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  • 2024年読書

    松本清張『黒皮の手帖』上 新潮文庫

  • 中勘助『銀の匙』~私のなかの「銀の匙」その1

    この中勘助の『銀の匙』を読むと必ずしも同じ経験をしているわけではないのに、幼い時の記憶の襞にすっと入ってきて、そこをくすぐ…

  • 2023年読書

    富岡多恵子『中 勘助の恋』創元社

  • 芥川龍之介『藪の中』

    読後感として様々に考察意欲がそそられる作品だが、黒沢明監督作品「羅生門」から受けた鮮烈な印象が先立っている。…

  • 車谷長吉『忌中』

    「詩や小説を書くことは救済の装置であると同時に、一つの悪である。ことにも私(わたくし)小説を鬻(ひさ)ぐことは、いわば女…

  • 太宰治『ヴィヨンの妻』

    坂口安吾に『逃げたい心』というのがある。太宰の『ヴィヨンの妻』を読見終わって、あれこれ考えているうちに、ああ、…

  • 坂口安吾『白痴』

    ひと時代に区画されたその時代の人間の慟哭があり呪詛があり、そして一条の光がある。もしそこに永続的な真理があると…

  • ニコライ・ゴーゴリ『外套』

    この小説は様々な側面から感情移入してしまう作品だ。一度読んでから再読してみて(肝心なところで思い違いを…

  • 芥川龍之介『蜜柑』

    いずれの読者もそうであろうと思うが、作品を読み終えて、後はどう思おうとどう解釈しようと、あなた次第とポーンと放り投げられ…

  • アントニオ・タブッキ『遠い水平線』

    読み終わってまたタブッキの罠にかかったようでぼーっとして暫し閉じた表紙を眺めていた。彼の代表作『インド夜想曲』…

  • 「古本かジャズ」『冷血』トルーマン・カポーティ

    ノンフィクション・ノヴェルとはいかなる概念で枠づけされているのかは知らないが、謂うまでもなくこの作品は完全な…

  • 「古本かジャズ」カポーティ『冷血』と『アラバマ物語』~「家族の物語」

    『アラバマ物語』。1962年製作のグレゴリー・ペックが主演した名作だが、カポーティの『冷血』と何の関係があるのか。これが大ありな…

  • 「古本かジャズ」トルーマン・カポーティ作『冷血』を読む・・・まえに映画『カポーティ』を観てみた<br />

    前回トルーマン・カポーティの『遠い声 遠い部屋』を読むはずと書いたが、思いついて保存してあった映画『カポーティ CAPOTE』を見直してみた。 原作同様映画についても殆ど憶えていなくて、初めて見たのと変わりがないという具合だったけれど、ここでは原作『冷血』を書き上げるまでのプロセスが描かれているのだがここでは扱われている事件をというよりカポーティ像をメインに描いている印象があるし制作側の意図もそこにあったことは確かだ。 結論から先に言えば製作者側の意図には、原作として著された『冷血』とは、一家四人惨殺事件の犯人を指しての「冷血」なのか、取材をもとに作品に仕上げたカポーティ自身が「冷血」なのかと..

  • 「古本かジャズ」トルーマン・カポーティ作『冷血』のまえに映画『カポーティ』を観てみた

    前回トルーマン・カポーティの『遠い声 遠い部屋』を読むはずと書いたが、思いついて保存してあった映画『カポーティ CAPOTE』を見直してみた。 原作同様映画についても殆ど憶えていなくて、初めて見たのと変わりがないという具合だったけれど、原作『冷血』を書き上げるまでのプロセスのなかのここで扱われている事件をというよりカポーティ像をメインに描いている印象があるし制作側の意図もそこにあったことは確かだ。 結論から先に言えば製作者側の意図には、原作として著された『冷血』とは、一家四人惨殺事件の犯人を指しての「冷血」なのか、取材をもとに作品に仕上げたカポーティ自身が「冷血」なのかということであろう。 今..

  • 「古本かジャズ」

    最近はジャズを聴くより本の方にシフトした感があって、ジャズの方はもう20年以上も書いてきたからもういいやという気分でもいる。でも、摘まみ程度に聴いてるから摘まみ程度に書いてもいいかもということで続けるつもりではいるけれど。植草甚一に『古本とジャズ』というのがあるけれど、まさにあの人の人生そのもののような本で、私の書棚にある本は大抵amazonで注文した1円かせいぜい…

  • 形式と内容について

    芥川龍之介の作品に『藪の中』がある。

  • 芸術における多義的鑑賞の成立

    関口安義の芥川龍之介の『羅生門』及び『鼻』の解説及び評価について掲載したが、関口氏はこの著書のなかで、「芸術の鑑賞は芸術家自身と鑑賞家との協力である。言わば鑑賞家は一つの作品を課題に彼自身の創作を試みるに過ぎない。この故にいかなる時代にも名声を失わない作品は必ず種々の鑑賞を可能にする特色を備えている」と、芸術に多義的鑑賞の成立するのを必然とする考えを示しており「読者論 reader response theory」について触れている。 このことで思い出すのが、パブロ・ピカソの作品「ゲルニカ」に対する彼の鑑賞家に対する姿勢だ。 ピカソ自身はこう語る 「絵というものは、事前に考え抜..

  • 芥川龍之介『鼻』評 関口安義

    「主人公の禅智内供は、五十歳を越え、いまや宮中の内道場に奉仕する高徳の僧である。彼は世俗を超越した仏 に仕える身でありながら、始終生まれつきの長鼻を苦にしている。それが、弟子の僧の勧めによる治療によって、 鼻は短くなり、のびのびした気分になる。ところが顔変わりした内供を見て、人々がいっそうおかしそうな顔を することから、彼はすっかりふさぎこんでしまう。なまじいに鼻の短くなったのが、かえって恨め…

  • 『羅生門』の世界 関口安義解説

    小説『羅生門』は、生活のために死人の髪の毛を抜いて鬘にしようとする猿のような老婆と、失職して行くところもなく途方にくれる身分の低い若者とが、京都の町はずれの羅生門での楼上で出会うことから生じるドラマを描いたものである。都に住む世間智に長けた老いたる女と、田舎から「旅の者」としてやってきた若き男とが対決する。若者は老婆と格闘し、肉体的にはむろんのこと精神的にも勝利して飛翔する。若者は老婆の持…

  • 芥川龍之介作品の考察の為に

    7月下旬頃から思いついて芥川が読みたくなり、全巻一巻から晩年の四巻までの小説と『侏儒の言葉』を含む五巻を読み進めていた。 ある程度読めたところで芥川作品を俯瞰する意味とその人生及び背景となる時代を踏まえてみたいと思って関口安義の『芥川龍之介とその時代』という大著に手を付けているところだ。当初「人生は一箱のマッチに似てゐる。重大に扱ふのは莫迦莫迦しい。重大に扱はなければ危険である。」「正義は武器に似たものである。武器は金を出しさへすれば、敵にも味方にも買はれるであらう。」「強者とは敵を恐れぬ代りに友人を恐れるものである。(中略)弱者とは友人を恐れぬ代りに、敵を恐れるものである。」「年少時代の憂鬱..

  • 「多様性」への違和感

    最近、多様性とか自分らしさという言葉がやたらに使われ過ぎていて、ややその空々しさに嫌気を感じている。多様性とは画一された状態から離れ相対化されることだが、その画一主義に逆らえているかというとそうでもないという気がしている。それは多様性、自分らしさという言い方が、実態との乖離を感じさせるからだろう。日常手から離せないスマホやAKB,乃木坂といったアイドルへの盲目的一体性を…

  • 2022年読書

    (思想)司馬遼太郎『この国のかたち』(1)文春文庫

  • 2021年読書

    (文学)坂口安吾『坂口安吾評論集 7 回想自伝篇』冬樹社坂口安吾『桜の森の満開の下』講談社 (思想)川端康雄『ジョージ・オーウェル 「人間らしさ」への賛歌』岩波新書

  • パブロ・カザルス『鳥の歌』

    パブロ・カザルス『鳥の歌』,限りある生に幾筋の知の遍歴を刻めるか。

  • パオロ・ジョルダーノの『コロナの時代の僕ら』

    理系ならではの発想でコロナを読み解き注意を喚起するとともに、たとえこの疫病が去…

  • ベルハルト・シュリンク『朗読者』

    この作品は映画化され『愛を読むひと』となり、あの「タイタニック…

  • 芥川龍之介『手巾』

    芥川龍之介『手巾』,限りある生に幾筋の知の遍歴を刻めるか。

  • J.G.バラード 時の声』

    10年以上前から寺田虎彦による寺田物理から始まり、ファラディやアインシュ…

  • ヤン・ヴェルナー・ミュラー『ポピュリズムとは何か』抜粋

    ポピュリズムとは、ある特定の政治の道徳主義的な想像であり、…

  • ミラン・クンデラ『不滅』

    我々は死によって二度とこの宇宙には存在しないことになる、どう足掻こうがそれは避けて…

  • 坂口安吾『堕落論』

    『堕落論』には13の小文からなっていて、題名からは内容がイメージできないものが…

  • 内田樹編『日本の反知性主義』

    結局のところ「知性」とは身体感覚なのだ、というのが読んだなかで感じたことだった…

  • 遠くの遠くの「夏」

    北海道もやっと夏らしくなって、家のなかにいれば上に着るものなどいらないという感じ…

  • 村上春樹『猫を棄てる』

    村上春樹『猫を棄てる』,限りある生に幾筋の知の遍歴を刻めるか。

  • ひとり遊びのイリンクス(4)

    そんな町での一年間、記憶のなかではとても一年という時間の中に収まりきらない、どうも収支の辻褄があわない事々が詰まっている気がした。それは思春期という変わり目にさしかかった結節点だったからなのだろうか。閉塞された町だったにもかかわらず、数え上げれば限りなく「初めて」のことに満たされていた。少年期の自分には思いもつかなかった興味や衝動に突き動かされている毎日だった。

  • アルベール・カミュ『ペスト』

    アルベール・カミュ『ペスト』を何十年かの歳月を隔…

  • アルベール・カミュ『ペスト』メモ

    アルベール・カミュ『ペスト』メモ,限りある生に幾筋の知の遍歴を刻めるか。

  • 映画「新聞記者」

    この非常時というか有事に、チャラチャラとどうでもいいような本の何やら碌でもないことを書いている場合じゃない、…

  • 月刊「世界」バックンンバー 注目記事

    (オキナワ・防衛・アメリカの世界戦略) 第240号 昭和40年11月 特集 アジア危機の焦点 *「極東の平和」と日韓交渉の妥結 高野雄一 ・日韓基本条約と国連の原則 ・日米安保と極東の平和条項 ・在日米軍の行動と日本の基地協力 ・安保における集団保障と自衛の奇妙な癒着 ・日韓をつつむ朝鮮国連軍(50年代の国連)・60年代の国連の平和機能 ・日韓条約批准にひそむ基本的問題点 (メディア・情報操作) 2020.5 …

  • 白井聡『永続敗戦論』

    永続敗戦論――戦後日本…

  • 2020今年の読書

    (メディア・情報操作) 望月衣塑子・マーティン・ファクラー『権力と新聞の大問題』集英社新書 (オキナワ・防衛・アメリカの世界戦略) 望月衣塑子『武器輸出と日本企業』角川新書

  • 金子光春『絶望の精神史』

    僕は腕時計を手のひら側に時計の文字盤がみえるようにはめている。それはいつの頃からだか覚えていないが、祖父がそうしていたことは覚えている。何故そんな女性がするようなはめ方をしていたのかといえば、医師であった彼が患者の脈を図るときに便利だったからだときかされたことがあった。つまり脈を図りつつ時計で時間をみる時にそのままの手の向きですることができるからだ。 その祖父の姿で思い出すのが、出かける時にいつ…

  • 今年観た映画(2019)

    ・万引き家族・怒り・悪人・海街diary・リマスター・サム・クック・レディ・ガガ・アメリカン・ミーム・ザ・ビートルズの世界革命・ザ・ビートルズeight days a week・魔女はなかなかやめられない・スクール・オブ・ロック・ジャニス リトルガール オブ ブルー・ザ・ビートルズ 50年後のサージェント・ペッパーズ・セカンド・アクト・ニライカナイからの手紙・パドルマン

  • 2019年今年の読書

    ヴァレリー『テスト氏』福武文庫小林信彦『名人 志ん生そして志ん朝』朝日文庫三島由紀夫『憂国・花ざかりの森』新潮文庫鷲田小弥太『日本を創った思想家たち』PHP新書三島由紀夫『仮面の告白』新潮社富田均『寄席末広亭』平凡社澁澤龍彦『三島由紀夫あるいは空虚のヴィジョン』河出文庫アンドレ・ルロア=グーラン『身ぶりと言葉』ちくま学芸文庫五木寛之『蒼ざめた馬を見よ』文芸春秋九鬼周蔵『「いき」の構造』岩波文庫ニコラス・ウェイド『5万年前』イースト・プレス中沢新一...

  • 今年観た映画(2018)

    ・三度目の殺人・万引き家族・モリのいる場所・麒麟の翼・先生・・好きになってもいいですか・わたしを離さないで・ワン・デイ・ホリディ・ナミヤ雑貨店の奇跡・寒椿・ディッセンバー・ボーイズ・四月は君の嘘・百円の恋・ボヘミアン・ラプソディ・キラー・エリート・奇跡のリンゴ・阿修羅のごとく・海辺のリア・坂道のアポロン

  • 水上勉『五番町夕霧楼』

    夕霧楼の主人酒前伊作が急逝した樽泊に夕霧楼を引き継いだかつ枝とお供の久子が弔って間もなく、近隣の村から樵をしている父に連れ添われた夕子がいた。寝たきりの母と兄弟を抱えた生活の苦しさから、この娘を預かって欲しいと頼まれたのがことの発端であった。かつ枝がひとめみて店の看板に出来ると思い、即座に夕子を連れて五番町に引き連れていった。背が高く、色白で端正な顔立ちと男好きのする躰を持った夕子であったが、夕霧に入って間もなく帯問屋の主人竹末甚造にかつ枝は水揚げを頼む。話を聞いてやってきた甚...

  • 泉鏡花『日本橋』

    ある書評には鏡花のものでは異界小説は良く読まれているが、『婦系図』や『日本橋』のような花柳界小説などはさほど読まれていない傾向にあるように書かれているが、僕は寧ろ後者の方を好んで読んできた傾向にあった。というのも落語の世界でいえば「郭噺」などの花魁や遊女を扱ったものを好んで聞いていたし、いわゆる漂流民であった民だったものが、徳川幕府において「定住」させるとか風紀を守るという意図で行われた幕府による管理体制のなかで稀な存在であった遊女に気軽に触れる機会を提供されることになった経緯のなかで...

  • 野上弥生子『迷路』

    省三の郷里九州のとある町は、当時どこにでもあったかに思える狭い土地のなかで固陋な利害関係からの「あっちのもの」同志の角突き合わせ、関わりを拒否し合う関係による確執が人間関係をがんじがらめにしている。一方が戦争景気で栄えれば、他方が妬み、憎しみ、蔑むという関係があり、間違っても親しい接触をしてはならない風土を持っていた。それを破るのが省三であり、片側の青年慎吾であった。数少ない接触と慎吾が戦病死する前に省三に託した手記とその扱われ方が極めてこれらの関係を鮮明にする。

  • 檀一雄『火宅の人』

    晩年までの長い期間を経て書き続けられなければならないほどの価値があったのかという疑念が起こるのを暫く止めることが出来なかったのは正直なところで、これがこの作家の本領では必ずしもないのではと思うに充分な他の作品に出会わなかったら思い返すこともなかったかもしれない。私小説的なロマン主義の作風という括りであろうこの作品であって、ほぼ檀の生涯を写し取ったものであるとみれば、こうでもしなければ「締め括り」が悪かったのだろうという感慨を持つ。酒、女、料理、旅、家族という彼のもつテリトリーのな...

  • 2018年読書

    松岡正剛『外は良寛。』子規全集 俳諧研究 17巻野上弥生子『一隅の記』新潮社夏目伸六『猫の墓』文芸春秋新社内田百間『百鬼園 大貧帳』六興出版内田百間『第二阿房列車』旺文社文庫向田邦子『眠る盃』講談社文庫須之内徹『絵の中の散歩』新潮文庫寺田寅彦『柿の種』岩波文庫寺田寅彦『寅彦随筆集』第一巻 岩波文庫小林秀雄『本居宣長』上 新潮文庫『寺田寅彦全集第一巻』随筆一 岩波書店「根岸庵を訪ふ記」「東上記」「半日ある記」「星」「祭」「車」「窮理日記」「鴫」「高...

  • アラン・クレイソン他・『オノ・ヨーコという生き方』

    まず目次を追ってみると次のようになっている。1 ビフォア・ジョン ジョンと出会う前の人生 1末裔 2少女 3花嫁 4寡婦 5ヴィレッジ住民 6訪問者2 ジョンとヨーコ 1未完成の絵とオブジェ 2ライフ・ウィズ・ザ・ライオンズ3平和を我等に4プラスティック・オノ・バンド5無限の宇宙6空間の感触7ハート・ブレイク3 アフター・ジョン 1未亡人 2実業家 3魂を宿す者4 芸術と音楽 1イエス オノ・ヨーコ 2...

  • 「昭和天皇独白録」

    「昭和天皇独白録」第二巻

  • 『昭和天皇独白録・寺崎英成御用掛日記』

    本著は、寺崎英成が記した「昭和天皇独白録」、その寺崎が書き残した「御用掛日記」、そして寺崎の一人娘マリコ・テラサキ・ミラー、「遺産の重み」の三部構成で編まれている。

  • 宮本輝『慈雨の音』

    宮本輝「流転の海」シリーズ第六部として書かれた『慈雨の音』は、一家が大阪に住み、熊吾は明治の男の破天荒な生き方を保ちながら老いのかたちも見せるようになった。 中学生になった信仁は思春期を迎えるが、相変わらず身体が弱いため、父の命令で幾種類ものビタミン類の静脈注射をして丈夫な身体になる。 印象的な場面として、一つは浦辺ヨネが亡くなった時、ヨネの遺言によって遺骨を余部鉄橋から撒くことになる。その時信仁は父から骨を砕くことを命じられる。骨を灰にしなければ、余部鉄橋から撒けないからだ。城崎...

  • 宮本輝『血脈の火』

    五十歳になって初めて生まれた息子信仁の健康と妻房江のためそれまでの事業を捨てて生まれ故郷南宇和に帰った松坂熊吾だったが、長閑な田舎生活のなかにも小さな波乱が親子三人の平和な生活に待ち受けていた。なかでも「わうどうの伊佐男」こと増田伊佐男というならず者が熊吾にまだ若年のときに負わされた怪我がもとで左足を生涯引きずって歩かねばならない身となったことを恨み続け、熊吾が郷里に戻ってからも再び現れ不気味につき纏うようになった。仕込み杖を持ち歩きやくざ者を従えて熊吾のやろうとすることの邪魔をする。家族...

  • F・D・ピート『シンクロニシティ』

    「シンクロニシティ」

  • ジークムンド・フロイト『モーセと一神教』

    この著を読む動機となったのは所謂「中東問題」の根底にあるものについて知りたかったからに他ならない。 心理学者フロイトが最晩年に論考したもので、彼としては短期間に研究した結果を表した者である。 しかしこの論についてはいまだ認められてはいない。というのもモーセの謎とフロイトの謎が二千年の時空を越えて荒縄のように直結してしまっている。しかも直結していながらそこに意外な捩れと断絶と計画がはたらいていたのだが、そこには世に暴かれたくないという隠された「危険な謎」を秘めていたからであり、これを...

  • 『旧約聖書 ヨブ記』

    一回目を読み終わり二巡目に入っているところだが、この書は理解するというよりあらゆる人間の持っている要素の機微を「味わう」もののように感じた。感じたのであって思索したのではない。思索は解説書『旧約聖書一日一章』にゆだねた。

  • 石川公彌子『<弱さ>と<抵抗>の近代国学』

    相変わらず石川公彌子『<弱さ>と<抵抗>の近代国学』と小林秀雄の『本居宣長』を読み進めている。どちらが主かと言えば石川の方を基底としながら、関連する著述を漁っているという具合なのだが、今石川著では保田輿重郎の章を読んでいるところである。一方小林の方は宣長の「もののあはれ」論を記述した部分を読んでいる。この二つは符合し逢う。所謂『源氏物語』や『土佐日記』に嚆矢する「もののあはれ」は既に人口に膾炙した陳腐な素材を敢えて宣長が取り上げていることに対する「驚き」である。契沖が「歌とはなにか」その意...

  • 山本七平『小林秀雄の流儀』

    山本七平の『小林秀雄の流儀』のなかのタイトルになっている文を読み終えた。後もう少しで読みきれる。 この一文にトルストイの「家出問題」のことが書かれてある。 僕の生活はモーツアルトやゴッホと同じで、今の境遇はトルストイやソクラテスと同じだ。 そんなこと言ってももわかる筈もない者と暮らしているのだから共感など得られる生活など得られる筈もない。 そんな偉人の実生活と比べるのはおこがましいことではあるが、世間に知られている偉人性と実生活の乖離をこの所感じている。 作家の書くもの...

  • ジャン・コクトー『恐るべき子供たち』

    この小説に登場するダルジェロに自分の兄をみつけ、ジェラールやアガートに妻をみつけた。 この小説の中に自分にとって「宿命的」な存在を見いだすかも知れない。そして人は幼いときに既に宿命的な存在を見いだすものなのかも知れないとも思った。 僕には二歳年上の兄がいる。彼は危険で冒険的な子供であった。その危うさはいつも重大で英雄的で神秘的な現実=子供の現実を持った種族だった。それは多かれ少なかれ子供の部類には持ち合わせた性質ではあるが、殊更彼には強く感じられた。二歳年下の僕には無意...

  • 小林秀雄『モーツアルト』

    小林秀雄は真実正直で嘘のない裸の批評家だといっていいだろう。これに対比する物書きのことを云々すことは避けよう。語っても馬鹿馬鹿しいだけだ。 『モオツァルト』のなかに「裸の」という言葉が頻繁に出てくる。モオツァルトを評するにこの言葉を使った小林自身が裸であったことを実感する。裸でなければ「骨」かもしれない。 人間の真実は骨であると言った人がある。死者を荼毘して残った骨こそが人間の正体だということだ。 これを何ら装飾なしに評せる批評家は希であろう。 モオツァルトという一己の人間...

  • ドストエフスキー『罪と罰』下巻

    少なくともドストエフスキーの『罪と罰』を読むにあたって聖書は欠かせないと感じていた。 それはともかく昨日は「コリント人への手紙」15章をメインに読み、且つ解説書で調べ尚してみた。 「キリストの復活」「死者の復活」「復活の体」あたりを読む。メインは「死者の復活」である。

  • 幸田露伴『幻談』

    露伴の博覧強記は何事につけ我々の前に披露されるのであるが、こと釣りに関してさえこれほどという最早茫然自失となる始末で、綴られるままに従順に読み進める他ないという案配である。

  • ドストエフスキー『罪と罰』上

    漸くドストエフスキー『罪と罰』上巻を読み了えた。いつも思うのだが、こうやって読み終えた本を書棚に戻す時、満足感ではなく、抜け殻になった気分で骨壺を棚に納めるような気分になる。そして毎年読んだ本を一冊ずつ記録しているのだが、予め書いてある書名に単に(読)と記すだけの呆気なさに報われない気持ちを抱いてしまう。その記述を呆然と暫し眺めているのがせめてもの弔いのように思っているのだ。熱を籠めて読み進めた大作でもあっけなく他のどんなたわいのない本とも同じく(読)と記されることに空虚感に陥ってしまう、...

  • 鴨長明『方丈記』

    日本三大随筆のひとつとされる鴨長明の『方丈記』に今日は遊んだ。というのもバブル崩壊後の自民党政権の凋落ぶり、そして小泉政権によって復権したかにみえた後、第一次安倍内閣から政権交代劇にいたるまでを振り返る番組をみながら、平成ならぬ平安期から武士の世界に移り変わる大変動の歴史を重ねてみたからでもある。 長明の生きた時代を詳らかに且つ歴史認識を深めるのなら寧ろ慈円の『愚管抄』が適当であろうが、保元、平治の乱の様相のさわり程度を感じ取る程度ならこの著も一読するのもよかろうと思う。 慈...

  • 長谷川時雨『近代美人伝 (上)』

    この一文を書くのにやや躊躇があって、他の読みかけの本を読もうか、それとも仕入れたばかりのエアブラシで遊ぼうかとなるたけ遠巻きにして考えていた。どうも気が重い。今まで書いた白蓮や九条武子にせよ、これほど燃えさかる情熱で身を焦がし我が儘極まりない「女優」の破天荒ぶりには書き手の僕にして(いや実際は時雨が書いたのだが)「厭な奴」はなかったからだ。我が儘で気位の高い女優は今だってざらにいるのだろう。その趨りとでもいうのか、書き渋る手が動かない。 ひとつだけ彼女の熱情の現れは島村抱月との...

  • 菊池寛『恩讐のかなたへ』

    菊池寛 『恩讐の彼方に』

  • 長谷川時雨『近代美人伝』下巻

    何の切っ掛けか柳原白蓮こと�Y子に異常に興味を抱いてしまった。 石炭王伊藤伝右衛門に二度目になる再婚をし、何不自由ない生活だが、愛のない不毛な生活から逃れ宮崎という年下の活動家のもとに嫁いだ数奇な人生。 これは長谷川時雨が書いた『近代美人伝』上下巻の下巻のなかに綴られていたのを今になって読み返した。これがkindle版でそれぞれ個人別になっているのをみつけ、本編からの抜粋であることがわかってなんだということになったのだが、明治大正の女傑長谷川時雨にかかっては、見事な要訣を得た一文と...

  • 与謝野晶子『私の生い立ち』

    ほぼ定期的に松岡正剛「千夜千冊」を遊興をするのだが、先日は中勘助の『銀の匙』から始まった。幼心がテーマということになろうか。 『銀の匙』のところはもう何度も読んでいたので、そこから繋がるものを探していた。 「けなげ」という言葉にひっかかって北野耕也『近代日本少年少女感情史考』にぶつかった。 書き出しに与謝野晶子の『私の生い立ち』のなかから「竹中はん」というのが出てくる場面がある、というので晶子のその文を探したら、真っ先に出てくるのがその一文であった。鳳(ほう)というのが...

  • 泉鏡花『吉原新話』

    本を読むとりわけ文学などを読んだ後、「面白かった」と感想を述べることが日常だが、これは女性がよく使う「かわいい」と同様、何でもかんでも一緒くたにして発する感嘆の言葉である。 これをしかめっ面しく分析する暇もないが、色んな層にわかれているのだろう。

  • 2017年読書

    芥川龍之介『手巾』 芥川龍之介全集第一巻(読)泉鏡花『吉原新話』 kindle(読)尾崎紅葉『金色夜叉』kindle鴨長明『方丈記』kindle(読)泉鏡花『外科室』kindle(読)太宰治『走れメロス』kindle泉鏡花『廓そだち』kindle(読)泉鏡花『菊あわせ』kindle与謝野晶子『私の生い立ち』kindle(読)与謝野晶子『源氏物語 04 夕顔』kindle邦枝完二『おせん』kindle宮本輝『天の夜曲』流転の海第四部 新潮文庫...

  • 芥川龍之介『手巾』

    このところ映画を観ていなかった。久々になるが、なかなか一本映画を観るというのがなかなかだったからだ。今回観たのはロバート・デ・ニーロ(Robert De Niro)主演の「マイ・インターン」(原題: The Intern)で2015年作。これを3日かけて観た。見始めては観、思いついて続きを、やっとのことでラストに辿り着くという具合。それで3日になってしまった。デ・ニーロの相手役はジュールズ・オースティン - アン・ハサウェイ(Anne Jacqueline Hathaway)。...

  • 『カラヴァッジョへの旅 天才画家の光と闇』宮下規久朗

    最近読了本が少なく、必要に応じて拾い読みしていることばかりいたので、レビユーとして書けるものがなっかった。しかし、思うにそもそもレビューには必要条件というのが有るはずだ。簡略であっていいが、一応書物の眼目を含んでいること。更に関連する著書に派生する事の出来るリンク性が必要だと思っている。だから、「一文は多文に殺到している」という格言を得たとき胸のすく思いをした気がするが、一つの書物を読んだ時に、他の世界にある膨大な書物にハイパーリンクすることが、本好きの用件だと思っている。ハンス・...

  • 立川談志『童謡咄』

    丁度今、談志の『童謡咄』の途中で、「露地」のことが出てきた。露地に鉢植えを置く風情について書いている。花のことは殆ど知らないが、「都忘れ」なんて出てくると、何それ?となる。語呂がいい。「夕顔」くらいは知っている。「朝顔」「昼顔」の「夕顔」でしょう。陽が沈んじゃったら花は開かないので、夕顔といえどまさか陽のどっぷり沈んだ夜中には咲かないでしょう。多分。知らないけれど。紫の花びらしか知らないがそれ以外にあるのだろうか。朝顔が紅色で、昼顔が黄色?そして夕顔が紫・・・なんて自然も粋なことをする。同...

  • ヒトラー強盗美術館 (1968年) (Pen nonfiction) ケン・ウォンストール

    デヴィッド・ロクサン、ケン・ウォンストール共著の『ヒトラー強盗美術館』を読み出す。五木寛之著『戒厳令の夜』上・下に記されたヒトラーの「リンツ美術館計画」のことである。結構いい資料だ。出だしのとこでこの計画に籠められたヒトラーの動機、青年時代の怨念を晴らす為の計画であったことを示されている。読みながら思いついてチャップリンの「独裁者」(The Great Dictator)と関連する動画も観てみた。ヒトラーとチャップリンを対照的にみたもので、その相似した部分と差異を示している。著書の...

  • 五木寛之『戒厳令の夜』上・下

    この著の扉から最初の頁に一行「四人のパブロ」が同日に亡くなったというショッキングな出だしがあって、その四人とはパブロ・ピカソ、カザルス、ネルーダ、そしてこれは実在した人物を架空化したと思われるパブロ・ロペス。こんな偶然があるのかという驚きは読むうちにさほどのことではなくなるのだが、SF的だがその壮大な構想力に舌を巻く。

  • 宮本輝『地の星』

    五十歳になって初めて生まれた息子信仁の健康と妻房江のためそれまでの事業を捨てて生まれ故郷南宇和に帰った松坂熊吾だったが、長閑な田舎生活のなかにも小さな波乱が親子三人の平和な生活に待ち受けていた。なかでも「わうどうの伊佐男」こと増田伊佐男というならず者が熊吾にまだ若年のときに負わされた怪我がもとで左足を生涯引きずって歩かねばならない身となったことを恨み続け、熊吾が郷里に戻ってからも再び現れ不気味につき纏うようになった。仕込み杖を持ち歩きやくざ者を従えて熊吾のやろうとすることの邪魔をする。家族...

  • 『泥の河』宮本輝

    宮本輝原作の「泥の河」を観る。1981年 東映 監督:小栗康平 出演:田村高廣、藤田弓子、加賀まりこ等だが、田村、藤田の息子役信雄と船上生活をしているきっちゃんこと喜一という二人の少年の位置づけが大きい。昭和31年の設定であるところが、自分の少年時代を重ねあわせやすい。安治川の川岸で貧しい食堂を営む信雄の一家と食堂の窓からすぐ見える河の船上に暮らす母娘と息子。姉銀子と喜一は生活を支える為健気に細々と働く。船の存在に興味を抱いた信雄が近づくと愛想のいい喜一と銀子に招かれ船内におそるおそる入っ...

  • 『共喰い』田中慎弥

    何かとても気怠い日だった。寝ても寝てもその気怠さは遠退かず、何も手のつかないイライラばかりが体の奥で蠢いていた。それでも何度かにわけて一本の映画を観た。ナレーションが流れていて、それが久しぶりに心の琴線に触れてくる。原作は何か気になった。それは映画の題名と同じ『共喰い 』だった。作は田中慎弥という作家だった。1972年生まれの43歳。この作品は芥川賞を受賞した。近年の芥川や直木の賞をとった作品には殆ど興味がなかった。彼は川端、谷崎、三島を評価しているらしいが、僕がすぐに思いついたのは『...

  • 『盗聴二・二六事件』 中田整一 文藝春秋

    中田整一の『盗聴 二・二六事件』を読み続けている。とはいえ断続的にしか進捗していない。というのもYouTubeで2・26に関わるNHKが特集した貴重な映像がみつかったからである。中田氏がNHKにおいてプロデュースした歴史ドキュメンタリーが、この貴重な映像の3本のうち2本を手掛けていた。一本は、NHK特集「戒厳指令…交信ヲ傍受セヨ 〜二・二六事件秘録〜」 1979年(昭和54年)2月26日放送であり、司会は三國一朗氏である。もう一本は、「ニ・ニ六事件消された真実〜陸軍軍法会議秘録」 ...

  • 『妻たちの二・二六事件』 澤地久枝

    澤地久枝『妻たちの二・二六事件』が届き「一九七一年夏」と題する序章的表題の章から始めるのだが、沈鬱な趣をたたえた書き出しはこの著が恰も小説であるかのような予兆を臭わせていたのだが、次に続く「雪の別れ」では叛乱罪で処刑された田中勝の未亡人と勝の母を訪ねた記録となって澤地のこの著の志すところの一端を理解した。

  • 『三島由紀夫のニ・ニ六事件』 松本健一

    『三島由紀夫の二・二六事件』を引き続き読み進める。更に2・26の首謀者であり蹶起軍の象徴的存在である磯部浅一について、松岡正剛は何か書き残していないか調べたら当然のごとく、北一輝の『日本改造法案大綱』にいきついて、再読だか再々読することになるのだが、今回また読み直してよかったと思った。

  • 『パブロ・カザルス 鳥の歌』ジュリアン・ロイド・ウェッバー編

    『パブロ・カザルス 鳥の歌』は37のタイトルによる小編ごとに短いエピソードやカザルス自身の時にユーモアのある、時に辛辣な片言節句からなっている。97年の旺盛な精神力を持った人物の生涯を拾い読みすることになるこの詩集のような冊子から得るのは、偉大な芸術家には違いないが、チェロという何か工具のようなものを手にもって日々働く筋肉質な熟練した労働者の姿である。パイプをくわえ楽譜という設計図を睨みながら頭のなかでイメージするものは精密に仕上がった高級車か何か。一旦弓をもって弾きだせば軽快なエンジン音...

  • 『ゲルニカ物語 ピカソと現代史』荒井信一

    これを読もうと思った動機は朧気ではあるが憶えているのは戦場カメラマンのロバート・キャパの伝記を当時交流のあった友人から借りて読んだのが切っ掛けだったと思う。その著書のなかにあった「国際義勇軍」の義勇兵の表情を寫した一枚にいたく心惹かれ、これはいったいどういう事態のことなのか知りたくなった。第二次世界大戦の前哨戦であったスペイン内戦のことを詳しく知るようになった著書があった筈だが今は覚えていない。この内戦に関わったアーネスト・ヘミングウェイにも当時興味があったがこの内戦を描いた有名な『誰がた...

  • 2016年読書

    レニ・リーフェンシュタール『回想 20世紀最大のメモワール』上 椛島則子訳 文芸春秋荒井信一『ゲルニカ物語 ピカソと現代史』 岩波新書宮本輝『幻の光』新潮文庫『パブロ・カザルス 鳥の歌』ジュリアン・ロイド・ウェッバー編 池田香代子訳 筑摩書房『三島由紀夫のニ・ニ六事件』 松本健一 文春新書『盗聴二・二六事件』中田整一 文芸春秋『妻たちの二・二六事件』 澤地久枝 中公文庫『共喰い』田中慎弥 集英社『地の星』 宮本輝 新潮社『血脈の火』 宮本輝 新潮社...

  • レニ・リーフェンシュタール『回想 20世紀最大のメモワール』上

    これは現役時代に衝動買いした一冊だったが当時レニについての知識は全くなくただ表紙の彼女の写真になにかありげな直観を感じて購入した。レニ・リーフェンシュタールはナチスドイツ時代、ヒトラーに請われていくつかの有名なナチのプロパガンダ映画を製作した女性。昨日は宣伝大臣ゲッペルスとの確執のあたりを読んだ。もともとは女優でスキーヤーで更に映画製作に取り組んでいて「青の光」が高く評価されヒトラーの目に留まった。「オリンピア」(邦題「民族の祭典」)はベルリンオリンピックのドキュメント作品であり「意思の勝...

  • 『日本のいちばん長い日』半藤一利

    半藤一利の『日本のいちばん長い日』を読む。今まで読んできた松本健一や半藤氏による昭和史の締めくくりのような気持ちで読んだ。昭和史とはいうが実は明治の開国以来の歴史が綿々と繋がっている。そこのところを踏まえつつ敢えて昭和とはどんな時代であったかを問うのである。

  • 松本健一『北一輝論』

    松本健一の『北一輝論』を読み終えた後、偶々石川啄木全集が祖父の書斎にあったので、「評論・感想」の巻からいくつか拾い読みをしていた。というのも松本氏の著書のなかで屡啄木が引き合いに出されていたからである。で、まずは「時代閉塞の現状」「日本無政府主義者陰謀事件経過及び付帯現象」「思想と平民社一派の消息」等を読む。明治末から昭和初期という啄木がいうところの閉塞した時代に佐渡という金山や流刑で知られた土壌に意外な起爆装置が働いていたことを知って驚きもした。彼が中学の時に郷土佐渡新聞に投稿した「国民...

  • 世阿弥『風姿花伝』

    世阿弥『風姿花伝』、通常「花伝書」と呼ばれる世阿弥のものは野上豊一郎と西尾実が実校訂したものであるが野上博士とは野上弥生子女史の夫君である。父観阿弥より引き継いだ能楽の秘伝を著し明治以降になるまで家伝として公にされることなく引き継がれた聖典である。「この藝において、大方、七歳をもて初めとす。この比(ころ)の能の稽古、必ず、その者自然とし出す事に、得たる風體(ふうてい)あるべし。舞・働きの間、音曲、もしくは怒れる事などにてもあれ、ふとし出ださんかかり(風情、趣き)を、うちまかせて、心のま...

  • 林屋辰三郎『歌舞伎以前』

    昭和29年の初版がたまたまあり僕の年ほども年月の経った岩波の新書(当時100円)なのだが、芸能史であるとともに立派な歴史書であり、地方史研究と部落史研究それに女性史の研究を要訣とした民衆の歴史的生活の研究を土台とした著書である。部落史は所謂賤民史であり今までも網野善彦等の研究で親しんできたところであるが主に中世からの歴史であり古代の「散所」に注目してその生活を明らかにすることも当時の芸能の姿をみるうえで重視しているところである。女性史的なところでも歌舞伎の創始者といわれる出雲阿國など新たな...

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