おかあちゃんが病院から送られてきた 明るい部屋の布団の中のおかあちゃん 足が出ていた さわっていいよね? 膝の下あたりをそっと中指でさわると 冷たい 死んだ人は本当に冷たいというけど おかあちゃんも冷たかった 死んだんだ 冷たい中指はいつまでも 今もその時の冷たさが思い出すとよみがえり そのときの子供の私に向かって大丈夫だよと声をかけたい お葬式のあと親戚中が喧嘩をしていた 誰がわたしの面…
最初、 私が物心ついた時からの記憶をたどるように、このブログを思い出しながら書いていると、 なんだか私って悲惨な状況かなと実感していました。 だけど、私みたいな環境の人は、どうってことないじゃないか? 普通とか普通じゃないとかそういうのではなく、人が一人いると、いろんなことが有り、人それぞれなんだ。 そう、人それぞれなんだ。 と思うようになりました。 別にたいしたことないじゃないか。 そう…
おかあちゃんが急変して 親せきのおっちゃんが家にずかずか入ってきて お前何してるんだ! 怖い顔をしてどなったとき、 心が動いて置き去りにされたような 頭の中にもう一人のわたしがいて わたしがしゃべることをじっと見ているような わたしがすることをずっと見られているような そんな変な気持ちになった 親せきのお姉ちゃんがずっと泊まっていたけど わたしの横の布団には いない どうしてわた…
公園からこの路地を曲がると家が見えてくる 雨が降りそうだ 空を見ると小さな小さな点のような粒が見えて パクリ パクリ 粒を食べる遊びをしながら家に帰った おかあちゃんが布団に入っていて お医者さんが注射をしている おおきな太い注射でちょっと黄色い色が付いていた おかあちゃんが、 口の中が変な臭い・・・ ぽつんと言った おかあちゃんがご飯を食べないで パンに牛乳を浸して食べていたけど 栄養が…
わたしはお人形を買ってもらった記憶がない 陶器の桃色のぶたさんの貯金箱がわたしの大事なものだ 耳の所が欠けていてざらざらしている 数枚の小銭が入っていて振ると音がする ここにお金がいっぱい貯めたらお人形を買おうと思う 公園の鉄棒で遊んでいると 一才上の友だちが れんちゃんのおとうさん死んで良かったねー 平和になったから 二人おしゃべりしながら遊んでいて、にっこりしながら言った えっ そんな…
いつも開いている玄関から こんばんは といいながら男の人と女の人が入ってきた 女の人は若くて色が白く 男の人は短髪の髪をきちんとしている うつむきながら土間から畳の方へいく おかあちゃんと 二人が座っている 最初は何かの話をごそごそとしていたが いきなり おんどれーさっさと返さんかーなめとんのかー 女の人がスカートまくりあげて畳の上に片足を立てた そしておかあちゃんに詰め寄った わたし…
れんちゃんはお母さんの顔にそっくりだねぇ、かわいいねぇ、お母さんに感謝だねぇ よく家にやってくる近所のおばちゃんが れんの頭をさすりながら言った そうかな?れんは丸顔だしおかあちゃんは細いけど 不思議そうにしていると こっちにおいで おかあちゃんがにこにこしながら自分の膝の上に乗せた れんの太ももとおかあちゃんの素足の膝がぴちゃっとくっついた そしておかあちゃんが れんはお母ちゃんに似て…
何かの音に気がついて夜中に目が覚めた おかあちゃんが帰って来て 急に畳の上に突っ伏した どうしたの? 近づくと 声を出さずに泣いている 声が掛けられない 何があったの? 借金のこと? それとも何か悔しい事があったの? これからもっとお手伝いするから リヤカーも一緒に押すから ごめんね、ごめんね わたしは隣でじっとしていた ずっとおかあちゃんの背中を見ていた 朝起きたらわたしは布団の中に…
まっすぐ進めたときちょっと口を開けて 笑っているようなびっくりしているような顔をしていた おでこが光っていた 乗れるまでずいぶん日にちが過ぎたけど もう練習しなくても乗れるね 友だちと道端で遊んでいると おかあちゃんがリヤカーを引いて荷物を運んでいる 向こうの通りにいる姿を見た 細い腕が黒く日焼けしていた スカートから出ている足は細かった リヤカーを引いてるのが わたしのおかあちゃんだ…
泣いたのはおかあちゃんの悲しむ姿がかわいそうだったから お父ちゃんの為に泣いたことはない 布団の中で静かなお父ちゃんは 蛍光灯の下で 痩せて鋭くなった頬のあたりが影になっていた そばに行くのが怖かった お父ちゃんを止めなかった近くにいた大人は おかあちゃんやわたしのことなど考えず 自分のことだけで手いっぱいな人たち おとうちゃんが死んだからといって わたしの日々が悲惨だというわけ…
そそれからの記憶は 家族でどこかに出かけていたんだろう 夜になり 帰るために なかなか停まらないタクシーにいら立ち お父ちゃんが両手を広げてタクシーの前に立ちはだかった 背広にウールのような黒いコートを着ていた ふらつく足で まるで 踊っているようだった タクシーの中にいるわたしは メーターが上がるたびに怖くて お金が払えなかったらどうしようと思った そしてわたしが小学生にな…
アル中のお父ちゃんは自分の飲むお酒のことで頭がいっぱいだった。 飲んでるときがいちばん幸せだったのだ。 昼間はだいたい寝ていた。 邪魔をしないように起こさないように静かに過ごした。 夜になると突然に大きな声を出しておかあちゃんを罵倒する。 その日は 髪の毛を鷲づかみにしてぐいと引っ張った。 強い力で。 そして一歩二歩引きずった。 叫び声とドタバタする音で近所の人が駆けつけ お父ちゃんを羽…
おとうちゃんは穏やかな人だったけど だけどどうして? どうして急におかあちゃんをおこるようになったの? 夜におとうちゃんのどなり声がして おかあちゃんを突き飛ばした 部屋の火鉢を蹴飛ばして 土間に落ちて割れた 灰と小さな赤い火が散った それをじっと見ているわたし 声が出せず 息を詰めた 青い模様の火鉢が割れた 赤い線香花火みたいに火が飛んだ 毎晩 毎晩 家の中で暴れた …
みんなに注目されて頭をわたしに向かって下げている 普段のわたしは内向的で もし5人の子どもがいるとすれば5番目の子どもです 1番目の子どもはきれいな服を着て輝いています わたしは輝いたことなど一度もありません どうろぼうと言われ皆に責められたのに 大泣きをしたあとなのに 全員に頭を下げて謝ってくれたことが 晴がましく思いました おかあちゃんもこのことを後から聞いて知っていたと…
ずいぶん昔の話です。 当時の私がどう思いどう感じたか、ありのままに書いています。 読む人にとっては不快感があるかもしれません。 すみません。 今まで誰にも言えなかったことを、はき出したいと思いました。 れん
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