樹形図

震災当時、中学一年生だった息子。あれから5年の月日が経ち、高校3年生となった。背丈はとっくに私を追い越し、腕相撲でもいい勝負をするようになってきた。春からは大学生となり、4年間という学びの時を過ごし、社会に出ていくことになる。新しい生命は、やがて私を追い越し、明日を創るだろう。はるかな過去から 果てしない未来へとつながってゆく 生命ある限り

帰宅渋滞

息子を連れて、学校から自宅へ戻る。市街地から郊外へ行くのだが、どの道も大渋滞。信号が動いていないという理由もあるが、沿岸部へ向かう道は水没している場所もあり、迂回せねばならないからだ。実際に海抜が低い場所は泥で汚れていたり、漂着物が漂っていた。普段ならクルマで20分程の道のりが、2時間近くかかってようやく帰宅できた。

息子と再会

中学校までは通常クルマで20分ほどかかるが、渋滞もあり40分ほどかかってようやく到着した。暗い体育館で、生徒たちは固まって座っていた.電気を使わない、昔ながらのダルマストーブにほのかに照らされた生徒たちの顔。どの顔も不安そうだ。息子の名を呼ぶと、すぐに会うことができた。怪我はしていない。ショックを受けた様子もない。ひとまず安心した。

生徒の把握

第2体育館にはどの生徒がいて、どの生徒が帰宅したという情報が、入口でキッチリと管理されていた。子供と連絡がつかない親が、とりあえず学校に迎えに来る場合がある。その時にこの生徒はここに避難している、ここには避難していないをはっきりと答えられないと、親に無駄足を踏ませてしまったり、無用な心配をかけさせてしまうのだ。非常時にあって、学校のしっかりした体制、それに沿って行動した先…

息子を迎えに

私は夜の7時頃息子を迎えに行った。街には灯りが全くなく、信号すら消えている。暗い中、歩いて帰宅する人、自転車で家を目指す人が大勢いる中での運転は正直恐ろしかった。学校に到着すると、先生方から質問攻めにあった。沿岸部の様子は？道路は通れるのか？電気や水道は使えるのか？先生方も情報を渇望していた。そして先生方もまた、被災者だった。

おにぎりと唐揚げ

息子の中学は、県内全域から生徒が集まる中学校なので、帰宅困難な生徒は学校にとどまるしかなかった。指定避難所ではなかったため、毛布の備蓄も、非常食も何もなかった。学校長は直ちに市と交渉を行い、人数分の毛布を用意した。さらに、近くの生協からおにぎりと唐揚げを提供してもらった。停電で火の気もないあの最中に、息子は飢えと寒さから逃れることができたのである。

第2体育館へ移動

体育館は2つある。メインとなる体育館と、第2体育館である。生徒は当初、体育館に集められたが、その後第2体育館に移動することになった。近所の住民の方々が避難してきたからである。息子は第2体育館の板の間の上で暗い中、クラスメイトと身を寄せ合っていた。

体育館に集められた

学校へ戻った生徒たちは体育館に集められた。余震は断続的に続く。その度に女子から悲鳴が上がる。照明の下は危険なので、そこを避けて座る。ネットはつながらない。今何が起きているのか、全く知ることができない。やがて16時を迎え、照明がないまま、周囲は急速に暗くなっていった。

中学校へ戻った

揺れはなかなか収まらなかった。一度しゃがみこむとなかなか動けない。自然の力を前にして、人間の無力さを感じた。どうする？駅まで行ってみる？すると中学校の先生が生徒達を探しに来た。先生の指示で一旦学校へ戻ることにした。

地震発生

3.11。今でもこの数字を見ると、あの記憶が蘇る。当時、息子はもうすぐ中学1年が終わるという時だった。部活を終え、帰ろうとして校門を出て、200mほど歩いた所で急に大きな揺れが始まった。電線は大きくたわみ、建物も揺れている。しゃがみこむ歩行者。その頭上にガラスが降ってくる。周囲の大人が中央分離帯に避難したのを見て、中学生の息子もそこに避難した。長い長い一…

樹形図（歌詞）

樹形図作詞／作曲 山石敬之今 僕らは 涙に橋を架けている声を届けて 想いを運ぶやがて 新しい命が生まれる僕らを追い越し 明日を作るだろうこの凍てついた 夜の向こうに 必ず声を合わせて その手伸ばして顔を上げて 明日を語ろう失した夢も 消えた願いも全て確かに預かったと 伝えてそう 僕らは 樹形図の一枚の木の葉遥かな過去から 果…

樹形図（動画）

樹形図（動画）,（山石敬之「樹形図」より）

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