、男は思っていた。 なぜ、融資を受け...
第十八話 理沙の選択(後編) 理沙は淀屋と大学近くのカフェにいた。 美男美女の2人は、周囲の視線を集めていた。 「投資コンサルタントの会社って何をする会社。 ヤバイことをする会社なの」、理沙が聞く。 「なんもヤバイことあらへん、至極、全うな会社や。 既に設立登記は...
第十七話 理沙の選択(前編) 大学を卒業する時期が近づいていた。 芦屋のお嬢様である理沙は、退屈な日々を過ごしていた。 大学を卒業したら、内定している大手企業で働く。 そこそこの男を見つけたら結婚か、つまらない人生ね。 理沙が通う大学は、お嬢様大学だった。 下校時...
第十六話 淀屋の一族(後編) アメリカの投資銀行であるリーマン・ブラザーズの破綻をきっかけとした暴落。 後に、「リーマンショック」と呼ばれる暴落相場だった。 淀屋はリーマン・ブラザーズの破綻後に、全株を売却した。 すかさず信用取引を使い、国内の大型株中心に売りを入れた。...
第十五話 淀屋の一族(前編) 「何、これって、利息をつけた金やん」、淀屋は思わず関西弁になっていた。 「今までわたしに見合うだけの男がいなかったのよ。 わたしに見合う男が見つからなかった代償がたった100万円、ふざけるんじゃないわよ。 1年で10倍にしか増やせないなんて...
第十四話 GCファンド始動(後編) 淀屋は合コンの際に、必ず医学生ではない男を参加させるようにしていた。 モデルの卵であったり、駆け出しの俳優などイケメンの男たちである。 彼らは女性たちに対するサクラだった。 もちろん、彼らからも淀屋はきっちりと参加費は取っていた。 ...
第十三話 GCファンド始動(前編) 「医大生との合コンまだぁ」 「友達から急かされてるんだけど、なんて答えたらいい」 「合コンが先になるなら、先に2人きりで会いませんか」 淀屋の携帯に、女性たちからの催促メールが頻繁に届くようになった。 しゃあないな、そろそろ次の段...
第十ニ話 マネープラン(後編) 理沙は阪神の高級住宅地、芦屋に家があるお嬢様だった。 父は会社を経営しており、母はアパレルブランドのデザイナーだった。 理沙は、上流家庭育ちの娘が通う女子大に入学した。 正直いって、大学は退屈な場所だった。 理沙にとって、大学だけでは...
第十一話 マネープラン(前編) 大学の入学手続きを終えた淀屋は、どうすれば効率よく金を増やせるか考えていた。 元手は育ての父親が残してくれた1000万円超の現金。 大学4年間の学費は、育ての母親が残してくれていた。 だが、これからの生活費を稼がなくてはならない上に、金を...
第十話 教わること(後編) 1時間後、淀屋と実王寺は、淀屋が住んでいるアパートの前にいた。 「ここに来んと、これからの話ができへんって。 まさか、2人で暮らすとか言い出すんやないやろな」、淀屋がいう。 「そのような趣味はない、早く案内しろ」、実王寺がいう。 古い木造...
第九話 教わること(前編) 淀屋は、2枚の写真を見つめたまま黙っていた。 やがて、おもむろに実王寺がいう。 「真実だということがわかってもらえたようだな。 その写真は君の物だ、他に質問はあるかな」 「今、一族はどうなってんの」、淀屋が聞く。 「いい質問だ、12代目...
第八話 出生の秘密(後編) 「何で、奥さんじゃない人が母親なんや」、淀屋が聞く。 「君の先祖、淀屋初代本家は幕府に目をつけられ、全財産を没収された豪商だ。 その後、淀屋二代目本家が朝廷側につき、幕府打倒の後方支援をした。 やがて、大政奉還されると、淀屋二代目本家は全財産...
第七話 出生の秘密(前編) 「どういうこと、ホンマに借金がなくなるんか」、スタジャンの男がいう。 「今月中にある男の子が産まれる、貴様らはその子を育てろ」、男がいう。 「その子には親がおるんやろ、産みの親が育てるのが普通やんか」 スタジャンの男がいう。 「確かに貴様...
【小説】浪花相場師伝 第六話 スタジャンの男と茶髪の女(後編)
第六話 スタジャンの男と茶髪の女(後編) スタジャンの男が、高金利の街金から借りた借金の額は膨らみ続けた。 スタジャンの男と茶髪の女は、電気を止められたアパートの1室で息を潜めていた。 「おんどれ、借りたもんは返さんか」、「おるのはわかってんねや、出て来んかい」 貸金業...
【小説】浪花相場師伝 第五話 スタジャンの男と茶髪の女(前編)
第五話 スタジャンの男と茶髪の女(前編) よく切れるナイフを思わせる男は部屋を出て行こうとした。 「ちょっと待てや、オッサン」 よく切れるナイフを思わせる男は立ち止まった。 「何が1時間後に迎えに来るや、ふざけた真似すんなや」、息子がいう。 「どこがふざけている真似...
第四話 忘れられない夜(後編) ジーンズの息子は、両親との楽しいひとときを過ごした。 やがて家族の思い出話になった。 なかなか子供に恵まれなかった両親に初めて子供ができたときの話。 少し熱があるだけで救急車を呼び、医師から叱られた話。 参観日に父親がスーツを着て行っ...
第三話 忘れられない夜(前編) 両親に初めて連れてこられた淀屋橋。 メインイベントは、土佐堀川のほとりにある「淀屋の碑」見学だった。 「ええか、しっかりと目に焼き付けるんやで」、スタジャンの父親がいう。 「あんたのご先祖様の偉業を称えた石碑やさかいな」、茶髪の母親がいう...
第ニ話 運命の子(後編) 大阪のある産婦人医院で男の子が産まれてから、20年後。 ある大学の構内で、2人の男子学生が会話を交わしていた。 「今月は配当があったさかい、こんだけ増えたで」 ハンサムな学生がいい、数十枚の一万円札を裸のままメガネの男子学生に渡した。 「ワ...
第一話 運命の子(前編) 年末も押し迫ったある夜、大阪のある産婦人医院で男の子が産まれた。 元気に泣く男の子を、産婦人科医は暖かい目で見た。 「元気な男の子ですわ」、産婦人科医は母親に男の子を見せた。 産婦人科医は我が子を見る母親の表情に驚きを隠せなかった。 我が子...
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