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2015/01/11

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  • 銀河太平記・148『及川軍平走る』

    銀河太平記・148『及川軍平走る』及川軍平舐められている!口には出さないが、電信文を握りつぶした手には力が籠り直ぎている。「お預かりします」手を差し伸ばした通信員の目は困惑している。漢明の攻撃を予想して、三日前から災害対策本部を設置している。軍事攻撃を受けても自治体が設置できる司令部は『災害対策本部』の名称しか付けられない。地方自治法に明記されているからだ。数千、数万の犠牲者が出る軍事攻撃を受けても、日本国政府は地震や台風と同じ『災害』という名称しか使わせない。砲弾やミサイルやパルス波が飛び交い、本部が血まみれの特設救急病院(世界の常識では野戦病院)を兼ね、五分おきに死者や再生不能のロボットが出ても、戦争と戦争を思わせる名称は使えない。元来が通産官僚だったから、役所の杓子定規や前例主義には慣れている。しか...銀河太平記・148『及川軍平走る』

  • 宇宙戦艦三笠34[20年の歳月]

    宇宙戦艦三笠37[20年の歳月]修一体が鉛のように重い……手足も痺れたように動かない……視界もボケている。でも、どうやら20年の眠りから覚めたんだ……そう理解するのに30分ほどかかったんじゃないだろうか。「オ!艦長の目が覚めたニャー!」一瞬ネコミミの女の子の顔が覗いたかと思うと、パタパタと音が続いて、ネコミミが四つに増えた。ネコの惑星……いや、耳以外は人間だし?「ウフフ、寝ぼけているニャ」「可愛いニャ」「おひさニャ!」あ……シロメ……クロメ……チャメ……ミケメ……?「おーい、はやくはやく、艦長目覚めたニャ(^▽^)/」あ……パタパタパタ……ネコメイドたちだと認識できた瞬間、四人とも誰かを呼びに行く気配。プシュっと音がしてカプセルの蓋が開く、恐る恐る上体を起こし、首をひねって息を呑んだ。え……!?「もう、大...宇宙戦艦三笠34[20年の歳月]

  • RE・かの世界この世界:023『8時58分 わたしのリアル』

    RE・かの世界この世界023『8時58分わたしのリアル』こうなったら屋上から飛ぶしかないのかも……学校中を捜してもピッタリの鍵穴は見つからず、昇降口の階段でヘタってしまう。ヘタってしまうと、さっきまでの勢いはどこかに行ってしまって、わたしの呟きにギクッとする健人。「もう飛ぶ気も無くなったんでしょ?」「ん、んなことねー」熱しやすく冷めやすい健人、これ以上言うと、このまま家に帰って布団をかぶってしまいそう。とりあえず……お互い呼吸を整えてからだと口をつぐむ。無人の昇降口に、せわしない二人のブレスだけが際立つ。ダイブは、三年に一度、学校で七人だけが許される。この世界は、わたしが寺井光子として存在していた世界に酷似しているけど、根本のところが違う。この世界は対応する異世界と対になっていて、異世界が混乱すると、その...RE・かの世界この世界:023『8時58分わたしのリアル』

  • 宇宙戦艦三笠36[虚無宇宙域 ダル・2]

    宇宙戦艦三笠36[虚無宇宙域ダル・2]修一20パーセクワープしたつもりが、わずかに0・7パーセクで停まってしまった。つまり、直径1・5パーセクある虚無宇宙域のど真ん中で立ち往生してしまったわけだ。――20パーセク行ける出力で、たった0・7パーセクしか進めないのか!?――さすがに言葉もなかった。「非常電源で、艦内機能を維持するのが背一杯です。もう三笠は一ミリも動きません」機関長のトシが肩を落とした。他のクルーたちも元気は無かったが、俺の決定を責めるような空気は無かった。ダルを抜けなければ迂回する以外に手立てがないが、迂回すれば、待ち構えているグリンヘルドとシュトルハーヘンとの戦いは避けられない。20万の敵を相手にしても顎が出ていた。推定100万の敵艦隊に抗する術は無いのをみんな知っているんだ。「もう20パー...宇宙戦艦三笠36[虚無宇宙域ダル・2]

  • RE・かの世界この世界:022『鍵穴はどこだ!?』

    RE・かの世界この世界021『鍵穴はどこだ!?』え、これが……?涙を拭いながら、わたしの手を見つめる健人。そのまま手肌クリームのCMに使えそうなほどきれいな手に感心したのでもなく、わたしの手相に世界の運命を見たわけでもない。わたしの手の平に載っている、なんの変哲もない真鍮製の鍵に感動しているんだ。鍵に触ろうとした指はまだ涙に濡れている。こういう感情と好奇心の起伏は子供なんだけど、健人の憎めない所でもある。「真鍮の鍵って珍しいよ」「そう言えば……」いまどき真鍮製の鍵なんて、昭和、それもアルミサッシとか無い時代の木造校舎の窓とか住宅の玄関とか、木製ロッカーとかでしかお目に掛かれない。アニメとか昔の映画とかで観る感じ、例えば『トトロ』のさつきの家とか『けいおん!』の桜が丘高校とか。何の変哲もないと感じたのは、自...RE・かの世界この世界:022『鍵穴はどこだ!?』

  • せやさかい・391『ヤマセンブルグの卒業式』

    せやさかい・391『ヤマセンブルグの卒業式』さくら前回は飛行機の他に鉄道を使ったり、途中で泊まったりして四日もかかったけど、今回は大回りしたとはいえ、なんとか二十時間ほどでヤマセンブルグに着いた。全行程の操縦を覚悟してたソニーやけど、操縦桿を握ってたのは離陸の時と途中の四時間余り。今回の操縦は、操縦技能の昇級テスト兼ねてるんやとか。大半はお馴染みのジョン・スミスのおっちゃん。おっちゃんは、ソニーの昇級テストの教官と検定官も兼ねてるんやとか。ジョン・スミスは領事館の勤務を解かれて情報局に戻ってたんやけど、ソフィーが頼子さんと共に国に戻ると決まった時に、また領事館に戻ってきた。ヤマセンブルグはNATOの中で一番小さな国やけど、大国に任せっきりにすることなく、積極的に動いてるらしいです。空港には、頼子さん自身と...せやさかい・391『ヤマセンブルグの卒業式』

  • 宇宙戦艦三笠35[虚無宇宙域 ダル・1]

    宇宙戦艦三笠35[虚無宇宙域ダル・1]修一宇宙戦艦三笠35[虚無宇宙域ダル・1]修一アクアリンドのクリスタルは、クレアが送った情報をもとに三笠でレプリカをつくって交換した。「組成や形態がいっしょだから、80年たたなければ偽物とは気づかないわ」クレアも、レプリカを作ったトシも自信満々だった。本物は、三笠の二つある機関の真ん中に置かれた。仮にも一つの星の運命を握っていたクリスタルだ、いまは眠っているような状態だが、数百年の記憶を取り戻し稼動し始めた時に巨大なエネルギーを放出する恐れがあった。三笠の中央に置かなければ、いざと言う時に、船のバランスを崩すおそれがあるという僧官長の意見に従ったものだ。「微弱だけど、クリスタルから波動が出るようになった。なにか感じているみたいだよ」トシがインジケーターを指さした。「さ...宇宙戦艦三笠35[虚無宇宙域ダル・1]

  • RE・かの世界この世界:021『ダイブの鍵』

    RE・かの世界この世界021『ダイブの鍵』ドッシーーーーーン!!いまどきアニメでも使わないような擬音が鳴り響いて倒れた。アイターーー!!これまた戦車アニメの戦車隊長が吶喊直後に撃破された時のような悲鳴が出た。「ごめんなさい、急いでたもんだから」スカートを掃いながら立ち上がって絶句した。「け、健人!なに女装してんのよ!?」「イ、イテーなあ……くそ、食べかけのトーストがあああああ、邪魔すんなよテル!」砂まみれのトーストを投げ捨て、ズレたボブのウィッグを直しながら健人は行ってしまった。「なによ、意地も誇りもないってかあ!舐めてんのか照姫を!」ドラゴンボールの敵役みたく仁王立ちしたわたしはテル、小早川照姫(こばやかわてるき)と名乗るようだ。前回は三十年前の世界にデフォルトの自分で飛び込んだけど、今回は、その上に上...RE・かの世界この世界:021『ダイブの鍵』

  • 宇宙戦艦三笠34[水の惑星アクアリンド・4・水に流す]

    宇宙戦艦三笠34[水の惑星アクアリンド・4・水に流す]クレア「この星では、全てのものの寿命が80年しかないのです」長い沈黙のあと、僧官長は覚悟を決めたように言った。「どういう意味でしょう……」「クレアさん、御神体のクリスタルに手を触れて、アナライズしてくださらんか」全て見通している僧官長は、クレアを偽名ではなく、本名で呼んだ。そしてクレアのアナライザーとしての役割も知った様子たった。「……この星、80年以上の寿命を持っているのは、星本体と、僧官長さまだけです……なんということ……海の中には四つの大陸が沈んでいる」「「え?」」「待って、続きが……」「やはり、続きは、わたしからお話しましょう。辛いことを先延ばしにしたり人任せにすることはアクアリンド人の悪い癖です」僧官長は後ろ手を組んで、クリスタルにも修一やわ...宇宙戦艦三笠34[水の惑星アクアリンド・4・水に流す]

  • RE・かの世界この世界:020『みっちゃん飛んで!』

    RE・かの世界この世界020『みっちゃん飛んで!』あ………中臣先輩は息をのんだ。切り揃えた前髪で眉が隠れ表情が読めない。中臣先輩は表情の核心が眉、特に眉頭に現れる人なんだ。ピクリとしたかと思うと前髪で隠れてしまった。眉を見せてください……とも言えずに志村先輩に目を向ける。キリリとしたポーカーフェイスで、さっきまでの陽気さが無い。次の任務は、さらに大変そうだ。モニターには、どこにでもある一軒家が映っている。二階建てで、カーポートと十坪ほどの庭が付いている。ラノベの主人公が住んでいそうな中産階級の見本のような家。今にもトーストを咥えた女子高生が飛び出してきそうな雰囲気。そして、最初の角を曲がったところで男の子とぶつかって――失礼な奴!――お互いに思う。そして学校に着いたら、そいつが転校生でビックリして、そこか...RE・かの世界この世界:020『みっちゃん飛んで!』

  • せやさかい・390『卒業式のサプライズ』

    せやさかい・390『卒業式のサプライズ』さくら…………と、いろいろな出来事やさまざまな思いがありましたが、無事に目出度く卒業の日を迎えることができました。こんな身勝手な三年生に付いて来てくれた在校生のみなさん、導いてくださった先生方、職員のみなさん。お父さんお母さん、家族のみんな。商店街を始めとするご近所の方々。そして、入学以来ここまで見守り、我々の魂を磨いてくださったマリア様に感謝の誠を捧げ、卒業の言葉といたします。2023年2月24日卒業生代表田中真央シーーーーーーーーーーーンパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!さすがは百武真鈴!いや、卒業生代表田中真央!式場の全員、聞きほれてしもて、とっさには拍手がでけんと、シーンとしてしもてからの大拍手!三年に及...せやさかい・390『卒業式のサプライズ』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・009『宮田博子』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記009『宮田博子』ジャンボジェットの子だ!ほら、合格者説明会が終わって帰ろうとしたら、空見上げててぶつかってきた子。「どこの航空会社のなんですか?」「え、ああ……家にあったの持ってきただけでぇ」「ロゴとか……無いのは、きっと特別製なんですねえ、聞いたことあります。ベテランのスチュワーデスは特注のキャリー持ってるって!へーー、いいなあ、カッコいいなあ」「アハハ(^_^;)」「え、ひょっとして椅子になるんじゃないですかあ!?」「え、椅子?」「ちょと、失礼……ここを、こうやって……」カチャカチャ「ほら!」「あ、ああ……」これは究極のババキャリーだ……ほら、くたびれたお婆ちゃんが、公園とかでキャリーを椅子にして寛いでる。若者は絶対持ち歩かない奴だよ(-_-;)。「スゴイです!...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・009『宮田博子』

  • 宇宙戦艦三笠33[水の惑星アクアリンド・3]

    宇宙戦艦三笠33[水の惑星アクアリンド・3]修一あくる日は視察と親善訪問でいっぱいのスケジュ-ルだった。アクアリンドのIT施設、生命科学研究所、老人介護施設、交通システム管理センター、軍の閲兵、そして、たまたま日が重なった三年に一度の高校総合文化祭の観覧と目白押しだった。――やっぱ、この星おかしい――クレアの言葉が、直接頭に飛び込んできた。老人介護施設の訪問が終わろうとした時だった。「この星の歓待ぶりは格別だね……」俺は、会話の流れとしては自然な一言を発した。次の瞬間、俺とクレアはデコイと入れ替わった。昨夜、クレアとバーチャル映像を監視カメラなどにかましながら決めた合言葉だった。クレアが用意した修一とクレアそっくりのデコイと瞬時に入れ替わっていた。瞬間各種のカメラに微弱なノイズが入るが、気が付く者はいない...宇宙戦艦三笠33[水の惑星アクアリンド・3]

  • RE・かの世界この世界:019『新しい任務が表示された』

    RE・かの世界この世界019『新しい任務が表示された』……白い闇の真ん中がドーナツ状に凝縮していき、二呼吸するほどの間にUFOのような発光体になった。拉致られる!?キャトられる!?異世界にとばされる!?弾けるように妄想が膨らむと、リング状の蛍光灯だと合点がいく。どこかで見たような……考えていると霧が晴れるように白い闇が消えていき、部室の天井だと分かる。ウ……分かると同時に背中に引力を感じる。何のことは無い、見えているのが天井ならば背中は床だ。床方向に引力があるのはあたりまえ。どうも、わたしの感覚は視覚的なようだ。気が付いたか?ギクッとした。視界の左にピーターパンみたいな志村先輩の心配顔。ホッと吐息が漏れる。右側にかぐや姫みたいに中臣先輩。突然見えたみたいだけど、さっきから居たんだろう。私の感覚は聴覚的?「...RE・かの世界この世界:019『新しい任務が表示された』

  • くノ一その一今のうち・42『甲府城・3・夜の稲荷曲輪』

    くノ一その一今のうち42『甲府城・3・夜の稲荷曲輪』その深夜、改めて天守台に潜んでいる。昼間は中断した。観光客に化けた敵がうろついていたからだ。眼下の稲荷曲輪では監督やスタッフたちが来週撮影予定の深夜ロケの下調と準備に余念がない。「昼間の続きだ」声まで違う。今は、課長代理の服部半三そのもので、軟弱脚本家三村紘一の片鱗も見せない。「稲荷櫓が再建されたのは、再建工事にことよせて信玄のお宝を探すためだ」「木下が工事を請け負ったんですか?」「いや、甲府の地元にもお宝を狙っている者がいる」「地元にもですか?」「見ろ、あの謝恩碑」本丸の対角線方向に聳える謝恩碑はライトアップされて発射の時を待っているロケットのようだ。「あの明治の大水害でも、信玄の埋蔵金には手を付けなかった。まあ、探しても容易に見つかるお宝ではないがな...くノ一その一今のうち・42『甲府城・3・夜の稲荷曲輪』

  • RE・かの世界この世界:018『相席』

    RE・かの世界この世界018『相席』B駅へ向かうために下りのホームへ。B駅は下りの先頭方向に改札があるので、ホームの前の方、一両目の印があるところに立つ。電車がやって来る上り方向を覗うと、三十年前のお母さんとお祖母ちゃんが現れた。同じ電車に乗るんだ。嬉しくなって少しだけ寄ってみる。――あの娘さんのお蔭ね――――そうね、クーポン券、今日が期限。気が付かなきゃ、そのまま帰ってた――お母さんがヒラヒラさせているのは令和でもB駅近くにあるBCDマートだ。昭和六十三年だったら新規開店で間もないころかな。素敵な靴が手ごろな値段で手に入るので有名。三十何年後のお母さんもちょくちょく利用しているご贔屓の量販店だ。ウキウキしているお母さんが新鮮で、わたしは、やってきた下り電車の一両隣の車両に乗った。連結部分のガラス窓を通し...RE・かの世界この世界:018『相席』

  • パペッティア・007『初めてのベース』

    パペッティア007『初めてのベース』晋三陸軍特務旅団のベースは首都の南にある。ベースは二十年前のヨミのファーストアクトで出来た巨大なクレーターの中に潜むように存在している。クレーターの直径は差し渡し三キロほどもあり、所狭しと対空兵器が並んでいる。中央にはベースのコアに通じる入り口があり、入り口はカメラの絞りのような構造になっていて、出入りするものの大きさに合わせて変化する。直径二十メートルほどに開かれた入り口を、夏子たちを乗せたオスプレイが巣に着地する猛禽類のように下りていく。バラバラバラバラバラバラバラバラ!絞りの上十メートルぐらいに差しかかると、とたんに爆音が大きくなる。元祖のオスプレイよりもプロペラの効率がいいんだろう、巻き起こした風圧は、あまり横には逃げず真下に圧を掛けている。絞りの周囲の排気ダク...パペッティア・007『初めてのベース』

  • 宇宙戦艦三笠32[水の惑星アクアリンド・2]

    宇宙戦艦三笠32[水の惑星アクアリンド・2]暗黒星団ロンリネス以上の歓待だった。アクアリンドは、夕刻の入港を指定してきた。船の入港は朝が多く、異例といえたが俺たちは素直に従った。二十一発の礼砲を鳴らすと、それが合図であったように、港街であり首都であるアクアリウムの各所から一斉に花火が上がり、花火には無数の金属箔が仕込んであって、それが他の花火や夕陽を反射して、ディズニーランドのエレクトリカルパレードの何倍も眩く、この世のものとは思えない美しさだった。三笠のクルーは正装して上甲板に並び、登舷礼の姿勢のまま美しい歓迎を喜んだりビビったり。「悪いけど、わたしは神棚にいるわね。この星の雰囲気、どうも肌に合わない」で、ミカさんを除く全員で上陸し、アクアリンドの大統領以下、この星の名士やセレブの歓迎を受けた。「いやあ...宇宙戦艦三笠32[水の惑星アクアリンド・2]

  • RE・かの世界この世界:017『なにかお困り?』

    RE・かの世界この世界017『なにかお困り?』無意識にポケットをまさぐる。分からない事があると脊髄反射でスマホを探してしまう。今は昭和63年だから、スマホはおろか携帯も存在しない、どうしよう……どうしよう……。意味も無く胸を押える。なんとも落ち着かない。スマホがあれば、A駅近辺の喫茶店で検索できる。それ以上にスマホを持っていないという現実を突きつけられ、とても不安になる。スマホ無しで、どうやって調べたら……。人に聞くしかない……至極当たり前の解決策が湧いてくるが、これが簡単なことじゃない。子どものころから見知らぬ人は不審者という決めつけがある。小学校入学時から防犯ブザーを持たされ、見知らぬ人に気をつけましょうと注意されてきた。当然世間の大人たちも子どもにものを尋ねるようなことはしない。路上でものを尋ねて警...RE・かの世界この世界:017『なにかお困り?』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 109『』

    鳴かぬなら信長転生記109『天照大神との交渉』信長ああ、やっと来たぁ!見かけは平手の爺が『本朝神仙図絵』で見せてくれた通りの天照大神の装束なのだが、機嫌の悪い時の濃(俺の女房)そっくりの不機嫌面で現れた。「大相国信長である」「ん?ダイショウコク?なにそれ?」「死んでから天皇にもらった称号だ、知らんのか?」「あ、官職名か、太政大臣のことだな。官職名なら上総介にしておけ」「上総介は桶狭間までだ。それに自称だぞ」「上総介の方がかっこいい」「かっこいいか、まあいいだろ。『やっと来た!』と言っていたが、俺が来るの知ってたのか?」「転生してきた者たちは大勢いるけど、この天照に会いに来たのは上総介が初めてなのじゃ。だから、そういう意味で初めてなわけさ」「ん?あっちゃんは『簡単には会えません』的なことを言っていたぞ。今日...鳴かぬなら信長転生記109『』

  • RE・かの世界この世界:016『喫茶みかど』

    RE・かの世界この世界016『喫茶みかど』「先輩!先輩なんですね!?」女神さまの声は中臣先輩だった!ほんの一時間足らずぶりなんだけど、海外のどこかで財布もスマホもパスポートも無くして知り合いに出会った感じ。『どうやら、とても難しい世界に行ってしまったようね』「はい、えと、わたしどうしたらいいんでしょう(;'∀')」『あのね……ちょっと待って……』電話の向こうでボシャボシャと話声、どうやら志村先輩と話し合っているようだ。『……わかった、うん……いい、みっちゃん。一つ課題を解決すれば、その世界から離脱できるの。いま、時美に探してもらってるから……うん、こっち?えと……みっちゃん』「はい」『駅一つ向こうに『みかど』って喫茶店があるの』「あ、A駅の方ですね」リアルでっていうか元の世界のA駅前で見かけたことがある。...RE・かの世界この世界:016『喫茶みかど』

  • せやさかい・389『三方さんの引き継ぎ』

    せやさかい・389『三方さんの引き継ぎ』さくら夜中に目が覚めた。なんやら、ヒソヒソと話声がする。ひょっとすると夢?以前も、夜中に話し声がして、それが夢やったことがある。十七年も生きてると、五千回ぐらいは夢見てる。せやさかい、夢やという予想はついた。横を向くと、留美ちゃんが幸せそうに寝息を立ててる。親友の幸せは、うちの幸せ。このまま寝てもええねんけど、夢の中のヒソヒソ話というのは、めっちゃ気になる。ニャゴニャゴ……耳を澄ますと、話声のひとつはダミアの声。もっかい薄目を開けると、ちょっとだけ部屋の襖が開いてて、その隙間に向かってブタネコとは思えん甘えた声でニャゴニャゴいうとおる。誰と喋ってんねん?お布団は目の下まで被って、心眼を凝らす……見えてきた。襖を素通しにして見えてきたのは、なんとマリーアントワネット!...せやさかい・389『三方さんの引き継ぎ』

  • 銀河太平記・147『待ち伏せ』

    銀河太平記・147『待ち伏せ』メグミズッボオオオオオン!ゴジラがうがいをしている最中にキングコングか何かに腋の下をくすぐられたらこうなるどだろうという勢いで海水が噴き出す。ドゴゴゴゴーーーン!洗鉱用の海水タンクを爆破して500トンの海水を一気に放出した!A鉱区の崖下を北に走っていた漢明兵がまとまって隘路の岩や崖に叩きつけられる。ロボット兵だから溺れることも無ければ、岩に激突しても死ぬわけでもない。しかし、文字通りの鉄砲水に翻弄されて転がる様は、お岩さんの手に掛かって洗濯機改造の皮むき機で皮を剥かれる芋のようだ。食堂なら、そのまま大きなザルに拾い上げられ、巫女服にタスキ掛けのハナによってスライスされたりザックリ切られたりしてお惣菜の具やフライドポテトになる。その巫女服のハナが崖の上で目覚まし時計のネジを巻く...銀河太平記・147『待ち伏せ』

  • 宇宙戦艦三笠31[水の惑星アクアリンド・1]

    宇宙戦艦三笠31[水の惑星アクアリンド・1]修一「両舷10時と2時の方向に敵艦体!」「距離4パーセク!」Jアラートみたいな警報とともに当直のクレアとウレシコワが叫んだ。「両舷共に10万隻、クルーザーとコルベットの混成艦隊、あと1パーセクで射程に入ります」「敵艦隊、共にエネルギー充填中の模様。モニターに出します」クレアとウレシコワが的確に分析し、報告を上げてくる。モニターには、敵艦一隻ずつのエネルギー充填の様子がグラフに表され、まるで、シャワーのようなスピードでスクロールされている。「全艦の充填には3分ほどだな。両舷前方にバリアー展開!」俺が命じたときに、砲術長の天音が遅れて駆け込んできた。「ごめん!ミカさんバリアーお願い!」天音は、濡れた髪のまま、いきなり船霊のミカさんに頼んだ。「天音、冷静に。ボタンぐら...宇宙戦艦三笠31[水の惑星アクアリンド・1]

  • RE・かの世界この世界:015『中島書店』

    RE・かの世界この世界015『中島書店』ネガを見ているようだ。むろん日の丸のネガが赤字に白丸なわけないんだけど、見事に赤白逆転なので、ネガの感じに見えてしまう。社務所の窓に宮司さんの後姿、一瞬足が動いたけど思いとどまる。日の丸以外は元の世界にソックリだけど、何が起こるか分からない。知り合いと接触するのは、ひとまず避けよう。神社を離れて駅の方に向かう。まずは自分の生活圏を見てみよう。それに、人通りの中に居た方が気が楽だし。途中、小学校の横を通る。そうだ、校舎の屋上に日の丸があったはず……見上げたそれは、やっぱり赤地に白丸だ。立ち止まっていると、下校途中の小学生に怪訝な目で見られる。エホン。軽く咳払いして、小学生とすれ違う。エホン。やつも咳払いして、ニタ~っと笑いやがる。こいつ、小悪魔かなにかか?構わずに先を...RE・かの世界この世界:015『中島書店』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・008『キャリーバッグ』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記008『キャリーバッグ』えーー!付いて来てくれるんじゃないの!?脳みそを経由しないで文句が口を突く。今日は諸々の書類提出やら手続き。でもって、教科書販売と制服の受け渡し!荷物がハンパない!学校でも――保護者同伴が望ましい――って言ってたし、とうぜんお祖母ちゃんが付いて来てくれると思ってた!「1970年だって特務はいるんだよ、まだまだ様子も分からないし、ウカウカ行くわけにはいかないわよ」「ト、トクム……」そうなんだ。お祖母ちゃんは特務ってとこに務めてたベテランの魔法少女だった。内勤ばっかりで、アップグレードもろくにやってない型落ちだけど、みなし公務員のMS(魔法少女)だった。警察よりも自衛隊よりも公安よりも内閣調査室よりもベールに包まれた秘密組織で、その存在は例え総理大...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・008『キャリーバッグ』

  • 宇宙戦艦三笠29[グリンヘルドの遭難船・2]

    宇宙戦艦三笠30[グリンヘルドの遭難船・3]クレアエネルギーを注いであげると、エルマは話を続けた。「……グリンヘルドの人口は200億を超えて久しいのです」その一言は衝撃的だった。グリンヘルドもシュトルハーヘンも地球型の惑星で、大きさも大陸の面積も地球とほぼ変わらないことが分かっている。……とすれば、惑星としてのキャパは80億ほどが限界で、惑星全体として手を打たなければならないのは容易に想像がつく。「そこまで文明が発達しているのに、どうして人口の抑制を考えなかったんだ」修一艦長は当たり前な質問をした。わたしがボイジャーとして宇宙に出たころの地球は、まだ60憶ほど。現在は80億を目前に、人口の抑制を考え始め、その成果も出始めている。「その文明の発達が災いなんです。増えた人口は他の惑星に移住させればいい。なまじ...宇宙戦艦三笠29[グリンヘルドの遭難船・2]

  • RE・かの世界この世界:014『』

    RE・かの世界この世界014『ああれ?』……戻って来たのかと思った。だって、同じ鳥居の前だよ。時間は……たぶん昼?鳥居も自分の影も真下にある。……爽やか……南中したお日様に猛々しさはない、お日様を直に見ることなんてできないけど、イメージとしてはニコニコと穏やかに笑っている感じ。これは春か秋?社務所に戻って聞いてみれば、現在(いま)がいつなのか分かる……でも、なにか憚られる。もう少し観察してからでないと、うかつには動けないという気がする。鳥居の陰から周囲を観察。神社の前には昔からのお屋敷街、見慣れた百坪や五十坪ほどが落ち着いたたたずまいで並んでいる。五月か十月ごろの鳥居の前……てことは学校行かなきゃ……でも日曜で休みとか?スマホでカレンダーを見ようと思った……え、このポシェット?いつものリュックじゃなかった...RE・かの世界この世界:014『』

  • せやさかい・388『おお、これが雛人形か!』

    せやさかい・388『おお、これが雛人形か!』さくら来週から学年末試験。せやさかい、こんなことしてる場合やないねんけど。「おお、これが雛人形か!」本堂に入るなり、ソニーが感嘆の声を上げた。「やっぱり、昔の人がやると飾りつけも違うわねえ!」留美ちゃんもカバンを下ろすのを忘れて感動。「こんな間近で見るのは初めて!」先週ペコちゃんとこで巫女服着でお神楽やった時と同じくらい感動のメグリン。今年は、檀家のお婆ちゃんらが飾りつけをやってくれた。なんでかいうと、一昨年飾りつけをやったとき、実は、いろいろミスしてたらしい。それでも婦人部のお婆ちゃんらは、今どきの子ぉらがお雛さんを大事にしてるいうことだけで感動してくれた。去年は流行り病でお雛さんどころやなかったしね。うちには、詩(ことは)ちゃんのと、お母さんのと二組のお雛さ...せやさかい・388『おお、これが雛人形か!』

  • 宇宙戦艦三笠29[グリンヘルドの遭難船・2]

    宇宙戦艦三笠29[グリンヘルドの遭難船・2]樟葉遭難船の女性クルーは衰弱死寸前だった。と言って、見たは目は健康な女性がうたた寝をしているようで、とてもそうは見えない。――残った生命エネルギーを、外形の維持にだけ使っていたようです――スキャンした彼女のデータを送るとクレアから答えがトシといっしょに返ってきた。「なんで、トシが来てるんだよ?」「クレアさんの意見で、三笠から携帯エネルギーコアを持ってきました。これを船の生命維持装置に取り付けて、この女の人を助けたらってことで。オレ、一応三笠のメカニックだから」「でも、グリンヘルドの船の中なんて、初めてでしょ。トシにできるの?」「フィフスの力で……うん、なんとかなりそう」トシは目をつぶって、調査船のメインCPとコンタクトをとり、船体の構造概念を知った。「トシ、ツー...宇宙戦艦三笠29[グリンヘルドの遭難船・2]

  • RE・かの世界この世界:013『時の神、空の神』

    RE・かの世界この世界013『時の神、空の神』世界の綻び……このわたしが?わたしは、ヤックンに告白させないことだけを願っている。告白させたら、冴子がブチギレる。ブチギレた冴子は鬼になって跳びかかって来る。昇降口の階段をもつれ合いながら転げ落ち、不可抗力とは言えわたしは冴子を殺してしまうんだ。冴子を殺したわたしは旧校舎の屋上に追い詰められ、飛び降りて死んでしまうんだ。それを回避したいために過去に戻っているんだ。先輩には悪いけど、自分のためなんだ。世界の綻びと言われても困る。「旅立たなければ、この半日が無限にループするしかないの。108回ループして分かったわ」「で、でも、この帰り道に冴子が告白するかもしれないし」「冴子は、そんな子じゃない」「……知っているでしょ、あの子はヤックンが告白してくれるのでなければ受...RE・かの世界この世界:013『時の神、空の神』

  • くノ一その一今のうち・41『甲府城・2』

    くノ一その一今のうち41『甲府城・2』え、わたしからですか?待ち合わせの稲荷櫓の前で落ち合うと「ノッチが想うところを聞かせて」と涼しい顔で言われる。三村紘一、いや、課長代理なんだから、なにか見通しがあってのことだとお昼ご飯もロケ弁一つで済ませた。もう一つや二つ食べたかったんだけど(忍者は食べられるときに食べておく=風魔流極意)、猿飛佐助たち木下の忍者たちとの戦いも予想される。食べ過ぎては体が重くなる。「僕なりに見えてきたこともあるんだけど、十分とは言えない。被っても構わないからノッチの感想を聞かせてほしいんだけどね」脚本家三村紘一として喋っているから優しいんだけど、課長代理服部半三としての狙いが潜んでいる。上忍として下忍を教育すると意味もあるだろう、ゴクンと唾を呑んで答える。「城はJRによって南北に分断さ...くノ一その一今のうち・41『甲府城・2』

  • RE・かの世界この世界:012『ループ』

    RE・かの世界この世界012『ループ』いちど帰宅してから神社に向かう。巫女神楽は三度目だけど、二度目が終わった時に心の糸が切れているので、形はともかく気持ちが入ってこない。日数が無いのですごく集中する。バイト同然の巫女仕事に力を入れてもと思われるかもしれないけど、わたしも冴子も、そういう性格だから仕方がない。左手に榊、右手に神楽鈴を持って、舞台中央で冴子と交差する。シャリン!トン!鈴を打ち振ると同時に、右足で床を踏み鳴らし、踏み鳴らした勢いのまま旋回して冴子と向き合う。勢いも良く平仄も合って、宮司さんも満足そうに微笑んでいる。三間(5・4メートル)向こうの冴子、軽く眉間に力が入って、それがとても美しい。――光子も美しいよ――冴子が目の光だけで言っている。――でも、わたし負けないから――そう続いて、さらに冴...RE・かの世界この世界:012『ループ』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 108『御山に登る』

    鳴かぬなら信長転生記108『御山に登る』信長ユッサユッサユッサ……腰の運びが小気味い。久々に太刀を佩いて山道を跋渉する。山路の緑鮮やかにして、渓流の流れわが心を洗わんとす、飛鳥山峡に鳴くは警蹕の声に似て、悠久の時を我に感得せしめ、もって、その天命を知らしめる……フ、言葉までが昔に戻りかけている。これが本来の姿とはいえ、熱田大神、いや、あっちゃんは寡黙に過ぎる。ゆうべ、俺の部屋のドアを叩いたあっちゃんは、いつになくシリアスだった。「なんだ、ご飯会はこれからが本番だろう」「少しだけ真剣な話があるのよ」「なんだ、そんなマジな顔をすると、まるで神さまのようだぞ」「…………」ジョークに付き合う風もなく、立ったまま間合いを詰めてきた。まるで、本能寺で首になって初めて会った時のような圧を感じる。あの時は、見下ろしながら...鳴かぬなら信長転生記108『御山に登る』

  • 宇宙戦艦三笠28[グリンヘルドの遭難船・1]

    宇宙戦艦三笠28[グリンヘルドの遭難船・1]樟葉――国境の長いトンネルを過ぎると、雪国だった。宇宙の底が白くなった――変なフレーズを口づさんで苦笑してしまった。「なんだ?」艦長席の修一が目だけ向けて聞いてきた。「ううん、こんな穏やかな宙域に出て、思わず出た感想。でも川端康成の借り物なんで、笑っちゃった」「雪国か……おれ読んだことないよ」「わたしは……」「ボクは……」「わっきゃ……」星団を抜けてホッとしたのか、わたしの独り言に応えてくれるんだけど、ほとんど同じ。元ボイジャーのクレアは、タイトルだけは知っていた。ボイジャーとして打ち上げられたときに、世界文学の中で、ただ一つ入っていた日本小説が、この『雪国』だったんだって。「素敵な書き出しですね。雪国の前に『そこは』なんて、余計な言葉を入れてないところがいいで...宇宙戦艦三笠28[グリンヘルドの遭難船・1]

  • RE・かの世界この世界:011『世界を助けて(^▽^)』

    RE・かの世界この世界011『世界を助けて(^▽^)』2000人助かると、時美のお母さんは別の人と結婚することになるの。中臣先輩は、学食でお蕎麦が売り切れだったらラーメンを食べるのというくらいの気楽さで言う。「時美には生まれて来て欲しいから、やっぱり震災の犠牲者は6000人」え?さすがに、ギョッとする。だって人の命、簡単すぎ……「ただいまあ(^▽^)」先輩が訂正すると、隠れん坊で最後まで隠れおおせた子どものように志村先輩が現れ、年表も元の姿に戻った。「いくつもの小さな変化を加えると、2000人助けた上で時美が生まれるようにもできるんだけどね、すごく難しい方程式を解くようにしなくちゃならない。たとえできたとしても、遠い将来に別の影響が出る」ヤックンの告白を無かったことにして、冴子を殺すことを回避していなけれ...RE・かの世界この世界:011『世界を助けて(^▽^)』

  • 銀河太平記・146『連隊長 胡盛徳大佐』

    銀河太平記・146『連隊長胡盛徳大佐』意識が戻ったのは工作艦雷陽のファクトリーのハンガーだ。空母のハンガーほどの広さは無い。収容しているのは艦載機ではなくて、ロボットの予備機体だからだ。いかつい軍人ロボットでも、飛行機ほどのサイズは無い、せいぜい人の1・5倍。艦載機一機分のスペースに一個小隊50体分は収納できる。工作艦には艦載機で20機分、1000体の予備機体が格納されている。「お目覚めですね胡大佐、もう五分お待ちください。電脳と各部の調整をします」「二分でやってくれ、まだ戦闘中だからな」「では、簡易調整で済ませます。簡易調整の場合は、以後の換装と調整は兵器廠に戻るまでできませんが」「かまわん」「では、調整に入ります」ピーーーーンチェッカーの起動音、聞いてはいたが不快な音だ。軍事用のハイスピードだからだろ...銀河太平記・146『連隊長胡盛徳大佐』

  • 宇宙戦艦三笠27[フィフスのクレージードリル(訓練)]

    宇宙戦艦三笠27[フィフスのクレージードリル(訓練)]最初は、単なるジャンケンだった。ロボットが相手だったが、スキルを人間程度に設定してあったので、まあ、十回勝負で六勝四敗というところだった。「さあ、これが出発点だ」と、言われても、先が読めない。「こんなので訓練になるのか?」天音が口を尖らせる。天音は父が職業自衛官だったので、横須賀の親類に引き取られるまで、父の転勤に付き合って何度も引っ越している。ゆく先々で頼れる者は自分一人「揉まれているうちに度胸も付いて勘も良くなった」と言っているが、俺は、持って生まれたものだと思う。ケンカや勝負ごとに勝った時に「天音の強さは生まれつきだもんな」と言って張り倒されたことがある。「強いなんて言うなっ!」褒めたのに、なんでキレるんだ?後で樟葉が話してくれた。「天音はね、自...宇宙戦艦三笠27[フィフスのクレージードリル(訓練)]

  • RE・かの世界この世界:010『志村先輩』

    RE・かの世界この世界010『志村先輩』最初に崩れた東側のビルは、結果的に三か国の共同でつくられた。実際の工事に入ってみると、日本以外の二か国の技術では対応できないことが分かったからだ。その時点で二か国を撤収させ、日本企業だけで作るべきだった。しかし、メンツを重んじる二か国は継続を固執し、日本企業もことを荒立てることを好まず、東棟の建設に部分参加させた。結局二か国が担当したところは、三棟を屋上プールで連結する部分で重量に耐え切れずに挫滅し、東棟全体を傾かせることになったのだ。そして、傾いた東棟は中棟と西棟をも巻き込んで大崩壊に至ったということみたい。これは、責任を擦り付け合う、グロテスクな争いになるだろうなあ……。「悲惨な事件だけど、これは、ただのたとえ話なの」「今から説明することのな……」「たとえ話……...RE・かの世界この世界:010『志村先輩』

  • 宇宙戦艦三笠26[ダススターとヨーダ]

    宇宙戦艦三笠26[ダススターとヨーダ]一言で言って、クレーターの中は一見ガランドーだった。モニターで拡大すると、ガランドーの中には神経細胞のシナプスのようなものがあって、それぞれがニューロンのような突起を張り出している。突起の先にはゴミのようなものが付いているが、よく分からない。なんだ、あのシナプスとニューロンは?「シナプスはベース(基地)、ニューロンは港の埠頭のようなものよ」クレアが冷静に解析してくれるガチーーン誘導ビームは――しっかり掴まえたぞ――という感じの牽引ビームに切り替わって、速度は落ちたがレールに載っているような確かさで引っ張られていく。三笠は、アルファ星のど真ん中にある巨大シナプスのニューロンの一つに接岸した。「おお、これは……」「ニューロンの突起のように見えてたのは、全て戦闘艦や戦闘機だ...宇宙戦艦三笠26[ダススターとヨーダ]

  • RE・かの世界この世界:009『三つ子ビルのたとえ』

    RE・かの世界この世界009『三つ子ビルのたとえ』落ち着いてくると部室の様子が分かって来た。教室一つ分ほどの部室は畳敷きで窓が無い。三方が障子と襖で、そこを開けると廊下とか別室に繋がっているのかもしれないけど、なんだか、そこには興味を持たない方がいいような気がする。中臣先輩が立ち上がって、つられて首を巡らすと、驚いたことに上段……というのかしら、一段高くなっていて、壁面は全体が床の間みたい。三つも掛け軸が掛かっていて、その横は違い棚で、香炉やら漆塗りの文箱みたいなのが上品に置いてある。これって、時代劇とかである……書院だったっけ、お殿様が太刀持ちのお小姓なんかを侍らせて家来と話をしたりするところだ。大河ドラマのセットみたいだ。中臣先輩は、襖の向こうへ行ったかと思うと、お盆に茶道で使うようなお茶碗を載せて戻...RE・かの世界この世界:009『三つ子ビルのたとえ』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・007『ショーウィンドウの写真たちから』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記007『ショーウィンドウの写真たちから』「お祖母ちゃん、うちは写真館で写真とか撮ったことある?」家に帰るまで、写真館のあれこれが頭に浮かんだ。ショーウィンドウには、七五三の子どものや、袴姿の女子学生や、結婚式やら、記念の家族写真やらが大小いっぱい並んでいた。ドアの向こうにはスタジオが覗いていて、ライトや傘みたいなレフ板、ごっついスタンド付きのカメラやらが見えて本格的。写真なんて、スマホやデジカメでしか撮ったことが無いから、ちょっと新鮮。半分以上はカラー写真なんだけど、白黒の写真もある。昔の写真だからなのか、そういう仕様なのかは分からない。令和の時代にも、わざとセピア色にしてレトロ感出した写真もあるしね。……みんな真面目な顔で写ってる。校長室に並んでる歴代校長の写真みた...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・007『ショーウィンドウの写真たちから』

  • 宇宙戦艦三笠25[暗黒星団とど根性レイマ姫]

    宇宙戦艦三笠25[暗黒星団とど根性レイマ姫]「ただ今の戦闘ぉ、三笠大破ぁ、航行不能ぉ。艦長と砲術長戦死だ~す(´▽`)」可愛い顔で、レイマ姫は宣告した。「今の設定ありえねーよ!両舷から10万機の飽和攻撃なんて、攻撃側も味方の弾くらって、二割がたの損失は出てるっての!なあ、クレア!?」子どもみたいに拳を上げるトシ。「あ、えと、10万機の戦闘機を、一度に管制して攻撃する能力は、わたしの知っている限り、ありえません」「そりゃ、クレアさんは、元ボイジャーでぇ、相当の宇宙情報持ってらげども、全ででねわ。わんど暗黒星団観測すた限りは、グリンヘルドもシュトルハーヘンも、こぃぐらいの戦闘は普通にこなすだ」「でも、同士討ちの二割に、三笠が撃破した分を入れれば6万機の喪失よ。部隊としては壊滅。次の作戦に差し支えるわ」「そうだ...宇宙戦艦三笠25[暗黒星団とど根性レイマ姫]

  • RE・かの世界この世界:008『旧校舎の中廊下』

    RE・かの世界この世界008『旧校舎の中廊下』それは予感していた。旧校舎の中廊下のドアは、どれも目をつぶったように閉まっているのだ。授業に使われることが無くなって久しく、倉庫になっている他はいくつかが部室として使われているらしいけど、廃部になったりマイナーな部活で、人の出入りはほとんどない。ギシ……ギシ……ずっと奥の方だと記憶しているので、板張りの廊下を踏みしめながら、手前のドアから試してみる。そして、一番奥のドアまで試してみるが、開くドアは無かった。やっぱりだ。予感はしていたんだけど、常識的な選択肢から試してみるのは性格なのかもしれない。二階?そう思って打ち消す。記憶をたどっても階段を上がったのは、最初に屋上を目指した時だけだ。真っ直ぐ屋上に上がり、迫って来る足音に耐えられなくなって飛び降りたんだ。一瞬...RE・かの世界この世界:008『旧校舎の中廊下』

  • パペッティア・006『ドーン!!』

    パペッティア006『ドーン!!』晋三みなみ大尉は車を路肩に停めると、まりあを引きずるようにして路地に跳び込んだ。「どこへ行くんですか!?」「シェルター!万全じゃないけど地上にいるよりはまし!」ズウィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンビルの谷底から見える四角い空を巨大な何かがよぎった。「みなみさん、あれは!?」「ヨミよ」「あれが……」「さ、急ぐわよ!」俺もぶったまげた。二十年前に東京とその周辺を壊滅させたヨミのことは知識としては知っていたが現物を見るのは初めてだ。瞬間見えたそれは、巨大なクジラを連想させて圧倒的ではあったけど、かっこいいと感動してしまった。流行りのレトロ表現でいうところの仮想現実に慣れた俺たちは、瞬間圧倒されても、ゲームの中でラスボスに出会ったぐらいにしか感じない。し...パペッティア・006『ドーン!!』

  • RE・かの世界この世界:007『二日後に戻る』

    RE・かの世界この世界007『二日後に戻る』そのまま二日後を迎えた。ヤックンに告白させなかったんだから、冴子も穏やかなはずだ。昇降口へ下りる階段で冴子に呼び止められることもない。従って、昇降口で乱闘になることもなく、不可抗力とは言え冴子を殺してしまうこともない。制服のブラウスを朱に染めて逃げ回ることも無ければ、旧校舎の屋上に追い詰められることも無いし、飛び降りて頭蓋を柘榴のように割って脳みそをぶちまけて死ぬこともない。「このまま神社行く?」終礼が終わって廊下に出ると冴子が待っていた。お祭りの準備と巫女神楽の稽古が佳境に入って来たのだ。三回目の巫女神楽とあって、冴子もわたしもWKだ。WK、つまり期待と緊張。神社の記録でも三回の巫女神楽をやった例は江戸時代に一度あったきりだそうだ。巫女の病気とか事故とかじゃな...RE・かの世界この世界:007『二日後に戻る』

  • せやさかい・387『2683』

    せやさかい・387『2683』さくら2683……何の数字やと思います?冬物衣料のクリアランス、ティーンの人気ブルゾンが2683円!ちゃいます。イコカの残高、2683円、そろそろチャージせなあかん。うちのイコカは残高103円で終わってるけど。ちゃいます。昨日食べたあれこれのカロリー合計、2683キロカロリー。ちょっと食べすぎ。ちゃいます。うちの家から堺東の駅まで2683メートル……う~ん、そんなもんやけど計ったことないから分かりません。じつは、令和5年は、紀元2683年なんです!で、今日は2月11日で、建国記念の日ぃなんです!話は、頼子さんロスで落ち込んでたあくる日のこと。「ちょっと佐藤さん……」朝のショートホームルームが終わったら、教室出る足を止めてペコちゃんがオイデオイデする。留美ちゃんとメグリンは心配...せやさかい・387『2683』

  • 宇宙戦艦三笠24[暗黒星団 暗黒卿ダースべだ・2・レイマ姫]

    宇宙戦艦三笠24[暗黒星雲暗黒卿ダースべだ・1・レイマ姫]東北弁とダースベーダー風の衣装は、とっても似つかわしくない。「まえだおぢが目指すてらピレウス北極どするど、この三笠は、やっと福島あだりだ。というごどだげでもねんだが、言葉はやっぱ訛ってまる、ガースー」その間にもダースは、特有の籠ったような声で、荒い息遣いだ。「訛ってても、貫録あるねぇ。下手に取り巻き連れてかっこつけてないとこなんか、シブいよ!」こういうことに関しては、トシは独特の感性で反応する。「それはだな……ゲホンゲホン、ゼーゼー……」「大丈夫、ダースさん?」「なんでもね、歳なんだ。聞ぎぐるすくてすまね、ガースー」みかさんの質問に、ダースは年寄りくさく応えた。「で、御用はなんなのかしら(`Д´)?」お誕生会に水を差されたウレシコワは、いささかカド...宇宙戦艦三笠24[暗黒星団暗黒卿ダースべだ・2・レイマ姫]

  • RE・かの世界この世界:006『二日前・3』

    RE・かの世界この世界006『二日前・3』ヤックンの視線を遮るように冴子がわたしの前に座った……。以前のわたしだったら、ただの偶然だと思うだろう。でも、今は違う。明らかに――わたしのヤックンに近づくな!――と、全身で言っている。作業が終わったら、さっさと帰ろう。こないだは、ぐずぐず残ってヤックンと二人きりになってしまった。告白なんて、そうそうできるもんじゃない。二人きりになる状況を避けて決心をはぐらかせれば、なんとかなる。ヤックンは冴子のことも嫌いではないはずだ。うまく誘導すれば、冴子の方に向かせることだってできるかもしれない。もともと、今日は行けないと言ってあるんだ。さっさと帰っても不自然じゃない。よし!最後のお札に取り掛かる、これを仕上げれば帰れるぞ。「それが最後だよね?」仕上げの熨斗を掛けたところで...RE・かの世界この世界:006『二日前・3』

  • くノ一その一今のうち・40『甲府城・1』

    くノ一その一今のうち40『甲府城・1』二日目は甲府城のロケ。甲府城って甲府駅のすぐ近くで、つまりは街のど真ん中にある。城内にはホテルや明治の大水害の後に建てられた謝恩塔(大きなオベリスク)とかがあって時代劇を撮るのには向いていない。「こんな風にやります」監督が木陰でモニターを指し示す。モニターには、カメラが撮っている、ちょっと見上げたアングルで石垣と城門が映っている。いかにも、初めてお城に来た者が見上げてため息をつきそうな絵柄で、さすがは監督。だけど、後ろには高層のホテルやら電線やらが写り込んでいる。それに、石垣の縁の柵も邪魔。「こうするとね……」監督がクリックすると、ホテルも電線も一瞬で消えて、思わず実際の風景を見てしまう。当たり前だけど、実際のホテルも電線も、そこにあり続けている。「そして、こうやると...くノ一その一今のうち・40『甲府城・1』

  • 宇宙戦艦三笠22[暗黒星団 惑星ろんりねす・2]

    宇宙戦艦三笠23[暗黒星雲暗黒卿ダースべだ・1・ウレシコワの誕生日]今日はヴァリヤーグ、つまりウレシコワの誕生日だ。数奇な運命をたどったヴァリヤーグは、ソ連の航空母艦として作られたが、建造費の不足から工事がストップ。その後ソ連の崩壊からウクライナの所管になるが、ウクライナは彼女を空母として完成させる気持ちも費用も無かった。しかし、スクラップにするのももったいないので、ウクライナは売りに出した。しかし建造途中の新古品空母として売り出したもので価格が高く。また、空母としては時代遅れであったっため買い手が付かず、中国海軍の息のかかったペーパーカンパニーがスクラップとして格安で購入。最初はカジノとして使われる予定だったが、中国は、これを本格的な空母に修復……しようとした。が、エンジンが蒸気タービンしか間に合わず、...宇宙戦艦三笠22[暗黒星団惑星ろんりねす・2]

  • RE・かの世界この世界:005『二日前・2』

    RE・かの世界この世界005『二日前・2』頼まれたら引き受けてしまう。気の弱さか人の良さか。『女子二人体調不良で来られなくなった、来てくれないかなあ?』メールだったら断ることもできたんだけど、直に電話されては断れない。青年部長の高階さんは困り果てたという声だし。「分かりました、直ぐに行きます……いいえ、大丈夫です」そう応えて後悔はなかった。神社に行っても回避する方法はあるだろう。お札は女子十三歳から十六歳の女子でなければ触れない。それに、記憶では女子の休みは無かったはずだ。前回とは様子が変わっているし。注意さえしていればヤックンの告白を回避できるだろう。「遅くなりました、がんばります!」勢い込んだ挨拶が、我ながらおかしかった。奥のテーブルが女子の仕事場。まちがって資格のない者、特に男が入り込まないように赤...RE・かの世界この世界:005『二日前・2』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 107『ご飯会』

    鳴かぬなら信長転生記107『ご飯会』信長リビングが盛り上がっている。転生学園の乙女生徒会長が、持ち前の明るさでもてなしてくれたのが、よほど嬉しかったと見える。茶姫の喜びは市の喜び。市が喜んでいれば……まあ、俺もまんざらではない。学園では皿鉢料理でもてなしてもらったというので、今日は、そのお返しのご飯会だ。「満漢全席でもてなしたい!」茶姫は、見かけよりも逞しい腕に力こぶをつくった。「気持ちは分かるがな、うちのリビングでは、料理の半分も並べられんぞ」そう言うと、しみじみとリビングを見渡して「満漢十席ぐらいにしておこうか」と、それでも朝早くから市とキッチンに立って、「これで十席か!?」と驚くほどの料理を並べた。俺も久々に食欲と意欲が湧いて、料理に見合った器のあれこれが浮かんでくる。「それって、ぜんぶ現世に置いて...鳴かぬなら信長転生記107『ご飯会』

  • 宇宙戦艦三笠22[暗黒星団 惑星ろんりねす・2]

    宇宙戦艦三笠22[暗黒星団惑星ろんりねす・2]予想はしていたがスカイツリーは無かった。公衆電話がやたらに多く、当然歩きスマホをしている人もいない。ただ、今はほとんど見かけなくなった歩きたばこはそこここに。よく見ると、自販機の飲み物が110円。車のデザインとかは良く分からないけど、シートベルトも無いし、なんとなく古臭い感じがした。「ファッション古い……」天音が後部座席で呟いた。俺もトシもファッションには疎かったが、渋谷や原宿を通ってもガングロ茶髪にルーズソックスとか腰パンとかは、さすがに古く感じる。日本によく似た外国に来た感じだった。「いやあ、よく来られましたね。東京を代表して歓迎しますよ」鈴木という知事さんだそうで、この人のことはよくわからない。――石原さんの二代前の都知事――クレアが、三笠のCPに照会し...宇宙戦艦三笠22[暗黒星団惑星ろんりねす・2]

  • RE・かの世界この世界:004『二日前・1』

    RE・かの世界この世界004『二日前・1』電話一本するだけでいい。眩しい……思わずつぶった目を開くと、「また徹夜……」お母さんが部屋の電気を点けたところだ。めったに完結しない小説のプロット書いているうちに寝落ちしたんだ。ブリュンヒルデのキャラ決定で揺れていたんだ。姫騎士属性だけじゃつまらない、くだけすぎたら、ただのドタバタのギャグラノベ。いっそブリュンヒルデの子ども時代から書き起こして、姫騎士としての自覚が生まれる中でキャラが変わっていく……でも大河ドラマになっちゃうし……一人称は「わたし」?いや「自分」?「姫」?ブリュンヒルデ……ちょっと長い。縮めて「ブリュ」?「ヒルデ」?旅をさせよう、お供はトール……トールと言えばミョルニルハンマー……あ、ヒルデに持たせたら可愛いかも……そうだ、ハンマーじゃ普通だから...RE・かの世界この世界:004『二日前・1』

  • 銀河太平記・145『強襲』

    銀河太平記・145『強襲』チルル空港制圧隊長の胡盛徳大佐は戸惑った。戸惑いは二つだ。A4ガンシップ隊による対地攻撃のあと、二個大隊で強行着陸と空挺部隊による降下。待ち構えていた空港守備隊との戦闘に突入した。連隊の全兵員による奇襲は海と空から行われた。空海共に二個大隊。北部攻撃部隊と合わせると一個旅団の兵力だ。23世紀の今日でも、二個大隊1000人の空挺部隊の展開には10分はかかる。もたついていては、存外な被害を被る。ガンシップ隊による対地攻撃では、まともに反撃されることは無かった。反撃すれば居所が知れてしまい、強烈な航空攻撃が加えられ被害を大きくするからだ。事実、自動で反撃してきた対空ミサイル、レーザー砲の大半を第二撃を放つ前に沈黙せしめ、当方の被害は二機の被撃墜、四機の中破に留まっている。警戒しながらの...銀河太平記・145『強襲』

  • 宇宙戦艦三笠21[暗黒星団 惑星ろんりねす・1]

    宇宙戦艦三笠21[暗黒星団惑星ろんりねす・1]暗黒星団とは、真っ黒、あるいは真っ暗な星団と言う意味ではない。前世紀末に発見されて以来、地球や地球の周回軌道にある電波望遠鏡で観察はされている。発見者は中国の安告正(アンコウチャン)。しかし、これといった発見や生命反応のある星が確認されたことが無い。安告正は真面目で清廉な学者であったので、観察に予断を交えることもなく、親が名付けた名前の通り、学会の中では正しきを告げる人で、学者としては不遇のうちに亡くなった。告正の死後、注目する学者も減って、面白みのない星団との評価が定着し、研究や観察を続けても宇宙物理学者としての名声が上がったり将来が明るくなる見通しが無いということで、いつしか発見者の安告正をもじって『暗黒星団』と呼ばれるようになった。逆に言うと、通り一遍の...宇宙戦艦三笠21[暗黒星団惑星ろんりねす・1]

  • RE・かの世界この世界:003『かの世部』

    RE・かの世界この世界003『かの世部』ぼんやりと天井が見えた。和室の天井……胸元まで掛けられたお布団の優しい感触。自分の部屋で目覚めた感覚……悪い夢を見たんだ……でも、よかったぁ、夢だったんだ。……いけない、起きなきゃ遅刻する!人の気配、お母さんに起こされるのは癪だ。「目が覚めたようですね」え……お母さんじゃない?仰向きの視界に入って来たのは、見慣れないセミロング、制服の襟には一つ上の学年章……三年生?「よかったな、パニックにならないで」もう一人の声……目だけ動かすとポニテの三年生。「あ、あ、あの、わたし……」「大丈夫みたいだな、起こそうか?」「え…………」「「……うんしょ」」返事をする前に起こされる。「すみませ……!?」起こしてもらって視界に入ったのは、枕もとに血が滲んで無残に破れた制服。「痛い……」...RE・かの世界この世界:003『かの世部』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・006『二度目の合格者説明会』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記006『二度目の合格者説明会』「しっかり聞いて、しっかりメモを取ってくれればいいよ」受付の先生に正直に言うと、そう指示されて受験番号の振ってあるパイプ椅子に腰かける。見ると、わたしの他にも保護者同伴ではない子がチラホラ居て、ちょっと安心。ホッとすると直ぐにスマホを出してしまう。――保護者同伴でなくても大丈夫だったけど、マジ、ビビったよ(;'∀')――お祖母ちゃんにライン打ってスクロール……よし、とりあえず未読はない。習慣で天気予報をチェックして、Yahooニュースをチラ見……ヤバイ!1970年にスマホは無いんだ!まあ、この時代の人には手鏡にしか見えないようになってる。この時代でもスマホを使えるようにしてくれているんだけど、ちょっと用心しなくっちゃねえ。落ち着いてスマホ...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・006『二度目の合格者説明会』

  • 宇宙戦艦三笠20[空母遼寧の船霊ウレシコワ・2]

    宇宙戦艦三笠20[空母遼寧の船霊ウレシコワ・2]Расцветалияблониигруши……Поплылитуманынадрекой;……ВыходиланаберегКатюша……彼女は小さく「カチューシャ」を口ずさみながら、やってきた。「なんだかメーテルみたい……」天音呟いたとおり、黒のコートに黒の毛皮帽にブーツといういでたちで、艦首の甲板に佇んでいる。艦首のそこだけが黄昏色に染まって横殴りに雪さえ降っている。俺は、広瀬中佐の戦死を知って、はるばるペテルブルグからシベリア鉄道に揺られ、大連駅のプラットホームに降り立ったアリアヅナのように思えた。「遼寧のウレシコワさんです……」クレアが冷静に、しかし語尾は濁して呟いた。「なんだか、ワケありだな」「あんなとこ寒いよ!」「ちょっと!」トシは、天音が止...宇宙戦艦三笠20[空母遼寧の船霊ウレシコワ・2]

  • RE・かの世界この世界:002『』

    RE・かの世界この世界002『グシャ!』キャーーーーーーーーーー!!昇降口が悲鳴に満ちてドアや壁や窓ガラス、さらに階段を伝って校舎全てを震わせた!標本箱の昆虫のように傘に貫かれて四つん這いの冴子。だけど、すぐに横倒しになって胸と口からおびただしい血を溢れさせた。それは、瞬くうちに床に広がって、近くに居た生徒たちをのけ反らせた。騒ぎは上層階や昇降口の外にまで広がり、異変に気付いた先生や警備員の気配が迫ってくる!どきなさい!外へ出ろ!うっ!これは!見るんじゃない!救急車!怒声が背後で弾ける。「ち、違う!違うんです!」そこを動くな!凶器は!?「ち、ちが!違うんです!」来んな!動くな!「だから、ちが……!」あとが続かず、腰を浮かせたかと思うと、勝手に足が動き、動いた先の人波が開いて、わたしは逃げる。逃げたって、起...RE・かの世界この世界:002『』

  • パペッティア・005『』

    パペッティア005『アクト地雷』晋三そのRVは百メートルほど走ったところで大爆発した。一秒でも遅れたらまりあの命は無かっただろう。呆けていると、さっきすれ違った方のRVが戻ってきて、夏子の目の前でドリフトしながら停車した。キキーーーーー!「早く乗って!」車から飛び出してきたのは本物のみなみ大尉。やっぱりさっきのは特殊戦用のアクト地雷だ!そんな事情の分からないマリアは目を丸くして金魚みたいにパクパクしている。「まだローンも終わってないダンディーが、ダンディーってのはこの車の名前ね。ダンディーが調子悪くって、やっと調子がもどってカットビで来たら、ダンディーと同じのとすれ違うじゃない。運転してるのはあたしソックリだし、助手席にはあなたが乗ってるし、あ、挨拶まだね、陸軍特任大尉の高安みなみ(懐からIDを出した)ど...パペッティア・005『』

  • RE・かの世界この世界:001『昇降口の惨劇!』

    RE・かの世界この世界:001『昇降口の惨劇!』寺井さっ…………声を掛けられた時にヤバイと思った。寺井さんと声をかけるつもりが、ほとばしる怒りの為に「ん」が消えて息を呑み込んでいる。寺井さんの「ん」まで続けてしまえば、その時点で動物的な叫びになって掴みかかってきただろう。美しい冴子の顔が嫉妬と憎しみで歪む原因はわたしにある。「なにかしら、二宮さん」昨日まで「冴子」「光子」とフランクに呼びあっていたのだから、改まった苗字では他人行儀を通り越し、互いに針の先を突き付けたように剣呑だ。階段を下りてきた二年生が「ヒッ」っと声をあげ、二階へ戻っていってしまった。斜陽気味であるとはいえ、有数のお嬢様学校であるループ学園。こんな剥き出しの憎悪がぶつかり合ってるところなど見たことがないんだ。「昨日の事だったら二宮さ……冴...RE・かの世界この世界:001『昇降口の惨劇!』

  • せやさかい・386『頼子さんロスとこけし』

    せやさかい・386『頼子さんロスとこけし』さくらゴトンちょっと大き目のものがコケる音がした。小さなもんやったら、コトリ。中くらいやったら、ゴト。あるいは、コトン。それが、ゴトン。5トンはないやろけど、ゴトン。寝返り打って確かめたらええねんやろけど、気力が湧かへん。目ぇ開けると壁。うっすらとシミの痕……なんのシミやろ?思い出した。中二で留美ちゃんといっしょに暮らすようになって、留美ちゃん、めっちゃ気ぃ遣てた。どっちかというと神経質な部類に入ると子ぉやと思う。出席番号一番違いで席が前と後ろやったさかい、クラスでは、いちばん早う友だちになった。そういう縁で……まあ、いろいろあって一人暮らしになったとき、ほとんど拉致するようにしてうちに引き取って、お父さんも、毎月仕送りしてくれはることになって、うちに来てもろた。...せやさかい・386『頼子さんロスとこけし』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・106『エピロ-グに代えて』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語106『エピロ-グに代えて』この作品は、横浜の出版社の依頼で書いた『はるかワケあり転校生の7カ月』の姉妹本です。『はるか』は、高校演劇の基礎練習や部活運営の入門書を書いてほしいという出版社の依頼で書き始めたラノベ形式のハウツー本でした。部活、特に文化部は技術的なことよりも人間関係で揺れることが多いので、技術面よりも人間関係の機微を軸に書き始め、書き終わってみると、ハウツー本というよりは、ほとんど小説になってしまいました。この変節を暖かく見守ってくださった編集さんには、ただただ感謝です。親の離婚で東京の南千住から大阪に越してきた坂東はるかは、東京でも演劇部だったこともあり、真田山学院高校に転校して演劇部に入ります。東西の文化の違い、演劇部の在り様の違いに、戸惑ったり人とぶつかっ...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・106『エピロ-グに代えて』

  • くノ一その一今のうち・39『おたまがいけ』

    くノ一その一今のうち39『おたまがいけ』甲斐善光寺を出て、三村紘一(課長代理が化けてる)の車で甲府市内のホテルに戻ってロケチームと合流する。「なにか面白いことあったぁ?」顔を見るなりまあやが聞いてくる。ロケチームで借り切っている喫茶室なので、遠慮も警戒も無い。「信玄の心を覗いてしまったかも……」「え、信玄の心!?」反射のいいまあやは、鼻がくっ付きそうなところまで顔を寄せて話を聞きたがる。「実はね……」まあやの好奇心に応えるべく、ことさら、秘密っぽく善光寺でのあれこれを話してやる。むろん裏稼業のことは秘密にしてね。「わたしも行ってみたいなあ、心の字の形の地下迷路って、そそられるよね!」「三村先生は、大いにインスピレーション掻き立てられたみたいだけどね」「うん、三村先生って、結末で九個謎解きしても一個は謎のま...くノ一その一今のうち・39『おたまがいけ』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・105『仰げば尊し』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語105『仰げば尊し』話しは戻るけど、三月十日は乃木坂さんがいなかった。三月十日は東京大空襲の日。乃木坂さんの命日でもあるし、大事なあの人、マサカドさんと言おうか、三水偏の彼女と言おうか、その大切な人の命日でもあったんだもんね。乃木坂さん自身の平気な顔は――それには触れないでほしい――という意思表示。わたしたちも、聞かないことにした。潤香先輩はロケの疲れで二日ほど寝込んでいたけど、梅の花が満開になったころから、徐々に稽古を覗きにきてくれるようになっていた。そして……それは起こった。桜の蕾が膨らみ始め、新入生たちの教科書や制服やらの引き渡しの日。稽古場の同窓会館にいても、新入生たちの初々しいさんざめきが聞こえてくる。その日は、理事長先生と潤香先輩がピアノの傍で、乃木坂さんはバルコ...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・105『仰げば尊し』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 106『皿鉢料理』

    鳴かぬなら信長転生記106『皿鉢料理』茶姫「さあ、行くよ!」踵を踏み潰したローファーをつっかけると、さっさと昇降口を出ていく孫市。ちゃんと履いた分、遅れたが、校門を出る時には横に並んだ。「元康も来れば良かったのにね」「慎重だからね、元康は」「慎重?」「…………」しまったかな。オウム返しに言ったまでだが、ニュアンスが『臆病?』になってしまった。仮にも戦国の英雄たちが転生してきているんだ、いわば民族の英雄。それを臆病はまずかったか。「いや、慎重なのよ『鳴かぬなら鳴くまで待とう時鳥』だからね。こっちに転生するときも『いきなり家康で転生しては驕りが出る。竹千代からやり直す』って言ったんだけどね、学院は高校だから、小学生は入学できませんと言われて元康から始めてるのよ」「そうか、真面目なのね」「ふふ、あれで抜け目も無...鳴かぬなら信長転生記106『皿鉢料理』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・104『感情の記憶』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語104『感情の記憶』柚木先生が慌てて稽古場にやってきた。「たいへんよ、ハルサイの公演が早くなっちゃった!」「「「「えーー、どういうことですか(゚Д゚)!?」」」」」四人は声をそろえて驚いた(むろん乃木坂さんの声は、柚木先生には聞こえない)「会場のフェリペがね、設備の故障で五月には工事に入るんで一ヶ月前倒しだって!」「ええ、そんなあ……」「間に合うかなあ……?」「……なんとかしょう!」乃木坂さんが言った。「なんとかなる?」「だれと、しゃべってんの?」うかつに乃木坂さんに返した言葉を先生に聞きとがめられた。「あ、二人に言ったんです!里沙と夏鈴に。で、間をとって二人の真ん中に……はい(^_^;)」その日から稽古は百二十パーセントの力が入って、乃木坂さんの演出にも熱がこもってきた。「...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・104『感情の記憶』

  • 銀河太平記・144『ニッパチ豊胸手術を受ける』

    銀河太平記・144『ニッパチ豊胸手術を受ける』お岩ロボットの最大の武器は並列化だよ。並列っていうのは、ネットを通して個体の情報や経験が全体で共有されるってことさ。例えば、宅配をしているロボットが、道路の穴ぼこに気が付いたとする。ロボットは、穴ぼこは本格的な修理をしないと通れないと判断して、自治体の道路課に通報。同時に、その情報は、会社のコンピューターにも送られ、全部の宅配ロボットは、その道を避けて配達するという具合。戦闘員のロボットなら、個体の戦闘経験や情報が瞬時に共有されて、メインコンピューターが最適な戦闘方法や戦術を編み出し戦闘態勢が常時最適化されるという寸法さ。逆に、敵のネットに入り込めれば、一瞬で敵の情報を上書きできる。極端な例えだけど、全員に自爆を上書きできたら、何万と言うロボット兵を一瞬で破壊...銀河太平記・144『ニッパチ豊胸手術を受ける』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・103『素顔のキャストとスタッフ』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語103『素顔のキャストとスタッフ』「自衛隊の体験入隊で、なんか変わった?」「変わったってか……分かったよな」「なにが……?」「それは……」「自分は、まだまだなんだけど、希望の持てる場所はここだ……かな?」「先回りすんなよ、言葉が無くなっちまうじゃないか……」「ごめん」「い、いや、ありがとう……」ゆりかもめの一群が川面をなでるように飛んでいった、二人はそれを目で追う。ゆりかもめは、少し上流までいくと、さっと集団で舞い上がり。それにつれて二人の顔は上を向き、遠く彼方を見つめる目……少しはサマになる。すかさずレフ板の位置が変わって、カメラが切り替わる。ちょっと説明。これは、ちゃんとしたテレビの撮影なんだ。『春の足音』のね……って、別にわたしが主役になったわけじゃない。プロデューサー...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・103『素顔のキャストとスタッフ』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・005『1970年のこんにちは』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記005『1970年のこんにちは』ガックン……ガックン……ガックン、もひとつオマケにガックン。ガックンを数回やって電車は宮之森駅についた。運転手がヘタッピーなのか、電車がポンコツなのか、はたまた、その両方なのか、ガックンガックンしながら停車した。二回目の停車なので慣れたって言えば慣れたけど、ちょっと不愉快。微妙に足を突っ張ってショックをいなす。ほかの乗客は平気な顔してるから、まあ、1970年代の電車って、みんなこうなんだろうね。降りた宮之森駅は、やっぱり平場の駅。電車を降りて、すぐに改札が見えるって、なんだか田舎っぽい。改札の駅員は、やっぱ不愛想で「ご乗車ありがとうございました」の一言もない。ちょっと(ꐦ°᷄д°᷅)!ビク(◎o◎)!駅員が呼び止めた……と思ったら、後ろ...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・005『1970年のこんにちは』

  • RE・乃木坂学院高校演劇部物語・102『二つのサプライズ』

    RE.乃木坂学院高校演劇部物語102『二つのサプライズ』それは、ラストシーンの撮影が終わった直後におこった。監督さんがOKを出したあと、ディレクターとおぼしき(あとでNOZOMIプロの白羽さんだって分かる)人が、ADさんに軽くうなづく。ドドーンバサリロケバスの上から花火があがって、カメラ載っけたクレーンから垂れ幕!――『春の足音』ロケ開始!主演坂東はるか!――「え、ええ……ちょっと、これってCMのロケじゃないんですか!?」驚きと、喜びのあまり、はるかちゃんはその場に泣き崩れてしまった。「おどかしちゃって申し訳ない。むろんCMのロケだよ。でもカメラテストも兼ねていんだ。僕はせっかちでね、早くはるかちゃんのことを出したくって、スポンサーの了解を得て、CMそのものがドラマの冒頭になるようにしてもらったんだ。監督...RE・乃木坂学院高校演劇部物語・102『二つのサプライズ』

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