『凍える愛情』 XL
「ここだよ……」と彼が立ち止まった場所は、やはりなんの変哲もない倉庫街で、フェンスに囲まれた一角には、事務所らしき掘っ建て小屋のある敷地が広がっており、絶景の夜景が見下ろせるわけでもなければ、隠れ家的なパンケーキ屋があるわけでもなく、どこの倉庫街にもよくある、ふつうの会社の営業所があるだけだった。駐車スペースには数台の社用車が並んでおり、どれも後部に荷台スペースのあるライトバンタイプのモノで、営業用の足にも使えるし、ちょっとした荷物を運ぶにも、それなりに重宝しそうなタイプだった。「え?ここって……、まさかここに入るわけ?」「え?あー、うん、まぁ、そのまさかだけど……」彼がそう言い放ち、さも当然のように門扉をよじ登り始める。「ちょっ、ちょっと!だ、大丈夫なの!?」あまりにもふつうに彼が門扉をよじ登っていくので、心...『凍える愛情』XL
2019/09/27 19:41