『凍える愛情』 XXXVI
「いや……、だから、もう一回、言って!」「え?……」予想外に、真顔で新田くんに詰め寄られ、思わず、引き気味に後退りする。まさか冗談のつもりで言った私の軽はずみな発言を、ここまで彼が真に受けるとは思わず、「いや、じょ、冗談だって……」と、慌てて訂正した。「ちょ、ちょっと、怖いんですけど……。ま、マジにしないでよ……」正直、なぜ自分がそんな発言をしたのか、自分にも判らなかった。面白がって言ったのか、本気でそう思っていたのか、意識して言ったというより、ほとんど本能的に発した言葉だった。もちろんその気がないのに、思わせぶりな発言をした自分にも非はある。ただ、それを真に受ける彼にも、問題がないことはない。お互いの中で、結婚を意識していた時期に、私から逃げるように、彼は一方的に関係を終わらせた。当時、私の中で結婚を意識する...『凍える愛情』XXXVI
2019/07/14 21:35