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  • 染井 為人『悪い夏』

    ◇『悪い夏』著者:染井為人2017.9KADOKAWA刊大37回横溝正史ミステリー大賞(優秀賞)受賞作。作者のデビュー作品である。生活保護費の不正受給や育児ネグレクト、薬物売買、など現代社会のダークな世界をドラマチックに描き出した傑作。映画・ドラマ化でヒット疑いなしの作品と思うが…まだ?毎度のことながらこの作家は多彩な登場人物と絶妙な筋運びで、軽快なテンポのためつい一気読みしてしまう。中心人物といえば千葉県船岡市という仮想都市の社会福祉事務所の生真面目で好人物の担当者(ケースワーカー)佐々木守と思うが、対極にいる同僚の悪徳担当者高野洋司が相当なワルで、宮田有子も結構不可解な言動でストーリーを盛り上げる。一方生活保護不正受給者では山田吉男が筆頭で、育児放棄・ネグレクト母親の林野愛実も捉えどころがなく手に負えない。...染井為人『悪い夏』

  • 吉川英治の『新書太閤記(十一)』

    ◇『新書太閤記(十一)』著者:吉川英治1990.8講談社刊(吉川英治歴史時代文庫)吉川英治『新書太閤記』の最終巻である。黒石・白石、戦算、大蟹・小蟹、老いらくの将、女弟子、内と外、姉の子、矢田川原、熱鉄を吞む、表裏の北陸、迷霧、奥村夫妻、つなぎ烽火、雪の迷路、北風南波、鳴門陣、雑魚大魚、笑い候え、君と一夕の会、関白、忍の人、若き日の幸村、冬の風、二つの世間、強引・強拒、禁園の賊とその項26に及ぶ。話は秀吉だけではなく、生涯の好敵手家康との駆け引き、家康に一矢を報いた真田幸村のこと、佐々成政の利家への無謀な挑戦と秀吉の鉄槌、秀吉上杉景勝との会盟、石川伯耆守数正の離反、関白という官職を得ていよいよ徳川攻略を虎視眈々と狙う秀吉の深謀遠慮を描く。北畠信雄は秀吉の巧みな口舌に乗せられ、共に戦った家康に何の相談もなく、うか...吉川英治の『新書太閤記(十一)』

  • 頂いた佐野の桃を描く

    ◇Kさんからの贈り物の桃clesterF6(細目)妻の友人Kさんから桃の贈り物が届きました。今年はサクランボも桃も霜や雹などにやられてどこでも不作のようです。したがって貴重な桃です。こんなにたくさんの桃はあまり描く機会がないので無理をして積み上げて描いてみました。添え物は中玉のミニトマトです。モモはハイライトがなく、柔毛が特徴です。不透明のホワイトを加えると成功する場合がありますが、今回はうまくいきませんでした。関東地方は昨年より2週間くらい早く今日梅雨明けしました。モモ、ぶどう、トウモロコシなど果物がおいしい季節です。この桃は白桃でした。(以上この項終わり)頂いた佐野の桃を描く

  • 柚月 裕子の『暴虎の牙』

    ◇『暴虎の牙』著者:柚月裕子2020.3KADOKAWA刊極道と不良・暴走族など愚連隊といった反社会勢力同士の抗争を描いた長編。『虎狼の牙』シリーズ完結篇である。全編これやくざ者同士の抗争と警察暴対班の癒着体質のが綾なす劇画調ハードボイルドロマンである。前半は広島県警広島北署の暴力団担当捜査二課の係長大上章吾とハングレ集団呉寅会の頭沖虎彦を中心とした流れ、後半は呉原東署捜査二課の班長日岡秀一の登場である(日岡は「虎狼の血シリーズ」に登場した大上の愛弟子である)。これだけ裏社会に詳しく、ハングレ同士の決闘場面、残酷なシーンをリアルに描く女性作者はあまりいない。今回は結末が幾分緩い感じである。大上刑事はやくざ社会幹部と癒着し手柄も立てるので上司も独断専行も許している。作中では広寅のメンバーを初め地取りの叔母さんやホ...柚月裕子の『暴虎の牙』

  • 篠田節子の『カノン』

    ◇『カノン』著者:篠田節子1999.4文藝春秋社(文春文庫)のっけからバッハの無伴奏パルティータ、難解な音楽理論などが登場し、クラシック世界にやけに詳しくて作者篠田節子はこんな世界にも造詣が深かったのかと思ったら、趣味がチェロ演奏だと知って納得がいった。これは音楽を基軸にしたホラーリッシュな作品である。最初亡くなった友人から贈られたCDの曲がいろんな局面で勝手に流れだすあたりは、ふむふむと思ったが、後半でその人物の幻影(亡霊)が現れ、恨めしい表情も見せず消えていく場面を迎えて完璧なホラーと知った。元来ホラーとは嫌悪感を伴う恐怖を指すらしいが、この小説では嫌悪の情よりも友への哀切の情を残しながらこの世を去った薄命の天才青年の現世への強烈な未練の表象として受け止められる。音楽留学を射程に置いたほどの腕前を持つ香西瑞...篠田節子の『カノン』

  • カサブランカとスカシユリの対話

    ◇ユリ科の女王カサブランカが咲いて庭のカサブランカが咲きました。先に咲いた4種類のスカシユリは既に散り果てて、最後のスカシユリが一緒に咲いています。「あんた、色白だし、ずいぶん大柄だし、どこから来たの?」(スカシユリ)「どこからって言われても…あなたと同じ栽培種だから言ってみれば混血ね」(カサブランカ)「生まれは選べないからしょうがないけど、いい匂いだし、豪華で目立つからもてて得だよね」「でも、花の命は短くて苦しきことのみ多かれば風も吹くなり雲も光るなりよ。いつかは同じように死ぬのよ」「わたしどうせ短い一生なら、あなたのように美しくもてはやされて死にたい」「あなただって身長がなくっても華やかな色で人さまを楽しませているわ、同じよ」(以上勝手に想像したスカシユリとカサブランカの対話です)カサブランカは首を垂直か上...カサブランカとスカシユリの対話

  • 垣谷 美雨の『女たちの避難所』

    ◇『女たちの避難所』著者:垣谷美雨2017.7新潮社刊(新潮文庫)東日本大震災を題材にした被災した女性たちの物語である。著者が実際に被災したり身内に被災者がいたわけではないが、津波や被災の状況や避難所の様子などが生々しく伝わってきて、正調東北弁なのかどうかはともかく現地らしさがリアルで、引きずり込まれる。あとがきには作者は現地を訪れ、資料を読み、福島・宮城の被災した友人から話を聞き、仕切りのない避難所で苦闘する女性たちを、生活者の目線で追うことを心がけたとある。主人公は3人の中年の女性である。①ナギサ洞というスナックを営む山野渚。夫とは離婚して昌也という小6の息子がいる。②椿原福子。パチンコに明け暮れる夫がいる。津波で”夫が死んでくれれば”と思った。③乳飲み子を抱えた漆山遠乃。色白の美人。津波で夫を亡くした。頑...垣谷美雨の『女たちの避難所』

  • 家庭菜園のトマト栽培(その5)

    ◇令和3年のトマト終焉を迎えるついに連作障害出現か。まだ7月半ばというのに、すでにトマトはうどん粉病に感染し、消毒で何とか持ち直したものの今度は下葉が黄色く枯れ、もはやこれ以上の結果は望めないと観念いたしました。終わりです。来年はここでのナス科作物は休耕でしょうか。うどん粉病を克服したのに無残な姿無惨な姿2第5果第5果鉢植えの中玉(第3果)(以上この項終わり)家庭菜園のトマト栽培(その5)

  • 染井 為人の『正体』

    ◇『正体』著者:染井為人2020.1光文社刊2017年『悪い夏』で横溝正史ミステリー大賞優秀賞を受賞した作者の『正義の申し子』、『震える天秤』に次ぐ第4作目である。冤罪で少年でありながら死刑宣告を受け脱獄した事件を追う。ある意味数多の冤罪事件を生み出している日本の司法、警察、検察、裁判所を指弾する作品である。死刑囚が脱獄してから追い詰められて銃で撃たれ死ぬまでの1年半の逃走劇を時系列で何段階かに分けてまとめているが、登場人物のキャラクターが巧みに設定されていてインターテイメント色満点である。特に作者の出身地かと紛うばかり(作者は千葉県出身)の山形弁を駆使した会話が面白い。若い夫婦とその子供が刺殺され、隣家から通報を受けた警官が刺殺体のそばにいた少年(当時18歳)を現行犯逮捕した。本人自白で立件され裁判では無罪を...染井為人の『正体』

  • 吉川英治の『新書太閤記(十)』

    ◇『新書太閤記(十)』著者:吉川英治1995.5講談社刊(吉川英治歴史時代文庫)琵琶湖湖畔の賤ケ岳での戦いで当面の剔柴田勝家陣営を打ち負かした羽柴秀吉の次の頭痛の種は東の雄徳川家康との関係である。柴田勝家に勝った秀吉は信長の一周忌を営んだのち大阪に規模壮大な居城を構築し始めた。その規模は信長の安土城をはるかに凌ぐ壮大なものとなった。しかもわずか6カ月の短期間に諸国諸将に競わせ完成させた。信長の嫡子らを差し置いて天下をほしいままにしている佞姦秀吉という一部の世評は秀吉を悩ませている。家康は信長の3男信雄と語らい、義をもって秀吉を懲らしめる戦が必至とみて作戦を練る。秀吉は勝家に次ぐ信長に重臣であった丹羽長秀をぜひ味方に受けたいし、未だ旗幟を明らかにしていない諸将らに書を認め使いを送り味方に付けようと奔走する。家康は...吉川英治の『新書太閤記(十)』

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