だれか憶えているかしら (NO.2025年-02)
あの雲は動いているんだろうか?あまりに大きくてそのあたり一面を陰りが覆っている。雲のへりにはひざしがあってね。そこからさきへはめったに出られたことがない。出られたこと・・・がない。だれかが忘れていった荷物のようにぼくは“そこ”ころがっている。犬がきたり猫がきたりいろいろな黒い虫がぼくの周りを通り過ぎる。スイフトが書いたガリバーのようにいや配達人が忘れていった荷物のようにぼくはころがっている。ああおお。本が枯れてゆく。どんどんと本から文字が逃げ出してぼくの手がとどかないところへ。とどかないところへ逃げてゆく。結局はだれかが忘れていった荷物となってぼくは白いページばかりで出来た不思議なふわふわした本のからわらに寝そべっている。雲がどんどんどんどんあっちへいってしまう。日陰も消えてゆく。消えた日陰のことをだれか...だれか憶えているかしら(NO.2025年-02)
2025/06/06 11:07