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2016/03/09

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  • 止まない雨 4 Last

    重厚なエンジン音とともに黒塗りのBMW7シリーズが走り去り、ひとりになった途端、深い闇に溶け込んでいたジョンヒョンは故意に歩調を緩めた。自堕落に両手をスラックスのポケットに突っ込み、頭上から静かに降り注ぐ雨をひたすらその身に浴びる。気休めにしかならないと分かっていても、自分の中の荒れ狂う感情を鎮めずにはいられなかったのだ。躊躇うことなく傘を差さずに雨の中を歩くのは、幼少の頃以来だろうか。当時は、ず...

  • 止まない雨 3

    長年恋焦がれている相手は極道の世界と決別するかのように、実にあっさりと屋敷を去っていった。『もう会うこともないだろうけど……』という言葉通り、ヨンファとはそれきり一度も顔を合わせていない。彼と袂を分かったあの瞬間から心にぽっかりと穴が空き、ジョンヒョンは底知れぬ喪失感に襲われた。それでも、こちらの事情などお構いなしに日常は繰り返される。まるで何事もなかったみたいに、ジョンヒョンを取り巻く環境は待った...

  • 止まない雨 2

    六月に入ったばかりのその日は、朝から冷たい雨が降りしきっていた。長い縁側に面した総檜造りの廊下を歩いていたジョンヒョンは、何かに引き寄せられるようにほぼ全面ガラス張りの大きな窓に目を向ける。そして、わずかに眉を寄せた。雨空が灰色の厚い雲に覆われているせいで、周囲はどことなく薄暗い。まさに、今の自分の心情を表わしたような天気だな……、とジョンヒョンは半ば投げやりに、どこか他人事のように思ってしまった。...

  • 止まない雨 1

    六月下旬の金曜日。深い闇に包まれた真夜中、三人の男を乗せた黒いBMW7シリーズは活気のある雑然とした明洞の街並みを抜け、江南区清潭洞にあるタワーマンションへと向かっていた。先ほどまでの煌びやかなネオンに彩られた大通りとは対照的に、高層ビル群に囲まれた幹線道路をひた走っているのが、見なくてもわずかな車体の振動から分かる。「あーあ。また降ってきやがった」静まり返っていた車中に突如、うんざりしたような低...

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