2-XI-12
夫人は立ち上がり、きびきびした動作で引き出しから一枚の汚れてくしゃくしゃになった紙を取り出し、息子の前に置くとこう言った。「これをよく読んで頂戴」それはマダム・レオンがパスカルに手渡した鉛筆書きの走り書きのメモだった。パスカルはこれを街灯の灯りで読むというより推測しながら目で追ったものだった。彼は帰宅するなり、それを母の手に投げ捨てるように渡したのだったが、母はそれを残していた……。この走り書きを受け取った夜、彼はその内容の残酷さにショックを受け、何も考えられない状態だったが、今はそんな支障もなく至って冷静な判断が出来た……。ほんの数行に目を通しただけで、彼は身体を硬直させ、顔は蒼白に険しくなり、いつもとは全く違う声で言った。「これを書いたのはマルグリットではありません!」この意外な発見にパスカル自身も仰...2-XI-12
2024/05/31 07:06