chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
arrow_drop_down
  • 2-XI-7

    「グルルー夫妻が言うには、見習いのマルグリット嬢が、彼らの言葉を借りると『お偉方に貰われて行った』後は、彼女とは会っていないとのことだった……でも、それは嘘ね。少なくとも一度は彼女に会っている。彼女が二万フランを彼らのところへ持って行った日にね。そのお金が彼らの財源なのよ……。あの人たち、そのことを吹聴したりはしなかったけど……」「ああマルグリット、心優しいマルグリット!」そう呟いた後、彼は大きな声で尋ねた。「でも、お母さん、そんな細かいことまでどこで知ったんですか?」「グルルー夫妻に引き取られる前にマルグリット嬢が育った孤児院でよ……そこでも、聞いたのは彼女を褒めそやす言葉ばかりだったわ。修道院長様が仰るには、『あれほど生まれつきの才能に恵まれ、気立てが良く、利発な子供は見たことがありません』と。もしも...2-XI-7

  • 2-XI-6

    「で、彼らに会ったんですね……」「ちょっとした嘘を吐いたけれど、そのことで自分を責める気にはならないわ。それでグルルー夫妻の家に入れて貰って、一時間ほど居たのよ……」パスカルを驚かせたのは、母の氷のように冷静な口調だった。彼女がゆっくりとしたペースで話すのでパスカルは死ぬほどじりじりしたが、それでいて急かせる気にもなれなかった。「このグルルー夫妻というのは」と彼女は続けた。「実直な、というのがぴったりな人たちだと思うわ。法律に触れるようなことは決してしない、という。そして七千リーブルの年利収入をとても自慢に思っているようだった。マルグリット嬢を可愛がっていたということはあり得る、と思ったわ。というのは、彼女の名前を出した途端、彼らは親愛の表現をふんだんに使ったからなの。夫の方は特に、彼女に対して感謝に似た...2-XI-6

  • 2-XI-5

    パスカルは母親の面前に立ったまま、片方の手で椅子の背をぎゅっと掴んで身体を支え、来るべき打撃に供えて身構えているかのようであった。彼自身に関わる悲痛な感情は過去のものとなり、今や彼の全神経は高揚し逆上の域に達するかと思われた。目の前には苦悩の深淵があり、それに呑み込まれそうだった。彼の人生がかかっているのだから!これから母親が語る内容の如何によって、彼は救われるか、決定的に死を宣告され、恩赦を請うことも出来ず、希望もない状態に置かれるか、になることになる……。「それじゃ、お母さんが出かけた目的はそういうことだったんですね?」彼は口の中で呻くように言った。「ええ、そうよ」「僕には何も言わずに……」「そうすることが必要だった?何を言ってるの!お前こそ、私の知らないところである若い娘さんを愛するようになり、彼女...2-XI-5

  • 2-XI-4

    というのも、パスカルは自分の母が厳格な伝統に固く縛り付けられていることは知らないわけではなかったからだ。一般市民階級の古い家柄では、母から娘へと代々受け継がれる貞節の掟のようなものがあり、それは情け容赦なく盲目的とも言えるものだということも……。「男爵夫人は夫から崇拝されていることがよく分かっていたんですよ」と彼は思いきって言ってみた。「夫が帰ってくると知って、彼女はパニックになり理性を失ってしまったんじゃないでしょうか……」「それじゃお前は、その人を弁護するというの!」とフェライユール夫人は叫んだ。「お前は、過ちを償うのに罪をもってなす、なんてことが可能だと、本当に信じているの?」「いいえ、断じてそんなことはありません、でも……」「男爵夫人が自分の娘にどんな苦しみを与えたかを知ったら、お前ももっと彼女に...2-XI-4

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、エミール・ガボリオ ライブラリさんをフォローしませんか?

ハンドル名
エミール・ガボリオ ライブラリさん
ブログタイトル
エミール・ガボリオ ライブラリ
フォロー
エミール・ガボリオ ライブラリ

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用