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日々の便り https://blog.goo.ne.jp/hansyoodll84

男女を問わず中高年者で、暇つぶしに、居住地の四季の移り変わりや、趣味等を語りあえたら・・と。

老若男女を問わず、人夫々に出逢いの縁が絆の始まりとなり、可愛く幼い”蒼い”恋・情熱的な”青い恋”・円熟した”緑の”恋を辿って、人生観を形成してゆくものと思慮する そんな我が人生を回顧しながら、つれずれなるままに、出合った人々の懐かしい想い出を私小説風にブログに記してみた

日々の便り
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2015/11/08

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  • 蒼い影(18)

    蒼い影(18)

    健太郎は、駅頭にたたずみ、久しぶりに見た奥羽の山並みは、時を経ても、その姿は変わることなく悠然と構えていた。新緑の萌える木立の中に宝石をちりばめた様に、山桜が晩春の陽光に映えており、それは、人の世の基本である保守的な部分を象徴しているようにも思えた。一方、不変の峰々から流れ来る川は、世の清濁を合わせた様に、時には激しく流れて川辺の岸を削り周辺の模様を変容させながらも、反面、静かに流れゆく様は、社会の進歩的な有り様を連想させてくれる。小高い山並に囲まれ、一筋の広い川を挟んで静かにただずむ田舎町の自然な光景である。皆が、それぞれに思いを胸に描いて楽しく奥羽の旅から帰って早くも一ヶ月が過ぎ、平穏な暮らしに勤しんでいた。節子さんは、晴れて健太郎の妻となり大学病院の看護師に、理恵子は高校にと通い、秋子さんは胃癌手術...蒼い影(18)

  • 蒼い影(17)

    蒼い影(17)

    健太郎は、この地を離れてから久振りに降り立った奥羽の駅は、駅舎も新しく装い、正面の通りも広くなり町並みに新しいビルが整然と建ち並び、雪国特有の重苦しい雰囲気から脱皮して、都会的な明るさが感じられた。合併で市や街の名前が変更され、なにか心の片隅に寂しさもよぎったが、それよりも、駅のホームに健太郎の大好きな明るいメロデイーである「青い山脈」が流されていた。街の片隅の建物や路地裏に目をやると昔の面影が残っており、それらが郷愁を甦らせて懐かしさがこみ上げてきた。節子さんの妹さん夫婦が迎えに来てくれた車に乗り、少しゆっくりと走って貰い、説明をうけながら街並みを感慨をこめて見ながら家路に向かった。越後同様に雪解けが遅いが、ここ奥羽の街も山の懐に抱かれ地形的や季節的にも似ており、遅れて訪れた春も短く、郊外の田圃の早苗が...蒼い影(17)

  • 蒼い影(16)

    蒼い影(16)

    緩やかに傾斜して街に連なる棚田の稲も生育して、緑のそよ風を丘から街へと爽やかに吹き抜けてゆく。雪解け水で増量した小川の流れも勢いがよく、それが川淵の残雪を削り落とし川面に光を反射させて、名も知らぬ草の緑を一層輝かせている。毎朝、散歩の時に見る堰堤の桜並木もすっかり葉桜となり、川淵の猫柳も芽を膨らませ、日ごとに初夏の香りを漂わせている。理恵子も、高校1年生として元気に通学しているが、慣れぬ学園生活に戸惑っているようだ。それでも本人はもとより母親の秋子さんも、やれやれといった安堵感で一息つき、健太郎も彼女の愛くるしい笑顔を見ると、わが子のようで祝福せずにはいられない気持ちになる。秋子さんが、実家と里帰りしている節子さんに根回しして、自分の体調を考慮し、この暖かいときに予定より少し早いが帰郷したいと連絡したとみ...蒼い影(16)

  • 蒼い影 (15)

    蒼い影 (15)

    節子さんが、奥羽の故郷に帰って半月が過ぎた今日この頃、それまで一人身の生活に慣れていたものの、夕闇が迫ると空虚さを無性に感じ、花瓶の花も心なしかうなだれて見える。ポチも囲炉裏端で静かにして、時々、健太郎の顔を上目で覗き見しながら退屈そうだ。几帳面な彼女らしく、毎日夕刻に電話をかけてくれ、互いの日常生活の連絡を話しあい、知人への挨拶廻りや荷物の整理に追われているが、夜、床に入るや新しい仕事のこと、結婚後の生活設計、それに秋子さんの病状等考えると、思いが纏まらないまま眠れない時が過ぎて行くと話していた。雪国の春の訪れは遅い。けれども、連休が終わる頃には、短い春が過ぎて一挙に初夏の香りが漂い20℃前後の温暖な日が続く。空は毎日青く透き通る様に晴れわたり、長い冬篭りの中での欝屈した様々な想念が、青空に奔放に駆け上...蒼い影(15)

  • 蒼い影(14)

    蒼い影(14)

    丘陵の麓に広がる林檎畑に白い花が咲き乱れるころになると、小川のほとりの猫柳も芽吹き、山里にも一年で一番美しい緑萌える季節が確実に訪れる。新しい生活の準備に追われた日々も、どうやら一段落してそれなりに落ち着き、節子さんも久し振りに実家に帰ると言うので、奥羽も越後同様に雪深い土地なので、幸い小雪の年とはいえ、道路事情を考慮して列車を利用することにし、健太郎は車で彼女を駅まで送り、その帰り道に気になる秋子さんの家を覗いてみた。裏口を開けると、日曜のため、理恵ちゃんが元気良くニコツと笑いながら顔を出し「おじちゃんこんな早い時間に来るなんて、どうしたの?」と尋ねるので、節子さんを駅まで送った帰り道で母さんの顔を見にきたと告げると「あらそうなの~」「本当は急に寂しくなったから、話し相手を欲しくて、かあさんの顔を見にき...蒼い影(14)

  • 蒼い影(13-2)

    蒼い影(13-2)

    節子さんは入浴後、夜化粧をしたあと掘炬燵に入り、TVニュ-スを見ている健太郎の脇に腰をおろして、リンゴジュースを飲みながらゆったりした気分でいると、こんな時間にめったに鳴らない電話が鳴り、健太郎が彼女と顔を見合わせて出てみると、賑やかな声に混じり居酒屋のマスターの響くような声で「今。老先生や息子さん夫婦とお孫さんが揃って珍しく店に来ているわ。例のヤンキー娘も交えて今日の参加者で、店は大繁盛でこんなことは、めったにないので、先生(健太郎の別称)も奥さんを同伴してこられませんか」と、誘いの案内だった。健太郎は「それは結構だなぁ。けれども、彼女も初めてのことなので緊張していたせいか、多少疲れている様なので遠慮させて欲しいが・・」と丁寧に断ると、老先生に電話を代わり「いやぁ、今日は大成功だった。皆んなも喜んで...蒼い影(13-2)

  • 蒼い影(13)

    蒼い影(13)

    春の連休が終わる頃になると、山里の夕暮れも一時間位延びて、午後5時頃とゆうのに外は明るい。それでも夕方になると、晴れた日ほど山脈から吹き降ろす風が冷たく、道端の小川の流れも雪解け水を含んで流れも早く、瀬に当たって砕け散る水が夕日にきらめき一層冷たく感じられる。雪解けの遅い山麓の川端には、早くもフキノトウが今を盛りと黄色く可愛い蕾の顔を覗かせており、心を和ませてくれる。音楽とダンスの親睦会も楽しく無事終えて、ほどよい興奮の余韻を残しながら、狭い農道を四人が揃って家路に向かって歩き、鎮守様のところで秋子さんと別れるとき、彼女が節子さんを呼び止め少し離れたところで、なにやら二人で話しあっていたが、その隙に、理恵ちゃんが健太郎に対し、会場で話したことが言い足りないのか、再び、話を蒸し返して「おじちゃん、節子小母さ...蒼い影(13)

  • 蒼い影(12-2)

    蒼い影(12-2)

    ダンスが始まるや、節子さんは老先生の配慮で、いずれ大学病院に勤務したときにはお世話になるであろう、老先生の息子さんの正雄とペアを組むことになった。彼は大学病院に臨床医兼講師として大学に隔日おきに勤務するほかは、診療所で親子して診察に出ている40歳代の外科医である。正雄医師は、老医師が英国に滞在研修中に彼の専属看護師をしていたダイアナと結ばれて生まれた、英国人とのハーフであり、瞳は黒いが細面で痩身の体形は見るからに外国人風であるる。ちなみに、正雄医師の妻であるキャサリンは純然たる英国人であり、現在は薬剤師として診療所に勤めているが、性格も控えめで優しく、一人娘である小学生の美代子のPTAにも積極的に参加し教育に熱心である。老医師は、この一人娘のお孫さんが自慢で日頃とても可愛いがっており、彼女が傍に近寄るとあ...蒼い影(12-2)

  • 蒼い影(12)

    蒼い影(12)

    山合いの街で開催された春恒例の慰労会。当日は、朝から晴れわたり、普段限られた人達だけの会話と異なり、近隣町村の参加者の中には連休で帰郷していた人達の顔も見えて話題も増え、会場は賑やかな会話で盛り上がって、皆は本能的に身体を動かしたい心の躍動感に誘われている。遠くの飯豊連峰も白銀で神々しく眺望でき、なだらかなスロープを描いて駅のある街場に連なる緑の棚田も、雲ひとつない青空のもと、早苗が植えられた水田の水がキラキラと日光を反射させて眩しく輝いていており、まるで光る池のようだ。連休最後の日曜日を利用した慰労会は、中学校の運動場で開催され、近隣市町村の老若男女を交えた人々で賑わい、卒業生を加えた人数が増えた吹奏楽の演奏から始まり、華ばなしく開催された。この慰労会は、農作業で疲労した身体を癒す人々や、サラリーマンで...蒼い影(12)

  • 蒼い影(11)

    蒼い影(11)

    社会主義国とはいえ、庶民の中に儒教意識の残る中国では、世界中の資本市場が欧州の金融不安で騒いでいるのに対し、自国の経済方針を堅持して悠然と伝統的な慣習を守っている。政治体制とは別に、大陸的な人間性もあるのか、歴史の重みを考えさせられる。健太郎の住む街も、都会の急激な価値観の変化や煩雑さとは異なり、田植えを終わり春の農繁期が過ぎると外仕事も一段落して、人々は毎年恒例の憩の行事を楽しむ習慣がある。けれども、若い人達が持ち込む合理的な都会の文化が、山村の古き良き伝統を大事に受け継ぎながらも、少しずつ古い慣習の岩盤が静かに移行し改められている。つい、一昔前までは、冬季は出稼ぎや藁仕事などで過ごしていたことを思うと、最近の機械化された農業とは覚醒の感を覚える。先日も、恒例の定期健診があり、村の旧家で医院を開業してい...蒼い影(11)

  • 蒼い影 (10)

    蒼い影 (10)

    中春の晴れた日の昼下がり。健太郎は縁側に出ると、何時もの習慣で煙草をくゆらせながら辺りを漠然と見渡し、紺碧の青空のもとに白銀に輝く山脈の峰々を眺望していると、何時ものことながら神々しさを感じ、千古の昔から人々が山岳の神に畏敬の念をもち、先人達はあの山の彼方に幸せがあると信じて、日々の生活に希望をいだき苦難に耐えて励んできたこと。さらには棚田や路傍の石碑を見るにつけ、名もない人々が積み重ねてきた故郷の歴史の重みを思い浮かばせた。富士山をはじめとして、全国の小高い山々にいたるまで、頂上に『権現様』が祀られているのは、その証しと思はれ、神が仮の姿で現れていると表現した、先人の生活の知恵に心を奪われた。そんなもの思いに耽っていたところ。新任教師として初めて下宿でお世話になって以来10数年振りに逢う、節子さんの母親...蒼い影(10)

  • 蒼い影(9)

    蒼い影(9)

    健太郎の家は、先々代から受け継がれ、床柱や梁それに唐紙戸などに欅材を豊富に用いて建てられている。茅葺で間数も多く居間の天井も高く造られた、今では村でも古い骨董品のような家であるが、どことなく重厚で威厳の趣きがある。周囲は防風雪の杉木立に囲まれ、裏庭は小高い丘に向かって杉や楢の木に柿や栗の木が数本混じって、あまり手入れされることもなく少々荒れて繁茂しているが、片隅には小川から流れ落ちる水を利用した人工池があり、飯豊山脈を遠くに望む東向きの玄関脇は50坪ほどの芝生の庭や畑となっている。家を出ると道に沿って農業用の狭い小川が流れており、両側の田圃の畦には昔ながらに稲をはさ架けするハンの木が5本くらいずつ適当な間隔をおいて植えられ、整備された土の農道を3百米位東に行くと、街の中心部に通ずる舗装された県道が一本はし...蒼い影(9)

  • 蒼い影(8)

    蒼い影(8)

    残雪に映える飯豊連峰を遠くに望み、ゆるやかな傾斜に棚田が連なる小高い山並みに囲まれた農村は、昼の陽気も余熱を残すことなく夕方は冷え込む。この村の、古い家は、たいてい座敷が広く天井も高いので朝夕は部屋も冷えて、この時期、夕方になると部屋の中央に作られた大きい囲炉裏に炭火を赤々と燃やし薪ストーブで暖をとることが慣習となっている。夕暮れも迫った頃。健太郎は、母親に連れられてピアノの練習に来ていた理恵ちゃんを相手に話を交しながら囲炉裏火を用意しているところに、突然、なんの前振れもなく節子さんが訪ねて来てたので二人はビックリし、秋子さんも台所から顔を出して機嫌よく出迎えた。節子さんは新潟大学に用事に行き、その帰りに寄ってみたと話していた。健太郎と理恵ちゃんは、挨拶もそこそこに大急ぎで拭き掃除をして部屋を整え、秋子さ...蒼い影(8)

  • 蒼い影(7)

    蒼い影(7)

    今年の越後の春は例年と異なり、豪雪がまたたく間に消雪した後、急に初夏が訪れた様に気温が上がり、遅れていた棚田の耕作も始まる頃には、丘陵の緑も増して夏の香りが漂っていた。連日晴天が続き、空はつき抜けたように青く、人々の心も何となく軽るそうだ。連休が終わるころには、辺り一面の田圃が若々しい早苗で緑の世界に変貌することであろう。樹齢8百年と言い伝えられる鎮守様の杉の大木数本も薄黒く繁り、祖霊が宿り村を守っていてくれると思える。境内に設けられた保育園では、幼児達が賑やかに戯れて微笑ましい光景を見せてくれ、嬉しそうにはしゃぐ声が明るい春の到来を告げていた。健太郎は、杉木立に取り囲まれた、お寺の参道脇にある、お稲荷様の門前に生涯学習会の帰りに差し掛かると、留守居を頼んでおいた理恵ちゃんが、同級生らしき3名の女の子と賑...蒼い影(7)

  • 蒼い影(6)

    蒼い影(6)

    晩春の麦畑は蒼さをまし、日中は初夏を思わせるような陽気になり、、遠く飯豊連峰の峰が透き通るような青空に白銀を輝かせ、思わず神秘的な虚空の世界にいざなわれる様な明るい気分になる。温暖な日和は、人々も外に出て田畑の耕作や家屋周辺の清掃補修などの仕事に励み、永い雪の世界から開放された雪国ならではの味わえない充実した幸福感を人々に与えてくれる。そんな或る晴れた日の午後。街の公民館で青年会と老人会が合同で慰安会が開催され、併せて、遥か昔に、卒業した高校(男女共学以前の旧制中学)の同窓会が、隔年おきの今年も開かれた。開催のたびに、大先輩の懐かしき姿が、集う仲間から一人二人と欠けてゆくことに、”諸行無常”の寂寞感を禁じえないのは、口に出さないまでも皆同じ思いと察しられた。老いたりとわいえ70歳を過ぎた現在も、診療所の医...蒼い影(6)

  • 蒼い影 (5)

    蒼い影 (5)

    毎年、卒業式間近になると、街の恒例となっている町民の慰労会を兼ねて卒業生を見送る音楽祭の行事がやって来た。近隣の中・高生による合同吹奏楽演奏会の日は、あいにく朝からの時雨模様の肌寒い日であり、健太郎も体調を考慮して、遠慮しようと考えていたところ、相変わらず元気で明るく、常にマイペースな秋子さんの娘である理恵子が、玄関に顔をのぞかせて、大声で「小父さ~ん!。音楽担当のK先生がどうしてもお爺ちゃんに出席して欲しいと、私にお願いに言って来なさい。と、言われたので・・」と、無理やり誘いにきてくれ、その際、最後にみんなで練習した、小父さんの好きな行進曲「旧友」と「泳げタイヤキ君」を指揮してくれと頼みこまれ、この日のために全員で音合わせした練習風景をこまごまと説明するので、彼の教え子であるK先生の思いやりのある心情と...蒼い影(5)

  • 蒼い影(4)

    蒼い影(4)

    飯豊山脈を遥か彼方に眺望する様に、遠い昔となった青春時代を語り合うちに、健太郎と節子の二人の間には確かに存在した、互いに抱いた浮き雲の様な淡い恋を覚えたころを、夫々が思いを巡らせているとき、突然、鳴り響いた携帯で、二人は夢を見ているような雰囲気も中断されてしまった。健太郎が携帯電話を取り出して返事をすると、通話の相手は彼の村で美容院を経営している秋子さんであった。彼女は一人身であるせいか世話好きで、時々、娘の理恵子を連れて訪ねてきては、各部屋をこまめに掃除してくれたり、庭の花壇を手入れしてくれ、その合間には、彼女を取り巻く人達の評論や愚痴を話して気を晴らして行った。彼女は、節子さんと同じ郷里で確か高校2年先輩であったと思うが、今は離婚して中学3年生の一人娘の理恵子と二人で暮らしていた。秋子さんは、彼の遠慮...蒼い影(4)

  • 蒼い影(3)

    蒼い影(3)

    彼女は話すことに躊躇いながらも、この機会にと意を決したのか、俯いて囁くような声で「健さん。亡くられた奥様との結婚生活はさぞかし幸せだったでしょうね。ピアノ教師をなさっていたとか聞いておりましたが・・。職場での恋愛で結ばれたのですか?」「それだけに、今は心が空虚になり寂しい日々を送られているんでないかしら。奥様のご冥福を祈りますともに、ご同情申し上げますわ」と呟いたが、彼はフフッと笑って「ご心配。有難う」「恋愛だなんてとんでもないよ。親戚の勧める見合いですわ」と言葉少なに答えたあと、近況について「幸い貴女と同郷で貴女の先輩である秋子さんが近所に住んでおり、時折、娘さんを連れて訪ねて来ては、家事をしてくれて凄く助かっていますわ」「一人娘で小学生の理恵子さんは、亡妻の律子が元気なころはピアノの練習に来ていたこと...蒼い影(3)

  • 蒼い影(2)

    蒼い影(2)

    枝折峠の頂上付近は、松や楢や雑木等に周囲を囲まれ中心部分は名も知らぬ草などの雑草が生えた平地で、西側の崖渕から下方を見ると、なだらかなに続く棚田や畑の先には、防風林越しに青い穏やかな海が見え、その彼方には佐渡が霞んで見える。背後は標高2.000m級の霊峰飯豊山が遠くに眺望できる、この地方では名の知れた憩の場所である。丘の中ほどに建つ石碑の前で、健太郎と節子さんが並んで腰を降ろし、青空を見上げると、ゆつくりと流れる小さな白い浮雲が流れていた。健太郎が感慨深く周囲の風景に見とれている間に、いつの間にか、海岸に面した崖の方に行っていた節子さんから「先生アッ!健さん。来て、きてぇ~!」と、若々しい透き通った声で叫んで白いハンカチーフを振りながら手招きし、続いて「海岸線に沿つた渚がキラキラと眩しく光っていて、まるで...蒼い影(2)

  • 蒼い陰(1)

    蒼い陰(1)

    近年にない豪雪に閉ざされていた飯豊山脈の麓に位置する健太郎の住む街にも、平野部に比べておよそ月遅れの春が漸く訪れ、川原の堤防に並んで植えられた樹齢30年位たつたであろうか、古木の桜並木の蕾もほころびはじめた。早春の晴れ渡った日。奥羽連峰の高い峰々の白銀が、青空のもと陽に映えて神々しく輝き、小高い丘陵の麓には、整然と並んで植樹された八珍柿や林檎の畑が広がっている。やがて芽吹くであろう林檎の樹を見ながら、曲がりくねった小道を通り抜けると、越後から羽越に通ずる歴史的にも名のある枝折峠へ至る。小径は山合いを縫う様に小石混じりの緩急が織りなし、途中所々に先人が通ったであろう昔ながらの石畳みが敷かれた道が連なる。永年の風雪に耐えて型良く曲がった幹の太い数本の松の古木の周辺を楢や雑木と若い笹が繁茂する道を時間をかけてゆ...蒼い陰(1)

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