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というわけでマルグリット嬢は誰にも気づかれることなく家を出ることが出来た。それはまた、もし帰宅の際誰かに見られたとしても、どれくらいの時間外出していたかを知られずに済むということでもあった。彼女が外に出た途端、ピガール通りを一台の馬車がやって来たので彼女は呼び止め、乗り込んだ。彼女が今取っている行動は彼女にとって非常に苦痛の伴うものであった。若い娘であり、元来大変内向的な性格の彼女が、見ず知らずの他人に、自分の心の奥の最も秘めておきたい感情、すなわちパスカル・フェライユールへの愛情、を曝け出すなどということが簡単にできる筈もない……。しかし、ド・ヴァロルセイ侯爵の手紙の複製を作って貰おうと写真家のカルジャット氏のもとを訪れた昨日に較べれば、自分は冷静で自分自身をちゃんとコントロールしていると彼女は感じてい...2-X-13
2024/01/27 16:46