chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
乃心 仁
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2016/06/05

arrow_drop_down
  • 第百話 案内

    山へやって来た。当然行先は山頂だが、近くの滝へ行くのが主目的だった。 もうすぐ冬になろうという秋のことで、紅葉をみるには遅いが、涼しい季節だ。暑がりのわたしにとって山を歩くには最適の時期といえた。ただ、落ち葉が積もり、穴ぼこに覆いかぶさっているところや、小さな道を...

  • 第九十九話 バーベキュー

    キャンプするのにちょうど良い感じの河原にやって来た。川の中には人工の石積みのようなものがあり、その上流は小さな淵になっている。時刻は午後三時を過ぎたところで、これ以上進むのは止めて、今晩はここでキャンプをすることに決めた。 ワンタッチのテントを張り、荷物を投げ込めば...

  • 第九十八話 祭り

    駅、球場、競馬場、イベント会場などなど、ぼくは混雑する場所が嫌いだった。そういったところには、決まって幽霊が紛れ込んでいるからだ。 祭りもそのひとつなのだが、これだけは子供が連れて行けとうるさく言ってくるので、仕方なく連れて行く。そんなときは幽霊が見えていても、見え...

  • 第九十七話 山菜

    また夫が妙なことを言い出した。老後には田舎で暮らしたいなんて一体どういうつもりなのだろうか。 わたしは田舎なんてお断りだった。何でもすぐそばにある、都会の方が便利でいいに決まっている。マンションの高層階にでも住めば虫もそうそう寄ってはこない。田舎なんかに行ったら、毎...

  • 第九十六話 百度石

    百度石というのを散歩の途中に見つけた。毎日通うことにした。いつも同じ願いを言い続ける。家内安全だ。 ある日、いつもと同じようにお参りし、百度目に手を合わせたところで、声が聞こえてきた。 「ちょうど百度目だな。何が願いだ?」 「えっ。誰だ」 ...

  • 第九十五話 呪われた家

    そろそろこの家は処分してしまった方がいいかと思い始めていた。叔父から遺された家だった。 叔父には妻も子供もいなかった。遺産相続は兄弟になる予定だった。叔父の兄にあたるわたしの父はすでに他界していたので、わたしにも代襲相続の権利があった。 叔父は亡くなる前に...

  • 第九十四話 呼び掛け

    朝、出勤のため駅に向かう途中のことだった。向かい側から歩いて来る人に声を掛けられた。 「ああ。ちょっと、あなた」 突然呼び止められ、道でも尋ねられるのかと思った。 「何でしょうか」 「この先は真っ直ぐ行かない方がいい。そこは左へ曲がってくださ...

  • 第九十三話 起き上がれない

    出張先のホテルでのことだった。仕事はうまくいった。ホテルに一泊し、翌朝に帰る予定だった。部屋に入ってから寝るまで特に何事もなかった。 ところが、翌朝、目が覚めると体の自由が利かなくなっていた。金縛りではない。腕は動くし、目も動く。言葉も話せた。上半身を起こすことはで...

  • 第九十二話 壁のシミ

    引っ越し先の新居には、ひとつ嫌なところがあった。借りるまで分からなかったことで、一部の壁にシミが浮き上がってくるのだ。 気味が悪いので、霊感のある友人に相談するため連絡をとると、旅行に出ている真っ最中で、しばらくは帰らないという。 「このまま電話でいいから、...

  • 第九十一話 公衆トイレ

    駅からの帰り道、公園の公衆トイレに入った。飲み会に行った帰りで、間もなく午前零時になろうかという時刻だった。 トイレ内の個室に駆け込み、急いで便座に座る。何とか間に合ってホッとした。 用を足し終えて、立ち上がろうとするが、立ち上がれない。金縛りと言うやつか...

  • 第九十話 ババ抜き

    仕事から帰るなり、娘がババ抜きをしようとうるさかった。妻と三人で食事を終えると、早速、居間のテーブルの上を片付けてトランプの用意を始めていた。 娘はまだトランプを覚えたばかりで、したくて仕方がないらしい。 風呂からあがって三人でババ抜きを始めた。 ...

  • 第八十九話 墓地

    下山途中でのことだった。夕暮れになって辺りは暗く、見えづらくなっていた。あと少しのところで、本来のルートを外してしまったらしかった。 下るに任せて進んでも問題はないはずだった。焦る必要はまったくない。 行き着いた先は小さな墓地だった。十数基の墓石が見える。...

  • 第八十八話 眼鏡

    信号のない交差点を通るとき、何かにぶつかって乗り上げた。真っ直ぐ前を見ていたつもりだった。人も動物も何も見えなかった。だから、ぶつかるまでブレーキすら踏んでいない。 交差点を過ぎたところで、車を道路脇に寄せて停めた。車から降りて、走って来た道を振り返るが、道路には何...

  • 第八十七話 蛇

    最近、腕、腹、首、足、背中など体のいたるところが、ズキズキと痛むことがある。痛みを感じるところには、決まって赤い奇妙な縞模様が浮かび上がっていた。 今も左腕が酷く痛みだした。飲み会に行っていた友人を車で送ってあげているところだった。 助手席に座っている友人...

  • 第八十六話 試験

    進学して高校一年になって初めての学期末試験のときだった。 四時限目は、ぼくの最も苦手とする数学の試験だった。ある問題で考えが行き詰まり、適当な回答を記したところで、一切の身動きがとれなくなった。頭というか、脳がどうにかなったと思った。次段階として気を失うであろうこと...

  • 第八十五話 禁煙

    会社の飲み会へ行った。ぼくを含めて二十人ほどの飲み会だった。 ぼくの部署が開催する飲み会で、他部署からも数人の女性社員が呼ばれていた。そのなかには、ぼくの気になっている女の子がひとりいた。 飲み会が進むうちに、煙草の話になった。今ここにいる二十人ほどの内で...

  • 第八十四話 盗難

    タクシー会社に就職した。一台のタクシーを割り当てられると、近くで見ていた、ほかの運転手たちが妙な顔でこちらを見ているのに気付いた。 わたしに鍵を渡した職員は、みんなを追い払うような仕草をする。みんなはそのまま仕事に向かって行った。 わたしもタクシーに乗り込...

  • 第八十三話 道連れ

    今夜こそは目の前の女を殺そうと決めていた。いろいろと考えた結果、殺さない限り、この女と別れることは不可能だという結論に達していた。 睡眠薬とロープを用意してきていた。女の住む部屋で、自殺に見せかけて殺すつもりだった。 女は万にひとつも自分が殺されるとは思っ...

  • 第八十二話 訪問者

    ぼくには霊感があった。友人が新たに引っ越した先の部屋を一度見てくれと言ってきた。 事故物件なら借主に伝える義務があるはずだが、騙されているかもしれないというのだ。こう言ってくる以上、何か霊的なことが起きているということなのだろう。 訪ねていくと、友人が恐る...

  • 第八十一話 とおせんぼ

    道に迷っていた。 そのうち、車が一台やっと通れるくらいの細い道に入り込んでいった。 進んでいくうちに道路上に女の子が座り込み、何かを地面に描いているのが見えた。 クラクションを鳴らす。女の子は完全に無視をしている。 何度もクラクションを...

  • 第八十話 ねずみ花火

    盆休みにいとこのお姉ちゃんがやって来た。 お姉ちゃんが着いたのは夕暮れのことで、伯父と伯母は後からやってくるとのことだった。 辺りが薄暗くなり始めたころ、待ち切れなくなったあたしは、恒例の花火を始めようとせがんだ。 「伯父さんと伯母さんがまだだけど...

  • 第七十九話 御守り

    ぼくは高校受験を間近に控えていた。 今日は母が御守りを買ってきた。学業成就の御守りだった。 父も母と同じことを考えていたらしく、御守りを買ってきて、夕食のときに出してきた。 「あらっ。あなたも買ってきたの」 「あなたもってことは、おまえも買...

  • 第七十八話 お化け

    一歳の息子を抱いて、小学一年生になる娘を公園に遊びに連れて来ていた。 わたしは息子を抱いたままベンチに座り、ぼんやりと、娘とその友達を眺めていた。 しばらくすると、娘たちは奇妙な遊びを始めた。 女の子の四人グループだった。一人と三人に別れ、一人...

  • 第七十七話 ヒッチハイカー

    夕方になり、荷物の積み込みが終わったトラックに乗って長距離輸送に出た。 出発して間もなく重大な故障がトラックに起きていることに気づいた。 カーステレオ関係がうんともすんとも言わないのだ。向かう先の道順は分かっているのでカーナビが動かないのはどうでもよいが、...

  • 第七十六話 閉じ込め

    溜池のあるところで仕事をさぼって昼寝をしていた。営業の外回りと偽って昼寝をするのが習慣になっていた。 今日はいつもよりのんびりして終業時刻の前に帰社すればいいだろうと思っていた。 帰ろうとすると、溜池に続く道の途中にある扉が閉められていた。 おか...

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、乃心 仁さんをフォローしませんか?

ハンドル名
乃心 仁さん
ブログタイトル
ホラー小説 ショートショート 書庫
フォロー
ホラー小説 ショートショート 書庫

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用