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2015/01/11

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  • くノ一その一今のうち・48『胸の魔石と隧道の金塊』

    くノ一その一今のうち48『胸の魔石と隧道の金塊』トックン……トックン……心(地下戒壇)の闇の中で自分の心臓の音だけが際立つ。闇の向こう、たった今まで老忍の多田さんが身をもって隠していた風穴が露わになった。その向こうは、さらに奥行きを感じさせる。目を凝らせば、かなり先の方では微かに灯りの灯る隧道になっているような気がする。心臓の音は忍びの臆病虫の声だ。単なる怖れではない。この先に踏み込めば命にかかわる。それを告げる忍者の本能的なアラームなんだ。ここへ来るにあたっては、まあやはもちろんのこと、課長代理にさえ告げていない。上忍の課長代理なら夜明けまでには気付くだろうが、今ではないだろう。でも、頭の別のところでは、これが埋蔵金の正体や、その行方、背景を見届ける最後のチャンスだと呟く者がいる。ク…………足が動かない...くノ一その一今のうち・48『胸の魔石と隧道の金塊』

  • RE・かの世界この世界:054『』

    RE・かの世界この世界54『早朝の四号』テル朝の諸々の音で目が覚めた。子どもたちのさんざめき、キッチンでお湯が沸いて食器を並べる音、古びた床の軋みと軋ませている足音、野鳥のさえずり、微かな瀬音……それらは騒音ではなく、朝の微睡みをいやますような心地よさがあった。遠い子どものころ、ひょっとしたらわたしが、いまのわたしであるもっと前のわたしであったころに田舎の祖父母の家で目覚めた時のような安堵感のある諸々の音。その優しい音たちに、もう一つの聞き慣れた音が混じって来た。キュロキュロキュロキュロ……二号ではない、三号……四号か……?四号の履帯の音であると気づくと同時に、一気に現実に戻った。パンツァージャケットを掴むと片方袖を通しただけで庭に出た。子どもたちも二人の先生も出ていたが、上り坂に差し掛かった四号に目を奪...RE・かの世界この世界:054『』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・015『入学式・2』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記015『入学式・2』威風堂々のBGMが流れる中、式場の体育館に入る。BGMは威風堂々だけど、全員サンダル履きなので微妙に締まらない。ペッタンペッタンペッタンペッタンペッタンペッタン………………なんだか人に化けた両生類が行進してるみたい。あ?サンダルに気を取られて気づくのが遅れたけど、お祖母ちゃんのオーラを感じる。振り向くわけにはいかないけど、新入生の保護者席に普通に座ってる感じ。最後までグズってたけど、やっぱり来てくれたんだ。ちょっと嬉しい、家に帰ったら正直に「ありがとう」って言おう。真ん中の通路を挟んで右が男子、左が女子に分かれて座る。チラ見すると、足を組んだりだらしなく座ってる子が一人もいない。背筋が伸びてない子はいるけど、みんなちゃんとしてる。ヨイショ深く座りな...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・015『入学式・2』

  • RE・かの世界この世界:053『院長先生』

    RE・かの世界この世界53『院長先生』テルここの子たちは、みな戦災孤児です。院長先生は、ごく当たり前のことを言った。ヴァイゼンハオスというのは孤児院という意味なのだから、当たり前だ。「そうですね、当たり前のことです」表情を読んだのか、言い当てられてしまった。「ムヘンで一番安全なところですが、最も辺鄙なところでもあります。だから、ここが孤児院であることを誰も疑いません」「なんだか意味深ですね」「じつは、大切な人を預かっているのです。それをカモフラージュするために孤児院をやっています」「どういうことでしょう?」グリとふたりで顔を見合わせてしまった。「十年前に、さるお方からとても大切な人を匿うように言いつかりました」「……子どもなんですね?」院長先生は、黙って頷いた。「その子を送り届けてはいただけないでしょうか...RE・かの世界この世界:053『院長先生』

  • せやさかい・397『うちの桜』

    せやさかい・397『うちの桜』さくらそろそろ桜も満開の春休み。「来週あたりは大変になるだろうねえ……」境内の掃除が一段落して、山門横の桜を見上げる留美ちゃん。「ああ、せやねえ……」これだけで意味が通じるうちらは、ほんまの姉妹みたい。姉妹みたいやけど、ほんまは中学一年から、ずっと同じクラスやいうお友だち。お家の事情で一人暮らしせんとあかんようになって、それなら「いっしょに暮らそう!」ということになって、早や三年、足掛け四年。うちも留美ちゃんも体動かすのん好きやから、特に決められたわけやないけど、本堂やら境内やらは二人の受け持ち。都会のお寺にしては広い境内で、曽ばあちゃんの頃は幼稚園やろかと本気で思たことがあるらしい。境内の塀の際には花壇があって、檀家の婦人部の人らが手入れしてはったんやけど、コロナの影響で足...せやさかい・397『うちの桜』

  • RE・かの世界この世界:052『ポンプ小屋』

    RE・かの世界この世界52『ポンプ小屋』テルポルシェティーガーだな……ポンプ小屋の残骸を取り払い、ポンプとパワーパックを露出させるとタングリスが結論付けた。屋根やら壁の焼け残りを取り除いた下には孤児院の水汲みポンプとしては大げさすぎるメカが出現した。「ポルシェのトラ?」付き添ってくれているフリッグ先生がランプを差し出しながら質問する。トラが居るの?こわ~い!かっこいい!食べられる~!子どもたちもティーガーという言葉に触発されてふざけている。本来なら就寝時間が迫って来る時間らしいのだが、作業が面白く、夕食後みんなで見学しているのである。「試作で不採用になった戦車です。ガソリンエンジンで電気を起こして、その電気でモーターを回す仕組みです。ガスエレクトリックと言うんですが、不採用になったんでシステムが宙に浮いて...RE・かの世界この世界:052『ポンプ小屋』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 115『目指せバケツ谷』

    鳴かぬなら信長転生記115『目指せバケツ谷』信長篠突く雨の中、行軍しつながら再度出した偵察隊が戻って来る。「御注進!御注進!敵はバケツ谷にて休息し雨やみを待っております!」「俺たちも雨宿りするか、もうパンツの中までグチュグチュだし(^_^;)」桃太郎が情けないことを言う。「このまま前進だ!敵の軍列は伸びきったままバケツ谷で停まっている。ならば、三千の軍勢でも容易に本陣が突けよう!大将の首さえ獲ってしまえば、この戦は勝ちだ!このまま突撃しろ!」「あ、でもでも、雨の中走ったら体が冷えて……」そこまで言うと、桃太郎は人よりも大きな顔を寄せてくる。「な、なんだ(;'∀')!?」「オレ、お腹弱いから、冷えると……したくなる」「え、なにがしたくなるのだ?」すると、いっそう顔を寄せてくる。「……鶴ちゃん、いい匂いがする...鳴かぬなら信長転生記115『目指せバケツ谷』

  • RE・かの世界この世界:051『自己紹介の前にバケツリレーだ』

    RE・かの世界この世界51『自己紹介の前にバケツリレーだ』テル近づいてみると半分近くが焼け跡だ。残りは火事の後に住めなくなって放棄され、雨風に晒されて朽ち果てた様子だ。ムヘンで一番安全と言われたシュタインドルフ。こうなってしまうには事情があったんだろうけど、事情に思いいたす前に無残さに気持ちが萎えてしまう。S字の坂道を上れば入り口というところで子どもたちが駆けだしてきた。ウワー戦車だ!カッコイイ!兵隊さんだ!オレも乗りた~い!あたしも~!後ろから修道女、おそらく先生が追いかけて、なにやら注意しているが、子どもたちの馬力は、その上を行く。孤児院の敷地に入って停めようと思っていたが、取り囲まれてしまったので、やむなくゲートの前で停車した。「辺境警備隊のタングリス一等軍曹です、支援物資を搬送してまいりました、あ...RE・かの世界この世界:051『自己紹介の前にバケツリレーだ』

  • 銀河太平記・153『邂逅する者たち・1・ブンカ―』

    銀河太平記・153『邂逅する者たち・1・ブンカ―』越萌マリ(児玉元帥)ブンカ―のドックは中型小型の船や水陸両用車でごった返していた。ドックを上がった待機エリアや整備エリアも足の踏み場が無い状況だ。到着したボランティア、配置の指示や装備の配給を待つ者、補給品の整理や管理をする者、装備を修理する者、負傷者の手当てをする者とされる者、戦死者を確認しながらシュラフに収める者、戦闘配食の用意をする者、片づける者、ドック各所に設置されたモニターを睨んで、どこまで正確か分からない戦況に一喜一憂する者、見ているだけで魚のように表情のない者、そういう、もう戦争と言っていい西之島紛争の前線基地の様子をマスとして捉える。数字としての戦闘経過や戦闘配置を見るよりも確かな戦争の『現在』が分かる。活気と疲労がせめぎ合っているが、負け...銀河太平記・153『邂逅する者たち・1・ブンカ―』

  • RE・かの世界この世界:050『バケツとジェリカン』

    RE・かの世界この世界50『バケツとジェリカン』テルペチャペチャペチャ……ペチャペチャペチャ……ペチャペチャペチャ……葦の草叢を三つの足音が逃げていく。タングリスと目配せして川下と川上に分かれて追いかける、それぞれケイトとブリを従えている。融合体との戦いで、四人は阿吽の呼吸で行動できるようになったようだ。タングリスの掲げた手が草叢の上に上がり「そこ」を示している。「そこ」とは、カエル投げの犯人が一秒後に到達する位置だ。今現在の場所を指しても、飛び込んだ時には手遅れになる。セイ!その未来位置にケイトと一緒に飛び込む。タングリスとブリも飛び込んで瞬くうちにご用!襟首と腰の後ろを掴んで持ち上げると、ジタバタと手足をもがかせて抵抗するが、いかんせん小さい。はなせ!はなせ~!はなせ~ヘンタ~イ!「おまえたち、ヴァイ...RE・かの世界この世界:050『バケツとジェリカン』

  • くノ一その一今のうち・47『心の奥』

    くノ一その一今のうち47『心の奥』心(甲斐善光寺の地下戒壇)の中は陰圧が掛かっていて、外の戒壇に空気が漏れないようになっている。だから、ニオイも気配も外に漏れることが無く発見が遅れた。しかし、陰圧が掛かっているということは、吸い込まれた空気がどこかに抜けているということだ。抜けていく方向に何かがある、恐らくは信玄の埋蔵金の大半を収めた洞窟が。甲府城の地下にあったのは、埋蔵金のパートワンというか見せ金だ。本命の埋蔵金に寄せ付けないためのダミーに過ぎない。立ったままの姿勢でじっと動かない。感度をよくするために両手をパーにして伸ばしている。動いてしまえば、空気をかき回してしまい、この微かな空気の流れを見失ってしまう。両手を広げて立っているなんて、忍者にあるまじき無防備さだ。腕のいい忍びが吹き矢でも吹けば逃げよう...くノ一その一今のうち・47『心の奥』

  • RE・かの世界この世界:049『シュタインドルフのヴァイゼンハオス』

    RE・かの世界この世界49『シュタインドルフのヴァイゼンハオス』テルムヘンブルグの西端、シュタインドルフのヴァイゼンハオスを目指している。シリンダー融合体との闘いが苛烈だったせいか、単調なムヘン川の景色のためか、武骨な二号戦車のエンジンの振動さえも心地よく、つい居眠りしてしまいそうになる。「よく、こんな体勢で寝られるなあ」知恵の輪のように絡み合って寝ているヒルデとケイトに感心したのは、寝てはいけないと思う自分への戒めであるのかもしれない。敵の襲撃に備えて、狭い車内に居るようにしているのだ。「この緩い峠を越すとシュタインドルフです。車外に出ても大丈夫でしょう」「どんなところなんだろう、シュタインドルフというのは?」「厳つく聞こえますが、日本語に訳せばシュタインが石、ドルフが村ですから、石村です」「石村……」...RE・かの世界この世界:049『シュタインドルフのヴァイゼンハオス』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・014『入学式・1』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記014『入学式・1』こんなに可愛いんだよ、元気出してがんばれo(>ω<)o!証明写真のメグリがこぶしを握って励ましてくれる。魔法じゃないんだ、アプリだよ。白黒の証明写真にアプリを使って色を付け、もう一つのアプリで動かしてみた。メッセージを打ち込むと写真に見合った人工音声で喋ってくれる。「へえ、なんだか魔法みたいね」引退魔法少女のお祖母ちゃんも珍しそうにのぞき込んでいたよ。有料アプリなんだけど、5人分は無料の体験版。月も改まって4月1日の今日は入学式。クラスも発表されるし、本格的な高校生活が始まる。靴下までおニューの制服。おニュー独特の匂い。袖口や首筋に触れるブラウスの襟の微妙な硬さ。歩くたびに胸元から新品の香り。ローファーも新品で足を下ろすたびにコツコツと音がする。髪...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・014『入学式・1』

  • RE・かの世界この世界:048『ブロンズですか?』

    RE・かの世界この世界48『ブロンズですか?』テルケイトの回復スキルによってHPを全快したタングリスは、一本だけ残った鞭を高速回転させて突っ込んでいく!ビシビシビシビシビシビシ!我々のために時間稼ぎをするつもりなんだ……タングリスの自己犠牲の精神に胸が熱くなる!しかし逃げるわけにはいかない!タングリスの自己犠牲に甘えるわけにもいかない!旅は始まったばかりだ!一瞬ケイトを見上げるが、十字姿勢のまま呆然と浮遊するばかりで、わたしやヒルデのHPまで回復してくれる様子はない。「テル、突っ込むぞ!」「おう!」ヒルデとわたしは、HPを回復することなくタングリスに続いた。数秒の間に事態は変わった。ヒルデの突進力はすごく、瞬くうちにタングリスに追いつき、首が千切れるんじゃないかという勢いでツィンテールを旋回させた。ブビュ...RE・かの世界この世界:048『ブロンズですか?』

  • せやさかい・396『うちのWBC』

    せやさかい・396『うちのWBC』さくらWBC…………字面で見ると、トイレのドアを二本の指で開けてるとこに見える。言葉で聞いても、ダブルビーシ、ダブルシー、なんかトイレっぽい。思わへん?思わないよ(´艸`)。コタツに向かい合って座ってお煎餅齧りながらテレビを見てる。テレビ言うても放送局の実況と違って、ユーチューブ。留美ちゃんと二人、ライブでは見られへんかったWBC決勝戦、日本VSアメリカ戦のダイジェストを観てる。留美ちゃんは感動しまくりやねんけど、うちはあかん。どうも、野球というのは性に合わん!どうも、うちは日本人としてはかなり珍しい部類に入るんやと思う。たとえばさ、古典の授業で万葉集とかあるでしょ。うちは、言葉の意味が分からんでも、なんとなく耳に心地い言葉を聞いてるだけで面白い。――あかねさす紫野(むら...せやさかい・396『うちのWBC』

  • RE・かの世界この世界:047『シリンダー融合体との激戦!』

    RE・かの世界この世界47『シリンダー融合体との激戦!』テル連携して戦うのは初めてだ。にもかかわらず、四人はベテランのパーティーのように展開した。弓を得物とするケイトは後方から矢を射かける。タングリスは戦車兵なのだが、いつのまにか五メートルはあろうかという鞭を構えて融合体の右翼にまわっている。ブリはヘリコプターのようにツィンテールを旋回させて左翼でホバリング。わたしは、ソードを右手にダガーを左手に構えて二刀流。合図があったわけではない。四人とも、無意識に全員の態勢が整うのを待っていた。そして、ほんのコンマ二秒で占位し終えると、一斉に融合体に跳びかかって行った。トリャー!ブリュンヒルデは一声を放つとツィンテールを高速回転させながら融合体の周囲を飛んで蹴散らしていく。セイ!セイ!掛け声も勇ましく、一振りで数十...RE・かの世界この世界:047『シリンダー融合体との激戦!』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 114『いざ出陣!』

    鳴かぬなら信長転生記114『いざ出陣!』信長敵部隊を発見しました!五組の偵察隊の内三組が敵を発見した。「三組とも発見だと!どれが本当なんだ(;'∀')!?」矢継ぎ早に三隊の報告を聞いて桃太郎は焦った。当然部下たちにも動揺が走る。「落ち着け、三隊とも正しい報告をしておる」「どうしてだ、偵察隊は一里(4キロ)の間隔をあけて出してある、三組とも敵部隊を発見するのはおかしいじゃないか!?」「同じなんだ。二番から四番の偵察隊が発見している、それぞれ、同じ軍勢の頭と腹と尻尾を発見したんだ。敵の行軍は、少なく見積もって三里、常識的に考えれば四里ほどになるだろう」「四里……16キロの行軍か!?」「敵の行軍は何列だった?」二列!三列です!四列でした!「バラバラじゃないか!役に立たん偵察隊だ!」気の短そうな猿が顔を赤くする。...鳴かぬなら信長転生記114『いざ出陣!』

  • RE・かの世界この世界:046『荒ぶるブリュンヒルデ!』

    RE・かの世界この世界46『荒ぶるブリュンヒルデ!』テル待てっ!!タングリスがイグニッションを押そうとした時、凛として制止の声があがった。え?それがブリの声だと脳みそが理解するのに数秒を要した。いつもの気まぐれで小学生気分が抜けない中坊のようなブリではなかった。凛とした声に瞬時戸惑ったが、身を乗り出したブリの表情は幼いながらも天晴れヴァルキリアの姫騎士のそれであった(゚Д゚)!驚く間もなくブリは続ける。「禍々しいものがやってくるぞ!」そう続けてペリスコープに食らいつくブリ。タングリスもキューポラの八つあるペリスコープを舐めるように確認した。「「あれは……!?」」発見の声は主従同時だ。「おまえたちも見ろ」促されて、わたしもケイトとペリスコープに食らいついた。なんだ、あれは……(°д°)?それは、数千個の泡が...RE・かの世界この世界:046『荒ぶるブリュンヒルデ!』

  • 銀河太平記・152『ブンカ―へ救急出動』

    銀河太平記・152『ブンカ―へ救急出動』メグミ島のロボットの9割が戦死した。並列化を解いて、相互の連絡は手旗信号を使ったり発光信号に変えてみたり、全てアナログ。デジタルでなくとも電気やパルスを使った通信であれば、漢明軍はいかようにもアクセスし、数秒で発信元を突き止めて攻撃を加えてくる。ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ発光信号が二度繰り返され、こちらは――ピ――と一度だけの了解信号を送る。○○地区で重傷のロボットが出た。その救援要請に――了解――の信号を送ったところ。平時なら救援と回復に関するスキルを送ってやれば、インストールしたロボットが99%わたしと同じスキルで修理、回復をする。しかし、今は島でA級スキルを持っているエンジニアはわたしとお岩さんだけだ。ついこないだまでは、わたし程度のエンジニ...銀河太平記・152『ブンカ―へ救急出動』

  • RE・かの世界この世界:045『シリンダー』

    RE・かの世界この世界45『シリンダー』テル異世界から持ち込まれた愛玩動物なんです「シリンダーは愛玩動物なんですか?」ハッチの縁に腰を預け、戦い慣れた下士官の余裕でグリは語る。シュタインドルフまでの道のりはムヘン川の南岸を一本道なので、操縦をオートにしてキューポラから上半身を晒している。ブリとケイトは最初っからエンジンルームの上にドンゴロスを敷いて寝っ転がっている。四人乗りに改造されているとはいえ、定員三人の二号戦車の中で長時間大人しくしているのは厳しい。じっさい、ムヘンブルグの北門で出会った前線帰りの二号戦車は同じように砲塔やエンジンルームの上に乗員を載せていた。車内にいるとストレスのエンジン音だが、外に出てみると心地よい振動になるので、ブリとケイトは眠ってしまっている。「トール元帥の平定が落ち着いたこ...RE・かの世界この世界:045『シリンダー』

  • くノ一その一今のうち・46『心の中』

    くノ一その一今のうち46『心の中』その二日後の夜、甲斐善光寺に忍んだ。誰にも言っていない。まあやに言えば心配をかけるし適当な嘘もつかなきゃならない。課長代理に言えば大事になる。金堂には破風から入った。ホタ音がするような着地はしないが、表現すると、こんな感じ。草原の国に忍んだことを思い出す。あの時も寺院の破風から侵入した。まだ何カ月もたっていないけど何年も前の事だったような気がする。次は破風からの侵入は避けよう。忍者のワンパターンは身を亡ぼす。いっそ真っ暗ならいいんだけど、うっすらと常夜灯が点いている。誰かに見られているような錯覚。分かっている、天井に描かれた八方睨みの竜だ。戒壇巡りと並ぶ善光寺の名物。最初に来た時に三村紘一に化けていた課長代理が教えてくれた。真下で手を叩けば「天人の警蹕のように響く」と課長...くノ一その一今のうち・46『心の中』

  • RE・かの世界この世界:044『ムヘン略記』

    RE・かの世界この世界44『ムヘン略記』テルムヘンの地は菱餅のような形をしている。菱餅の中央に城塞都市ムヘンブルグがあり、その北を東西に荒川ほどのムヘン川が流れている。昔は化外の地ムヘンと呼ばれ、主神オーディンの力も及ばぬ蛮族と化け物の地と嫌われ、神族でさえ足を踏み入れることは稀であった。しかし、オーディン紀元千年紀のころに、ムヘンの南端、菱餅の下のほうが『始りの荒野』と繋がっていることが発見された。始まりの荒野は、他の異世界と繋がっていて、そこから様々な異世界の神々や人間やクリーチャーが現れてはオーディンの知ろしめす大地や国々を脅かしていることがジークフリートの冒険で知られた。ジークフリートの非業の死のあと、ムヘンの地の平定を任されたのがトール元帥だ。トール元帥は、城塞都市ムヘンブルグを築き、ムヘンと始...RE・かの世界この世界:044『ムヘン略記』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・013『よど号と須之内写真館』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記013『よど号と須之内写真館』川辺の柵の工事は予想に反して三日もかかって、三月も末日の31日。リアルの橋は工事中でも渡れるけど、わたしのは1970年に渡るための戻り橋。ガチガチに工事用フェンスで囲われては渡れません。今日もダメだったら、令和の世界で白黒の証明写真を撮り直しとビビっていたら、なんとか、昨日の夕方には終わった。Mの標も無事に再発見して戻り橋を渡る。自動でない改札やガックン電車にも慣れて、昭和の宮之森駅が見えてくる。あれ?軽く驚く。令和では八分咲きだった桜が、まだチラホラの二分咲きでしかない。乗った駅はすでに昭和の奥宮駅だったんだけど、写真のこととか気になって桜には気付かなかった。令和とは桜の種類が違うとか?スマホを出して調べてみる。わたしのスマホは魔法少女...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・013『よど号と須之内写真館』

  • RE・かの世界この世界:043『え、マジか!?』

    RE・かの世界この世界43『え、マジか!?』テルああ、なんでも使ってくれグリ(タングリス)が鷹揚に返事をすると、小さな敬礼を返してこちらのゲペックカステンを開ける軍曹。「なんだこりゃ、お菓子屋でもやるつもりなのか?」「…………(゚ロ゚;)Σ(゚ロ゚#)」焦るブリとケイトを尻目にタングリスは方頬に笑みを浮かべて、こう言った。「シュタインドルフのヴァイゼンハオスの慰問を兼ねているんだ。ツ-ルはノルデンハーフェンで補給してもらうことになっている」戦争でいろんなものを見てきたのだろう、軍曹はしみじみとした横顔で続ける。「ヴァイゼンハオス……戦災孤児たちだな」「ああ、仰々しい慰問じゃ、シスターたちもかえって困るだろうからな」「なるほど、いや、停めてすまなかった。ツールは他の奴から借りるわ」「せっかくだ、キャンディー...RE・かの世界この世界:043『え、マジか!?』

  • せやさかい・395『湘南からの写真』

    せやさかい・395『湘南からの写真』さくら朝に本堂であげるお線香の順番。ご本尊の阿弥陀さま⇒聖徳太子ご尊像⇒歴代住職絵像いつもやったら、この三つなんですけど、昨日から一つ増えた。釋恋女(しゃくれんにょ)さんのお骨。釋が付くのは浄土真宗の法名です。他の宗派で言うところの戒名。法名は、お葬式で導師を務めた坊さんが付けます。釋恋女と付けたのはテイ兄ちゃん。「恋の字使うのは、ちょっと艶めきすぎてへんかあ」おっちゃんは反対したんやけど、テイ兄ちゃんは押し切った。「昴が『恋』の一字は入れてくれて言うしなあ、俺も『恋』は外されへんと思うんや」そない言うて仮位牌にけっこう上手な字で書いたんが六日前。そうなんです、この釋恋女さんは、俗名今井瑞穂。つまり、うちと留美ちゃんが毎朝自転車を預けてるスナック『はんぜい』の奥さん。奥...せやさかい・395『湘南からの写真』

  • RE・かの世界この世界:042『ゲペックカステン』

    RE・かの世界この世界42『ゲペックカステン』テル北門は南側の正門ほどの大きさではないが賑わいは比べ物にならない。城塞都市の日常生活をまかなう物資を積んだ大小さまざまのトラックが行き来し、商売や仕事で出入りする人々がバスや車、あるいはバイク、あるいは荷車や自転車、近隣の者は行商の大荷物を背負って行き来している。道の中央二車線は軍用車優先で、軍用のハーフトラックや装甲車、戦車が通る。中でも快速で軽快な二号戦車が半分近くを占めていて、我々の二号戦車も、その中に混じっている。「なるほど、これなら目立たないな」そう呟くと、タングリスがクスリと笑う。「目立たないもなにも、われわれ四人は正規の警備兵として登録されています。遊撃警備隊に属しているので、どこをどう通ろうと怪しまれません」「でも、こんな子供みたいなの連れて...RE・かの世界この世界:042『ゲペックカステン』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 113『なんでこうなるんだ?』

    鳴かぬなら信長転生記113『なんでこうなるんだ?』信長ヒヒーーーン!!なに奴!?俺の登場に馬が棹立ちになり危うく振り落とされそうになっているが、さすがに素戔嗚の化身たる桃太郎。カツカツと輪乗り(その場で丸く回って、馬の勢いを鎮める乗り方)し『待ったなし!』をかけられた関取のような目で睨んできた。はてさて、どうやっていなしてやろうか。すると、奴の方が恋人を発見したように瞳孔と口を全開にして意外な反応を示す。「や!やややや!大三島の鶴姫ではないか!」え?あ!?そうか、俺が身に着けているのは、大三島は大山祇神社に伝わる重要文化財の鶴姫の胴丸鎧。鶴姫は全国区的なヒロインではないが、大山祇神社は厳島神社と並ぶ瀬戸内の伝統ある大神社。桃太郎にしろ素戔嗚にしろ面識があっても不思議ではない。それに、うかつに飛び出したが、...鳴かぬなら信長転生記113『なんでこうなるんだ?』

  • RE・かの世界この世界:041『二号戦車』

    RE・かの世界この世界41『二号戦車』テル冗談のように見えたのは、数時間前まで乗っていたラーテのせいだろう。ラーテは1000トンもある超重戦車だったが、目の前の石畳で停車したのは10トンあるかどうかの軽戦車だ。呆気に取られて、気づくのに数秒を要したけど、それは二号F型だ。ほら、『ガルパン』の劇場版で、幼いころの西住姉妹が乗っていたやつ。大きさは宅配便のトラックほど。いや、高さは2メートルを切るから、宅配便のトラックよりも低いかもしれない。カチャキューポラのハッチを開けて出てきたのは別行動をとっていたタングニョーストだ。「二号でいくのか?」「ああ、操縦はタングリスがやってくれ」「やっぱり、ここを出ると顔が指すんだな」「城塞は元帥のコントロールが行き届いているが、街道にはいろんな者がいるからな」「二号では心も...RE・かの世界この世界:041『二号戦車』

  • 銀河太平記・151『西之島への迎え』

    銀河太平記・151『西之島への迎え』越萌マイ貴様が来てくれたのか!?無人のはずのオートパルス車のドアが開いたことにも驚いたが、そこから出てきたドライバーに驚いた。「元帥閣下の一大事、駆けつけるのは自分の職分であります」さすがに軍人丸出しの敬礼は控えて、それでも国防軍礼式通りの気を付けで応えてくれる。「貴様の事だ、抜かりは無いだろうが、仔細は車の中にしよう」脊髄反射で、こちらも越萌マリの口調が陸軍元帥に戻ってしまう。「はい、ではご乗車ください」「うむ」パルス車は、他の観光用や個人のパルス車、それに伝統的なヨットたちが出入りするのに紛れて江ノ島ヨットハーバーを出発した。「まだ現役なのか?」「心意気です」車に乗ってハンベをオンにすると、表示された運転手のIDは現役の陸軍准尉になっていた。「政府の西之島への対応に...銀河太平記・151『西之島への迎え』

  • RE・かの世界この世界:040『噴水の縁に腰掛ける』

    RE・かの世界この世界40『噴水の縁に腰掛ける』あれだけ寄って来た子どもたちが見向きもしない。無辺街道で出くわしてから、ずっと『ブリ』と呼んでいるが、それは、ただの短縮形、あるいは愛称だ。正しくはブリュンヒルデで、厳密にはブリュンヒルデ姫。呼びかける時は『殿下』あるいは『ユアハイネス』を付けなければならない。囚われの身であることを考慮しても、最低『様』は付けなければならないだろう。トール元帥が『ュンヒルデ』を取ったのは、ヴァルハラに着くまでの心得くらいに思っていたのだが、本営を出てからのムヘンブルグの人たちは一向に関心を示さない。「たいした力なのだなあ、トール元帥は」「これなら、ブァルハラに着くまで誰にも気づかれないかもね。元帥はおっかなかったけど、ちゃんとブリのこと思ってくれてるんだね(´∀`)」ケイト...RE・かの世界この世界:040『噴水の縁に腰掛ける』

  • RE・かの世界この世界:039『トール元帥』

    RE・かの世界この世界039『トール元帥』広いのか狭いのか……高いのか低いのか……真っ暗で見当が付かない。踏みしめる足の裏の感触が硬質なのと、外よりもヒンヤリした空気なので石造り……でも、足の裏に床の凹凸や石材の継ぎ目は感じられない。石材だとしたら、相当にカッチリ作られた建造物だろう。タングリスが運転手みたく先頭になっている電車ごっこの縄は微かに発光していて、前に居るケイトの緊張した輪郭が仄かにうかがえる。その前に居るはずのブリの姿は気配でしかない。数十秒……いや、数分も歩いただろうか、前方の景色がウッスラと浮かび上がる。太い二本の柱が立っている。タンクローリーのタンクの部分を垂直に立てたほどの太さがあって、エンタシスになって下の方がわずかに細い。なにかの結界だろうか……柱の上部に二本桁を渡せば極太の鳥居...RE・かの世界この世界:039『トール元帥』

  • くノ一その一今のうち・45『念願のお墓詣り』

    くノ一その一今のうち45『念願のお墓詣り』撮影というのは水ものだ。ちょっとしたトラブルが撮影の進行を遅らせる。夕べ、あたしと課長代理は甲府城の地下で木下の忍びたちと死闘を繰り広げていたけど、地上の甲府城でも監督たちが、これからの撮影について頭を絞っていた。『吠えよ剣』はアクション系エンタメドラマで、見る側は茶の間でドキドキしたりアハハと笑ってるだけでいいんだけど、ドキドキアハハにするためにはチャンネルを合わせてもらわなくてはならない。たとえ、仕事の疲れで寝てしまったり、ミカンの皮を剥いていたり、スマホの操作をしながらでも、チャンネルさえ合わせてもらっていれば視聴率が稼げる。業界用語でいう数字が取れる。限られた予算と製作時間で成し遂げるのは大変なんだけど、監督やスタッフたちは、その限られた中で全力を尽くす。...くノ一その一今のうち・45『念願のお墓詣り』

  • RE・かの世界この世界:038『ムヘンブルグ城塞都市』

    RE・かの世界この世界038『ムヘンブルグ城塞都市』ムヘンブルグ城塞都市の正門はダムに似ている。頂部のムヘンブルグの亀の子文字が無ければ、下から見上げた黒四ダムに間違えたかもしれない。正門の下半分は重厚な額縁のように段々になっていて、一番奥の下方は学校の昇降口ほどの大きさで、宅配便の車が通れるほどでしかない。ガクンガクンガクンガクンガクンガックン超重戦車ラーテが近づくと、二層目、三層目、四層目、五層目と広がっていき、最後に一番外側の六層目ゲートまで開いて、小学校の講堂程のラーテは微速で入っていく。入った直後から六層のゲートが閉じていき、ラーテの尻が入ると同時に全てが閉じられた。「わたしはラーテを格納しますので、タングニョーストが鎮守府までご案内します」タングリスに先導されてラーテを降り、中央通りに足を踏み...RE・かの世界この世界:038『ムヘンブルグ城塞都市』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・012『戻り橋が使えず志忠屋に行く』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記012『戻り橋が使えず志忠屋に行く』今日は無理だよ。新聞を取りに行って戻ってきたお祖母ちゃんがキッパリと言う。「ええ、なんでぇ!?」今日は証明写真を受け取りに行く日だ。一日の入学式に間に合えばいいんだけど、それだとギリギリになる。「川の柵を替えるんだって工事が始まっちゃった」「ええ、そんな予告なかったよ」ご近所で公共工事がある時は回覧板とかで予告が出て、現場にも――〇日から工事やります――的なお知らせが貼ってある。前触れもなくいきなりというのは勘弁してほしい。「ほら、石見銀山と堺だったかで、川の柵が壊れて人が亡くなったり怪我したりってのがあったじゃない」「あ、ああ……他に渡る手段ないの?」「時空を渡る橋なんて、そうそう無いわよ」「だろうねえ……」そこで予定を変更した。...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・012『戻り橋が使えず志忠屋に行く』

  • 宇宙戦艦三笠50[そして再びの始まり]

    宇宙戦艦三笠50[そして再びの始まり]修一「キャ!」「イテ!」ぶつかったことと二人で悲鳴を上げたことだけが確かな現実だった……あとは唐突に切り替わった夢のよう。さっきまでいたピレウスも、たった今ぶつかって二人そろって尻餅をついている横須賀国際高校の校門の前も夢かリアルかよく分からなかった。街の喧騒と例年になく早い木枯らしが頬をなぶっていく感覚で、少しずつ現実感が蘇ってきた。「なんか、唐突な帰還……帰還ですよね……?」「いつまでひっくり返ってんだ。みんな見てるぞ」天音に言われて、トシは意外な素早さで立ち上がった。――やっぱ、旅立ち前のトシとは変わってる。あの時は電柱の陰に隠れて、目が合うと逃げ出したもんな――天音は、そう思ったが、もうひとつのことが気になった。「修一と樟葉はやっぱり、ピレウスに残ったんだ……...宇宙戦艦三笠50[そして再びの始まり]

  • RE・かの世界この世界:037『超重戦車ラーテ』

    RE・かの世界この世界037『超重戦車ラーテ』それは巨大な戦車だった。重量1000トン、全長35m、全幅14m、高さ11m小さな小学校の講堂ほどもある。それで名前は『ラーテ』で、ネズミという意味だから恐れ入る。上がったところはエンジンルームと操縦室の隔壁の間で、車外と車内の各所に移動するための空間になっている。最大50人の戦闘部隊を収容できる兵員室でもあるので、ブリーフィングもやるため、壁にラーテの三面図と諸元が貼ってあるのだ。「昔は、おまえたちが曳く二頭立ての戦車だったのにな」ブリが触れると、三面図が、古代ローマにあったような二頭立ての戦車になった。赤いチュニックの上に甲冑を着た金髪のマッチョが乗っている。勇ましくはあるんだけど、どこかマンガだ。マッチョの振りかぶっている得物は巨大なンマー、戦車を曳いて...RE・かの世界この世界:037『超重戦車ラーテ』

  • パペッティア・008『久々の親父』

    パペッティア008『久々の親父』晋三『そのまま前に進みなさい』親父の声が言うので、夏子は予防注射の順番が迫ってきたようにオズオズと前に出る。すると、前のモニターに親父の上半身が現れた。背景はビデチャをやる時のようにボカシが入っていてよく分からない。「この部屋に居るんじゃないの?」『居るとも言えるし居ないとも言える』「えと……なぞなぞ?」『いや、そこが一番よく聞こえる。三つのメインスピーカーから等距離なんだ』「あ、ああ、そういう意味……ここがベストね」5センチほど微調整、ちょうど、目の前に親父が立って喋っているような感じになる。『ハハ、夏子は賢い。わたしが言ったポイントでは近すぎるか』「ハハ、頭の中で声がする感じだから。で、リアルお父さんはどこにいるの?」『ちょっと訳があって、今は、この画面を通してしか話が...パペッティア・008『久々の親父』

  • せやさかい・394『せや、花粉症やってんわ!』

    せやさかい・394『せや、花粉症やってんわ!』さくら歳を取ると鈍くなる……て、言うたらお祖父ちゃんに怒られそうやけど(^_^;)頼子さんがヤマセンブルグに行ってしもたことも、江戸川アニメに行って人生初の声優(花園あやめさんの相手役で、3カットだけやけどメチャビビった)やったのも、遠い思い出みたいな感じになって、この四五日は、すごく穏やかに一日が過ぎていく。子どもの頃は、大好きな人形の腕が取れて、ムリクリ直そ思て、がんばったら、今度は首が取れて――もう人類なんか滅びてしまえ!――なんて何カ月も落ち込んだり。お父さんが珍しく「三人でご飯食べにいこ!」言うて連れてってくれたファミレス、そのお子様ランチに立ってた日の丸の旗を世界最高のラッキーアイテムや思て、ダイソーで買うてもろた宝箱の中に入れて、時どき開いてはニ...せやさかい・394『せや、花粉症やってんわ!』

  • 宇宙戦艦三笠49[そして、トシとみんなの決意]

    宇宙戦艦三笠49[そして、トシとみんなの決意]修一三笠を飛び出したトシは地理的にも心理的にも自分の居場所を見失っていた。人類が滅亡してから数百年。惑星ピレウスは密林状態になっている。みんなからはぐれてしまうと、もう元の場所が分からない。――自分が残る!――そう宣言して、クローンだから能力が無いと言われて、今まで人間だと思っていたロボットが「おまえはただの機械なんだぞ」と言われたように滑稽で惨めだ。生体反応を示すモジュールは、駆けだすと同時にオフになった。これは、仲間同士位置を見失わないための測位システムで、身に危険が迫ると自動でオフになる。敵に位置を知られないためのセキュリティーでもあるのだ。――スイッチオン――と思いさえすれば、いつでもモジュールはトシの居場所を発信する。が、トシはその気にはならなかった...宇宙戦艦三笠49[そして、トシとみんなの決意]

  • RE・かの世界この世界:036『タングリスとタングニョースト』

    RE・かの世界この世界036『タングリスとタングニョースト』その声はタングリスか(⚙◇⚙)!?穴からの声にブリの目が輝いた。ブリの声に勢いづいて飛び降りてきたのは戦闘服に身を包んだ二人の美少女だ。「タングリス!タングニョースト!」100ワットの電球が点いたような明るさで立ち上がったブリに二人の美少女が駆け寄り、ハッシと抱き合った。「やっとお出ましになられたのですね!」「ああ、神のお導きで、この二人に出会えてな。紹介する、こっちの大きい方がソードマン(剣士)テル。小さい方がアーチャー(弓士)ケイトだ。たった今、シリンダー連結体を駆逐して、結界を張って一息ついているところだ」「姫がお世話になりました。自分たちは無辺方面軍戦車教導隊のタングリス、こちらが……」「タングニョーストであります、お見知りおきを」「こち...RE・かの世界この世界:036『タングリスとタングニョースト』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 112『桃太郎おおおおおおお!!』

    鳴かぬなら信長転生記112『桃太郎おおおおおおお!!』信長ガチャリ尾張の田園風景のようだ……体を捻ってロケーションを確認すると草摺の鳴る音がした。甲冑を身に着けているのだ。桃太郎(素戔嗚)の鬼退治に付き合うのだから武装はオモイカネ(思金神)のサービスか……しかし、これは、またしても鶴姫の嫌味なくらいに細身の女鎧。胸と脇の防御はゆとりもあって完ぺきなんだが、ウエストが細すぎる(-_-;)。先だっての陣触れアラートの時は茶姫の迎えだけで短時間で済んだが、今度は鬼退治、何日かかるか分からん。それをこんなに締め上げては長時間は無理だぞ。背中には桃形(ももなり)の兜を掛けて、馬手(右)の腕(かいな)には種子島……で、腰の左側が軽いと思ったら、太刀が無い!種子島は火縄銃、一発撃ったら、次の弾込めには三十秒はかかるぞ!...鳴かぬなら信長転生記112『桃太郎おおおおおおお!!』

  • 宇宙戦艦三笠48[小惑星ピレウスの秘密]

    宇宙戦艦三笠48[小惑星ピレウスの秘密]修一三笠のクルーはみんな同じ思いだった。「ピレウスに来て三日たつけど、オレたちなんともない……」「スキャンしても、みなさん健康そのものです」クレアがトシの言葉を裏付けた。三笠のクルーはレイマ姫とジェーンの顔を交互に見た。「んだんず。地球人は、このピレウスでも影響受げねんだ……」「レイマ姫、君の狙いは……」「寒冷化防止装置、なんど(あなたたち)に渡すて、地球救うごどだ」「それだけかい……?」「…………」修一の問いかけに、レイマ姫は黙ってしまった。「あたしが代わりに言ってやろう」「……なんで、ジェーンが」「これは、レイマ姫のお願いであって、交換条件じゃない。ただ、自分から言いだすと、気のいいあんたたちに強制するようで言えなかったのさ」「……言えないことって?」「ジェーン...宇宙戦艦三笠48[小惑星ピレウスの秘密]

  • RE・かの世界この世界:035『穴の向こうから』

    RE・かの世界この世界035『穴の向こうから』こ……これからどうするんだ……(╥﹏╥)?シリンダー連結体の群れが遠ざかり、口から飛び出しそうになっていた心臓が胸の真ん中に収まったころ、思わず口をついた疑問にブリが応えた。「待っておる」「「なにを(;'∀')?」」ケイトと声が重なった。結界の中にいれば安全なのだろうが、いつまでも居るわけにはいかない。とにもかくにも無辺街道を抜け出し、ヴァルハラを目指さなくてはならない。ヴァルハラを目指せと言いだしたのはブリ自身なのだからな。それに、丸めた背中にグッタリとツインテールを垂れさせているブリの姿は、いかにも心もとない。「無辺街道の警備を任されている者たちの内に力を貸してくれる者が現れる」「それは誰なんだ?」「連絡とかとれるの?」「……夕べの月が、そう言っていた」ち...RE・かの世界この世界:035『穴の向こうから』

  • 銀河太平記・150『児玉神社にて』

    銀河太平記・150『児玉神社にて』越萌マイ仮想モニターの前で腕を組んでいると、メイからメールが来た。――事変拡大の兆し、事業展開に意見ありや?――メイなりに気を使っているんだと、キーボードに手をかざして止めた。返事を打つには、まだ決心が固まっていない。越萌姉妹社の共同経営者としても、在野の立場で時局を監視する本来の任務からも、軽々に動くことはできない。西之島を護らなければならないのは言うまでもない。西之島のパルス鉱、特に近年発見されたパルスギは、人類に初めて恒星間旅行を可能にする新エネルギーだ。二百年前の『宇宙戦艦ヤマト』以来、人類の見果てぬ夢であったワープ航法が実現するだろう。兵器に組み込めば、核兵器以来の革命的兵器になる。もし、独占する者が現れたら、地球はおろか、まだ見極めても居ない銀河の半分を手にす...銀河太平記・150『児玉神社にて』

  • 宇宙戦艦三笠47[小惑星ピレウス・4]

    宇宙戦艦三笠47[小惑星ピレウス・4]修一ジャングルのいくらも離れていないところにテキサスは着陸していた。「こんな近くで、どうして探知できなかったんだろう?」クレアが、半ば不服そうに腕を組む。「三笠の倍の航路をとって、惑星直列になるのを待ってピレウスに来たんだ。三笠程じゃないけど、レイマ姫が時間をかけてステルスにしてくれたから」「他のアメリカ艦隊は?」俺が艦長として聞くと、ジェーンは微妙に視線を外した。「大規模な戦闘になることが避けられないので戦略的に撤退。で、テキサスだけが大回りしてピレウスに着陸したんだ、三笠と連携して作戦行動をとるためにね。日本とは集団的自衛権を互いに認め合っているから、合理的な判断だよ」「……アメリカ人が自信満々で言う時は、どこかに嘘か無理があるんだよな。要はアメリカが全面撤退した...宇宙戦艦三笠47[小惑星ピレウス・4]

  • RE・かの世界この世界:034『迫りくるシリンダー連結帯!』

    RE・かの世界この世界034『迫りくるシリンダー連結帯!』ブリ…………大きくなった?顔を洗って、やっと気づいたケイト。「やっと気づいたのか」「うん……なんてのか……雰囲気はちっとも変わってないから、気づくのが遅れたみたい」「いろいろあるのだ、この世界では。おまえだって……」「あたし?」「さっさと朝食をとれ、食べたら、早々に出立するぞ!」チーズを挟んだだけのライ麦パンを投げると、もう歩きはじめるブリ。「ちょ、食べる時間くらいちょうだいよ!」「これより先はクリーチャーどもの巣窟、寝坊助の朝食などにかまって……などおれぬ」「ブリの言う通りだな、気配がする……」月の光の中、ツインテールを解いたり結ったり。その戒めのことやら主神オーディーンのこと、わたしとケイトの事情なども知っている様子のブリに聞いておきたいことも...RE・かの世界この世界:034『迫りくるシリンダー連結帯!』

  • くノ一その一今のうち・44『まやと朝ごはん』

    くノ一その一今のうち44『まやと朝ごはん』気が付くと相変わらずの真っ暗。でも、瞬間で分かった。ここは甲府城の地下ではない…………昨日訪れたばかりの甲斐善光寺の戒壇巡りの中だ。忍者の五感は常人の倍は鋭い。特に肌感覚と嗅覚は数倍の鋭さがある。例え同じ闇の中に居ても、肌で感じる空気とニオイが違うんだ。善光寺の戒壇は人の出入りが多く、その出入りによって、寺院特有の抹香や木の匂いが混ぜられて独特なんだ。たった今まで居た甲府城の地下にはそれが無い。それに、あれだけ押し寄せてきた水のニオイや土砂の埃臭さがまるでしない。――気が付いたか――――どうして、善光寺の戒壇?それに!?――そうだ、意識を失ったのは課長代理に当身をくらわされたからだ。――あれは佐助の幻術だ――――あの謝恩碑の、すごい勢いで流れ出した水が?――――あ...くノ一その一今のうち・44『まやと朝ごはん』

  • 宇宙戦艦三笠46[小惑星ピレウス・3]

    宇宙戦艦三笠46[小惑星ピレウス・3]修一その人は、ゆっくりと近づいてきた。近づくにつれて知っている人だという気がしてきた。だが、分かるのは知っているという気持ちだけで、肝心のどこの誰であるかは分からない。まるで、夢の中で出会った人のように、その人に関する記憶はおぼろの中だった。「みなの衆、お元気であっただがぁ?」その訛言葉で思い出した。暗黒星団のレイマ姫だ(゚Д゚)!。レイマ姫、どうして……クルーの誰もが混乱した。ナンノ・ヨーダから姫の事を託され、アクアリンドを発つまでは姫の記憶は有った。そして、虚無宇宙域ダル……いや、アクアリンドの海を離水した時には、姫の存在はきれいに忘れてしまっていた。それが今、その姿を、訛った声を聞いて忘れた夢を思い出したようにレイマ姫のあれこれが思い出された。「もうすわげね。ア...宇宙戦艦三笠46[小惑星ピレウス・3]

  • RE・かの世界この世界:033『ゆるキャン△とツインテールの戒め』

    RE・かの世界この世界033『ゆるキャン△とツインテールの戒め』無辺街道の真ん中に至り、五十坪ほどの草原でキャンプを張った。ブリが魔法でテントを出してくれた。「キャンピングカーがいいのにぃ」ケイトが口を尖らせる。「もんく言うなあヽ(`Д´)ノ!」「いいじゃないか『ゆるキャン△』の雰囲気で、わたしは好きだぞ」「あ……そう言えばそんな感じ」ケイトは暗示に弱い。『ゆるキャン△』の雰囲気に納得させてキャンプ飯。食べ終わると、とても『ゆるキャン△』的な境遇ではないことが夜露と共に沁みてくるので、そそくさと寝ることにする。少しは微睡んだが、なんせ一人用のテントに三人。体が痛くなってくる。それでも露天よりはましと膝を抱えると、テントの隙間からこぼれ入る月光が頬をくすぐって目が覚めてしまう。傍らではケイトが女を捨てたよう...RE・かの世界この世界:033『ゆるキャン△とツインテールの戒め』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・011『茶筒の檻の正体』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記011『茶筒の檻の正体』「これはガスタンクだわよ」茶筒の檻の写真を見ると、老眼鏡もかけないで、あっさり言った。「だって、お祖母ちゃん、こっちのは中身が無いんだよ、ただの檻だよ!」証明写真を撮りに行った日の檻だけになった写真も見せて説明する。「昔はガス圧が足りないとかで、あちこちにガスタンクがあってね、溜めておいて少しずつ流したり、ガスを融通しあったりしたとか。それで、ガスが少なくなったら縮むんだよ」「ええ、ほんとう!?」「ガス会社に勤めていたわけじゃないから専門的なことは分からないけどね、みんな、そう思ってたよ」「な~んだ……」「そんなのググったら出てくるでしょ」「んなの、いちいち検索しないよ。それに、茶筒の檻だって思ってたし。ひょっとしたら、ガンダムとかエヴァの格納...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・011『茶筒の檻の正体』

  • RE・かの世界この世界:032『無辺街道半ば』

    RE・かの世界この世界032『無辺街道半ば』こんなやつでも街道の主なんだろう。魔物やクリーチャーに出くわさない。まあ、無辺街道程度の化け物なんか屁でもないんだけど、バトルの度に足を止められるのもかなわない。しかし「ブリのお蔭だな」なんてことは口にしない。誉めたりお礼を言ったりすれば、見た目四五歳の幼女にしか見えないブリは見かけ通りに「ニヘヘヘ」とか笑っていい気になるのに違いないからだ。こいつがいい気になったら、プラウダ高校のカチューシャよりも鼻持ちならないに違いない。タタタタブリがいきなり駆けだした。駆け出して、そのまま消えてくれてもいいんだけど、また、シリンダーとかの化け物に出くわすのも嫌だ。ちょっと待ちゅのだ!言おうとしたら立ち止まり、ピョンとジャンプして両手を広げて振り返った。「ここが無辺街道の真ん...RE・かの世界この世界:032『無辺街道半ば』

  • せやさかい・393『江戸川アニメの危機・2』

    せやさかい・393『江戸川アニメの危機・2』さくらその三時間後、うちは真鈴先輩に連れられて都内のスタジオに着いた。ちなみに移動手段は、車⇒飛行機⇒車パムアフレコスタジオやから、ドアはスポンジケーキで出来てるんちゃうかいうくらいに小さい音で閉まった。ブン音がしたわけやないけど、雰囲気としては『ブン』という感じでスタジオ中の人らの首がうちに向けられる。ほぼ全員の目ぇが血走ってる。「や、やあ、急なことで、めんごめんご(^▽^)!」宗武真監督一人がハイテンションの笑顔。他に、見覚えのある制作進行さんやら脚本さんやらプロデューサーさんやら……それ以外は、見覚えのないスタジオのスタッフさんやらが顔を引きつらせてる。「おはようございます……て、もう昼やけど、ほんまにうちで間に合うんですか(^△^;)?」「だいじょぶだい...せやさかい・393『江戸川アニメの危機・2』

  • 宇宙戦艦三笠45[小惑星ピレウス・2]

    宇宙戦艦三笠45[小惑星ピレウス・2]修一「間もなく完全惑星直列。一時間でピレウスに着けば、見つかる可能性はないわ」舵輪を握りなおして樟葉が呟く。俺たちは、完全に惑星が直列になるのを待っていた。それが今、グリンヘルド、ピレウス、シュトルハーヘンの三ツ星が串刺し団子のように一列になりかけている。惑星直列に成れば、三つの惑星の磁場が影響して直列の垂直方向に盲点ができるらしい。一番発見されにくい瞬間だ。「最大戦速10分。あとは慣性速度でピレウスに到達」「周回軌道に入ったら発見されてしまうわ」「周回軌道は1/6周で、ピレウス火山風上の森の中に着陸」「針の穴に馬を通すようなものね」「樟葉の腕を信じてるよ……」「横須賀に帰ったら、ホテルのスィーツバイキングおごりね……クレア、目的地までアナログでいくから」アナログ……...宇宙戦艦三笠45[小惑星ピレウス・2]

  • RE・かの世界この世界:031『無辺街道の眠り姫・2』

    RE・かの世界この世界031『無辺街道の眠り姫・2』寝た子を起こすな……。言った時は遅かった。ケイトがツインテールのお尻を爪先でツンツン。プギャーーー!アニメ調の悲鳴を上げて、ツインテールは地上五メートルくらいに跳び上がった。「な、なにやちゅ!?気配を消して機嫌よく昼寝をしておりゅところを!」「と、飛んだ!」羽もないのにホバリングしているのに感心。ケイトは見かけによらず乱暴な反応をするツインテールにビビっている。「我は主神オーディンの娘(むしゅめ)にして無辺街道を統(しゅ)べるブリュンヒリュデなりゅじょ!狼藉は許さぬじょ!」「あ……えと……起こして悪かった。な、ケイトも謝れ」「あ、ご、ごめん」自分でチョッカイ出しておきながら、ちょっとそっけない。「わたしは剣士のテル、こっちは妹分のケイト。なんだかメッチャ...RE・かの世界この世界:031『無辺街道の眠り姫・2』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 111『柿食えば……』

    鳴かぬなら信長転生記111『柿食えば……』信長ごっくん一齧りした干し柿を呑み込むとキッチンのアレコレが消えて床だけになった。ドアがあったあたりに、小柄な人型の輪郭が現れる。この輪郭が人の姿をとったら干し柿どころではなくなるような気がして、もう一齧り。ムシャムシャムシャ…………けして急がない。美味いものを急いで食うのは下劣なことだ。茶人が言うところの一期一会だ。食べたいときが美味い時。何の用事か知らんが、ここで急く奴は小人だ。思い出す。こういう時、光秀はムスっと表情を殺して待っている。とたんに口の中にあるものまで不味くなる。サルなら笑顔になる。主が美味そうに食っているのが嬉しそうで、そして、美味そうに食っているのが羨ましくなってきて唾を飲み込み、それでも美味そうに食っていると、ついにはヨダレを垂らす。「お前...鳴かぬなら信長転生記111『柿食えば……』

  • 宇宙戦艦三笠44[小惑星ピレウス・1]

    宇宙戦艦三笠44[小惑星ピレウス・1]修一三笠は、用心しながらピレウスの衛星アウスの陰に回った。ピレウスは目的地だが、正体が分からない。それは覚悟の上だったが、グリンヘルドとシュトルハーヘンの中間に位置し、両惑星から絶えず監視されているに違いない。ピレウスの大気圏内に入ってしまえば、どうやらピレウスが張っているバリアーで分からないようだが、そこにたどり着くまでの間に発見されてしまえば、元も子もない。「ピレウスが、グリンヘルドとシュトルハーヘンの間に入るのを待つ」「そうするだろうと思って、惑星直列になる時間を狙ってワープしておいた」俺と樟葉は艦長と航海長としてツーカーであった。「でも、ピレウスに敵が侵入していたらどうするんだ」天音が珍しく弱気なことを言う。普段は心の奥にしまい込んでいるが、父が中東で少女を救...宇宙戦艦三笠44[小惑星ピレウス・1]

  • RE・かの世界この世界:030『無辺街道の眠り姫・1』

    RE・かの世界この世界030『無辺街道の眠り姫・1』無辺街道は単調だ。シリンダーをやっつけた後のしばらくは思わなかった。小さな起伏はあるし、街道の両側は草むらやら林や小川やらの変化があって、ちょっとした遠足気分。途中、もう一度だけ空間が歪んでシリンダーの団体が現れたけど、単調な攻撃パターンに慣れてきて一撃で倒せるようになると、あまり姿を見せなくなった。「こんど現れたら、あたしがやっつけるのに!」言葉遣いまで女子化したケイトがぼやく。ただの強がりだとは分かっているんだけど「そうだね」と合わせておく。そうして五時間も歩いていると、慣れてきたというよりは飽きてきた。景色は相変わらず似たような、というか完全に同じ草むらやら林や小川の繰り返しで、たまのクリーチャーの出現も同じ。遊園地のアトラクションをグルグル回って...RE・かの世界この世界:030『無辺街道の眠り姫・1』

  • 銀河太平記・149『まなびや通りで綸旨を知る』

    銀河太平記・149『まなびや通りで綸旨を知る』越萌メイ週に一度は街に出る。事業が拡大して世界を相手にするようになってからは東京にいることが多くなって、渋谷、新宿、原宿、池袋。大阪の恩智本社に居る時はミナミが多い、ミナミっていうのは心斎橋や道頓堀界隈、アメ村や阿倍野。ランダムに近鉄線の駅で降りて気ままに歩くこともある。息抜きでもあるし仕事でもある。越萌姉妹社(こすもしまいしゃ)は総合商社のように思われているけど、出発はアクセを中心としたファッション小物。今では売り上げの10%ほどでしかないけど、本業はこれだと思っている。まあ、越萌姉妹社そのものがカモフラージュなんだけど、カモフラージュであるからこそ手は抜かない。街に出る目的は、若い人たちの興味や流行りの今と将来の方向を観察するため。観察というのは肩ひじ張っ...銀河太平記・149『まなびや通りで綸旨を知る』

  • 宇宙戦艦三笠43[宇宙戦艦グリンハーヘン・5]

    宇宙戦艦三笠43[宇宙戦艦グリンハーヘン・5]修一「ミネアさん、無理するのはよそうよ」ミカさんの言葉に、ミネア司令は微かにたじろいだが、それはミカさんにしか分からなかった。俺たちは、ミネアがミカさんの挑発に一歩前に出たようにしか見えなかった。「そうやって、なにかあると、いつも一歩前に出てしまうのよね」「なに……!?」ミカさんは、ミネアの厳しい視線と言葉をサラリと躱して言葉を続けた。「グリンハーヘンというのは悲しい名前ね。グリンヘルドにもなれずシュトルハーヘンにもなれない人たちのアイデンティティー。両方の母星から疎外された人たち。二つの母星は、地球侵略については共同戦線を張っているけど、内心では信じあっていない。だから、二つの母星の間に生まれたあなたたちは疎外され、軍の中でも、遊撃隊でしかいられないんでしょ...宇宙戦艦三笠43[宇宙戦艦グリンハーヘン・5]

  • RE・かの世界この世界:029『無辺街道のシリンダー』

    RE・かの世界この世界029『無辺街道のシリンダー』ペギーの店を出てしばらく行くと、すっぽりと草原が落ち込んでいた。ここまでの『始まりの草原』を山の手だとしたら、そこから本格的な関東平野が広がっているような感じ。例えば、本郷あたりから東に進んで日暮里当たり。山の手の端っこから下町を眺めたようなところに出てきた。と言っても眼下に荒川区の下町の賑わいがあるわけではない。ザックリと台地から平地への境目に来たと言うことだ。歩いてきた道は、その境目を下って川のように北東に伸びている。「無辺街道と言うらしいわね」コクンウィンドに表示された名前を言うと、ケイトは頬を強張らせながら頷いた。女子化したことで気弱になったのか、気弱さの為に女子化したのか、最初の意気込みはどこへやらだ。まあ中二病の空元気なんて金魚すくいのポイ(...RE・かの世界この世界:029『無辺街道のシリンダー』

  • せやさかい・392『江戸川アニメの危機・1』

    せやさかい・392『江戸川アニメの危機・1』さくら春、夏、冬の三つの休みで一番ええのんは春休み。気候はええし、宿題もないしねぇ~。その春休みにはまだ間ぁがあるけど、春休みの予告編か体験版かという感じの麗らかな日曜の朝。朝食と、後片付けの手伝い、本堂やらの掃除も早々と終わって部屋に戻る。「ちょ、じゃま」ニャブタネコのダミアを跨いで、ベッドの上に寝転がる。まあ、朝のルーチン終わって一休み……で、寝てしまう(^_^;)「そうだったんだ!」留美ちゃんの声で目が覚める。時計を見ると三十分過ぎてた。「え……なにがそうだったん?」「あ、ごめん、起こしちゃったね」「ううん……なに調べてたん?」留美ちゃんはパソコンで、なにやら調べてる最中。留美ちゃんは、時間を大切にする子ぉで、ボンヤリとネットサーフィンとかはせえへん。「ほ...せやさかい・392『江戸川アニメの危機・1』

  • 宇宙戦艦三笠42[宇宙戦艦グリンハーヘン・4]

    宇宙戦艦三笠42[宇宙戦艦グリンハーヘン・4]修一「いったい、どんな仕掛けになってるのだ!?」前の壁が消えて、ミネアが怒りに震えている。「仕掛けも何も、クルーは全員ここに居るし、三笠は大破したままだ」「……なにか隠している。三笠と君たちの情報は全て取り込んだけど、こんな能力が隠されているなんて分からなかった。手荒なことはしたくなかったけど、もう容赦しない!」ミネアが手を挙げると、残りの三方の壁が消えて、バトルスーツに身を包んだグリンハーヘンの兵たちが100人ほど現れた。「情報が得られれば、それでいい。本当のことを言うまでだ、一人ずつ死んでもらう……まずは、アナライザーのクレアから。クレアは本当の人間じゃない。ボイジャー1号が擬態化しただけのガイノイド。最初の見せしめにはちょうどいい……構え!」ガチャリ!1...宇宙戦艦三笠42[宇宙戦艦グリンハーヘン・4]

  • RE・かの世界この世界:028『ペギーの店・2』

    RE・かの世界この世界028『ペギーの店・2』テルキは剣士レベル1、ケイトは遠距離攻撃の弓兵レベル1がいいでしょ。エフェクトが満開の花火のようになって、それがチラチラと煌めきながら消えていくまでの十秒ほどで、ペギーさんは属性と装備を決めてしまった。「あ、えと、装備はともかく、どうしてIDネームまで知ってるんですか(^_^;)?」「ビミョーに間違えてるし……」「そのナリでケントはないでしょ、女の子らしくケイト。装備は、これよ……」ペギーさんが指を振ると、目の前にトルソーに着せた装備一式が現れた。わたしのは、チュニックに皮鎧。ベルトにはタガーが挟まれ、ソ-ドはレイピアのように細身だけど実用本位で、鞘も柄も鉄地剥き出しの鈍色だ。ミニのアーマースカートが付いていなければ、男性用と言われても分からない。ケント、いや...RE・かの世界この世界:028『ペギーの店・2』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・010『証明写真を撮りに行く』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記010『証明写真を撮りに行く』……ブラウスだけにしとく。そう言うと、お祖母ちゃんは上着とボータイを紙袋に入れてくれる。「そうだね、フル装備は入学式までとっておこう」「うん、一式持つとけっこうな量だからね……じゃ、言ってきます」ブラウスの上にカーディガンひっかけ、下駄箱の上のローファーに――キミも入学式の本番でね――と一撫でして、いつものスニーカーを履く。「ってらっしゃい……」半身で手を振ってキッチンにとって返すお祖母ちゃん。糠漬けをするんだって夕べから張り切ってたんだけど、新品の制服にニオイが移っちゃいけないって待ってくれていたんだ。コンクリの『M』の標を確認して一歩踏み出すと『戻り橋』が現れる。いちど写真に撮ろうかと思ったけど、あっちの世界に行くのを見られるわけには...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・010『証明写真を撮りに行く』

  • 宇宙戦艦三笠41[宇宙戦艦グリンハーヘン・3]

    宇宙戦艦三笠41[宇宙戦艦グリンハーヘン・3]修一「ええ!また偽物!?」樟葉が警戒心丸出しの表情で後ずさる。気づくと天音もトシも、クレアでさえ疑惑の目で俺を見て、ネコのままのネコメイドたちは「フーーーー!」って唸りながら毛を逆立てる。「どうやら、おまえらもホログラムの偽物に会ったみたいだな……」そう言いながら壁を叩く。ドンという音がして、みんな安堵のため息をつく。ちょっと、手が痛かったけどな(^△^;)。「こっちも体が触れ合うまでは、分からなかった」「触れるって、どんな風に?」「何気なく肩に手を掛けたら、素通しになった」「修一が、あんまりグダグダ聞くんで、おかしいと思って……」「オレといっしょだ。樟葉がくどかったから、おかしいと思った」「いっしょだ。あたしは頭をはり倒したら、空振りになった。修一は?」「キ...宇宙戦艦三笠41[宇宙戦艦グリンハーヘン・3]

  • RE・かの世界この世界:027『ペギーの店・1』

    RE・かの世界この世界027『ペギーの店・1』しばらく行くと道は二つに分岐していた。二つの道は、いずれも畦道ほどのものでしかないけど、左側の方は、少し進んだところに宝箱が見える。「あ、宝箱(^▽^)!」わたしの陰に隠れるように付いてきた健人は宝箱を開けようと駆け出した。「ちょっと待って」「え、なんでえ?」「序盤でミミック(宝箱に化けた魔物)ってことは無いだろうけど、大事な選択肢だと思う」インタフェイスを開いて調べてみる。――開ける前に難易度を選択すること、選択肢は、A・イージーB・レギュラーC・ハードD・ベリーハードE・ナイトメア――「どれにする?」「もちろん、イージー!サクサク進みたいからね♪」わたしの意見も聞かずにA・イージーをクリックする健人。ま、いいけど。パッカーーーン子ども向けアニメのようなエフ...RE・かの世界この世界:027『ペギーの店・1』

  • くノ一その一今のうち・43『甲府城・4・地下蔵』

    くノ一その一今のうち43『甲府城・4・地下蔵』広いと言っても地下のこと、単線のトンネルぐらいの、奥行きは三十メートルほど。中央に通路が通っていて、両側は重いものを置いていたのか枕木状に石が並んでいる。――レールを撤去した複線トンネル?――――いいや、石は三本ごとに間隔が広くなっている。三本の石を土台にして重いものを置いていたんだ。広い間隔はその重いものを動かすか中身を出し入れするための通路だ――そう言われて、三本を一組で見れば、図書館や大型書店の書架の配置にも見えてくる。本というのは書架にまとめると非常に重たいもので、床はしっかりと補強がしてあると聞いたことがある。――本よりも重たいものだ。三本の石を敷いているのは隙間を作って空気の流れをよくして、湿気やカビから守る必要があった……おそらくは木箱に小分けし...くノ一その一今のうち・43『甲府城・4・地下蔵』

  • 宇宙戦艦三笠40[宇宙戦艦グリンハーヘン・2]

    宇宙戦艦三笠40[宇宙戦艦グリンハーヘン・2]修一意識が戻ると独房に入れられていた。セラミックのような独房には、床も壁も継ぎ目が無かった。ただ、出入り口と思われるところだけが、薄い鉛筆で書いたように、それと分かる程度。独房内はベッドが一つあるだけで無機質この上ない。――お目覚めのようだね。体には異常はない。ドアを開けるから、通れる通路だけをたどって、わたしのところまで来てくれ――司令のミネアの声がした。通路に出ると、さすがに船の通路らしく、パイプや電路が走り、いたるところの隔壁はロックされていた。通れる隔壁は、あらかじめ解放されていて、十数回行き止まりに出くわして、やがて小会議室のようなところにたどり着いた。樟葉が先に来ていて、背もたれのない椅子に座っていた。「艦長のくせに、遅いのね」「通路で、ちょっと迷...宇宙戦艦三笠40[宇宙戦艦グリンハーヘン・2]

  • RE・かの世界この世界:026『風の向くまま』

    RE・かの世界この世界026『風の向くまま』わたしには、有るべきものは有って、有ってはならないものは無かった。「……健人だけがカミングアウトしたんだ」「カ、カミングアウト言うなあヽ(≧Д≦)ノ」腕をブンブン振って抗議する健人、エキサイトすればするほど黄色い声になるので何ともおかしい。「ちょ、慣れるのに時間かかるから、興奮しないでくれる……ハ、ハハハ、ハーーおっかしいよ~(≧∇≦)」「おかしくなんかない……(;_;)」「さて……」右手を上げてウィンドウを開いて、ステータスを確認する。HP:200MP:100属性:?持ち物:ポーション・5マップ:1所持金:1000ギル装備:始りの制服ポーションがエントリープライズのようだ。使ってみなければ分からないが、ポーションの効き目は250くらいのものだろう。いろいろやっ...RE・かの世界この世界:026『風の向くまま』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 110『風呂上がりに干し柿!』

    鳴かぬなら信長転生記110『風呂上がりに干し柿!』信長口に出して言ったことはないが、転生国家扶桑はなかなかのものだと思っている。信玄や謙信、生まれ変わっても天下を望む化け物ども。まあ、俺もその中に入っているがな。そういう化け物めいた者たちを美少女の姿で蘇らせ、来たるべき転生に備えさせる。なんで美少女なのか?一つは、その心身の軽やかさだろう。周囲の変化に敏感で、身体的にも心の上でも機敏に反応する。戦国大名というものは時に鈍重さも必要ではある。土岐氏を追い出すまでの斎藤道三、関東統一を成し遂げる前の北条早雲、「どうする!?」と自問自答してばかりだったころの家康とかな。だが、ここ一番、時至らば手のひらを返して行動に出る俊敏さ、心身の軽やかさを養うには十代の肉体と感性が適している。俺を含め戦国大名や英雄どもは、上...鳴かぬなら信長転生記110『風呂上がりに干し柿!』

  • 宇宙戦艦三笠39[宇宙戦艦グリンハーヘン・1]

    宇宙戦艦三笠39宇宙戦艦グリンハーヘン・1]修一虚無宇宙域ダルの正面はガラ空き。……の、つもりだった。ワープし終わってもしばらくは分からなかった。それとの距離が50万キロという、宇宙単位では目と鼻の先になって知れた。「正面50万キロに大型宇宙戦艦。ロックオンされている!」念のためCICに入っていたクルーがホッとして出ようとした時に砲術長の天音が叫んだ。「取り舵一杯。右舷シールド展開。砲雷戦ヨーイ!」ドゴーーーン!!天音と樟葉が、操艦と砲雷戦の用意をし終えたころに、着弾があった。「右舷装甲版、第四層まで破壊される。右舷舷側砲、全て損傷!」「次の砲撃には耐えられない」「そのまま旋回、左舷を敵に向けろ!」敵は、三笠が大破したことで一瞬の油断があった。旋回も舵の惰性だと思っている。「光子砲、雷撃、テー!!」「照準...宇宙戦艦三笠39[宇宙戦艦グリンハーヘン・1]

  • RE・かの世界この世界:025『あるはずのモノ ないはずのモノ』

    RE・かの世界この世界025『あるはずのモノないはずのモノ』バフッ!グニュ!二つの衝撃が同時にやって来た。うつ伏せに落ちたお腹側がバフッ!背中側がグニュ!わけがわからないが、コンマ五秒くらいで爽やかな香ばしさが鼻孔をくすぐり、露出した顔や手足にチクチク触るものがあって、乾草の上に落ちたのだと分かる。背中側のグニュ!重さがあるので健人が重なっているんだと見当はつくんだけど、感触が変だ。「ちょっと、健人……」反応がない、落下のショックで気絶しているようだ。しかし、下敷きにされた方がしっかりしていて、わたしをクッションにした健人が気絶しているのは面白くない。「ちょっと、どいて!」払いのけるようにして起き上がると、意識のない健人はサワサワと軽やかな音をさせて乾草の山から転がり落ちてしまった。「もう、だらしのない…...RE・かの世界この世界:025『あるはずのモノないはずのモノ』

  • 宇宙戦艦三笠38[虚無宇宙域 ダル突破]

    宇宙戦艦三笠38[虚無宇宙域ダル突破]修一「……遼寧が撃沈されたの」クレアから聞いてもあまり驚かなかった。まだ20年の仮死から覚めきっていないのかもしれない。遼寧……ウレシコワにとってはヴァリヤーグの撃沈は、その拠り所の喪失を意味する。つまり、ヴァリヤーグの船霊(ふなだま)としては存在できないことになる。日本の船は、たいがいどこかの神社の御神体を分祀する。だから、船が無くなっても、それぞれの神社に帰れば済む話だが、ウレシコワは、ヴァリヤーグが出来上がるにしたがって現れた船霊なので、船が無くなると居場所が無い。一瞬三笠の艦首にメーテル姿のウレシコワが見えたような気がしたが。それは遼寧に成り果てたヴァリヤーグに居場所が無くなって三笠にやってきたときの残像。三笠に来てからは、ニコニコとサモワールを沸かして機嫌よ...宇宙戦艦三笠38[虚無宇宙域ダル突破]

  • RE・かの世界この世界:024『 屋上 』

    RE・かの世界この世界024『屋上』ひょっとしたらと思った。健人が――屋上!屋上!――と言うもんだから、わたしの意識は屋上を排除していた。昔っからそうなんだけど、意識の底で、健人はヘタレで、言うことやること真逆のスカタンだと決めつけていたのかも。もし屋上に鍵穴があったら、生まれて初めてだけど健人に頭を下げよう。思ったんだけど……屋上ドアの鍵穴は合っていなかった。「くそ!」落胆……でも、鍵は開いていた。「開いてる!」屋上に飛び出したけれど、そこが異世界であるはずもなかった。午前九時前の屋上は、この件がなければ昼寝をしたいくらいの穏やかさだ。「へたり込むのは早い。屋上は広いんだ、もっと探そう!」ゲシ!ムギュッ!へたりこんだ健人を蹴ると、あっけなくカエルみたいにのびる。勢いでセーラーの上が捲れ上がる。「キモ、あ...RE・かの世界この世界:024『屋上』

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