#52 トイレにて

トイレにてスッキリしたのち紙がない神に祈るも拾う紙なし季語「スッキリ」

#51 進化する町

今日も町に出て知らない人たちにぶつかりながら歩き続けた何故ぶつかってしまうのかというとこの町の信号機がいい加減だからだ一般庶民にはそれぞれ決まった感覚で点灯しているように見える信号機しかし実は猫と総理大臣と女子高生が通る時にしか青にならない

#50 心の折れたエンジェル

天使の輪を友達に借りパクされて以来周りからただの人みたいに思われてるってなんだか思い詰めた表情で昔話を淡泊に語る君特別可愛くもない恥じらいそれはそれはすごかった僕はとにかく目につくもので現実逃避ができないか考えたけど春夏夏夏秋冬冬春と一周し

#49 極み

ひつじを上手く数えられなくなったともっともらしい理由に託つけて好きなことだけを極めようとしているんです来る日も来る日も来る日も来る日も記念日じゃなくたってプレゼントしていいんですきっかけなんかなくたってありがとうって言っていいんです僕は嫌い

#48 仰向けのブルース

天までとどけ着払いで

#47 青い夜

点々がどこまでも転がっていき土に伏せる欲望を巻き上げた遥か空の上僕達は上昇気流をこの手に掴むやがて現れる女神の屈託無い微笑みに乾杯

#46 黒ノート

「12月2日」久しぶりのお目見えだが歓迎などしない暇潰しする術がなくて焦ったもう会話できないかと思ったとりあえず家に帰る「12月3日」本当は救われたかっただけだと思う後付けの繋がりに こんなにも苦しめられようとは「12月4日」バランスとれね

#45 ミス・サディスト

あなたがあまりにも私を買い被るから今日は布団に入ってから眠りにつくまであなたを好きになる練習をしてみようと思うはぁ〜私があなたを好きになるにはいくつかクリアしなければならない問題があるひとつは耳を使わないことあなたの間抜けなハイトーンボイス

#44 浮いた月

下弦の月を掌隠しまんまるおはじき浮かべてみるアシンメトリー2つの月を両手の掌ひた隠すお空のページが捲れたら色が変わって朝になる隠した月も落ちてきて代わりに太陽こんにちはけれども浮かべたおはじきはお空の上で泳いでる太陽困って睨みつけおはじき怒

#43 はじめてのおつかい殺人事件

ピーマンともやしと牛乳とスポーツ新聞買ってきてそんでもって帰り道できるだけ人目につく商店街とかで発作的に倒れて死んできて外傷はつけちゃ駄目右手の買い物袋からこぼれ落ちたダイイングメッセージを見て偉い大人たちが こぞって謎解きするから正解かど

#42 マイナスドライブ

あなたの体温があたしからフェードアウトしていく2月単純に可笑しかった出来事も記念日の指切りも自分勝手にみんな夜の海に投げ捨てよう23時女友達を誘った淋しいからじゃなく今日のあたしを全部肯定してほしいからあることないこと空気に混ぜて134号線

#41 ワゴンマン

デジタルがオレを横切りやがった水平に突っ走るクマ色の流星群は何故かオレには当たらないレトルトアイスが好きだって女の得意料理はオニサラダ結婚してしまった離婚してしまった印鑑の先を舐めたら25日程若返ったカラス擬きが父さんをリストラしたらしいオ

#40 黒猫と揺れ

泣く子も黙る真夜中アパートの一室で情緒不安定な黒猫を見つけた早速不法侵入ブラックライトで猫を照らすとその影が窓ガラスに飛び散りみるみる巨大化猫は薄月を睨んで可愛く泣いた後こんな芸当もできるんだと僕を丸呑みして見せ既往の夜に吐き捨てた昔になん

#39 ドリームハンター

ロックオン今宵あなた様の夢は我々「流れない星」によってジャックされました今から26分44秒間我々の活動目的についてサブリミナル効果を用いて編集した映像がありますので強制的にあなた様の脳内へお送り致しますご了承くださいそれではどうぞ安らかに再

#38 宣誓

宣誓私たちは何物にも臆する事なく無害な苛立ちを吸っては吐いて模範となる大人に怒られながらも循環し続ける事を誓いません

#37 それでは回答を始めてください

『それでは回答を始めてください』というゴングと同時に出席番号2番と14番が試験監督に殴りかかるまき上がった埃と星マークを確認した後堂々とカンニングしあう生徒たちカリカリカリカリ…数日後この事態は母親がPTA会長である37番の圧力により揉み消

#36 生きまくる

魚座の女です猪みたいな顔だと自分では思いますがそんな私を 彼は「チェリーパイ」と呼んでくれます基本バカです彼もまたバカですバカとバカで打ち消しあってプラスにならないかなぁと思い告白しました『オレ バカだけどいいかな…』という彼の返事それはと

#35 晴れの子

『おかあさん 今日はとけいが降るね』天才とは一体どのような人を指すのか私の娘は6歳普通なら小学校に通う年齢だ『おかあさんはアメダマとカエル どっちとケッコンするの？』お母さんはお父さんと結婚したのよとは言わない『カエルかなぁ ヤツは大人だし

#34 自由時間

歩道橋の上で視界に入ったものを瞬時に数えるトレーニングをしていた体内時計で一時間くらいかワイシャツのよれた会社帰りのサラリーマンが『おねーちゃん何してんの』と寄って来た軟派な野郎だ自分の中の集中力を最大限に高めてシルバーのセダンを数えていた

#33 靴底

どれだけ踏みつけられても死なない華がある靴底みたいな人間になりなさいもしも立派な靴底になれたらその時は先生が喜んで履いてあげます

#32 シークレットギャラリー

その手にあるものこれ以上はあげられない後悔も懺悔も意味のないことだってインプットしてあるのに心臓に手を突っ込んで気付けば大嫌いだった壁に陳列する自分がいるこれ以上は僕もあげられないんだ何も他のことを考えてくれ無理なら明日他のことを考えてくれ

#31 死んじゃえ

あなたはせっせとスーパーで買った豚肉のトレーを洗っているけれどその間私はすることがないよすぐ隣のリビングで見たくもない討論番組を見ながらひとりぼっちあなたの彼女だという重圧に今にも押し潰されそうだよ地球なんか救わなくていい私がいるのにトレー

#30 黙示録

誰も掲示板には集まっていませんそれはいつ見ても過去の写真しかないからですみんなは見飽きた掲示板よりも正しいことを教えてくれる 占いの先生の方が好きですそうゆう生きものです人気のない掲示板をせっせとキレイにしている私は正しいことばかりを選べな

#29 眼鏡と胃袋

胃袋に詰まったリアリズムを消化することも吐き出すこともできないように人はゆっくりと回転を続けるこの星の上でただただ イメージを作り何かに当てはめているそれを世界的規模で捉えると本能という一世帯あたりに置き換えると火の車という

#28 vs.サイコパス

誰かに狙われている高層ビルの屋上からなどという類のスタイリッシュなものではなく相手はおそらく生粋のサイコパスである昨日はとうとう 母親のスマホケースにまでギリギリセーフとマジックで書いてあったギリギリセーフこれがサイコ野郎のサインであるある

#27 サテライト

目当てじゃない魚をリリースするときの動作で私を帰らそうとするなんてなかなか面白い演出をする奴だな思わず唸ってしまいそうだったそのままピンヒールに片足突っ込みそうだった危ない早くシャワーを貸してくれ貸してくれたら私のオリジナル限定ステッカーを

#26 弱食強肉

あたしの人生って何だろう二十を過ぎた頃からそんなことばかりが頭を過るあたしはどんな奴だったろうただ本能のままに生きていた学生の頃それがとても自然な状態に思えて大人になった今では傷付くことでしか経験値を得られないバランスの悪いゲームの主人公の

#25 ストレンジの接続

ごみ収集車のドライバー何やら悲しそうな表情で黙々とごみを車にぶちこんでいるので『何がそんなに悲しいのですか』と鼻の穴に指をぶちこんだ無視されたかと感じるくらいの間があり『名前も知らない人間の過去を 土に還すからです』と言って抱き締められた左

#24 周波数

取り込む周波数を選べない答えを求めてくる人が100人玄関に並んでた整理券を出してなんとか帰ってもらったがたぶん明日また来るだろう深夜隣のアパートで赤ん坊がわんわんうるさい母親はヘッドフォンで流行りの歌を練習してるわんわん言ってる赤ん坊の感性

#23 黒髪を見つめる時間

一切の邪念を切り落としたいその日僕は人間じゃなくなるのだろうか執拗に丸を押し潰すサウンドトラック器量の黒髪を愛した彼女の邪念は何だったのだろうか写真に写る時以外はずっと俯いていたから僕は彼女のスリーサイズしか知らない

#22 ミルクバー

真夜中不意に部屋のコンセントからこの夏に死んでしまったおとうとの声がした穴の中を覗き込んでみたけど誰もいない爪で穴をカリカリやってみたすると内側からおとうともカリカリやってきた無邪気さは相変わらずだな死んでしまったと思っていたのに何だ こん

#21 走馬灯

二学期の初めウチのクラスに佐久間くんという転校生がやってきた佐久間くんは自分のことを十年後の未来からきたと言っていた一ヶ月が過ぎても佐久間くんはクラスの輪に馴染めずいつもひとりぼっちだった遠足に行った時乗り物に弱い佐久間くんはバスの中でエチ

#20 四季全書

【錯覚橋】見渡せる全ての景色が偽りである毎日毎日 橋の上を幾人もの旅人が通行するいつからか「手を繋いだまま飛び降りた男女は 来世で結ばれる」という根も葉もない噂が広まり悲しくも決行するカップルが続出したその後彼らが幸せになったかは 誰にもわ

#19 天気予報

わたしと逃げようこの世界はもう 違う人のものだから靴は一足あればいいよ汚れたら 何がついてるかわからない土にぺしゃりと座り込んでスコールで洗ったりするのそういうの伝説にしてしまえ楽しいことばかりとは限らないようにつまらないことばかりとは限ら

#18 バックアップ

今のわたしバックアップとっといていつ消えてしまうかもわからないからそうしたらあなたの手で 復元してほしいの『ゴメン俺の頭の中 出会い系サイトのやりすぎでウィルス検出されまくりなんだきっとバックアップはうまくいかないよ』許せないこの浮気者

#17 花園

『パパ おしごと がんばらないでね』一緒に過ごす時間の少ない娘は私が仕事を頑張らなければ早く帰って来られるものだと思っている『パパ おたんじょうびに おさかな見にいこうね』愛情を注がず育った娘が成長することはなかった娘はもうすぐ亡くなった一

#16 25:00

時計の針を戻したの君だね悪いやつ映画の見過ぎだそんなにタイムトラベルがしたかったのかね砂時計の方が確率が高そうだとどうして思わなかったのかね

#15 孤独のオーケストラ

どうしても元気が出ない時には紙に「orz」とうなだれる自分を書きそれを自分宛の封筒に入れてポストに投函しましょう数日後無事にうなだれる自分がやってくると何だか少し笑えてきますそしてその時にはきっと優しく自分を諭せるはずです自分の事を一番分か

#14 アトリエ

気楽になほらトランジスタ食えよ頭が良くなるぞ彼は大安にも変わらず下駄箱を漁っていた初夏の風鈴は僕らをまるごと追い越し再び交わることはなかった

#13 恵みの水

朝シャワーからは既に一滴の水も出ない水道料金を払えないのでこの溢れる涙を使ってくださいと言ってみたけれど無視され虫にも刺され水も涙も枯れたどうしようもなく風呂場で思い切り調子にのって ゴメンなさいという呪文を唱えると不意に頭から水を被ったシ

#12 粉ミルク

子供みたいな事 言ってるから万屋で粉ミルク買ってきたおいしい って飲み干した後に吐き出して赤ん坊のように泣き叫んで手に負えないから 子守唄で殺したなんて酷い診断書おひさまの医師には読めない流れる新聞記事を彩るだけの人生が人間の未来じゃない仲

#11 全ては愛するが故に

寝る準備ができた人順にここへ整列しなさい今から抜き打ち身体測定をします何でって先生のテンションが異常に上がってきたからよふふふーんまさか修学旅行先で身長測られるとは学級委員の御手洗君君でも思わなかったでしょう抜き打ちなんだからみんな覚悟しな

#10 午後

支離滅裂な言葉をかき混ぜて泡になったものを心情とするそんなことは小学生でもやっている今度見てみるといいやつらコーラとか飲むときところで僕は僕の考えた嘘まみれの日常で人を感動させたいどうすればよいのでしょうカプチーノに例えて教えてください

#9 パラダイム

知恵袋をなくしたウチのばあちゃん物忘れが酷くなり家族の名前も思い出せないショックだった身内を袋に入れていたとはでも違ったデイサービスのヘルパーさんが教えてくれたいつも御守りのように袋を抱え孫を出しては自慢していたとなんてこった御守りの中身ま

#8 あれから

さよならを言いたかったけれどとうとう言えなかった『ちょっとジュース買ってくるね』という台詞をコンクリートに丁寧に置いてあたしはその場を去ったバレないように精一杯のスキップで後で人伝に聞いた話だと相手もすべてを察していたらしくそのことを知らさ

#7 廃人処理場

『すいませんこの四丁目の廃人処理場に行きたいのですが』ああ はい知ってますえーと 何かメモ持っはいはい じゃあいいですかまずこの目の前の国道をですねありえないくらいに直進します交差点には目もくれず一直線に突き進んでくださいできれば何があって

#6 ロールプレイング

ぐるぐるとわたしの頭の中を駆け回ってる子供がいるので注意した『やめなさい きみ どこから来たの』すると子供はそれをミスリルシールドで弾き返したパンパカパーンわたしが注意したせいで子供は一段と足早になりうるさくなってしまった好き勝手にわたしの

#5 敗者

落ちるとこまで落ちたなって上から言われてもその位置から底は見えまい携帯の電波もしっかり入ってるんだぞ

#4 鳥

馴れ合い舐め合い慰め合い僕らはその度に髪の毛を切り刻んだりしていちいち人間関係に引っかかる煩わしい長い髪めいずれ無風の空に飛び立つ羽となれ

#3 消える世界

ランキング上位になりたいそのために毎日18時間パソコンをいじくりたおし世界中の人に向けて僕をアピールしてきた僕は7256位先週は7251位だったのでファイブランクダウン今週の1位は埼玉県の山田さんという小学4年生の女の子だったランキングダウ

#2 ループ

爪痕なんて残しても呼ばれるのは お前じゃないケイサツだよあ なるほどね呼ばれる前に自首するのかそりゃそうだ知名度が低すぎてケイサツも爪痕だけじゃ捜せないもんなそれなら最初から爪痕残す必要ないなくだらないこと言ってないで早く幼稚園行けよ迎えの

#1 ファーストコンタクト

未来も希望もない砂漠の中にいたときオアシスを探すために夢中でアンテナをみがいた7年くらい経ってゆっくり瞬きをしたら目の前には砂漠なんてなかった気がついたらエアコンの自動運転が支配する快適なワンルームの中にいてアンテナのことなどすぐに忘れてし