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おんざまゆげ https://tunenao.hatenablog.com/

「感受性マイノリティ男子」が綴る日々の雑記・雑感・読書、映画、アニメの感想。

「みんな」や「普通」の感受性にいまいち乗れない「感受性マイノリティ者」(男)が綴る日々の雑記・雑感・読書、映画、アニメなどのレビューブログ。 (あと、哲学・倫理・社会学っぽいことに興味があり、「障害学」や「生存学」などを勉強しながら生きづらさの低減を考えています。)

よしりん
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2016/10/27

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  • 「なにもしてないのに偉そうに言うな!」というアクティヴィズム・マウントについて

    「そのように批判してばかりいるあなたは実際になにをやったんですか? 現場をしらないあなたになにがわかるんですか?」── 書き言葉や話し言葉による言説によって批判ばかりしているひとにはその論法はおなじみとなっている。「おまえは批判ばかりしてなにも行動していない!実際なにをやったのか?」と。 わたしはそのような論法はエイブリズムであり、ある種の功績主義(優生思想)に加担していると思っている。あしきアクティビズムである。実際に行動して「功績」を認められているひとには発言の権利があり、そうではないひとにはその発言権の資格がない(なにもしてないのに偉そうに言うな!)。このような「橋下論法」に与するひとた…

  • 排除と搾取のメカニズム──資本主義から自由になるための条件

    資本主義は概ね(1)「賃労働で所得を獲得できないと生活できない」という世界をつくったうえで、 (2)「賃労働者から搾取する」ことによって成り立っている。マルクスは搾取される賃労働者の階級を革命主体と捉えたが、逆に「働かない者たち」(ルンペン・プロレタリアート)を革命を邪魔する存在として排除した。ルンペン・プロレタリアートとは《プロレタリアート(労働者階級)のうち階級意識を持たず、そのため社会的に有用な生産をせず、階級闘争の役に立たず、更には無階級社会実現の障害となる層を指す呼称》である。(ウィキペディアより) この点において、マルクスは資本家の利害と一致してしまった。 資本家は搾取の効率性を高…

  • 事故調と免責制度——再発防止には刑事責任を免責する法理が必要

    1985年8月12日、日本航空123便が群馬県上野村の山中「御巣鷹山」に墜落した。死者520名(生存者4名)。航空機事故では最悪レベルの惨事だった。(日本航空123便墜落事故) この事故にかんしては様々な憶測(陰謀論を含めたもの)がある。事故原因がいまだにはっきりしていないからだろう。思うに、この問題の本質は日本の司法制度(事故調査における免責制度がないこと)にあるのではないか──。 今回、1月2日に起きた衝突事故(日本航空516便衝突炎上事故)も同じことが懸念されるのである。 2024年1月2日、羽田空港に着陸した日本航空516便が海上保安庁の航空機と滑走路上で衝突・炎上 免責制度とは司法取…

  • 「小人閑居して不善をなす」──人間の自由と悪への傾き

    「とうとう我らの時代がきた!」 そう歓喜したのはわたしが中学二年の夏休み、三年生が部活の大会に破れたときのことだった。しかし、顧問の先生は言った。「お前ら三年に自由な夏休みを与えてしまうと何をしでかすかわからない。だから秋の大会にエントリーしたから夏休みも部活の練習にくること!」 まさに「小人閑居して不善をなす」を下敷きにした性悪説である。 「小人」(しょうじん)とは《徳のない、品性の卑しい人》という意味で「君子」の反対語、「閑居」とは以下の二つの意味をなす。 (1) 世俗を逃れて心静かに暮らすこと。 (2) 暇でいること。何もしないでぶらぶらしていること。 したがって、「小人閑居して不善をな…

  • Dラブ/Bラブと愛情資本、そして「親ガチャ」——「無理ゲー」になったマズローの欲求階層モデル

    心理学者のマズローが提出した「欲求階層モデル」。高校の「現代社会」のような科目にも登場するような有名な図であるが、あらためてこのモデルを考えてみると恐ろしいほどの「無理ゲー」になっていることに気づいた。 詳細はマズローの主著である『人間性の心理学 モチベーションとパーソナリティ』(1954年/1970年,産業能率大学出版部 1987年)に書かれている。 まず、人間には心理的動機づけをうながす基本的欲求が5つあり、この5つの基本的欲求が低次から高次へと階段のように階層化されている。低次の〈生理的欲求〉が満たされるとつぎに〈安全の欲求〉が登場し、この〈安全の欲求〉が満たされると〈所属と愛の欲求〉が…

  • 「青春」はなぜ実在しないのか——「物語り」としての人生

    ドミナントな「青春」という呪縛語を破壊しよう! 「青春」という言葉はありふれている。すごく嘘くさい言葉だ。わたしが中学生や高校生のとき、まさかその〈いま・現在〉を「青春時代」だなんて思ったことは一度もなかった。あまりにもつらすぎて早く過ぎ去ってほしいとずっと思っていた。思うに、恵まれたリア充の中高生たちも〈いま・現在〉を「青春時代」だなんて思っていないのではないか。 「青春」とはつねに大人になったあとから《あの時代はわたしの青春だった》と過去形でラベリングされる「思い出」のことを言うのではないだろうか。「青春」とは大人になったあとから想起される中高生時代の物語(=ナラティブ)に貼付されるラベル…

  • 「雑音」と「鼻」——クレーマーとルッキズムを増大させる感受性の劣化

    江戸時代、日本では「虫売り」という商売があった。スズムシやキリギリスなどのような独特の鳴き声を発する昆虫を観賞用として売るのである。虫の鳴き声を鑑賞する文化は海外ではめずらしく、そういう文化のない国では虫の鳴き声はたんなる「雑音」としてしか聴こえないらしい。これは文化的感受性の驚くべき差異である。 しかし最近、日本社会ではそのような虫の鳴き声やカエルの鳴き声が「雑音」として告発されるケースがではじめてきた。「カエルの合唱」は田植えシーズンの季節を告げ知らせる“福音”のような心地よい鳴き声のはずだったが、いつしかこの心地よさの音色は「騒音」としてどうどうと「うるさい!」と告発できるような文化が日…

  • 「逆錘」——「毒親問題」解決法

    アニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が7月2日で完結した。もしかしたら第3シーズンもあるのかもしれないが、一応、物語的には全24話で完結している。ふだん、ガンダム・シリーズはほとんど観ないのだが、この『水星の魔女』はガンダム・シリーズ初の主人公が女性で学園が舞台ということもあって、注目していた。わたしがこのアニメで面白いと思ったのは、子の親がことごとく「毒親」だという点であった。 主人公の女性(スレッタ)をはじめてとして、子どもたちは毒親に翻弄されるのだが、最終的には同世代の仲間たちに包摂され、親からの愛情不足を仲間たちからの愛情によって補われる(=回復する)という展開になっている。とくに、…

  • 「第三者の傷つき体験」—加害的規範についてー

    個人的な嬉しい出来事をSNSなどで不特定多数に向けて発信することがある。たとえば「大学に合格したよ」とか「結婚しました」とか「子どもが産まれました」等々...。こういう喜ばしい出来事の発表には「おめでとう」という祝福メッセージがあつまる。 しかし、「大学に行けなかったひと」や「子どもが産まれないひと」がその発言を目にすれば、おそらく傷つくだろう。このような「第三者の傷つき体験」にSNSの発信者は配慮すべきなのだろうか...。いや、そもそも配慮可能なのか。 発信したひとにたいして、第三者が「わたしには子どもが産めない。だからあなたの発言には傷つきました」と言ってきたらどうなるのか。そのような第三…

  • 「自己啓発的サバイバリズム」の時代—「無理ゲー社会」と自己啓発の親和性—

    最近、『ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常』(みすず書房,2022年)を読んでいて、はたと気づかされたことがある。それはその本の原注 p16(第二章 脚注60)に書かれていたのだが、概ね次のような指摘である。社会が生きづらくなればなるほど自己閉塞的にサバイバリズム(=生き延びること)に執着していく傾向にあり、《サバイバリストの自己啓発書がサバイバリズムや冒険や助言の裏で提示するのは、個人的な充足へのこだわり、内省、そして「ただやりすごしたり、生き残ったり、社会的圧力から完全に抜け出したりする(楽な)作戦」という条件つきで夢を追求することを組み合わせた個人主義的なビジョンだ》…。 …

  • 怠惰と堕落のちがい——「怠惰の倫理」は堕落主義を拒絶する

    このへんではっきりさせておきたいから書く。わたしは堕落主義者に与したくない。怠惰は推奨するが堕落は拒絶する。 堕落とは自分の利益や幸福のことしか考えない非政治的でシニカルな心の習慣である。一方、怠惰(スラッカー)とは堕落傾向を阻止するために勤労主義から脱する心の習慣である。勤労主義は堕落主義に陥る。だからこそ、怠惰が必要なのだ。アーレントも労働(=勤労)と活動(=政治)を区別し、労働主義と全体主義の相関性を示している。*1 わたしは「働かないニート」を肯定しているが、それはそのニートが政治的であるかぎりにおいてだ。ニートは最低限、政治的であるべきだと思っている。だから、ニートが自己満足的にニー…

  • 自分を大切にしてくれない場所からはさっさと逃げよう

    『あなたを大切にしてくれない場所にいてはいけない』。そしてそれが『人が生きる上で、一番くらいに大切なことだと思う』 「あなたを大切にしてくれない場所にいてはいけない」というメッセージ。の巻(雨宮処凛) 日本の「勤労」という概念をそれなりに調べた結果、それは江戸時代以前からすでに端を発していることがわかった。かなり根が深い日本的精神である。勤労主義は日本の明治時代の精神(忠孝一致)につながっており、アジア太平洋戦争のイデオロギーともなり、戦後は高度経済成長のエートスにもなった。 歴史・宗教社会学的には「資本主義の精神」が生みだされるには「勤労」という不思議な心の習慣が必要だったと言われている。そ…

  • 公助が必要な理由——『イラクの子 ふたりのアリの悲劇』からわかった支援格差の現実と「日本社会の劣等性」——

    イラク戦争の最中、米軍の爆撃により運命を変えられたふたりの子ども。偶然にもアリという同じ名前を持ち、同じ病院で治療を受けたふたりの子どもの惨劇を通して、イラク戦争が罪のない一般のイラク人にもたらした辛い現実を描いたドキュメンタリー。 バグダッドに近いザファラニヤに住むアリ・アバス君。ある早朝、アメリカ軍の爆撃により家は全壊、一家はバグダッドの病院に運ばれたがアリ・アバスくん以外は全員亡くなった。遺体は人間ではなく肉の断片でしかなかったという。アリ・アバスくんも体に大火傷を負い、両腕切断という大手術を受けた。しかしバグダッドが包囲され薬品が不足して治療もできない病院で、術後の感染死が心配される。…

  • 社会問題を「教養」と捉えるひとたち

    ブログを読んだりするのが昔から好きで、はてなブログでは書評系ブロガーなどを毎日チェックしている。 そのなかで「公務員」という肩書きのブログがわたしの読書傾向とほぼ合致するので、ある時期までそのブログを頻繁に注意深く読んでいた。 だが、ある日気がついた。このブロガーはわたしの問題意識とはまったくちがう…。社会で「貧困問題」が話題になっているとき(年越し派遣村がニュースになったとき)、そのブログでは貧困にかんする本が多く書評されていた。わたしも貧困問題に関心があるので食い入るようにそのブログを読んだ。 そのブロガーは意識の高いひとだった。環境問題が話題になっているときはそのような本が書評され、LG…

  • 「メメント・モリ」を生きるには?

    希死念慮が習慣化してくると「人生は生きるに値するか」というセンサーが脳のなかに埋め込まれ、それがことあるごとに日常的に作動するようになる。ほとんどの場合、常に「値しない」という反応が出力され続け、生命体であるかぎりすべての人間はあと数十年で絶対必ず死んでしまうわけだが、ではなぜ今すぐ死んだりしないのだろうかと思ったりする。 どんなに大往生したとしても、人間にとって死は「挫折」である。たとえ100年生きたとしても、人間ひとりがたった100年でやれることなんてたかが知れている。しかも、やるのは「あなた」でなくてもいい。かわりはいくらでもいるからだ。 思うに、人間が「生きる」ということには、予め「死…

  • エイジズム—若さを求めて老いを忌避する心性—

    社会学者の上野千鶴子さんは下記のボーヴォワール『老い』を解説している本のなかで「老いる姿を隠すべきではない」と言っている。すごく重要な指摘だとおもう。 ボーヴォワール『老い』 2021年7月 (NHK100分de名著) 作者:上野 千鶴子 NHK出版 Amazon 社会の一般的な価値観では、老いは醜いもの、恥ずべきもの、忌避すべきものだということになっている。逆に、「若さ」には価値があるとされている。こういう価値観がエイジズムを生みだす。エイジズムはときとしてルッキズムやセクシズムとも関係しており、この三つの差別形態は交差的に絡まり合っている。だからボーヴォワールの書いた『老い』はフェミニスト…

  • 反出生主義に訣別!——わたしたちは個々人の人生の内部から「生まれてきてよかった」と思えるような人生をめざすほかない

    デイヴィッド・ベネターの誕生否定と反出生主義 「非存在者」(未だ存在していない者)をこの世に存在させることは道徳的に許されない悪である。したがってすべての人間は子どもを生むべきではない。反出生主義者のデイヴィッド・ベネターは概ねそのようなことを言っている。 力点は「子どもを生むべきではない」という一点にある。その根拠になっているのは〈この世に存在してしまうことは常に深刻な害悪である〉という「誕生害悪」論である。すでに存在している私たちに適用すると〈私たちは生まれてこない方がよかった〉という「誕生否定」論となる。 もうこれ以上、私たちのような不幸な存在者を生みだしてはならない。だから子どもを生む…

  • 〈家出の思想〉について―寺山修司と尾崎豊の〈家出の精神〉をもう一度、再共有化するために

    寺山修司と尾崎豊 ふたりは膨大な作品を残し、寺山は47歳(1935〜1983)、尾崎は26歳(1965〜1992)で夭折している。今でもふたりは人気がありカリスマ性は衰えを知らず、今年は寺山の没後40年ということもあってかプチ・ブームにもなっている。 わたしのなかで寺山と尾崎は「家出」というキーワードでつながっている。寺山は「家出入門」で家出をまじめに取り上げ、尾崎は「15の夜」で家出を歌っていた。 以下では寺山の〈家出の思想〉を紹介したうえで尾崎の「15の夜」における家出が寺山のそれに連なることを示す。家出とは「学校や家の外側に存在する仲間たちとのつながり」を求めた脱出行為である。「家」から…

  • 「生まれる自由」という幻想

    主観主義の立場に立つかぎり、生む側と生まれる側の非対称性は厳として存在する。しかし、ここから〈生む側には「生む/生まない」の選択肢があるが、生まれる側には「生まれる/生まれない」の選択肢はない。生まれる側は「生まれたい」と思ったわけではないのに勝手に生まれさせられた。このような非対称性は理不尽である。〉というストーリーを制作することはできない。 主観主義で出生を考えるとき、「生む側」と「生まれた側」という二つの異なる視点が存在する。この異なる世界(視点)を同時に「この私」という世界に設定し、「生む私」と「生まれた私」を同じ世界で接続することは論理的に不可能である。なぜなら「私」から「私」が生ま…

  • 「ずるさ」を許せない!——「幼稚な道徳感情」と「ネトウヨの精神」

    「ずるさ」を許せない! 「日本人は行列にちゃんと並ぶすばらしい国民である!」 外国から称賛される「日本人すごいぞ」論の定番になっている。たしかに割り込みはずるい。ずるはよくないのだ。 しかし、裏返せば日本は「割り込み」に厳しい国だということになる。よって外国から見たら「割り込みくらいでそんなに目くじらを立てるか? そんなのちょっとくらいあってもいいじゃないか」と思う人もいるはずだ。割り込みくらい大目に見よう、寛容であったほうがいい。そのほうが何かと生きやすい社会になるのではないか。 ずるはよくない。だが、ずるさに敏感に反応していちいち目くじらを立てるような「幼稚な道徳感情」の肥大化こそが生きや…

  • 生存は抵抗である—「無能な存在者」が無能なまま生き延びるための二段階戦略—

    われわれは国にたいして生存権保障を要求する 以下の記事では「戦争=国民国家」と「優生思想=福祉国家」の関係性について述べた。 tunenao.hatenablog.com 国家にたいして生存権保障を要求する場合、つぎのような懸念がある。 優生思想や能力主義の差別性を是正するために生存権保障を主張することはジレンマに陥る。なぜなら、生存権保障は国家が主導する再分配政策を要請し、再分配政策を強制する国民国家は優生思想を前提とする福祉国家体制を前提するからである。 上の懸念事項に十分配慮したうえで、わたしたちはこう宣言する。 重要なのは「国民国家」の歴史と習性を自覚したうえで、安易な勤労主義を否定し…

  • 勤労主義は平和主義と両立しない—戦争・福祉国家・優生思想—

    社会権は自由権に優先する わたしは「すべては生存権保障からはじまる」と思っている。これを一口でいうなら〈近代的な立憲民主主義の自由主義思想において、人権保障の大前提は(個人の幸福追求権を含めた)市民的自由権よりも、生存権を含めた社会権のほうをより優先する〉と考える。 そのように主張するひとのほとんどは、富の再分配(主に国家による累進課税の強制によって生存権を保障する枠組=福祉国家)を支持する。国家が強制的に個人の自由(所有権)を制限し、資源の分配の割合を事後的に是正することによってシビル・ミニマム(生存に必要な基礎的ニーズ=生存権)を無条件に保障するのである。 だが、「小さな政府」を支持するネ…

  • すべては生存権保障からはじまる—マルフェミの「物質的基盤」を例に—

    「上野vs.江原」論争 上野千鶴子は昔も今もずっとマルクス主義フェミニズム(マルフェミ)の立場である。上野のマルフェミは「物質的基盤」を重視する。経済的な下部構造としての物質的基盤を無視するフェミニスト・アカデミシャンたちを上野は「文化派」とよんで批判したことがあった。俗にいう「上野・江原」論争である。 この論争のあと、憤慨した江原由美子は上野にたいするアンサーとして『ジェンダー秩序』という本を10年ぐらいかけて書いた(恐るべき執念!)。これはこれで名著だと思うが、それでマルフェミ的な問題が消えたわけではない。以後、アカデミックな世界では「文化派」は優勢になっていく。上野の予言(危惧)は的中し…

  • 「非対称な関係の対等な関係」は可能か—『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』が示唆する難問について—

    インターエイブル(interabled couple)を描いたドラマ 昨年、韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(Netflix)がヒットした。 世界では非英語部門のTV番組で配信開始から6週連続でTOP10入り、そのうち2位になったのは一度きりでTOP1に君臨し続けている。(シネマカフェ 2022.08.22) 内容は、主人公のウ・ヨンウ(弁護士)とイ・ジュノ(法律事務所職員)との恋愛を描いたリーガル恋愛ドラマである。特徴としては、ウ・ヨンウには「自閉スペクトラム症」という障害があり、いわゆる「普通じゃない=風変わりなひと」である一方、天才的な記憶力によって頭脳明晰な弁護士として活躍する物…

  • スラッカー(怠惰主義)とは「労働の脱道徳化」である

    個人や社会のあらゆる悲惨さは、労働への情熱から生まれる(ラファルグ) なぜ、かくも労働は道徳と結びつき「勤労」(労働への情熱!)となったのか。この二つの結合こそが私たちの労働にまつわる生きづらさの正体である。 「スラッカー」(怠惰主義)は、労働と道徳の結びつきを緩める実践(労働の脱道徳化)である。まずは「労働の道徳化」の歴史を以下で示し、「怠惰の倫理」の必要性を述べる。 労働が規範化されていない時代 「労働」とはたんに「働く」ことを意味するだけではなく、道徳や規範と分かちがたく結びついている。労働と道徳。当初、二つは無関係であった。しかし、歴史的に「労働」は規範化(=道徳化)され「労働倫理」(…

  • 「スラッカー」概念についての素描

    ニート≒スラッカー スラッカー(slacker)という概念は日本ではほとんど定着していない言葉だ。スラッカーは「怠け者」「怠惰なひと」「何もしてないひと」「義務や責任を回避しているひと」「徴兵回避者」「働かないひと」「勤労意欲に乏しいひと」...等々の意味合いがある。しいていうなら、日本で定着した「ニート」という言葉に近い。 しかし、「ニート=スラッカー」ではない。たとえば、日本の国民的映画である『男はつらいよ』に出てくる「フーテンの寅さん」。これをあえて英語に訳すなら「Tora a slacker」となる。「フーテン」とは「プータロー」とほぼ同義。ウィキペディアの説明では《瘋癲(ふうてん)/…

  • 「裸の大将」はなぜ消えたのか —— 「居場所」なき「無能な者たち」

    TVドラマ「裸の大将」とは《画家の山下清をモデルに描いた人間ドラマ》である。(裸の大将放浪記)。1980年〜97年までフジTV系列で放映され、主演の芦屋雁之助の熱演(はまり役)もあって人気ドラマであった。ダ・カーポが歌う主題歌『野に咲く花のように』が流れると「裸の大将」を思い出すひとも多いのではないか。(その後、2007年、08年に、お笑い芸人 塚地武雅バージョンで2度放映されている。) 連続ドラマではなく単発で、1話54分で終わるコンパクトな内容だ(「裸の大将」ドラマデータベース)。パターンもある程度決まっている。毎回、放浪癖のある山下清が施設を抜けだし、どこかの村や町で人間ドラマを展開する…

  • 「かつら」をファッションに!——男性学的「かつら」論

    「かつら」はファッションである ぼくはファッションにはあまり興味がないが、「かつら」(あるいはウィッグ)には興味がある。 「かつら」はファッションとして使用されるときは「つけ毛」「ウィッグ」とよばれ、「薄毛」を隠す目的で使用される場合にかぎり「かつら」とよぶようだ。ぼくは、そのような区別じたいをなくすべきだと思っている。 ウィッグだろうが「かつら」だろうが呼び名はなんでもいい。とにかく、かつらはすべてファッションとして解放されてほしいのだ。 なぜ、洋服はその日の気分で自由に選べるのに、かつらはそのようにならないのか。かつらがもっとファッションとして「公認」されれば、洋服と同じようにその日の気分…

  • トランス女性とシス男性の性愛は異性愛か?——トランスジェンダーのセクシュアリティについて

    GIとSOは分離できるか セクシュアルマイノリティの問題を一言で示そうとして使用された「LGBT」という括り方にはいろいろと問題があった。そのあとできた「SOGI」という括り方にも問題はある。ジェンダー・アイデンティティ(GI)とセクシュアル・オリエンテーション(SO)は分離できるようなものではないからだ。 たとえば、「私は男である」というGIは「私は男であり、男として女から愛されたい」というSOと連動していることがある。このGIとSOの結びつきの強さは人によって違ってくるだろうが、GIとSOはすっきりと分離できるようなものではなく、複合的問題を要することを忘れてはならないと思うのだ。 「LG…

  • トランス差別と「性という存在形式」—— サンディ・ストーンの“ポスト・トランスセクシュアル宣言”について

    私たちは「見た目」で性別判断してしまう“クセ”がある トランスジェンダーを差別することは、容姿や見た目による差別と通底している。これは、年齢差別、女性差別、人種差別、障害者差別、ハンセン病差別などにも見いだせる。「見た目」から判断して分かるような特徴的な認識指標が差別行為のきっかけや理由、根拠とされてしまう。「容姿そのもの」を評価することによって序列をつくりだす「ルッキズム」は見た目による差別の典型だ。 トランスジェンダーを差別するひとたちは性器を含めた「性別的外見」という「見た目」をことさら重要視し、「見た目」が「男性」なのか「女性」なのか、ということを問題化し差別する。 しかし、これはトラ…

  • 「複層的現実」で生き延びる

    ネットとリアルを使い分けるひとたちがいる。こういう人たちを「デジタルネイティブ」と呼ぶ。いまではネットと現実の「複層的現実」(Multi-Layered Reality)を苦もなく生きる人たちは「当たり前」になった。 「オタク」というレイヤー 先ごろ海外の「アニメオタク」のドキュメンタリーを見た。海外ではアニメオタクはレアな存在。だから身近には存在しないアニメオタクとFacebookやZOOMを使って交流する。同じ時間に同じアニメをオンライン上でわぁーわぁー言いながら見る。鑑賞し終わったらくっちゃべって感想を述べ合う。あのシーンは良かったな...とか、他愛もないことを話す。 ドキュメンタリーの…

  • 「二重の排除」と「マイノリティ」—— 変革者としてのクィア的存在

    「意味/無意味」が成り立つためにはホモ・サケル的な第三項排除としての「非意味」が必要になる。同じように、「優者/劣者」という価値序列が成り立つためには、価値評価の対象外(優者にも劣者にもなりえないもの)が必要になる。 「優/劣」のような社会的評価をするためには、「優/劣」を成り立たせるための地平が必要にあり、それは「あたりまえさ=自明性」が担保する。「あたりまえさ=自明性」は「普通さ(ノーマル=ノーム)」によって構成される。 ノーム(=規範)としての「普通さ」をつくりだすには、「普通ではないもの(=逸脱=異常性)」が必要になる。たとえば、異性愛が規範化される過程では同性愛が病理化され、健常者が…

  • 他者を「尊重」すること —— 「尊重」という態度は歴史的に“発明”されたもの

    ・「尊重」とは「否定しない」こと 私の理解では、「尊重」(=respect)というのは、「個人の尊厳を尊重する」ということ。どんなことがあっても他者をバカにしたり貶んだり蔑視したりしない態度のことです。ひとことで言うなら「個人の存在を否定しない」こと。その根底にはこの世に生まれてきたことを肯定し、生存を肯定することが含まれます。*1 *1 「尊厳」とは「個の存在の尊さ」のことです。「尊さ」はかけがえのなさから生まれると思っています。「個の存在=他者」は後にも先にもこの世にひとつしかない。この唯一無二の固有性に「尊さ=尊厳」がある。ここから「存在を否定してはいけない」という感覚(倫理)が生まれる…

  • 「家族主義」の淵源 —— 「家族国家」と天皇制

    川島武宜の『イデオロギーとしての「家族制度」』、『日本社会の家族的構成』を読んで、改めて日本社会の「家族主義」の根深さを思い知らされた。 あらゆる組織(会社や学校など)が「家族」のような共同体になってしまうのは、明治から始まる近代化=国民化政策にその萌芽がある。 近代化の歴史において、西洋ではキリスト教(超越的な一神教の神)の存在が大きいが、日本にはそういうアイテムがなかったため「天皇」と「家制度」を利用して急速に近代的な国民国家をつくりあげた。 明治政府は日本という国家を一つの大きな「家」(家族)と想定し、家制度における親と子の関係を「孝」、国家における天皇(君)と国民(赤子)との関係を「忠…

  • 「家父長制(=家族主義)」から「親密圏(ジェンダー平等)」へ ——「資本の論理」に汚染されない場所が必要

    「システム」と「生活世界」という区別がある。「システム」は「市場社会=等価交換の世界」に、「生活世界」は「親密圏=贈与の世界」に対応する。 具体的に言うならこうなる。家族的なホームから「行ってきます」と言って市場社会へと出撃し、労働者としてボロボロになりながらも「ただいま」と言ってホームへと帰還する。ホームでリフレッシュした労働者は再び市場社会へと出撃...。これが「労働力の再生産」としてのホーム機能である。 近代資本主義社会では、ホームは家父長制システムとなり、資本制の下請けのような役割を果たしている。したがって、ジェンダー平等の観点を取り入れたホーム機能の構造的変換は「家父長制(=家族主義…

  • 男性性と性的興奮——「政治的に正しい勃起」はありうるか?

    【ヘテロ男性の性的興奮について】 ポルノグラフィ規制派でアメリカのラディカル・フェミニストであるキャサリン・マッキノンやアンドレア・ドウォーキンは、「異性愛者のセックスはすべて男性による強姦である」という強烈なテーゼを主張した。しかし一方で、セックスは「愛の行為」だと考えるひとも多い。 「暴力」は「愛」に反転しうる ——「セックス」の暴力性阻却 セックスは暴力か? 「すべてのセックスは暴力である」と全称命題で語るのが前述のマッキノンらである。一方、リベラル派はセックスは暴力にもなりうるし愛の行為にもなりうると考える。そして、後者の立場には二通りの解釈がありうる。 ひとつは、そもそもセックスは暴…

  • 「強い当事者主義」問題——セクマイ問題の“ややこしさ”について

    セクマイ問題はどうして“ややこしい”のか——。最近だったら社会学者の千田有紀さんが「トランス差別」に関するツイートで炎上した。のちに千田さんは『現代思想』(2020年)で『「女」の境界線を引きなおす—「ターフ」をめぐる対立を超えて』(=千田論文)を書いている。 竹村和子さん的な「ラディカル路線」の“あやうさ” フェミニズムにはジレンマがある。《 フェミニズムは〈ジェンダーの廃絶〉のために闘うのか、それとも〈ジェンダーの平等〉のために闘うのか》《ジェンダー概念そのものを廃絶するか、それともジェンダー概念を残しつつ——ということは「女」であることを保持しつつ——性差別に抗議するか...》(竹村和子…

  • 絶対的な生きづらさ——「個体化の不条理」について

    哲学の分野には「他者問題」とか「他我問題」というのがあります。ぼくが考える「個体化の不条理」というのはそれに関係します。人間の場合は「身体化の不条理」とよんだほうが近いかもしれません。 たとえば、頭痛になったときに症状(痛み)を他者に訴える。医者などに「頭がガンガンする」とか言葉で症状を説明する。このときに医者は「なるほど、ガンガン痛むんだね...」みたいに了解します。こうやって「症状」は理解される。 しかし、たとえば「ぼくの頭がガンガン痛む」というときの「ガンガン」と、Aさんが訴えている「頭がガンガン痛む」の「ガンガン」は同じ「ガンガン」なのでしょうか? はたして、ぼくのガンガンとAさんのガ…

  • 「正しさ」ではわりきれないもの

    「正しさ」だけではわりきれないことがある。人間は感情的な生きものだから...。 ぼくはYouTubeの犬や猫の動画に癒やされる。その一方、5分程度の動画でサラリーマン年収を超えてしまう「動物YouTuber」に嫉妬する。自分はこんなに苦労して働いているのに、なぜあいつらはお手軽な方法でサクッと稼いでいるのか...とイラだつ。このイライラする感情を犬猫動画で癒やす、という逆説を日々をくりかえしている。 そういうムカつきやイラだちの感情は「正しくない」だろう。しかし、そういうイラだち・ムカつきは事実であるし、「正しさ」で収まるようなものではない。 人間は「正しさ」だけで生きられるのか? ぼくはムリ…

  • 「日本的生きづらさ」と「トレース問題」——「生きづらさ」を三つの次元で考える

    「生きづらさ」の淵源には二つの源流がある。「社会」と「世界」、あるいは「社会的アイデンティティ」と「実存」。 社会的な生きづらさには「苦痛」という言葉が、実存的な生きづらさには「苦悩」という言葉が合っているように思う。 実存的な生きづらさ(=苦悩)とは、なぜ自分は生まれてきたのか、なぜ生きなければならないのか、なぜ死ななければならないのか、なぜ私はこの私なのか、生きる意味や価値はあるのか......といったような根本的な「なぜ」に由来するこの世界に対する違和感から生まれる。社会を超える世界(あるいは宇宙)の問題である。これには宗教や哲学が対応するであろう。 一方、社会的な生きづらさとは、資本主…

  • SEALDs系の運動に参加して感じた違和感

    脱原発デモに参加したことがきっかけでSEALDs系のデモに参加したことがあった。違和感だからけだった。ぼくが参加していたのは小規模のものばかりだったけど、小規模だからこそ周囲の人間の「顔」がよく見えた。生活には困っていない「明るい学生」ばかりだった。なんかみんな嬉しそうだし、ウキウキしているし、はりきっている。社会はこんなにも暗いというのに...。 基本、「反安倍」である。雰囲気的には「安倍政権が打倒されれば民主主義が復活し、国民がハッピーになる!」みたいな能天気さがあった。いまでは若者はむしろ安倍政権支持派が多数だという。では、あのSEALDsのブームはなんだったのか...。 このひとたちは…

  • 「左翼」や「リベラル」のクソさについて

    1.ほんとうの左翼・リベラルとは... 2.赤木智弘氏の「希望は戦争」論 3.左翼・リベラルのクソさが「日本会議」を生んだ 4.「反天皇制運動」も日本会議と同じ 5.「ネトウヨ」も左翼・リベラルのクソさが生んだ 1.ほんとうの左翼・リベラルとは... ある種の「左翼」、あるいは「リベラル」の欺瞞さ...。ほんとうに苦手だ。昔からそうだった。ぼくが尊敬する「左翼」や「リベラル」は明治期から大正デモクラシー期にかけて活躍した庶民派(=貧しき民の側に立つ)社会主義者で非戦論者である。中江兆民、幸徳秋水、内村鑑三、堺利彦、田中正造...とか。こういうひとたちこそがほんとうの意味での日本的な真のリベラル…

  • 真実と嘘

    「真実」を言ったのに誰も信じてくれない...聞いてくれない...ということがある。これは聞く側に「聞く耳がない」ということではなく、「語り方」に問題があると言われている。真実を語るにもある程度のウソ(演技・脚色・演出)が必要であり、真実をそのまんまのベタな真実として語っても誰も信じてくれないし興味を持ってくれないのだ。 真実を知ってもらうためには、まずはウソをつかなければならない。しかし、ウソをつきながら語った「真実」は本当の真実と言えるのか...。そもそも伝えるべき「真実」とは何か。ウソの反対が真実なのか。まったくのウソ偽りのないことが真実なのか。 そんなことはどうでもいい。 ぼくは「真実(…

  • 結局、「私はこう思う」としか言えない

    誰かに何か相談されたとき、その相談に直接答えるかたちで「それはやめたほうがいい」とか「こうやったほうがいいと思うけどな...」みたいに言ったとする。これってアドバイス的でコントロール的になるのではないか? そういうときは、「私だったらやめると思う」とか「私ならこうすると思う」みたいなことしか言えないのではないか。たとえば、恋人と別れるかどうかを相談されたとき、「別れたほうがいい/別れないほうがいい」という言い方はできないだろう。これだとアドバイス的、コントロール的になってしまうからだ。たぶん、「私だったら別れると思う/別れないと思う」という言い方しかできない。 結局、何事についても「私はこう思…

  • 「感じない官僚的人間」になりたくない

    ぼくは「知ることよりも感じることのほうが大切だ」という命題(レイチェル・カーソンの言葉)に賛同している。これは真理だと思っている。知識より感情。何かを知ることは重要なことだけど、そこに何らかの思いや感情がなければ知識はたんなる上辺だけの知識でしかない。 「関心」は知識からは生まれない。知識は動機づけを与えない。だが、感情は直接的な動機づけと結びつく。これがもっとも重要なことだ。これは受験勉強で誰もが経験済みだろう。 もっともわかりやすいモデルは、受験エリートから高級官僚になるケース。官僚は知識だけは豊富に持っていて、社会問題ついての知識は頭にたくさんつまっている。たとえば「LGBT」が社会問題…

  • 本当に「救われない」と覚悟したとき、逆に救われる気がする —— 死・意味・価値について

    「死」について考えるとき、いつもふたつの感慨にとらわれます。ひとつは、「人間はいつか必ず死ぬ。人生は有限である。残された時間は少ない。なのに、自分は今、とてもくだらないことをしている。こんなことをしていていいのだろうか...」という感慨。もうひとつは、「人間はいつか必ず死ぬ。自分が今、やっていることすべては途方もなく無意味なのではないか...」という感慨。 前者の「残された時間は少ない」という感覚は、人生における優先順位に関係しています。働いたりしているときに「どうせ死んでしまうのに、呑気にこんなことをしていていいのか...もっと大切なことがあるのではないか」と思ったりする。あるいは、寝ようと…

  • 選挙に乗れない理由 ―― ルーマンの「冷めた理論」

    前回の参議院選挙(2019)では、「れいわ新選組」を支持した。でも、ぼくはまったくもって選挙というものを信じていない。 もともとノンポリだったこともあり、選挙には熱狂できない体質である。山本太郎の演説には感動するが、だからといって何かが変わると思ったことはない。基本的にぼくは、常にノリがわるく冷めている。 選挙を熱く語るひとに尊敬の念をいだく。ぼくもそうなりたいと思ったことがあった。なぜ、こうもノリがわるく「ノンポリ」ぎみなのだろうと思っていた頃、社会学者ニクラス・ルーマンの「冷めた理論」に出会った。 ルーマンが言うには、ぼくたちの投票行動と、議会における政策決定は完全に「切れている」という。…

  • 「二種類の人間」

    自動車教習所に通っていた頃の話です。 空き時間に教習コースをボーッと見ていました。自動車コースで複数台、バイクのコースには2台走っていた。ザァザァと雨が降っており、バイク教習のジグザク運転はすごく大変そうでした。 ぼくの他にもボーッと見ているひとが複数人いました。つぎの瞬間、バイクが思いっきり横転。コケた、というレベルではなく、ダイナミックにぶっ転んだのです。 いっしょに見ていたひとたちの反応が二種類にわかれました。あるひとはゲラゲラと笑い、あるひとは大丈夫かと心配した。ぼくは後者の反応だったのですが、前者のゲラゲラ笑いの反応にはちょっとゾッとしてしまいました。 横転したバイク教習のひとは幸い…

  • 「日常生活に潜むリバタリアニズム」— 再分配政策(生存権保障)の正当性・社会保障のあり方・分配的正義論(引用メモ)

    「日常生活に潜むリバタリアニズム」(=「わたしが働いて得たお金はすべてわたしのものだ」というロジック)を批判する主張(引用メモ)を紹介する。批判対象は主にロック的所有権論=ノージック的リバタリアニズムである。具体的には、租税の正義論・分配的正義論にもとづく再分配政策(生存権保障)の正当性根拠、「人」ではなく「現象」に対処するという社会保障のあり方、サンデルの「生の被贈与性」*1、ロールズ正義論の核心部分(岩田 1994)についての引用である。 それは、ほんとうに、あなたのお金なのか? 「租税の正義」と所有権 社会保障のあり方 ・サンデル ・ロールズ *1: 「生の被贈与性」とは...... 人…

  • トランスフォビアとパス至上主義 —— セクシュアリティ・フェミニズム・クィア理論 (4)

    今回はトランスセクシュアル(TS)に対する差別と、このTS差別(トランスフォビア)の根底にあると思われる本質主義的性別二元論(=パス至上主義)について考えてみたい。 TS(トランスセクシュアルの略)の問題系は、現存の性の制度に生きるすべての人の問題系であり、個別的な話題ではなく、性制度の構造そのものに関わるもの…(竹村2013:45) トランスセクシュアル/トランスジェンダー 「風俗現象」から「医療問題・人権問題」へ 医療化と名称問題 当事者の人権の回復とQOLの改善 トランスフォビア 「本質主義」の意図せざる結果 「ポスト・トランスセクシュアル」宣言 問題は「パス至上主義」(性別二元論) 性…

  • ポルノ擁護論とマスターベーション論 ——セクシュアリティ・フェミニズム・クィア理論 (3)

    今回はいままでの流れとはちょっと外れて、上野千鶴子さんのセクシュアリティ定義、ポルノグラフィ擁護論(=表現の自由を擁護し、ポルノ規制に反対する立場)、マスターベーション論を考えてみたい。 性欲/性行為/性関係 上野千鶴子のポルノ擁護論 マスターベーションは性行為=私的セックスである ポルノに対する個人的な見解

  • 社会構築主義と「クィア存在」の可能性 —— セクシュアリティ・フェミニズム・クィア理論 (2)

    前回は異性愛主義について論じた。要約すると以下のようになる。 異性愛主義(ヘテロセクシズム)は、性差別(セクシズム) —— 性差の階層秩序(女性差別)と性対象の階層秩序(同性愛差別) —— をつくりだし、この性差別のうえに支えられているのが異性愛主義([ ヘテロ ] セクシズム)という規範システムである。 異性愛主義は「男」と「女」という二つの性的身体を必要とし、この二つの身体を強制的に組み合わせる。このセックス・ジェンダー二元論を巧妙に支えているのがセクシュアリティという神話である。異性愛主義のセクシュアリティは、たった一つの「正しいセクシュアリティ」しか認めない。 「正しいセクシュアリティ…

  • 異性愛主義と性差別 —— セクシュアリティ・フェミニズム・クィア理論 (1)

    今回は竹村和子さんの書籍(論文集や対談集)などをひもときながら「セクシュアリティ」について考えてみたいと思います。 すなわち [ヘテロ]セクシズムが、わたしの身体/精神の隅々までを構造化している … (竹村 2002:135) なぜ「セクシュアリティ」を問うのか 竹村和子さんの経歴 「異性愛主義」という規範 異性愛主義と異性愛 「マイノリティ」と「マジョリティ」 性的マジョリティは「性自認」を必要としない 結婚と異性愛主義 「正しいセクシュアリティ」 「セクシュアリティ」の発明 性実践/性欲望/性幻想 性差別を生みだす [ヘテロ]セクシズム 「対幻想」と性差別 「性器=生殖セクシュアリティ」と…

  • 『安心して絶望できる人生』/「生きづらさ」の当事者研究

    今回は「当事者研究」に関する書籍をご紹介いたします。ソーシャルワーカーの向谷地 生良(むかいやち いくよし)さんが2006年に出版した著書『安心して絶望できる人生』をひもときながら当事者研究の概要を以下にまとめてみました。 当事者研究とは、北海道の浦河に存在する「べてるの家」(統合失調症などを抱える人たちが暮らす共同体)から生まれた実践活動です。 この「当事者研究」という言葉に出会って以来、わたしが今まで行っていたことのすべては「当事者研究」だったのだと再認識することができました。 安心して絶望できる人生 (生活人新書) 作者: 向谷地生良,浦河べてるの家 出版社/メーカー: NHK出版 発売…

  • 生き延びるための読書計画 2019 — 労働・貧困・セクシュアリティ

    「計画」と言っても適当です... 「生きづらさ」低減に向けた「生き延びるための読書」計画を立てました。計画といってもざっくりした大枠ですので、計画から逸れて他の分野に飛ぶかもしれません。 あと、一年間でやれるかどうかは私の精神的な気分・体調と自由時間が関係しています。計画に縛られる人生なんて御免なので「とりあえずの目標」程度に考えております。つまり、適当です。 (それと、今回の読書計画は以下で紹介する本は「すべて読破してやるぞ!」みたいな宣言ではありません。おそらく8割ほどは該当箇所を調べる程度です。) 適当教典 作者: 高田純次 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2013/02/1…

  • 来年に向けて!

    9月以来、ブログを放置していました。 いろいろ理由はあるのですが、3つあげるなら、1) モチベ低下 2) 精神的な気力低下 3) 読書時間低下......といったところです。 振り返れば2016年、2017年は年間で60記事以上は書いていました。最低でも週に1回は更新していた計算です。しかし、今年はこれを含めて27記事と半減...。 といっても、落ち込んでいるわけではなく、「書く」という行為が減ったのがちょっと残念だなぁと思っているだけです。

  • 「あられもなさ」という性的快楽 —— なぜ、恋愛感情とセックスはつながるのか (2)

    《 概要 》 セクシュアリティにかんする問題は本ブログのテーマの一つである。*1 恋愛感情とセックスの関係については以下の記事で詳しく論じたのだが、今回はこの話のつづきである。*2 tunenao.hatenablog.com *1: セクシュアリティは重要なテーマである... 理由としては、私が「セクマイ」で「百合好き」という個人的な問題からであるが、しかしその一方で、マイノリティを苦しめる社会的文化的な規範性に対して打撃を与えたいという動機もある。社会のなかで「普通」と思われているものは実はぜんぜん「普通」ではないということが分かれば、マジョリティはもっと謙虚になるだろうし、マイノリティは…

  • 『経済成長がすべてか? — デモクラシーが人文学を必要とする理由』/ 「ディーセントな人間」になるために

    著者である「マーサ・ヌスバウム教授」の経歴 アメリカのシカゴ大学教授で女性哲学者。専門はアリストテレス研究だが、哲学以外にも古典学、政治哲学、法哲学、教育学、フェミニズムなど多数の著作があり、幅広い分野で活躍している。2016年には京都賞を受賞した。 本書はヌスバウム教授の「教育論」に関する本である。 *1 経済成長がすべてか?――デモクラシーが人文学を必要とする理由 作者: マーサ・C.ヌスバウム,小沢自然,小野正嗣 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2013/09/05 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (6件) を見る *1: マーサ・ヌスバウム教授

  • 【新刊】興味ありがちな新書・選書 /7月〜8月 新刊

    7月〜8月の新刊(新書・選書)です。 選定ルールは、 ・7月〜8月に出版された興味ありがちな新書・選書。 ・独断と偏見チョイス

  • 【新刊】興味ありがちな文庫本 / 7月〜8月 新刊

    7月〜8月の新刊(文庫)です。 選定ルールは、 ・7月〜8月に出版された興味ありがちな文庫。 ・独断と偏見チョイス

  • 【小説】『コンビニ人間』村田沙耶香 / ロボットみたいな女の子がコンビニで働くコメディ小説

    第155回芥川賞受賞作! 36歳未婚女性、古倉恵子。 大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。 オープン当初からスマイルマート日色駅前店で働き続け、 変わりゆくメンバーを見送りながら、店長は8人目だ。 日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、 清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、 毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。 仕事も家庭もある同窓生たちからどんなに不思議がられても、 完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、 私を世界の正常な「部品」にしてくれる――。 ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、 そんなコンビニ的…

  • Kindle本 おすすめ厳選 100冊

    只今Kindle本の50%OFF以上セールが開催中です。 期間は2018年7月3日(火)00時00分~2018年7月17日(火)23時59分まで。 対象タイトル30,000点以上です。 そのうちおすすめの厳選100冊を以下でご紹介いたします。 哲学 歴史 文学・エッセイ 自己啓発・人生論・自伝 社会問題 憲法 経済 戦争 サイエンス おたく・趣味 犬&猫

  • 【新刊】興味ありがちな新刊(文庫 編)/6月新刊

    6月の新刊(文庫)チェックです。 選定ルールは、 ・6月に出版された興味ありがちな文庫本。

  • 【新刊】興味ありがちな新刊(新書・選書 編)/6月新刊

    6月の新刊(新書・選書)チェックです。 選定ルールは、 ・6月に出版された興味ありがちな新書・選書

  • 『いのちの食べかた』森達也/まずは「知ること」が大切!

    本書は2005年に刊行された「よりみちパン!セ」という有名なシリーズの一冊。 *1 いのちの食べかた (よりみちパン!セ) 作者: 森達也 出版社/メーカー: 理論社 発売日: 2004/11/19 メディア: 単行本 購入: 20人 クリック: 461回 この商品を含むブログ (185件) を見る *1: ちなみに「よりみちパン!セ」のコンセプトは《寄り道は、ハッピーに生きるための近道》というものである。 著者の森達也さんは本書の最後に次の言葉を残している。 ゆっくり歩こう。いろいろ悩みながら。いろいろ考えながら。いろいろ眺めたり、発見したり、ため息をついたりしながら。どうせゴールなんて、そ…

  • 【新刊】興味ありがちな新刊(文庫 編)/4〜5月新刊

    4〜5月の新刊(文庫)チェックです。 選定ルールは、 ・4〜5月頃に出版された本(文庫)。 ・興味ありがちな10冊精選。

  • 【新刊】興味ありがちな新刊(新書 編)/4月〜5月

    4〜5月の新刊(新書)チェックです。 選定ルールは、 ・4〜5月頃に出版された本。 ・興味ありがちな10冊精選。

  • 【映画】『あの子を探して』/責任や義務ではなく、愛ゆえに...

    1999年製作の中国映画。監督はチャン・イーモウ。一切のプロの俳優を使わず素人だけを起用して製作したユニークな映画である。1999年ベネチア映画祭で金獅子賞を受賞。 あの子を探して [DVD] 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D) 発売日: 2015/09/02 メディア: DVD この商品を含むブログ (1件) を見る

  • 【小説】白石一文『私という運命について』/「ほんとうに不幸なのは出産できない女性」?

    2005年に出版された白石一文さんの長編小説。2014年にはWOWOWにてドラマ化もされました。 【内容】 大手メーカーの営業部に総合職として勤務する冬木亜紀は、元恋人・佐藤康の結婚式の招待状に出欠の返事を出しかねていた。康との別離後、彼の母親から手紙をもらったことを思い出した亜紀は、2年の年月を経て、その手紙を読むことになり…。 女性にとって、恋愛、結婚、出産、家族、そして死とは? 一人の女性の29歳から40歳までの“揺れる10年”を描き、運命の不可思議を鮮やかに映し出す、感動と圧巻の大傑作長編小説。[アマゾンより] 私という運命について (角川文庫) 作者: 白石一文 出版社/メーカー: …

  • 『性の弁証法 —— 女性解放革命の場合』/革命としてのフェミニズム(シュラミス・ファイアストーン Shulamith Firestone)

    著者の経歴と本書の内容 今回紹介する本はシュラミス・ファイアストーン [ Shulamith Firestone ] が著した『性の弁証法』。副題は「女性解放革命の場合」です。ファイアストーンは1945年カナダ・オタワに生まれ、大学では美術の学位を取得。その後、画家としても活動していましたが、急進的な女性解放運動(ラディカル・フェミニズム)の創始者としても活動します。 原書は1970年刊(翻訳は1972年 林弘子訳)。内容の要約を以下に引いておきます。 男性と女性の間に本質的な生物学的不平等があるのだろうか?ファイアストーンは、はっきりあると断言している。ファイアストーンは、性の区分そのものが…

  • 【新刊】興味ありがちな新書 10冊/2018年2〜3月新刊

    2〜3月の新刊(新書)チェックです。 選定ルールは、 ・2〜3月頃に出版された本。 ・興味ありがちな10冊精選。

  • 小椋佳『シクラメンのかほり』について —— 隠された「愛する人への想い」

    『シクラメンのかほり』とは?... 1975年4月に布施明さんのシングル曲としてリリースされた名曲。 作詞・作曲は小椋 佳。編曲は萩田光雄。 www.youtube.com 歌詞はこちらにあります。 シクラメンのかほり 布施明 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索

  • さだまさし・フェミニズム・天皇制 —— 山口百恵『秋桜』について

    『秋桜』(コスモス)とは…? 1977年にリリースされた山口百恵の19枚目のシングル。作詞・作曲はさだまさし。 youtu.be

  • 「強さ」というイデオロギー —— 精神的に生きづらいのは「心が弱い」からなのか

    生きづらさや精神的なつらさを訴えることは「弱音を吐く」(意気地がない)ということになるのでしょうか。あるいは、自死する人やうつ病になる人は「心が弱い」ということになるのか。今回はそういうことについて一考してみたいと思います。

  • 【小説】『ベロニカは死ぬことにした』/ 現実的な「異世界転生」への道

    【内容】 ベロニカは全てを手にしていた。若さと美しさ、素敵なボーイフレンドたち、堅実な仕事、そして愛情溢れる家族。でも彼女は幸せではなかった。何かが欠けていた。 ある朝、ベロニカは死ぬことに決め、睡眠薬を大量に飲んだ。だが目覚めると、そこは精神病院の中だった。自殺未遂の後遺症で残り数日となった人生を、狂人たちと過ごすことになってしまったベロニカ。しかし、そんな彼女の中で何かが変わり、人生の秘密が姿を現そうとしていた——。 全世界45ヶ国、500万人以上が感動した大ベストセラー。 〈文庫裏表紙より〉*1 ベロニカは死ぬことにした (角川文庫) 作者: パウロコエーリョ,平尾香,Paulo Coe…

  • 【Kindle】講談社の本 (3) / ブルーバックス・単行本

    前回のつづきです。 ⇒Amazon.co.jp: 講談社の書籍・雑誌・写真集 50%ポイント還元キャンペーン: Kindleストア(2018年2月8日(木) 23時59分まで) ブルーバックス 単行本

  • 【Kindle】講談社の本 (2) / 学術文庫・選書メチエ・現代新書

    前回のつづきです。 ⇒Amazon.co.jp: 講談社の書籍・雑誌・写真集 50%ポイント還元キャンペーン: Kindleストア(2018年2月8日(木) 23時59分まで) 学術文庫 選書メチエ 現代新書

  • 【Kindle】講談社の本 (1)/文学・評論編

    只今AmazonのKindle本(講談社)が50%ポイント還元(実質半額)セールをやっているようです。(2018年2月8日(木) 23時59分まで) ⇒Amazon.co.jp: 講談社の書籍・雑誌・写真集 50%ポイント還元キャンペーン: Kindleストア もちろんお買い得なのですが、講談社のKindle本は数が膨大なため、毎回チェックするのが大変です。そこで、適当におすすめリストを作ってみました。 まずは、文学・評論編(小説など)から。(次に単行本、講談社現代新書、講談社学術文庫、その他の文庫、ブルーバックスと続く予定です。) 文学・評論 村上春樹 大江健三郎 辻村深月 恩田 陸 山田詠…

  • 【映画】1月に観た映画の感想(22作品)

    年末年始・正月休みにいつもよりたくさんの映画を観たので、ざっくり感想レビューを書いてみました。 ちなみに私は映画館には行きません。映画はすべてDVDとかAmazonなどの動画配信サービスを利用しています。そして、評価がある程度定まっている映画を重点的に観るようにしています。*1 ジャンル的には「人工知能(AI)」系の映画が多かったように思います。 あとなぜか「谷村美月」さんが出演している映画も多かった…。 洋画 オートマタ エクス・マキナ メッセージ ゴースト・イン・ザ・シェル アニメ 君の名は。 planetarian ~星の人~ 楽園追放 Expelled from Paradise イヴ…

  • 【新刊】興味ありがちな新書・選書 20冊/2018年1月新刊

    1月の新刊(新書・選書)チェックです。 選定ルールは、 ・1月頃に出版された本(書店によっては12月末) ・"興味ありがち"な20冊精選。

  • 【新刊】興味ありがちな単行本・文庫 20冊/2018年1月新刊

    1月の新刊(単行本・文庫)チェックです。 選定ルールは、 ・1月頃に出版された本(書店によっては12月末) ・"興味ありがち"な20冊精選。

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