ブランドン (その2)
私は、別れた夫に対する怒り、憎しみ、軽蔑と言った感情を日々持て余していたが、当時90歳を超えていた姑に不満をぶちまける、という非常識な事だけはしなかった。しかし、私の心をくみ取ってか、義妹は言った。「兄のこと、吐き出してもいいのよ。」おおそうか、ありがたいと、ニュージャージーまで電話をかけて私はブランドンの悪口を並べ立てた。女たらし、アル中、嘘つき、金勘定の出来ないノータリンと言いたい放題だった。今思えば、実の兄の悪口を聞かされる義妹も辛かったと思う。長年少年院の院長を務めた彼女は心理学者でもあり、私をサポートし続けた。しかしある日突然、「悪魔の嘘」に私は気が付いたのだ。私は被害者で、彼は加害者。であるから、私には相手を憎む「権利」があると長年信じ続けた。被害者意識に囚われていたので、真実が見えなかった。...ブランドン(その2)
2024/08/30 21:06