サラダ坊主日記
住所
花見川区
出身
枚方市
ハンドル名
サラダ坊主さん
ブログタイトル
サラダ坊主日記
ブログURL
https://saladboze.hatenablog.com/
ブログ紹介文
千葉県千葉市花見川区の片隅に暮らす坊主頭のサラダ屋の生活と意見。
自由文
-
更新頻度(1年)

198回 / 250日(平均5.5回/週)

ブログ村参加:2015/11/16

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サラダ坊主さんのブログ記事

1件〜30件

  • 小説「月影」 16

    犬吠埼から帰った後も、地面から浮き上がったような落ち着かない感覚は一向に衰えず、両親に向かって恋人を紹介したいと告げたときも、私は湧き上がる無邪気な笑顔を抑えることが出来ませんでした。夏休みが終わる前に、週末を選んで岩崎さんを昼食に招く段取りが決まりました。 けれども、その年の九月は、病身の私にとっては生涯で最も苛酷な季節となりました。新月の晩は随分と穏やかに症状が落ち着いていた代わりに、その後の増悪の劇しさは生き地獄のようなものでした。十五夜の満月を待たずして、私の耳鳴りは刻々と荒れ狂い、犬吠埼のデート以来、まともに外出する機会すら得られませんでした。普段なら昼間は寛解を示すことが多かったの…

  • 小説「月影」 15

    九月の下旬まで続く厖大な夏休みの間、私たちは疎遠だった時期の物哀しい欠乏の記憶を埋め合わせるように、まるで夏の間だけ姦しく騒ぎ立てる油蝉のように、頻繁に二人きりの時間を重ねました。夏の選抜大会を終えて躰の空いた岩崎さんは、私を色々な場所に連れ出してくれました。彼のお父さんの車を借りて、箱根で一泊したこともあります。岩崎さんの御両親は、俄かに色気づいて忙しそうに日々を過ごす息子のことを軽快な冗談で如何にも愉しそうに揶揄するらしく、その度に彼は不機嫌な表情で私に向かって愚痴を零しましたが、間接的に話を聞いている限り、要するに御両親は自分たちの息子が行き過ぎた堅物ではないことを知って安心し、私たちの…

  • 小説「月影」 14

    駅前の如何にも古びた雑居ビルの、火災が起きたらどうやって逃げ出せばいいのか不安になるような狭苦しい空間の中に間借りしたその喫茶店は、夕暮れの賑わいに包まれて、エスプレッソマシンが騒がしいスチームの叫び声を響かせ、カップの触れ合う硬い音が幾重にも折り重なって、耳鳴りに悩まされる暇もないような有様でした。久し振りに顔を合わせた岩崎さんは、前よりも少し窶やつれたように見えました。僅かに伸びた無精髭の陰翳が、店内を彩る薄暗い橙色の燈光を浴びて、一層濃密な暗さを際立たせていました。私はサウンドジェネレータのスイッチを切り、鞄の中に丁寧に蔵しまって、岩崎さんの榛色の瞳を正面から見凝めました。「外しても平気…

  • 小説「月影」 13

    私を拾ってくれた奇特な私立大学は、世田谷区と杉並区の境目に、古びた住宅街に囲まれて、広大な敷地を構えていました。市川の実家から、御茶ノ水と新宿で乗り換えて、片道一時間ほどの行程です。長い春休みの間に、私はサウンドジェネレータを装着した状態で、意識的に重たいお尻を持ち上げ、勇気を奮い立たせて外出する訓練に励みました。未だ肌寒い三月の上旬、通学の予行演習として、京王線の下高井戸駅まで意を決して孤りで足を延ばしたこともあります。 少なくとも日中の時間帯に関しては、サウンドジェネレータの医学的な威力は充分な恩恵を私に授けてくれることが、その春休みの個人的な「修業」を通じて判明しました。折々の耳鳴りの程…

  • 小説「月影」 12

    別れるのならばせめて、きちんと時間を作って互いの気持ちを伝え合い、その上で最終的な結論を出すのが、まともな「御附合おつきあい」をしていると自負する男女の間で守られるべき掟だと、後から顧みれば思うのですが、その冬の私には、一般的な正しさというものに気を配る余裕さえ残っていませんでした。自分自身に襲い掛かった得体の知れない不幸に感情も思考も押し潰されて、他人を思い遣る気力を保つことが酷く困難になっていたのです。そもそも私にはもう、恋するということの意味がよく分からなくなっていました。見知らぬ赤の他人ならば、何の感情も懐かずに恕せるというのに、かつて世界で一番好きだと思えた貴重な人のことが、却って凄…

  • 小説「月影」 11

    時折、罅割れるような不快な耳鳴りを感じるようになったのは、高校三年生の頃でした。鼓膜の表面を何かが引っ掻くような物音が聞こえることもあれば、遠くから等間隔で放たれる不可解な信号のように、同じ響きが断続的に聞こえてくることもありました。前触れもなく、何か特定の場面で必ずその症状が顕れる訳でもなく、それは気紛れなタイミングで私の意識を支配しました。特に日暮れを迎えると症状は劇しく悪化しがちで、外の世界の音が悉く耳鳴りに掻き消されてしまうときもありました。 両親に相談すると、彼らは非常に心配してくれました。それは少し常軌を逸した過度な動顛の仕方で、直ぐに私は近所の開業医の許に連行され、その診断が曖昧…

  • 小説「月影」 10

    恋するということは、素敵なものだと、中学三年の夏の私は学びました。普段は暖簾を潜ることのない街角の中華料理屋に岩崎さんと二人きりで入って、一緒に熱い拉麺を啜り、その帰り道、遅くなり過ぎた言い訳を頭の片隅で彼是と組み立てていたら、不意に手を握られ、所謂「告白」という種類の言葉を贈られて、気持ちが動転しながら、それでもここで引き下がったら折角のチャンスを逃がしてしまうと勇気を奮い立たせ、私も同じ気持ちですと伝えて、その瞬間に岩崎さんが照れ臭そうな笑顔を抑えきれなくなったのを見て、私の心の中にも何だか栗鼠のように温かい幸福な鼓動が高鳴ってくる、そういう一連の経緯を通じて、私は恋愛というものに多くの人…

  • 小説「月影」 9

    誰もいない静謐なバス停を、私は黙って見凝めていました。夏至を一月も過ぎた夕暮れの空は、既に橙色を通り越して紫と群青の斑になっていました。腹痛は少し和らぎましたが、鉛のように重たい感じが消えません。一時間もここで、孤りで時間を潰さなければいけないのかと思うと、とても憂鬱でした。 仕方なく休憩所に戻り、私は無言で壁際の硬いベンチに腰掛けました。やっと落ち着いた腹痛が急にぶり返すのが怖くて、下腹に掌を当てたまま、俯いて携帯の画面を開きました。友達からの不安げなメッセージが大量に届いていました。今更返信しても手遅れですが、悪い男に誘拐された訳じゃないことを伝えて、とりあえず安心してもらうことにしました…

  • 小説「月影」 8

    中学三年の夏休みに、私は生まれて初めて、恋人と呼べる存在を手に入れました。 手に入れたなんて言い方は何だか、あざとい策士のような表現ですね。寧ろ私が見事に魂を射止められてしまったと言うべきでしょうか。相手は一歳年上の弓道部の先輩で、県大会の個人戦で準優勝した経験のある腕利きの人でした。少し軽率に聞こえるかも知れませんが、射場いばで見せる彼の凛とした佇まいに、心を奪われてしまったのです。勿論、外見だけで恋心を懐いた積りはありません。練習熱心だし、優しいし、頼もしいし、素敵だなと感じるところを計え上げたら切りがないくらいです。弓の初心者がうんざりするほど繰り返しやらされる巻藁の練習では、彼は二年生…

  • 小説「月影」 7

    小さい頃の記憶は、誰でもそうだと思うのですが、曖昧に霞んでいます。私だけが、特に記憶力が弱いという訳ではないと思うのです。両親が口癖のように、例えば誕生日や元旦や、そういう生活と季節の節目のときに必ず言い出す、私の幼い頃の夢遊病のことも、全く心当たりがないのです。勿論、夢遊病は眠っているのに躰が動いてしまう病のことですから、本人が何も記憶していないのは当然だと思います。だって、はっきりとした記憶が残ってるなら、それは夢遊病じゃなくて、ただの夜更かしということになってしまうでしょう? でも、それがどういう場面の出来事なのか、どんなときに感じた印象なのかは分からなくても、断片的な記憶なら、誰も整理…

  • 小説「月影」 6

    中学校に上がると、燈里は二つの新たな趣味に熱中し始めた。一つは弓道で、もう一つは天文学部の活動だった。どちらも学校の部活動で、彼女は文武両道の鑑になろうと志しているかのように精力的だった。弓道に関心を覚えた直接の理由は、母親の影響だった。私の妻は小学校の頃から、父親の影響で弓道を始め、大学生の頃まで飽くなき鍛錬の険しい道程を歩み続けた粘り強い女性だった。彼女の父親は弓道の選手で、その学生時代は輝かしい栄光に彩られていた。つまり、燈里の弓道に対する関心は、母方の血統によって養われた累代の本能のようなものだった。 中学校二年生の夏に行われた県大会に、燈里は学校の代表の一人として出場した。私は県営の…

  • 小説「月影」 5

    幼い頃に買い与えた立派な造本の図鑑たちの教育的効果は、小学校の高学年に差し掛かっても猶、明確な影響を燈里に及ぼし続けていた。絶対に手の届かない蒼穹の高み、そこに夜の漆黒の塗料が撒かれると、俄かに輝き出す星々の隠微な姿態を、その壮麗な秩序を、燈里は幾つになっても愛し続けた。彼女の幸福は、地上の世俗的な営みよりも、水晶のように冷たい無言の鎮座の裡に根差しているのかも知れなかった。 彼女が殊更に狷介な少女であったとは思わない。病弱な幼年期を脱して、活発に大地を駆け回る健康な体躯を手に入れてからは、かつての繊弱な感受性は影を潜め、大胆で饒舌な少女の絵姿が前面に顕れるようになった。数多の友人を作り、賑や…

  • 小説「月影」 4

    失われてしまった娘の半生の儚い痕跡を辿ろうとする痛ましい作業が、或る精神的な麻酔のような効果を、私の心に深々と及ぼしているのだろうかという疑念が兆している。そういう手前勝手な感傷を成る可く振り払い、一つ一つの文字を丁寧に洗浄しながら書いている積りであるのに、知らぬ間に行間へ滲み出る半狂乱の父親の情念に、読み返す度に視線が突き当たって我ながら失望せずにはいられない。燈里のことを、私は恰かも薄倖な聖女のように思い、その生きて動いていた日々の記憶の残影が、過剰に美しく縁取られ、悲劇的な装飾が随所に施されることに、半ば諦めて快く屈しているのである。これは剣呑な徴候だ。本来、私はその真相を量り難い奇怪な…

  • 小説「月影」 3

    小学校に上がる少し前から時折、燈里は夢遊病者のような振舞いを示すようになった。居間の隣の、家族三人の寝室に充てていた和室の襖越しに夜半、唐突に不自然な物音が漏れてくる。何事かと思って身を硬くすると、瞼の開いていない燈里が寝乱れた黒髪を複雑に縺れさせて、覚束ない足取りで襖の隙間からぬっと顔を出す。明らかに意識は覚醒しておらず、瞼は殆ど閉ざされて、眩しそうに顔を顰めている。此方が話し掛けても、明瞭な返事はなく、ただ重ね合わされた幼い唇の向こうで曖昧な言葉の塊が不気味に凝るばかりだ。 最初は寝惚けて用便に立とうとしているのだろうと軽く考えていたが、時には症状が昂じて、そのまま二階へ通じる階段を黙々と…

  • 小説「月影」 2

    大切なものの有難味を、人は失ってから初めて悟ると、世間は口を酸っぱくして哀しげに、憂鬱な表情で何度も言い募る。手垢に塗れた言葉だが、実際、それは揺るぎない真理だろう。燈里が普通の少女として、親である私の手許で成長し、掛け替えのない日々の暮らしを営んでいた頃にも、彼女の、つまり愛娘の存在の尊さを感じていなかった訳ではない。だが、虚空に漂う無表情な酸素へ向かって、殊更に日頃の円滑な呼吸に就いて謝辞を述べることがないように、当たり前に存在するものの価値を、絶えず明瞭に意識し続けるのは困難である。 だが、総てが手遅れとなった今では、その困難に何故、当時の自分は挑まなかったのかと、歯咬みしたくなる気持ち…

  • 小説「月影」 1

    人から、どういう娘さんでしたかと訊かれる度に、私の唇は堪え難い重圧のために素気なく閉ざされてしまう。そうした生理的現象に抗おうと試みても、鋼鉄の城門のように、或いは濠を渡る頑丈な跳ね橋が敵襲を察して遽しく引き揚げられるように、私の唇は半ば自動的に封じられ、滾り立つ言葉の曖昧な泡沫は、気道の奥底へ再び沈められてしまう。改めて問い質されると、不意に何一つ分からず、見えなくなってしまうのだ。そうした現実に打ち拉がれ、絶望の底知れぬ洞穴に滴り落ちる鍾乳洞の石灰水のように、冷汗が背筋を伝って尻まで流れ落ちる。どういう娘さんでしたか? その問い掛けは必ずしも重大な含意を伴って、私の鼓膜に向けて投じられる訳…

  • 小説「古都」 14

    何処へ向かって歩いていく宛もなかった。持て余した退屈で孤独な時間の有意義な使い途は、私の脳裡に浮かばなかった。ぶらぶらとJRの駅前まで散策して、忙しない雑踏の風景に我知らず気圧された揚句、私は愈々途方に暮れて立ち止まった。 秋南と最後に酒を酌み交わした夜の記憶が、朧げに甦って、私の感情を不安で埋めた。何が不安なのか、この微かな胸騒ぎが何を意味しているのか、咄嗟に分からなかった。夏の暑さに草臥れて、喫茶店に入り、細かい氷をたっぷりと注ぎ込んだアイスコーヒーを片手に、窓際のカウンターへ腰を下ろした。本でも読もうかと鞄を探り、ラディゲの「肉体の悪魔」を取り出して数頁捲ったが、濃密な不倫の惨劇に神経の…

  • 小説「古都」 13

    秋ちゃんは、少し鼻っ柱が強いだけで、根っこの部分は優しく、素直で可愛らしい女の子でした。傍目には活発で、姉の言うことに逆らってばかりの我儘娘でしたが、それは抑え付けられた感情の、健全な恢復の為の手段だったのではないかなと、総てが手遅れになってしまった今、改めて思います。 私の姉も秋ちゃんも、互いに頑固で自分の考えや信条を曲げないところが、よく似ていました。そういった点では、紛れもない母子だったのです。しかし、似過ぎているというのは、時に考え物です。彼是と不毛な諍いを招くのは大抵、行き過ぎた自己嫌悪と、その朋輩のような同族嫌悪だと、相場が決まっているのですから。余りに近過ぎて、相手の抱え込んでい…

  • 小説「古都」 12

    思いもしないときに、例えば夏の夕暮れに、痩せた蝙蝠の影がオレンジ色の街燈へぶつかるように、突然に破局というものはやってくる。いや、思いもしないなんて言い方は、本当は嘘っぱちだ。少しずつ知らない間に浴室の壁に黒黴が繁殖していくように、それはもう予告された未来で、実際にはずっと前から起こることが決まっていた事件なのだ。気付かないふりを選んだだけで、本音では、それが来るのを怯えながら待ち望んでいたのかも知れない。知らず知らず、糸を引いて、自分の力できっと手繰り寄せていた。破局のきっかけを、いや、出奔のきっかけを、あたしはずっと求めていた。渇いた喉に流れ込む冷たい水のように、母は痛烈な言葉を投げて、持…

  • 小説「古都」 11

    秋南は何時しか、京都での生活を忌み嫌うようになりました。私たち夫婦にとって、夏は噎せ返るほど蒸し暑く、冬は身を斬るように寒い京都の町は、それでも紛れもない故郷であり、人生の根拠地です。秋南だって、その古都の懐に抱かれて大きくなったのです。彼女の躰には、この土地の記憶が血潮に混じって流れているのです。それを否定するのは、如何にも子供らしい無分別な抵抗だと、当時は嘲る気持ちもありましたが、今となっては、そのことの持つ意味に、自分がどれほど鈍かったか、恥じる気持ちの方が強いのです。 私は渡月橋から程近い嵯峨野の一角に、家具を扱う会社員の長男として生まれました。天龍寺や嵐山公園の風景は、私という人間の…

  • 小説「古都」 10

    秋南は快活で、何処か息子のような娘でした。人形で遊ぶより、母親の真似をしてオママゴトに興じるより、外光を浴びて、外気のただ中で、汗の滴を陽に燦然と燃やしながら走り回っている方が、あの娘の性には合っていたのです。小さい頃、自転車に跨って淀川の河川敷に土手から転げ落ち、足首を捻挫したことがあり、家内は血相を変えて娘の不品行を叱ったものです。その時点でもっと厳しく躾けるべきだった、そこからもっと入念に矯正すべきだったと後年、彼女は度々言いましたが、私はそれに必ずしも同意しなかった。思えば、それが確かに釦の掛け違いだったのかも知れませんが、誤りだったと決め付けても、今では虚しいばかりのような気がするの…

  • 小説「古都」 9

    私は厳しく躾けられて育ちました。母は真宗の敬虔な信者で、子供の頃、しばしば本願寺へ連れ歩かれたのを覚えています。夏の京都の白く眩しい光の中を、私は退屈しながら歩きました。虹色の小さなサンダルが、アスファルトに灼かれて熱かった。帰り道に、昵懇の料理屋で鱧を食べましたが、幼い舌にはその美味しさがよく分からず、梅のたれも酸っぱくて苦痛でした。骨切りの刃音が耳障りで怖く、母の骨の浮いた浅黒い手の甲が、何故か瞼に焼きついています。 幼い頃は、はっきりと自覚していなかったのですが、私は母が嫌いでした。その感情は、何か罪深い思いとして知らぬ間に封じられていたのです。それを自分の正しい気持ちとして認めるのは勇…

  • 小説「古都」 8

    小さい頃の記憶は、きれぎれにある。あたしが未だ幼稚園に通っていた頃、ママはいつも言っていた。そんなお転婆なことは慎んで、と。慎むという難しい言い方も、しつこく繰り返されるうちに、あたしの小さな耳によく馴染んでいた。思えば、それが総ての始まりだったのだ。 ママは潔癖な人だ、と親戚のおじさんが言っていた。ケッペキという言葉の、突き刺すような、斬り捨てるような五感から、あたしはいつも台所にある銀色の包丁を思った。確かにママはいつも夕方になると、その銀色の包丁を握っているわ。だからなの、おじさん。だけど、ママの前では、ケッペキという言葉を口にするのが怖かった。それが好ましい意味で使われていないことは、…

  • 小説「古都」 7

    伯母と言葉を交わすのは久々だった。暫く見ない間に皺が増え、白髪が増え、背丈が縮んだ。身内が逝く度に、命の深い部分を削られるのだろうか。況してや今回は、最愛の娘なのだ。啀み合う日々が続いていたにせよ、開いた傷口から濫れる血潮は並大抵の量ではない。憔悴の露わな目許に、餓えた鴉のような鋭い光が瞬いている。追い詰められた獣の獰猛さを思わせる、狷介で憔悴し切った眼差し。生前の秋南が懼れたのは、この錐のような眼光だったのか。「遠くから申し訳ないなあ。突然のことやったから」 型通りの言葉の裏側に透けて見える感情の鬼火を、私は密かに感じ取らずにはいられなかった。秋南の東京住まいを助けた私たち家族に、彼女が名状…

  • 小説「古都」 6

    勿論、好きにすればいい。秋南の人生は、秋南のものだ。人から事細かに指図を享けながら築き上げた人生に、如何なる意味があるだろう。だが、誰も自分自身の本当の欲望の正体など、理解していないのが世の常ではないだろうか。これが自分の希望だと信じ込んでみても、時折足許が危うく揺らいだり歩調が狂ったり、胸の奥を一抹の虚無が吹き抜けたりするのは家常茶飯の出来事だ。自分の心が、本当は一番分からないのだ。自分自身の切実な欲望さえ容易く見誤って、それで総ての物事を難解な暗闇の中に押し込めてしまうのだ。「自分が何を求めてるのか、それを知るのが一番難しいんじゃないかな」「あたしは分かってるわ。きっと自由になりたいのよ」…

  • 小説「古都」 5

    新米ながら熱心に働いて、長時間労働も厭わず、それなりに容貌の見栄えがして明るく人懐っこい気質であれば、自然と男が出来るのも不思議ではない。化粧品売場を管理するマネージャーの一人と親しくなり、幾度か食事に誘われて、酒を酌み交わすうちに言い寄られ、特に断りもしなかったのだ。幸いにして相手の男は未婚の若者で、二人の交際を妨げる暗雲は、同僚たちの嫉視や冷笑以外には取り立てて存在しなかった。故郷を離れ、知り合いのいない異郷へ移り住み、日々それなりに緊張感を以て過ごしていれば、時には重たい甲冑を脱いで人肌に甘えたくなる夜もあるだろう。 秋南自身、何時までも居候の身分で私の父母に迷惑を掛けるのは心苦しく感じ…

  • 小説「古都」 4

    毎年の夏の休暇に、母の郷里である京都へ帰省するのは、私の幼年期から続く我が家の慣習であった。蝉時雨が一斉に間断なく行われる打ち水のように姦しく鳴り響く古びた街衢へ、幼い私は何時も華やいだ特別な気持ちで旅した。東京駅から新幹線に乗り込み、母の手作りの弁当を頬張り、素晴らしい速度で後ろへ流れていく見慣れない景色に、飽きもせず視線を委ね続けるのが、夏の儀式であった。盆休みは、父の仕事が忙しいので、帰省は大抵、七月の終わりか八月の末にずらされた。 伏見稲荷大社に程近い伯母の家へ立ち寄るのも、その儀式の一環であった。淑やかに女の子らしく振舞うより、快活な少年のように躰を動かすのが好きな秋南は、然るべき男…

  • 小説「古都」 3

    強力な空調の吐き出す冷えた空気が、黒い礼服の繊維の一筋毎に深く染み込んだ苛烈な暑気の残滓を払った。降り注ぐ燦爛たる陽射しに堪えかねて緩めていたネクタイを不図思い出し、入念に締め直してから歩き出す。受付で名乗り、神妙な面持ちに一縷の柔らかな微笑を適切な匙加減で織り込んだ初老の女性に掌で示された方へ向かうと、廊下の途中にある喫煙室の硝子越しに父親の老いて丸まった背中を見つけた。関東の私鉄に長く勤める父は、既に定年まで指折り数えて片手で足りた。草臥れた小柄な痩身には家族を食わす為に積み重ねられた膨大な労働の痕跡が随所に刻まれている。ツンドラの辺境に何百年も佇み続ける一本の項垂れた白樺のように。引き戸…

  • 小説「古都」 2

    停車した名古屋駅で、私は束の間の転寝から目醒めた。豪勢な弁当を平らげてデッキの喫煙所で一服し、席に戻って持参した読みかけの小説を開いたところまでは覚えていたが、そこから先の記憶はトンネルに吸い込まれたように闇に融けて再生が出来ない。米原を過ぎる頃には雨が上がって、東京の陰鬱な天候が嘘のように空は青く澄み渡った。夏の猛烈な光が見渡す限りの田園に澄明なニスのように広がり、雪崩れている。静かに呼吸を整え、京都駅の接近を知らせる車内の放送に耳を傾けた。この古びた都へ足を運ぶのは何年振りだろうと考えて、前回も祖母の法事であったことを忽然と思い出した。 母方の祖母は大徳寺の近くに古びた家を構えていて、連れ…

  • 小説「古都」 1

    その日、午後から東京は酷い雨が降るという予報で、その分厚い雨雲と暴風の野蛮な交響曲に捕まる前に颯爽と出発したいというのが、そのときの私の希望の総てであった。駅舎の地下深くに押し込まれた、古代の墳墓のように寒々しい総武線快速のプラットフォームへ降り立ち、通りかかったキオスクで何気なく手に取った薄い新聞には、間近に迫った東京優駿の予想が記されていて、私が皐月賞で本命と当て込んだのに第四コーナーで骨折して殺処分となった馬のことが脳裡に忽然と甦った。期待していた馬に死なれた私が不幸なのか、それとも私に乏しい有り金を託されて死んだ馬の方が不幸なのか、定かではない。 突然京都へ向かうことになったのは、親類…