森の案内人:森林インストラクター田所清のブログです。自然観察日記を書いてブログ歴10年目です。
森閑とした空気に包まれる森の中は神秘の宝庫。そこに息づく植物や虫・きのこなどを観ながら造形の不思議を想い自然の奥深さに感嘆しています。そして、それを感ずる自分がうれしい。だから伝えたい。
コハウチワカエデとハウチワカエデが並んで植栽?されていました。葉を見るにはちょうど良いので記録してみました。葉身と葉柄の長さの比で判断できます。葉柄の長いのがコハウチワカエデになります。コハウチワカエデの葉
ハウチワカエデの葉柄はとても短く感じます。ハウチワカエデの葉
ハウチワカエデの近くにヤマネコヤナギの幼木がありました。別名バッコヤナギ。早春樹全体に花を咲かせ黄色く色づいている亜高木のヤナギ(雄株)を見ますがその子供です。葉は楕円形で細長い葉が多いヤナギ類にしては異質です。ヤマネコヤナギの葉
ヤマネコヤナギの葉裏は白く細かな毛が密生しています。ヤナギ類はだいたい水辺に見られるものですがヤマネコヤナギは日当たりが良く水はけのいい場所に見られます。ヤマネコヤナギの葉裏
沢近くの木陰にマユミの低木が弧生しています。新潟県内ではこれほどの大きな個体に出会ったことがありませんが、関東圏に来るととたんに大木になっているので不思議に思っています。しかし、大きなマユミの樹は水分条件がよさそうな日当たりの良い場所なので、こんな日陰では木も大きくなれないのだろうと推察しています。それにしても、なぜ新潟県内のマユミは大きくなれないのか不思議です。マユミ
マユミの果実は秋には赤く綺麗な色彩で熟します。さらに熟すと割れて中から赤い種子が顔を出します。雌雄異株の種とされますが、雌株だけでも結実するとか。理屈状実をつけていない雄株も存在しているはずですが、うかつにも結実していない大木のマユミを確認したことがまだありません。マユミの若い実
マユミの葉は真っ赤になるということはないようですが、程よくグラデーションが利いて趣のある色彩で紅葉しています。マユミの葉
森の一角にムラサキヤシオうが見られました。木漏れ日が差し込んでくるような場所です。花のない時期ですから周囲と同化していてひっそりとたたずんでいるという風情です。ムラサキヤシオ
ムラサキヤシオは日本海側に偏って出現するということになっているので、北八ヶ岳地域に自生するのは少し違和感があるのですが、この丸っこい果実は見慣れたムラサキヤシオのものです。他にこんな果実をするツツジがあったでしょうか?違和感がありながらもここではムラサキヤシオにしておきました。ムラサキヤシオの果実
葉も見慣れたムラサキヤシオの葉です。かなり分布域が広い種なのでしょう。ムラサキヤシオの葉
コケが密生している中にツレサギゾウ属の種が見られました。キソチドリと見当をつけているのですが、あいにく花がなく他の要素での見立てです。キソチドリ
細長い徳利状の果実です。亜高山帯では時々見られる種です。キソチドリの果実
一番の決め所は最下部の葉が大きくそれ以上の葉が急に小さくなる点です。この広い葉はホソバノキソチドリの特徴とも合致していません。キソチドリの葉
渓流沿いの湿った場所にはタニソバが群落を作ていました。山地の湿地には比較的普通に見られる種とされますが、経験的にはムラがあって適地であっても見られないこともしばしば。それに反してミゾソバは本当にどこにでもあります。タニソバ
タニソバの花は本当に地味です。花も半開きのようでアピール度は全くありません。タニソバに反してミゾソバは自己主張がありますしとにかく数で圧倒していて秋の景観を作る代表種です。タニソバの花
上部の葉には葉柄がはっきりしませんが普通柄があります。葉柄には翼が見られるます。普段は地味でも秋が深まるにつれ葉が赤く色づきますがこの時が一番自己主張をするようです。タニソバの葉
ママコナもポツンと1株だけみられました。何とか花もあって観察にはよいのですが、周囲には何もないのが不思議です。管理されている方が意図的に周囲の植物を抜き取っている?とも考えてみましたが、かなり暗い林床でそんなにいろいろな種が発生できるような環境でもなさそうです。ママコナ
一輪だけあったママコナの花です。花冠の下唇に白い2つの斑紋があります。ママコナの花
花が終わった後の苞葉です。房状に咲いた花の後で縁は刺状の歯牙になっています。ママコナの苞葉
葉は倒卵形で先が鋭く尖っています。ママコナは半寄生植物とされています。ママコナの葉
森の中でトモエソウがぽつんと見られました。周囲には何もなくこの株だけが寂しそうにたたずんでいます。今までは比較的日当たりの良い草原で出会っていましたからこういう環境で見ると少々違和感があります。トモエソウ
こんな環境でもしっかり花が咲いて結実したようで立派な果実が付いていました。トモエソウの果実
オトギリソウ科のオトギリソウ属の種。柄のない対生する葉です。トモエソウの葉
ヒメシロネもありました。この種も湿地には極普通に見られる種です。低所に限らず高海抜地域にもみられるようです。ヒメシロネ
白根の仲間は普通群生して当たり一面の覆いつくすのですが、花は地味でどこについているのかはっきりしない感じです。しかし、よく見ると茎を取り囲むように白い小さな花が輪生しているのが分かります。ヒメシロネの花
この種も細い披針形です。対生ですがそれが互い違いに付いているので上から見ると十字形をしているように見えます。ヒメシロネの葉
新潟県内でもあちらこちらで見られるバイカウツギです。毛があるタイプをケバイカウツギ(ニッコウバイカウツギ)というのですが、わざわざ「ケバイカウツギトイウ」という名板が付けてありました。毛のあるタイプは珍しいのかと調べてみましたが無いタイプと共存している場所も多く分布的には顕著なものは感じられませんでした。もちろん新潟県内でも両タイプが混在しているというデーターがあります。どちらかが優先しているということはあるようですが・・。バイカウツギ
バイカウツギはアジサイ科の種です。アジサイ科の植物の花弁やがくは4枚か5枚ですが、この種は4枚。明瞭な蒴果はこの種の特徴です。花はやや大き目で4弁ながら梅の花に見えたのでしょう。バイカウツギの果実
7~8cmほどの広披針形で周囲は鋸歯があります。バイカウツギの葉
ケバイカウツギとありますから葉裏を確認しました。もうかなり毛が落ちてしまっているようですが、たしかに白い毛が残っていました。バイカウツギの葉の裏面
山野草の愛好家が多いフシグロセンノウです。新潟県内では苗場あたりに自生があるということですが普通県内の山野では見られません。どちらかというと太平洋側の山地の林下にまれに自生する種です。そういう種ですから北八ヶ岳周辺に自生するというのはすごく納得することでした。フシグロセンノウ
深い林の林床に鮮やかなオレンジ色の花はかなり異彩を放っています。どこかの記事に雲取山にはたくさんの個体があるようなことが書いてありました。林の中にフシグロセンノウが群生している様子を想像してみるとぜひとも一度は行ってみたいと思うようになりました。フシグロセンノウの花
対生する披針形の葉の基部が黒っぽくなっています。これが名前の由来ということですから花がなくとも特定できます。フシグロセンノウの葉
今まで見てきたことのない環境でメギが見られました。今までは大体林縁か草原内で光の多い場所に生育していました。かなり暗い環境に見えますが、おまけに競合するような植物も生えていません。北八ヶ岳の森の中は針葉樹林であろうが広葉樹林であろうが林床の植生は貧弱で露岩があれば大体コケが覆いつくすようになっています。そんな中でメギが見られるのですからとても違和感を持ちました。周辺の高木がまだ低かったころに芽生えて今まで生き延びてきたのでしょうか。林床に生育するメギ
よく見ると数個のメギの実が付いていました。秋遅くには赤く熟すのですがまだその気配はありません。日当たりの関係でしょう実の数は少ないですね。メギの実
しゃもじ型の葉です。鋭い棘が特徴的でコトリトマラズという別名もあるのが何ともほほえましい感じです。メギの葉
ミヤマモジズリが遅めの花をつけていました。薄暗い幾分湿った林床でひっそりと咲いています。この種は雪国には見られない種で太平洋側の深山にときどきみられる種です。ミヤマモジズリ
純粋な自生種でめったに見られない花ですから出会ったときは最も興奮した瞬間だったかもしれません。優しい色彩が薄暗い周囲の環境の中にあってはなぜか輝いているように見えます。ミヤマモジズリの花
ラン科でモジズリと付きますが属は別でミヤマモジズリ属として分類されています。ミヤマモジズリの葉
ヤマシャクヤクもありました。実がはじけたばかりの状態でした。山野草としてもてはやされるのですが自生はなかなかみられません。ここも植栽しているようです。ヤマシャクヤク
はじけたばかりで赤い種子が並んでいます。少々グロテスクでもあります。しかしこの色彩は何のためか想像ができません。アピールしているのでしょうが動物か鳥に食べてほしいのでしょうか?ヤマシャクヤクの実
自然園内にはルイヨウボタンが青黒い実をつけていました。深山のブナ林などの林床に多く見られるものです。一部針葉樹林が混ざる位置ですがこんなところにも自生があるのかな?という感じでした。葉は確かにボタンの葉に似ています。ルイヨウボタン
秋に青黒い実になりますがこれから先の様子を観たことがありません。はじける様子も見てみたいものです。ルイヨウボタンの実
白駒の池を下ること2㎞程のところに私設の自然園がありました。この中は自生のものも多く見られましたが付近から移植したものがあり一応北八ヶ岳周辺の植物を観ることができるようです。自然の滝もあって変化がありました。アケボノソウは根拠はないものの経験的に日本海側に近いエリアに見られる気がしていましたが、八ヶ岳周辺にも出現する種であることが分かりました。アケボノソウ
上信越の山塊で見る個体と遜色はありません。この花が見たいという方に今年は見せてあげられなかったことが残念でした。次年度機会があれば是非とも希望をかなえてあげたいものです。やや湿り気のある日陰に咲く清楚な美しい花ですね。アケボノソウの花
リンドウ科の種です。3本の葉脈がとても目立ちます。アケボノソウの葉
八ヶ岳周辺ですからサラサドウダンと考えています。ベニサラサドウダンとサラサドウダンの識別は花がないと私にはできませんが、分布域からすればサラサドウダンになると思います。白駒の池に身を乗り出すようにして生育していました。これより内側はシラビソなどの高木ですから日当たりの良い場所に根を下ろしたのでしょう。サラサドウダン
いずれにしてもこの仲間の花数はおびただしいものですから結実する蒴果も大量です。サラサドウダンの果実
白駒の池に向かう途中八千穂高原を通ります。ここには素晴らしいシラカバの林が形成していました。陽樹ですから寿命は長くないと思います。いづれ衰退するのでしょうが現在は最盛期のように見えました。八千穂高原シラカバの林
北八ヶ岳の一角清水を称えた神秘的な湖、白駒の池です。周囲はシラビソなどの針葉樹林で覆われ海抜2100mを超す位置にあり、2000mを超す湖では最大の天然湖だそうです。白駒の池
白駒の池周辺は圧倒されるくらいのコケの森です。ただただ感心するばかりでした。500種類近いコケ植物が自生しているとか。圧巻です。池の周りに遊歩道がありその一角に「ものけの森」と名付けた場所があり奇木とコケ植物が調和していました。「もののけの森」コケ群落
火山地帯で大きな岩の上に厚くコケが覆い風説に耐えて生育している針葉樹の取り合わせが心を打ちます。「もののけの森」奇木の林
素晴らしい!「もののけの森」ヒカリゴケ
新潟にいていつも怪訝に思っていたことがあります。早春にオウレン花が咲くころ花談議が巻き起こりますが、その時に『「セリバオウレン」ですか「キキバオウレン」ですか?』と問われることがあります。図鑑ではそんな名前のものがあるというのは知っていましたが、新潟の山野に自生しているものはすべて「オウレン」です。キクバとセリバをいいちいち区別する必要があるのかと複葉の小葉の出る回数もろくに数えないでいぶかっていました。しかし、今回このオウレンを目撃して「セリバ」と「キクバ」を区別する必要があることを思い知らされました。セリバオウレン
セリバオウレンはとにかく小さい種です。新潟の里山などで見るオウレン(キクバ)とは1/3くらいの印象です。小葉の光沢も強いようです。小粒でもピリリとしている感じでした。分布も異なっていてどうやら太平洋側に自生しているような種です。新潟県内にもセリバオウレンがあるようなことを耳にしたことがあるのですが真相は分かりません。どなたか教授して頂けるとありがたいですね。セリバオウレンの葉
花の季節ではないので果実の様子を記録しました。これもとても小さく花の大きさも想像できます。セリバオウレンの果実
白駒の池の周辺はシラビソの林になっていて厚くコケ植物が繁茂しています。そんな環境でセリバオウレンが自生していますから、涼しく林床は暗く水分環境に恵まれたような場所が適してるのでしょう。セリバオウレンの群生
栗駒の池に自生していた水草で最も目立たものです。場所によっては素面を覆いつくすほど茂っていますが湖面全体から見ればごくわずかな占有率です。ほとんどの場所は遠くから見るだけでしっかりした正体が分りませんでしたが、1ケ所比較的水際からもよく観察できる場所がありミクリの一種であることが分かりました。ウキミクリ?
近いといっても4~5m先の水中です。手に取って細部を観察できませんが写真を何枚か撮って資料で調べてみました。新大のS先生の教授を得て新版の日本の野生植物(保育社)で確認するとウキミクリかホソバノウキミクリであろうという結論になりました。ミクリはガマ科ミクリ属に分類される種です。以前はミクリ科とされていましたから、いまだにこれから脱出できていませんでした。ウキミクリ?の花序
里山にはミクリが自生していますが抽水葉しか見えませんが、白駒の池のミクリは沈水葉から浮遊葉になっていて抽水葉はみあたりません。ウキミクリは浮遊葉しかないという解説です。ただホソバウキミクリかどうかは葉を採集して調べないとわかりません。中部の高山水系にまれに自生する水草だそうです。ウキミクリ?の浮遊葉
かなり広い面積をウキミクリが覆っていました。こういう光景は初めでで他には見られない景観です。貴重ですね。ミクリなど水草はどうしても手に取って直接調べる機会が少なく分からないことだらけです。湖面を覆うウキミクリ?
ヒトヨタケがありました。久しぶりです。どこにでも発生する可能性があるキノコと思いますが高原で見るのは初めての気がします。2~3m範囲にいろいろなステージのキノコが見られました。幼菌から液化した状態のものまであります。これが一晩で起こる現象というはなしになります。不思議な性質を持つキノコの一つです。ヒトヨタケ
短命なキノコとして知られていますが出てきたばかりの状態です。この頃の菌体は食用として利用できるとか。ただ、酒類と一緒に食べると中毒症状になるそうです。ヒトヨタケの幼菌
一夜にして液化するキノコです。これは何時間くらいの状態なのでしょうか。崩れ始めたヒトヨタケ
液化したしまったヒトヨタケです。茎が残っていますが傘の部分は残っていません。昨日発生し株で24時間は経っているということでしょうか。液化したヒトヨタケ
キシメジ科のアイシメジです。とても美しい姿です。食用キノコですがちょうどよい状態ですが採集はご法度です。里山では見かけたことはありませんからやや深い森に来ないと会えないようです。アイシメジ
ひだは白く密になっています。アイシメジ裏面
裏面が針状の全体ゼリー質に近いキノコです。キクラゲに似た触感でしょうか。深山の枯れ木に発生するキノコです。ニカワハリタケ
9月、長野県南佐久郡八千穂高原の一角にある白駒の池を訪れました。シラビソの森にコケ植物が密生する桃源郷で新潟にはない異次元の世界を堪能しましたが、そこで見られたキノコのいくつかを紹介します。ハナガサタケは実物を見るのは初めてのキノコですが、コケ植物の薄くなる場所(おそらく地中には枯れ木が埋没)にぽつんと顔を出していました。ハナガサタケ
全体にささくれだっています。傘のささくれも整然とした幾何学文様をしていて味わいのある造形です。保護区にあるものですから採集はしません。ひだは密です。ハナガサタケの傘側面
茎もささくれがびっしり。針葉樹林帯には時々見られるようですが覚えやすいキノコです。有毒キノコともいわれますから食べる対象ではなく観て楽しむキノコです。ハナガサタケの茎
サラサドウダンの仲間はしばしば群生することがある筈です。白駒の池近くにそういう場所があるのでしょうか?少なくとも私が動いた狭い範囲では見つけていません。サラサドウダンの葉
白駒の池の周辺のシラビソの森です。林床は幼木とおびただしい種のコケ植物で覆われています。他の植物はごくごく少なく目に止まりません。苔むすシラビソの森
久しぶりにオオイチョウタケに出会いました。里山のスギ林です。もう20年も前になるでしょうか以前見たときもスギ林内でこのキノコとスギの相性が良いことがわかります。やや大型のキノコで大きいものは20cm以上の傘になります。美味しいキノコというはなしですがいまだ口にしたことはありません。今回もやや鮮度が落ちているようなので記録だけして採集はしていません。オオイチョウタケ
裏面は白くひだは密です。オオイチョウタケの裏面
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