『凍える愛情』 XXI
とつぜんの悲鳴に、思わず振り返ると、視線の先で二人の男性がコート上で蹲っていた。濡れた芝生の上で、ピクリとも動かない男性の周りに、異変に気づいた周囲の客が集まり、「おい、大丈夫か?」「ちょっと、しっかりしてよ!」「おい、立てるか?」など、思い思いに声を掛け合っている。ただそのどの声にも、全く反応が見られない。次第にその動揺が、こちらのコートにまで伝わって来る。気がつくと、いつの間にか、こちらのコートで試合をしていたはずの男性陣も、プレーを中断し、その光景に見入っていた。ざわつき出す向こう側のコートとは反対に、こちらのコートは徐々に静まりかえっていく。「おい!救急車呼べ!救急車!」向こう側のコートの利用客の一人が、そう叫び声を上げると、その声に反応したチームメイトの一人が、すぐに事務所のあるプレハブ小屋へと駆け込...『凍える愛情』XXI
2019/02/25 20:55