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乃心 仁
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2016/05/16

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  • 第百話 吊り橋

    山中にある吊り橋にやって来た。古い木製の橋だった。 橋の手前には看板があった。 『危険ですので、おひとりずつお渡りください』 吊り橋の先を見ると中央付近にひとりの男が立っている姿が見えた。男は吊り橋から谷を眺めていて、どちらに向かうつもりなのか分か...

  • 第九十九話 カレーライス

    しばらくぶりに彼女ができた。 いつもぼくのアパートにやって来ては掃除をしたり、洗濯をしたりと、ぼくの身の回りの世話を焼いてくれる。 料理の腕も相当なもので、手料理も必ず作ってくれた。どれを食べてもおいしかった。作り置きまでしてくれるので、ぼくはひとり暮らし...

  • 第九十八話 ボウリング

    ひとりでボウリングをしていると、となりのレーンで投げていた男が微笑みながら近づいてきた。ちょうど一ゲームを消化したところだった。 「どうでしょう。ひと勝負やりませんか」 賭けてボウリングの勝負をやろうという誘いだった。 一ピン千円でお互いが倒したピ...

  • 第九十七話 タクシー

    酔っ払いの会社員を自宅まで送り届け、駅まで戻る途中、病院前で老婆をひとり拾った。 バス停だったが、待ち切れなくてタクシーに手を挙げたようだった。 乗り込んできたのは何とも影の薄い、顔色の悪い老婆だった。これから病院へ行くと言った方がそれらしいが、行き先は自...

  • 第九十六話 看護師

    わたしの受け持ち患者である、ひとりの男の子が死んだ。まだ小学生になったばかりの子供だった。ランドセルを背負えたのが最期の祝い行事になったに違いない。もともと助かる病気ではなかった。 ベッドは今日一日だけ縞模様のシーツに覆われ、明日には次の患者が入ることになる。 ...

  • 第九十五話 予知

    事件、事故に関する予知が働くようになった。頭の中に突如、その現場の光景が浮かんでくるのだ。 子供が川で溺れているところだったり、コンビニ強盗が押し入るところだったりする。ただし、その後の光景を見ることができない。 溺れていた子供が助かったのか、コンビニ強盗が捕まった...

  • 第九十四話 殺された記憶

    引っ越しをして新居に入った友人を訪れた。簡単なお祝いを兼ねたものだった。 玄関を入った感じでは、物音が筒抜けの安普請のアパートだが、内装はきれいに改装されていて住み心地の良さそうなところに思えた。 二間ある奥の部屋に入ると、先客がひとりいた。ぼくの見知らぬ...

  • 第九十三話 幽霊

    今夜の寝床にしようと入った公園で幽霊に出会った。 初めは幽霊だなんて思ってもいなかった。わたしと同じホームレスのひとりだと思っていた。 男は嬉しそうに、にやけた面で言った。 「おれはもう死んでるんだよ」 こいつは何を言ってるんだと思ったが...

  • 第九十二話 毒キノコ

    自殺をするため山中に入ったが、手頃な場所がなかなか見つからない。 散々歩き回って見つけた木の枝は何だかパッとしない。どうせ死ぬならもっと気に入るものがよかったが、こんなことを考えていては、いつまで経っても死ねそうにない。 ここで死のうと決めて木の枝にロープ...

  • 第九十一話 心霊スポット

    ひとりで古い別荘地を訪ねた。 古いと言うより潰れたと言った方が合っているだろう。もうどの別荘も誰も使っていないはずだ。 夏場の避暑地として昔は流行ったようだが今ではどの建物も廃屋同然になっていた。山奥の廃屋というだけで、何か事件でもあった場所という訳でもな...

  • 第九十話 引かれる

    わたしが寝ている横に女がひとり正座をしている。長い髪を垂らせて小刻みに体を揺すっている。泣いているようにも見えるが、顔は髪に隠されていてはっきりと見えない。知っている女のようにも思うのだが、思い出せない。 体の自由は利かないし、声も出なくなってしまっていた。心の中で...

  • 第八十九話 別世界

    公園内の池の前に置いてあるベンチに座っていた。 池には人の顔面だけが水面に浮かんで動いていた。表情に変化はなくただじっと空を見上げている。水死体なのかなと思っていたら、それは亀の甲羅だった。人面の甲羅を持った亀だ。薄気味悪いが、捕まえれば一儲けできそうなくらいに人の...

  • 第八十八話 標本

    アパートに霊が出始めた。目に見えないので正体は分からないが、体中をくすぐってくるという変わった奴だ。くすぐられるだけならと思うかもしれないが、狂ってしまいそうなくらいにイライラさせられる。 夢の中にも現れることがあるが、やはり姿は見えない。そのときは剣で刺されたり、...

  • 第八十七話 パラパラ

    駅に向かう道の途中に、一軒の空き家の洋館があった。ちょっと古い家でお化け屋敷のような雰囲気を持っていた。 普段は何も気にしていなかったのだが、今日は小学生くらいの男の子が塀越しに覗き込んでいるのが目に入り、わたしも釣られて洋館を見た。 男の子は二階を見上げ...

  • 第八十六話 補欠

    義姉が携帯電話に届いたメールを読み上げた。 「サクラ舞う」 聞いた途端、兄は大喜びした。 わたしの姪である兄夫婦の娘から義姉に送られたメールだった。姪の名前はサクラ。大学受験の結果を確かめに出掛けていた。 兄夫婦は祝いの準備を始めた。ぼ...

  • 第八十五話 ノック

    電車が駅に着くなり、ホームのトイレに駆け込んだ。危ないところだった。 おそらく電車からトイレまでの間は、誰が見てもおかしな歩き方になっていただろう。恥ずかしい思いをしたが、それでもこうして間に合ってよかった。 個室に入って用が足し終わっても、まだ鈍い腹痛は...

  • 第八十四話 混入

    昼を過ぎ、客足が増えてきたところで気がついた。指に巻いていた絆創膏がない。 慌てて探すがどこにも見つからない。客に出した料理の中に紛れ込んだのかもしれなかった。 客席に目を向けると、注文を受け取った客はすでに料理に手を伸ばしている。しかし、それらしい反応を...

  • 第八十三話 コタツ

    とても寒い日だった。 猫を追い出してコタツに潜り込む。コタツの中は暖かくて気持ちいい。それでも、わざわざ猫を追い出したのは間違いだったかと思った。この暖かさの中で猫を抱いていると、一層気持ちよかったかもしれないからだ。 コタツのぼんやりと赤く光るヒーターを...

  • 第八十二話 記憶喪失

    駅から会社に向かう途中、突然誰かに背中を叩かれた。ドンッと突かれたような感じで、前へ数歩よろける。 誰かに襲われたわけではないのは頭のどこかで分かっていた。記憶にないことだが、叩かれたのはぼくが頼んだことのように思う。それなのに、何が起きたのか分からなかった。 ...

  • 第八十一話 赤ちゃん

    「ヒッ」 テレビを見ていると、妻がやって来て小さな悲鳴を上げた。身の縮むような悲鳴だった。 振り向いたわたしは妻の歪んだ顔を見て、驚いた。 「何だよ、その顔は。何かあったのか」 妻は目を大きく見開いたままで、握りしめた拳を噛むようにして口を...

  • 第八十話 穴釣り

    防波堤へ釣りにやって来た。穴釣りで根魚であるカサゴを狙うつもりだ。 先端にある灯台に向けてテトラ帯を探っていく。エサにはシラサエビを用意していた。 釣りの準備を終え、さあ行くかと思ったとき、声を掛けてくる者がいた。 「今日は何を狙っているんですか」...

  • 第七十九話 引っ越し

    同じアパートに住む友人が訪ねて来た。このアパートに住み始めてから知り合った女性でお互い女のひとり暮らしをしている。 全部で十二部屋ある二階建てのアパートで、わたしは二階の端部屋に住んでいた。友人は一階のちょうど反対側の端部屋で、もっとも遠い位置関係にある。その分、余...

  • 第七十八話 マテ貝

    一年ぶりに潮干狩りにやって来た。 たくさん獲ってやろうと潮が引き始めたところで海に向かった。完全に潮が引くのを待っていたのでは収穫は少なくなる。海に先に入った者ほど収穫は多いのだ。これは去年のぼく自身の経験から知り得ていたものだった。 砂浜を勢い込んで進ん...

  • 第七十七話 霊感

    友人に誘われてお化け屋敷の探索に行くことになった。一家心中のあった家で子供の幽霊が出るのだと言う。 以前その家に住んでいたのは両親と女の子の三人家族だったらしい。今も家の中や庭に放置されたままになっているおもちゃなどが勝手に動き出すそうだ。 参加メンバーは...

  • 第七十六話 身代り

    生理的にと言えばいいのか、誰にも、どうにも気に入らない奴のひとりくらいはいると思う。おれにもひとりだけそんな奴がいる。 Aのことを、どこがどう気に入らないのかは自分でも分からない。目に入れば文句をつけ、殴ったり、小突いたりしていた。 ところが、ある日を境に...

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