勇者乙の天路歴程011『視界が開けると糺の森に似て』森の出現に歩みを止めると、視界が開けてきた。駅からこっち、見えているのは幼稚園の園庭ほどでしかなく、その周囲は霞が立ち込めたように煙っていた。それが……目の前に森が出現すると、俄かに開けて視界が東京ドームほどに広がった。草原の左側には川が流れて、前方でYの字に分かれ、森はそのYの字に挟まれて奥に続いている様子だが霞に紛れてはっきりしない。Yの字によって三分割された地面は橋によって結ばれて往来は自由のようだ。Yの字の縦棒を跨ぐ橋に行って森を見晴るかすと既視感がある。「糺の森に似ています」ビクニの言葉で既視感はデジャブではなく記憶として蘇ってきた。子どもの頃は親父に連れられて、高校生の頃は友だちといっしょに、学校を出てからも友人たちと、職に着いてからは生徒を...勇者乙の天路歴程011『視界が開けると糺の森に似て』