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彼と彼女とエトセトラ http://nakachuton.blog.fc2.com/

鋼の錬金術師の二次創作小説です。ロイアイと軍部の愉快な仲間たちの日常をほのぼの書いてます。

かりん
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2015/07/28

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  • たとえば貴方のいない部屋で10

    デスクは書類で山積みだった。「なんだこれは!」 雪崩を起こしそうなその量にマスタングは慄き、くるりと回れ右をしようとした。「中尉! 体調不良だ! 今日は早退する!」「来たばっかりで何をおっしゃってるんですか!」 リザは逃げられないようがっしりとマスタングの両肩を抑えると、無理やり執務室のデスクにつかせた。「大佐ー。これ、留守の間の報告書ですよ」 ノックもせず入ってきたブレダは、マスタングの前にさ...

  • たとえば貴方のいない部屋で9

    抱き合って寝ていたはずなのに、目が覚めるとリザは一人だった。 起き上がって部屋を見回す。部屋は暗くシンとしていて、人の気配はない。 シャワーを浴びているのかと耳を澄ませても、水音は聞こえなかった。 ベッドから出ようとして、何も着けていないことに気付いた。ベッドサイドにあったスタンドライトをつける。 見える範囲で確かめると、胸元を中心にうっ血した跡がそこかしこに散らされていた。どうやら夢ではなかっ...

  • たとえば貴方のいない部屋で8

    「背中を見せてくれ」 彼はそう言った。 彼の真意を掴みかねて、リザはじっと彼を見つめた。  部屋に入るなり、彼はリザの腕を引いた。 背中をドアに押し付けられる。吸い込まれるような黒い瞳にリザが映る。 彼の唇がリザに触れた。最初は額に。それから鼻先。左右の耳、頬。 唇。 ついばむように軽く。すぐに離れて、彼は親指でリザの唇をなぞった。 また近づく。今度は深く。リザが緩く唇を開くと、彼は舌を差し込んで...

  • たとえば貴方のいない部屋で7

    目が回る。 地面が揺れる。世界が歪む。 頭が痛い。 裸の脳を鷲掴みにされ、そのまま握りつぶされてしまいそうな感覚。 体が熱い。 燃えている。臓腑のすべてを焼き尽くさんばかりに、体の内側全部を黒い火が巡っている。 道端に手をついて、何度か嘔吐した。 どうやって歩いてきたのかもわからないが、マスタングはようやくヘンリー医師の家にたどり着いた。 チャイムを鳴らす。ドアを開ける。鍵はかかっていなかった。...

  • たとえば貴方のいない部屋で6

    輪郭のはっきりした入道雲が、晴天にきりりと存在感を主張していた。 リザは公園のベンチに座って、ぼんやりと川を見つめていた。 荒々しい獣のように猛っていたあの川と繋がっているとはとても思えない。水深は浅く、流れはほとんどない。 穏やかな川だった。 彼がここまで流れ着いたことは僥倖だった。すぐに発見されて適切な治療が受けられたことも。 汽車が流される前に救出された数人を除いて、生存者はほとんどいなか...

  • たとえば貴方のいない部屋で5

    「ちゃんと説明してください」 ハボックは目を眇めてリザを見下ろし、きっぱりとそう言った。 「いつまで甘やかしてんですか?」 不機嫌そうな顔で店に入ってきたハボックは、カウンターにリザを見つけると、その隣にどっかりと座った。「貴方、仕事は?」「ブレダが頑張ってますよ」 そう言ってハボックはタバコをくわえた。「上司が二人も行方不明で、こっちはアップアップですよ」「禁煙よ、このお店」 リザはハボックの口...

  • たとえば貴方のいない部屋で4

    一週間たっても、リザはマスタングに声をかけることもできなかった。 毎日カフェに通い、ミルクティを頼む。 いつもマスタングが注文を受けてくれるわけではなかったが、リザにとってはその方がありがたかった。「お姉さんもマスタングさん狙いなんですか?」 ミア、と呼ばれていた子はカウンターに座っていたリザにミルクティを持ってくると、そのままリザの隣に座った。「違うわ」 リザは首を振った。 ちらりと店を見回し...

  • たとえば貴方のいない部屋で3

    「いらっしゃいませ」 その声を探していた。何ヶ月も。 リザがカウンターに座ると、エプロンをつけた黒髪の男は即座にリザの前に水の入ったグラスを置いた。「こんにちは。初めまして……じゃ、ありませんね」 男はじっとリザを見ると、首を傾げた。「どこかでお会いしたことありますか?」「マスタングさん!」 奥のテーブルを接客していた女の子が、すかさず叱責した。「またそうやって! お客様を口説くのやめてください!」...

  • たとえば貴方のいない部屋で2

    デスクに向かうその背中は広く、周囲の空気はピンと張り詰めている。 寝食を忘れ、何時間も没頭しているその背中は明確に他者を拒んでいて、その様に慣れたリザでさえも声をかけることを躊躇する。 シンポジウムの資料を、彼は宝物を抱くように大事に扱っていた。 表紙を手でなで、ゆっくりとページを捲り、目次に連なる研究者の氏名と論文のタイトルを指でなぞった。 そしてペンを片手にデスクにつくと、行間にびっしりとメ...

  • たとえば貴方のいない部屋で1

    朝からどんよりとした黒い雲が東部を覆っていた。「西の方は大豪雨だそうですよ」 通信部から天気情報を聞いてきたフュリーは、そう言って窓の外を見た。「じきにこっちにくるでしょうね」「それより大佐よ」 書類の仕分けをしていたリザは、手を休めてぐるりと首を回した。「ちゃんと帰ってこれるかしら」「ああ。汽車止まってるかもしれませんね」 ブレダは顔をしかめて、マスタングのデスクをちらりと横目で確認した。 上...

  • たとえば貴方のいない部屋で

    祝! ロイアイ月間!「サイトをきっかけにロイアイにはまりました」というお言葉を最近いただきました。とてもとてもありがたいことです。こちらこそ「ロイアイにはまっていただきありがとう!」とお伝えしたいと思います。サイトの更新は滞っていますが、未だロイアイ街道爆進中です。...

  • 愛を込めてバラの花を

    「ちゅーっす。大佐いる?」「よう、大将」 東方司令部にやってきたエドワードは、いつになくのんびりした空気に首を傾げた。「なんだよ、暇なの?」「今はな」 ハボックはぐーっと背伸びをして立ち上がった。「で? 大佐か?」「うんそう。あれ? 中尉は?」「今日は非番。大佐ー、鋼の大将きましたよー…って、あれ?」 ノックもせずに執務室のドアを開けたハボックは、大佐のデスクがからっぽなことに愕然とした。「は……、...

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