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2015/01/11

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  • せやさかい・274『送辞と声優と』

    せやさかい・273『送辞と声優と』頼子声優というのは化け物だと思う。オタクというほどではないけど、けっこうアニメは観るほう。ハマったのは、寝付けないまま深夜に観るようになったからなんだけど。寝られるようになってからも、そのグレードの高さから観続けるようになった。え、この声も○○さん!?そういう騙されたのが分かった瞬間の『してやられた感』が好き。してやるのが好きなわたしは、こういう時のゾクゾク感がたまらない。わたしも、こういうの出来たらいいなアと思いつつ、意外な『同じ声優』を発見して喜んでいた。古いところじゃ、ミッキーマウスの声がウォルトディズニー、その人だったとか。『けいおん』のあずにゃんが『オレイモ』の桐乃と同じ声優さん。「そんなの、いっぱつで分かるでしょ!?」と、お友だちモードの時のソフィアにはバカにされた...せやさかい・274『送辞と声優と』

  • 明神男坂のぼりたい・58〔二日遅れのお誕生会〕

    明神男坂のぼりたい58〔二日遅れのお誕生会〕今日は、あたしのの17歳のお誕生会。ほんとうの誕生日は二日前だったけど、平日だったので、今日やることになった。伯母ちゃんとおいちゃんも来てくれる毎年恒例の行事。なんせ、あたしは鈴木家にとっても、お母さんの実家である北山家にとっても、たった一人の孫。それも、お父さん43、お母さん41のときの子で両家のジジババの喜びもひとしおだったとか。なんせ、一歳のころからの行事だから、当たり前に思ってるけど、これにはあたしへの大きな期待がある。それも無意識だから、心に重い。分かる?あたしは、四人。場合によっては五人の年寄りの面倒をみる、又は後始末をしなくちゃならない。お祖母ちゃん、お父さん、お母さん、伯母ちゃん、おいちゃんの五人。お父さんの方のお祖父ちゃんお祖母ちゃんは三年前と去年に...明神男坂のぼりたい・58〔二日遅れのお誕生会〕

  • 銀河太平記・091『パチパチ大改修』

    銀河太平記・091『パチパチ大改修』加藤恵パチパチたちのボディーは1・5倍のサイズになった。身長140センチの中学生程度。元のオートマ体のサイズでは、銀行のさまざまな機器を扱うには小さすぎるのだ。機器の方をパチパチに合わせることもできないではないが、それでは、一般の汎用品が使えず不経済な上に、将来の機能拡張を考えると、パチパチの方をスケールアップしたほうが合理的だ。それに、窓口業務をやらせると、元のオートマ体では、カウンターの上に頭が出てこず、なんとも頼りない。完全な新造体を作るのが一番なんだけど、社長が、こう言う。「できるだけ、元のパーツを活かしてやってくれるかなあ……そう、子どもが成長するみたいに、パーツが成長するように、太く大きくなるみたいな感じで」「分かったわ」多少は面白いと思って取り組んでみた。子ども...銀河太平記・091『パチパチ大改修』

  • 明神男坂のぼりたい・57〔フラレてしまった!!〕

    明神男坂のぼりたい57〔フラレてしまった!!〕フラレてしまった!!と、騒ぎ立てるのは早いかと思うけど。感覚的には、まさにフラレた(;゚Д゚)。ちなみに、あたしは今日で17歳になる。平成17年5月2日、金曜日、午後3:05に、あたしは石神井の病院で呱々の声(産声を格好良う言うと、こないなる)をあげた。なんで、こんなに詳しく生まれた曜日やら時間を知ってるかというと、頭がいいから……ではなく、折に触れてお父さんが言うから。この日は、6時間目体育館で学年集会をやっていて、それが3:05分に終わって、教室で終礼しなくちゃならないから、トロトロ歩いてる生徒に「早く出ろ、はやく出て教室戻れ!」て怒鳴っていたから。なんせ、終礼を早やくしないと掃除当番がフケてさっさと帰ってしまう。で……「早く出ろ!」と叫んでる時に、あたしはお母...明神男坂のぼりたい・57〔フラレてしまった!!〕

  • 鳴かぬなら 信長転生記 56『女たちを送る』

    鳴かぬなら信長転生記56『女たちを送る』信長女に生まれてきてよかったと思うぞ。俺の事ではない、市のことだ。横を歩いていてさえ感じる殺気。視野の端で捉えると、一見力が抜けているように見えるが、これは、目についたものを切り殺すための準備姿勢だ。「目に入った者は殺す」と触れているようなものだ。これでは数丁先の敵でも太刀を抜いて矢をつがえるぞ。「シイ(市の偽名)、もう、ここらで女たちは解放しよう」「なぜ?」「見れば、関門は、まだ開いている様子。街に入れば、女たちも自分で戻るだろう」「家まで送り届ける」「え、あ……」「わたしどもは」女たちも、市の危うさが分かるのだろう、うんとは言わない。「遠慮はするな、見届けなければ、わたしも落ち着かない」「「「は、はあ」」」「待て、シイ」「ん?」パシーーーン!!思い切り張り倒した。ヒ!...鳴かぬなら信長転生記56『女たちを送る』

  • 明神男坂のぼりたい・56〔初めてのアマゾン!〕

    明神男坂のぼりたい56〔初めてのアマゾン!〕話は前後する。月曜は、横浜の異人館街の遠足だったけど、その前の日曜は、しゃくばあ(石神井のお祖母ちゃん)の全快祝いに行ってきた。以前、佐渡君のとこらへんで書いたけど、しゃくばあは左の腕を骨折して一カ月半も入院していた。単純な骨折だから、普通半月もあったら退院できるんだけど、しゃくばあは骨粗鬆症のうえに足腰弱ってるので、一カ月余分にかかちゃった。それが、やっと退院して快気祝い……といっても、家で盛大にやるわけではない。商店街のN寿司に行って、伯母ちゃん夫婦とうちの家族三人で、お寿司を食べるんだ。石神井の家から歩いても10分ほどなんだけど、お祖母ちゃんは家からおじさんの車に乗せてもらってやってくる。うちら神田組は、寿司屋の前で順番取り。11時45分開店なんだけど、もう10...明神男坂のぼりたい・56〔初めてのアマゾン!〕

  • 魔法少女マヂカ・256『トキワ荘』

    魔法少女マヂカ・256『トキワ荘』語り手:マヂカやっぱりトキワ荘や。え?トキワ荘?どこに?ええ?ノンコの呟きには戸惑うような声しか返ってこない。「霞がかかったようで、よく見えませんね」用心のために、パッカードもフォードもブレーキがかかった。「松本、前照灯を点けてみろー!」フォード窓を開けて高坂侯爵が声をあげる。ピカ!ライトを点けて音がするわけはないんだけど、なんとか状況を把握したいという気持ちが、そう感じさせる。「屋並みが見えます」ハンドルにもたれかかる様にして松本運転手。パッカードでもフォードでも息を飲む気配がする。靄の中に屋並みのシルエットが浮かぶんだけど、影絵のように重なって、個々の家を判別することができない。「あれ、ほら、あの屋根の重なり具合はトキワ荘やし!」誰も分からないのに業を煮やして、ノンコが車を...魔法少女マヂカ・256『トキワ荘』

  • 明神男坂のぼりたい・55〔ガンダム式遠足〕

    明神男坂のぼりたい55〔ガンダム式遠足〕学校の連休はカレンダー通り。だから、今日みたいな日曜と昭和の日の間の月曜も学校がある。こんなのテンション下がって勉強にならない。学年の始めは思ったけど。今日は遠足……もとい、校外学習。一年の時はバスを連ねて奥多摩で飯ごう炊さんだった。あれはダルイ。240人でやってもおもしろくない。ああいうのは気の合ったもの同士で個人的にやるから面白い。しかし、たいていの学校は集団行動訓練ということで、昔の軍隊みたいなことを平気でやらせる。民主教育はどこに行ったんだ!ちょっと屁理屈。屁理屈言ってみたくなるくらいにつまらない。作るものは、最初からカレーライスと決まっていて、材料も炊飯用具もみんな貸してもらえる。これって手間かからないようで邪魔くさい。今はレトルトでいいのが、いくらでもある。ご...明神男坂のぼりたい・55〔ガンダム式遠足〕

  • 明神男坂のぼりたい・54〔ミスドの誓い団子の迷い〕

    明神男坂のぼりたい54〔ミスドの誓い団子の迷い〕連休初日、図書館に行った。千代田区の図書館は三つあるんだけども、それとは別にまちかど図書館というのがある。学校の図書館と併設になっていて、規模は小さいんだけど利用しやすい。蔵書になくっても、他の大きい図書館から取り寄せてもらえるので、子どものころから利用している。この連休は、特別に出かける予定もなかったから、図書館で本を借りることにしたんだ。ま、タダで借りられるし、なんか飛び込みで予定入ったら、それはそれ。で、思いもしなかったものに遭遇してしまった。本ではなくて。田辺美保……あたしの恋敵。気がついたのは向こうの方から。「あ、明日香じゃん」新刊書のコーナー見ていたら、声がかかった。美保先輩は、美人でスタイルもよくってファッションの感覚も良くって、セミロングの髪をフワ...明神男坂のぼりたい・54〔ミスドの誓い団子の迷い〕

  • やくもあやかし物語・121『アキバ子』

    やくもあやかし物語・121『アキバ子』こっちこっちこっちメイド将軍に阻まれ、途方に暮れていると、どこからともなく呼ぶ声がする。「やくもさま、足もとです」赤メイドが、口も動かさずに呟く。「足もと?」わたしも、口を動かさずに聞いてみる。「マンホールです」「「足もとの」」アカ・アオの声が揃って、ソロっとマンホールを視野の端っこに捉える。「あ、わたしみたいなのが居る!?」ポケットから首だけ出した御息所が小さく驚く。マンホールの蓋が少しズレていて、御息所と同じくらいの女の子が口の形で『こっちこっち』と言っている。え、マンホールの中?——はい、マンホールです――「これは、裏アキバからのお誘いのようです」「ラッキーです。裏アキバは、まだお味方のようです」アカクロメイドは、そう決めつけると、カゴをマンホールの上に据えて「「お乗...やくもあやかし物語・121『アキバ子』

  • 明神男坂のぼりたい・53〔ラッキーAMY!〕

    明神男坂のぼりたい53〔ラッキーAMY!〕今日はガンダム(岩田武先生)の気まぐれで席替えをやった。四月もこの時期になると、年度初めのルーチンは、たいがい終わってしまってる。だけど、木曜は定例のロングホ-ムルーム。ただボサーっとしてるワケにはいかないんだ。「本当は中間テストまでは出席番号順だけど、もう二年生だし、適当に慣れてきただろうから、席替えするか?」ウワアアアア(((^O^)))!みんなから歓声があがった。クラスというのは、それ自体あんまりおもしろいことはない。授業やら学校行事の便宜のために分けられてるのは、小中高と八年目になったら、よく分かる。お仲間の基本は、自然にできた仲良しグループだよ。だいたいクラスの中でできるけど、たまにクラスを超えてグループになることもある。そして、90%以上は男女別。いくら男女...明神男坂のぼりたい・53〔ラッキーAMY!〕

  • 明神男坂のぼりたい・52〔喜べ、明日香の気持ちは確実に伝わったぞ〕

    明神男坂のぼりたい52〔喜べ、明日香の気持ちは確実に伝わったぞ〕――僕も、明日香のことは好きだ――ドッキン!それが、まず目に飛び込んできて、思わずお手玉になってスマホを落っことす。パサベッドの上なので、スマホは無事なんだけど、明日香の心は無事じゃない。ドキドキドキドキドキドキドキドキあたしの中に勝手に住み込んだ、山川の詳説日本史でもたった一回しか出てこない将門さまの娘が、あたしの関根先輩への煮え切らない思いに業を煮やした。そして、こないだ神田川のテラスで、あたしに「好き」って告白させた。それでも、それ以上なにもできないあたしにに苛立ったのか、意地悪か、善意か、よく分からないけど、あたしが寝ているうちに先輩の番号調べて、あたしの声で電話した。で、その返事がメールで返ってきた。心を落ち着けて続きを読んだ。――保育所...明神男坂のぼりたい・52〔喜べ、明日香の気持ちは確実に伝わったぞ〕

  • せやさかい・273『出願』

    せやさかい・273『出願』さくらガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン昨日までの寒さが、ちょびっとだけ緩んだ昼下がり、あたしは大和川を超えてるとこ。いつやったか、言うたよね。堺の中学生が大和川を超えるのは、ちょっとだけ特別なことやて。ミナミに遊びに行くか(ミナミは堺からは北やねんけど、こういう場合でも『ミナミに行く』という)、親類の用事とか、部活の遠征とか。まあ、年に数回しかないやろという特別なことのため。国語やったか社会やったかで習った『ハレの日のハレの行い』なんですわ。で、今日は、一生に何回もないハレ中のハレ!入学試験の願書を、留美ちゃんと二人、聖真理愛(せいまりあ)学院に持っていくとこデス!「あ、それってソフィアの!?」「あ、せやね。ソフィアが『デス』って付けるのんて、こんな感じやってんやろねえ...せやさかい・273『出願』

  • 明神男坂のぼりたい・51〔てーへんだ!〕

    明神男坂のぼりたい51〔てーへんだ!〕好きなフレーズに『てーへんだ!』がある。しゃくばあ(石神井のお祖母ちゃん)が時代劇が好きで、行くと、たいてい『銭形平次』とか『暴れん坊将軍』とかを観ていた。『銭形平次』だったと思うんだけど、手下の岡っ引きが「てーへんだ親分!」とやってくる。あれが好きだった。真似すると、みんな「明日香はひょうきんだねえ(^▽^)」と喜んでくれたしね。今日は、公式と非公式の「てーへんだ!」があった。高校二年にもなると、世間の手前「てーへんだ!」と言わなくちゃならないことと、心では、そう思っていも口に出して「てーへんだ!」と言ってはいけないことの区別ぐらいはつく。それが、一日に二つとも起こってしまった。珍しい一日だ。世間の手前は、新しい校長先生が来たこと。世間には、一回聞いたら忘れられない名前が...明神男坂のぼりたい・51〔てーへんだ!〕

  • 銀河太平記・090『西ノ島銀行ですか?』

    銀河太平記・090『西ノ島銀行ですか?』加藤恵『『『買った方が早い』』』人が言うのならともかく、本人たちが言うのは困った。パチパチたちのオーバーホールをやっているんだけども、あちこちガタが来ていて、本格的な修理をするとなると、けっこうな出費になる。『西ノ島は豊かになったんだから、新型のを買って、作業効率をあげるべきだよ』『さよう、オマツの新型は作業速度も積載量も五割り増しでござる』『ニツビシは、五体までに分裂して局所的な作業でもロスが無いアルよ。パチパチは、どう変態しても、一つの作業機械にしか変態でき無いアル』『来月のバージョンアップでは、作業体同士の結合も可能になって、より大きな作業機械にもなれるようだし』『『『ここは買い替えるべきだ』』』またも声が揃った。トントン言い返そうと思ったらラボのドカがノックされる...銀河太平記・090『西ノ島銀行ですか?』

  • 明神男坂のぼりたい・50〔お祖母ちゃんをカバンに入れて〕

    明神男坂のぼりたい50〔お祖母ちゃんをカバンに入れて〕お祖母ちゃんをカバンに入れて多摩の山中に出かけた……。と言っても、お祖母ちゃんを絞め殺して、山の中に捨てにいったワケではない(^_^;)。だれでもそうだけど、あたしには二人のお祖母ちゃんが居る。お母さんのお母さんと、お父さんのお母さん。お母さんのお母さんの方は、石神井で、足腰不自由しながらも健在。カバンの中に入ってるのは、お父さんのお母さん。つまり父方の祖母。このお祖母ちゃんは、去年の7月に、あと10日ほどで88になるところで亡くなった。そのお祖母ちゃんの遺骨が、あたしのカバンの中に入っている。うちのお墓は、多摩にあるロッカー式のお墓。3年前にお祖父ちゃんが亡くなったときに初めて行った。お祖父ちゃんの骨壺はレギュラーサイズだったけど、三段に分けた棚には収まら...明神男坂のぼりたい・50〔お祖母ちゃんをカバンに入れて〕

  • 鳴かぬなら 信長転生記 55『狩り』

    鳴かぬなら信長転生記55『狩り』信長市の袖を掴んで薮に隠れる。悲鳴から、おおよそのところは分かっている。戦を前にした兵どもが女を追いかけまわしているのだ。それも、先ぶれを出して道を封鎖して。部隊規模での女狩りだ。戦の前後にはありがちなことで、織田軍ではきびしく取り締まっていた。取り締まらなければ民の信用を失う。だから、一流の戦国大名は、この種の乱暴狼藉には厳しい。違反者は、その場で切り捨てた。「ねえ、助けよう」「めんどうなことになる」「だって、ニイ(三国志での偽名)は切り捨てたじゃない、こういうの」「俺たちは、諜報のために来ているんだ。無用の争いは避ける」「あたし……放っておけないから」「市!」止める間もなく市は薮を飛び出す。「仕方のない奴!」飛び出したからには、全力で闘う。戦うからには勝たなければならない。横...鳴かぬなら信長転生記55『狩り』

  • 明神男坂のぼりたい・49〔ちょっとシビア〕

    明神男坂のぼりたい49〔ちょっとシビア〕「おーい、明日香の学校、校長クビになったぞ!」お父さんのシビアな声で目が覚めた。パジャマ代わりのジャージで二階に下りると、お父さんが新聞を広げている。「この校長さん、たいがいだなあ……」――またも民間人校長の不祥事!――見出しが三面で踊っていた。読んでみると、人事差別と人事権の恣意的な乱用。事故死した生徒・保護者への心ない対応。そんな副題のあとに、実名は伏せながら、関係者が読んだら、事細かに分かるようなことが書いてあった。再任用教諭の理由無き任用停止。元教諭、校長を提訴。あ、これは光元先生のことだ。始業式で、光元先生は一身上の都合で退職したと聞いた。光元先生は、TGH高校の前身都立瓦町高校の時代からの先生。学校の生き字引みたいな先生で、卒業生やら保護者からの信任の厚い先生...明神男坂のぼりたい・49〔ちょっとシビア〕

  • 魔法少女マヂカ・255『豊島郡長崎』

    魔法少女マヂカ・255『豊島郡長崎』語り手:マヂカズシまるで、自動車そのものが気が付いたように停車した。むろん、自動車に意思があるわけではない。高坂家お抱え運転手の松本さんが、急ブレーキを踏んだのだ。松本さんは、高坂家の車であればパッカードもフォードも、江戸時代から使っている大八車でも、まるで自分の手足のように操れる。だから、急ブレーキを踏んでも、どこか柔らかい。キキー、ガックン!それに引き換え、後ろから付いてきた淀橋警察署のフォードは、つんのめるように急停車した。「どうかしましたか?」警察のフォードから箕作巡査がまろび出て、パッカードの窓ガラスを叩いた。「長崎の、どこへ行けばいいんでしょう?」「え、分からずに走ってきたんですか?」パッカードに乗っているみんなが「あ、そう言えば!」という顔になって互いを見かわし...魔法少女マヂカ・255『豊島郡長崎』

  • 明神男坂のぼりたい・48〔ガンダムの怒り〕

    明神男坂のぼりたい48〔ガンダムの怒り〕新学年の始まりにはいろいろある。一年のときに書いた健康調査とか住所・電話とか、変更があってもなくても、全員に配られる書類。たいていの者は変更がないから、新しいクラスと出席番号。あと、簡単な健康上のアンケートをチェックしておしまい。一年のとき、佐渡君が、この健康アンケートのとこに「ビタミン不足」と書いたのを思い出した。一応健康問題なので、佐渡君は、保健室に呼び出されて詳しく聞かれた。「佐渡君、君は、なにのビタミンが足りないのかな?」保健室の先生に聞かれて、佐渡君は、こう答えた。「はい、ビタミンIです……」頭の回転の鈍い藤田先生(一年のときの担任)は「ビタミンIって……?」やったけど、保健の先生はすぐに分かった。「アハハ、佐渡くんは、オチャメな子ねえ(^▽^)」Iは愛にひっか...明神男坂のぼりたい・48〔ガンダムの怒り〕

  • やくもあやかし物語・120『アキバ封鎖!?』

    やくもあやかし物語・120『アキバ封鎖!?』エッサホッサエッサホッサラムレムメイドさんにかごを担いでもらって東に向かう。――あ、アキバ!――神田明神下の交差点まで出てくると、東の方にアキバのビルやらお店がエメラルドの都のように輝いているのが見える。わたしってば、オズの魔法使いのドロシーみたくドキドキしてる。いよいよ来たんだ!思わず、少女漫画の主人公みたいに胸に手を当ててしまう。「ちょ、苦しい」「あ、ごめん」ポケットに収まっている御息所を押えてしまっていた(^_^;)「あれ、なんで停まってるんだろ?」信号が青になったのに、ラムレムメイドさんはカゴを進めようとしない。「申し訳ありません」「通行止めです」「え?」「『霊道工事中』なので」「迂回しなければなりません」わたしには、見えない。普通に行けば、中央通からアキバの...やくもあやかし物語・120『アキバ封鎖!?』

  • 明神男坂のぼりたい・47〔新学年の始業式〕

    明神男坂のぼりたい47〔新学年の始業式〕ゲ、ガンダム!!同じような声が、あたしの列からわき起こった。今日は一学期の始業式。朝、学校に行くと昇降口のガラス戸に新しいクラス表が貼りだしてあった。一年で同じクラスだった子が五人いるけど、あまり付き合いのない子らなので、特に感慨はない。ただ学年一のイケメンとモテカワが居るのが気になったぐらい。ま、その話はあとにして、始業式での担任発表。あたしらは、3組なので三番目の発表。ガンダムが前に立っているのは不思議ではない。生活指導部長なので、全校集会ではいつも前でにらみをきかしてる。「三組担任、岩田武先生」司会の先生が言ったとたんに、「ゲ、ガンダム!!」になってしまった。「三組を鍛え上げることは、もちろん。二年生をTGHで最高の学年に鍛え上げてやるから、そのつもりでいろ」それだ...明神男坂のぼりたい・47〔新学年の始業式〕

  • せやさかい・272『恋するマネキン』

    チャンス!思わずガッツポーズすることってあるわよね。食堂のランチがあと三個で、並んでるのが二人だったり。ジュースの空きパック投げたら、ゴミ箱にストライクだったり。苦手な授業で、先生が前から当てていって、次はわたしの番というところでチャイムが鳴った時とかさ。そういうガッツポーズを思わずしてしまった。下足室でローファーに履き替えようと思ったら、ソフィアがまだ来てない。ソフィアは、クラスメートだけども、わたしのガードでもある。だから、部活も剣道部を諦めて、同じ散策部に入ってくれていたりする。不自然な形にならないようにしながら、学校の中でもガードしてくれている。学校の中では、目立つようなガードはしない。ただでも、二人とも外国人(わたしは二重国籍だけど)。ブロンドとプラチナシルバーの髪だから、制服を着ていても目立つ。わた...せやさかい・272『恋するマネキン』

  • 明神男坂のぼりたい・46〔天ぷら〕

    明神男坂のぼりたい46〔天ぷら〕気がついたら電話していた。誰にって……関根先輩に。「明日、10時に外堀通りのテラスに来て……訳は、来れば分かります」この言葉も、あたしの意志とは無関係に出てきた。『無関係ではない。明日香の心の底にあるものをちょっと後押ししただけだ』と、さつきは心の中でニヤニヤしている。我ながら、変なものをを住まわせたものだ。リビングで『天晴れレストラン』見ていたら、石神井朝市の野菜を使った料理をやっていた。『おお、あれはなんというのじゃ?あの油の中でパチパチいってるのは?』「天ぷらだよ」『てんぷら?妙な名前の料理だな……どんな味がする!?』「えと……江戸前の天ぷらだから、これは、石神井の朝市の野菜が中心だけど、白キス、穴子、車海老とかに小麦粉を溶いたのを付けて、180度くらいのごま油で揚げて……...明神男坂のぼりたい・46〔天ぷら〕

  • 銀河太平記・089『西ノ島は順調』

    銀河太平記・089『西ノ島は順調』加藤恵それからの西ノ島は順調だ。A鉱区は落盤事故の後、ナバホ村とフートンの協力もあって、順調に開発が進んだ。単に採掘量が増えただけではなく、純度の高いパルスガ鉱がまとまって出てくるようになって、島の収入は目に見えて増えてきた。「これはいただけないよ」「うちも受け取れねえ」「受け取ってもらえなきゃ困るんです」押し問答が続いている。昼ご飯の終わった食堂に、島の三人の代表と、手すきの社員や村民、同志たちが集まって議論している。ヒムロ社長は、A鉱区で採れたパルスガ鉱石の売り上げを三つの集団で分けようというのだ。「カンパニーで採れたものだから、売り上げは、当然カンパニーのものだぜ」「そうだよ、フートンも村も手伝ったけど、その分は先月までに十分頂いている。今月分の売り上げはカンパニーのもの...銀河太平記・089『西ノ島は順調』

  • 明神男坂のぼりたい・45〔御茶ノ水幻想・4〕

    明神男坂のぼりたい45〔御茶ノ水幻想・4〕「ただいまあ」「おかえり……」めずらしい、お父さんが二階のリビングに居る。と、思ったら、もうお昼。「明日香。生協来たとこだから、パスタの新製品あるよ」「あ、食べる!」あたしは、自分の意志じゃないのに応えてしまった。どうやらさつきがお腹を空かしているらしい。レンジでチンして、和風キノコバターとペペロンチーネを二つも食べてしまう。「ああ!メチャクチャおいしい!」「明日香が、そんなに美味しそうに食べるのん久々だなあ」「ああ、育ち盛りだから。アハハ(^_^;)」まさか、自分の中でさつきが美味しがってるとは言えない。「ごちそうさま!」自分の部屋に戻ってから、どうしょうかと思った。「さつき、ずっと、こうしてあたしの中に居る気?」『仕方ないでしょ。どうやら、この時代では、明日香の中か...明神男坂のぼりたい・45〔御茶ノ水幻想・4〕

  • 鳴かぬなら 信長転生記 54『宿が無い』

    鳴かぬなら信長転生記54『宿が無い』信長予想を超えていた。酉盃の旅館街で二軒宿を当ってみたのだが、二軒とも満室で断られたのだ。「なんで、酉盃の宿まで満杯なのよ!」「予想より曹軍の規模が大きい」「なんで!?」市のいらだちも分からないではない。昼間調べた限りでは曹軍は三個軍団。一個軍団は定員一万が常識だ。豊盃も、それを基本に作られた三国志南部の主邑で、額面通りの三個軍団ならば、佐官以上の将校全てを収容しても、わずかに余裕がある。それが、西隣の酉盃の宿まで一杯にしているのだから、丸々一個軍団は多いということになるだろう。「形の上では三個軍団を装って、その上で部隊の定員を増やしているんだろう。おそらくは、予備軍の扱い。扶桑との戦いが佳境に入った段階で、予想を超える予備軍を投入して、一気に勝ちを収める腹だ」「で、宿はどう...鳴かぬなら信長転生記54『宿が無い』

  • 明神男坂のぼりたい・44〔御茶ノ水幻想・3〕

    明神男坂のぼりたい44〔御茶ノ水幻想・3〕将門……って、明神さまの?「神田明神は、大黒、少彦名、と、この儂、平将門三人の共同経営だ」「え?」「すまん、思い浮かべただけで、明日香の考えは分かってしまう。ここからは、人同士の会話ということにしよう」「え、あ、はあ……」「五歳の時に越してきて以来、明日香の事は、よく知っておる」「えと、越してきたのは四歳なんですけど」あ、チェック細かすぎた(;'∀')?「つい、数え年で言ってしまった。生身の人間と喋るのは何十年もやっておらぬのでな。許せ」「あ、いや、そんな(^_^;)」思わず両手をパーにしてワタワタと振ってしまう。「神田明神と称してしまうと、共同経営の大黒、少彦名まで、含んでしまうのでな。最初に明らかにしておく。平将門として話をしておる。ここまでは、よいか?」「あ、はい...明神男坂のぼりたい・44〔御茶ノ水幻想・3〕

  • RE滅鬼の刃・24『』

    RE滅鬼の刃エッセーノベル24・『だいじょうぶかな』元日の新聞を読んでいないのはわかってました。読んだ新聞を丁寧にたたむお爺ちゃんですが、折り方……というか広告の戻し方に特徴があります。広告の折り目と本紙の折り目を逆にするんです。たぶん、折り目を同じにしていると、一か月も重ねると折り目が重なったところが分厚くなりすぎるから。ただの習慣かもしれませんが。他にもあるんですが、内緒です。まあ、そんなで、読んでないことは知っていました。でも、読んだつもりになっていたら……と思うと言えませんでした。だからね、「出すのは、お祖父ちゃんやってよね」と念を押しました。もし、出すのも忘れるようだったら……ちょっと、あぶないじゃないですか(^_^;)まあ、ちゃんと出してくれていたので、一安心。お祖父ちゃん、このごろ人相が悪くなりま...RE滅鬼の刃・24『』

  • 魔法少女マヂカ・254『田中執事長の閃き』

    魔法少女マヂカ・254『田中執事長の閃き』語り手:マヂカ鉄道では行くだけで二日かかる。最高時速なら鉄道よりは速いが、道路が未整備な大正時代では、車でも三日、どうかすると四日。可能性としては飛行機。だが、まだ民間航空は成立していない。ちょっと無理をして、創設間もない軍の飛行機なら、あるいは……しかし、侯爵のツテを頼っても、軍の飛行機を使うのは難しい。調べてみると、長崎には、まだ飛行場そのものが無い。「どないすんのん?」ノンコが泣きそうな顔で聞いてくる。魔法少女のわたしでも、窓辺で爪を噛むしかないのだ。準魔法少女のノンコは涙をためてオロオロするしかない。霧子は、ソファーで仰向けになって、腕を組んで天井ばかり見ている。「凌雲閣のドアはどうかしら……」自信のない声で呟くように言う。「だめでしょ、あれをは、時間を遡れるけ...魔法少女マヂカ・254『田中執事長の閃き』

  • 明神男坂のぼりたい・43〔御茶ノ水幻想・2〕

    明神男坂のぼりたい43〔御茶ノ水幻想・2〕「じ、地元の者です!」叫ぶと、どう見ても大河ドラマの第一回目に出てくる脇役みたいな(のっけに主役出てこない)オッサンが、刀かまえたまま聞いてくる。「……地元とはどこだ!?」「えと、外神田二丁目、神田明神の男坂下ったとこです」「神田明神ならば、いかにも地元ではあるが……それにしても、異様なる風体……」オッサンが刀を抜いて尋問してるもんだから、人だかりができてしまう。「面妖なやつ……」「女か……?」「何ごと?」「きつねか?」「タヌキか?」「どん兵衛か?」「板橋さま、そやつは?」野次馬の一人がオッサンに尋ねる。オッサンは板橋というらしい。「これこれ、見世物ではないぞ。仕方がない、付いてまいれ」よかった、さらし者になるところだった。「それ!」「うわ!?」板橋のオッサンは、わたし...明神男坂のぼりたい・43〔御茶ノ水幻想・2〕

  • 明神男坂のぼりたい・42〔御茶ノ水幻想・1〕

    明神男坂のぼりたい42〔御茶ノ水幻想・1〕箱根から帰ってからはボンヤリしてる。なんせ、明菜のお父さんの殺人容疑を晴らして、離婚旅行だったのを家族再結束旅行にしたんだからね。あたしとしては、十年分のナケナシの運と正義感を使い果たしたようなもの。十六の女子高生には手に余る。ボンヤリしても仕方ないと思う。しかし、三月も末。そろそろ新学年の準備というか、心構えをしなくっちゃ。中学でも高校でも二年生と言うのは不安定でありながら一番ダレる学年。お父さんの教え子の話聞いてもそうだ。少しは気合い入れなきゃ。そう思って、教科書の整理にかかった。国・数・英の三教科と、将来受験科目になるかもしれない社会、それに国語便覧などは残して、あとはヒモで括って捨てる。そして、空いた場所に新二年の教科書を入れる。二十四日に教科書買って、そのまん...明神男坂のぼりたい・42〔御茶ノ水幻想・1〕

  • 滅鬼の刃・23『元日の新聞』

    滅鬼の刃エッセーノベル23・『元日の新聞』明日は読もう……と思って二週間が過ぎました。気が付くと孫が、ヨイショっと掛け声をかけています。なんの掛け声かというと、明日の朝に出す一か月分の古新聞を玄関先に出す掛け声です。年末年始を挟んだので、いつもよりも重たいので、つい掛け声が出てしまうのでしょう。いまさら「読んでないから」とは言えません、元日の新聞。元日の新聞というのは、清々しいのですが、その分厚さに「まあ、昼から読むか」になって、「明日読もう」「明日は読もう」「明日こそ読もう」と思い続けて二週間が経ってしまったわけです。新聞は、物心ついたころから見ていました。親父が読んでいる横から眺めて、字は読めませんでしたが、なんとなく見ては、親父の「へー」とか「ホー」とか感心するのを真似していました。真似をすると、お親父も...滅鬼の刃・23『元日の新聞』

  • やくもあやかし物語・119『将門の病室・2』

    やくもあやかし物語・119『将門の病室・2』あ……ありがとうございます……意識の戻った滝夜叉姫は、苦しい息を整えながら、まずはお礼を言った。「お察しの事と思いますが、あの蛇は神田川の主でございます。かねてから、父に成り代わって、関八州を支配しようと……そのために、父将門を亡き者にしようと……警戒はしていたのですが、父の看病中、つい居眠りしてしまった隙に入れ替わられたようです」「おそらく、滝夜叉さんが、ふと見てしまった夢を突破口にしたんでしょう」御息所が言うと、説得力があるよ(^_^;)「それからは、体内の蛇が次々に病魔を取り込んで、父を、このように……申し訳ありません、父上、滝夜叉が不甲斐ないばかりに……」「いやいや、千年の月日がたって、儂自身の力も衰えてきている。滝夜叉が悪いわけではない」あまりのことに言葉も...やくもあやかし物語・119『将門の病室・2』

  • 明神男坂のぼりたい・41〔離婚旅行随伴記・6〕

    明神男坂のぼりたい41〔離婚旅行随伴記・6〕パーーーーーーーンえまた銃声?旅行になんか、めったにいかないので、いっぺんに目が覚めてしまった。殺人事件やら、明菜のお父さんが逮捕されたりで、興奮していたこともある。明菜は、寝床に入っても悶々としていたが、明け方にようやく寝息を立ててグッスリ寝ている。やっぱり、あたしは野次馬だ。顔も洗わずにGパンとフリースに着替えて、音のした方へ行ってみた。パーーーーーーーン旅館の玄関を出ると、また鉄砲の音がした。「やあ、すんません。起こしてしまいましたか」旅館の駐車場で、番頭さんらが煙突みたいなものを立てて鉄砲の音をさせている。「いえ、旅慣れてないから、早く目が覚めて……何してるんですか?」「カラス追ってるんです。ゴミはキチンと管理してるんですが、やっぱり観光客の人たちが捨てていか...明神男坂のぼりたい・41〔離婚旅行随伴記・6〕

  • せやさかい・271『スイヘーリーベー』

    せやさかい・271『スイヘーリーベー』さくらスイヘーリーベーボクノフネナモアルシップスクール……「また間違った」「え、そうなん?」「ナモアルじゃなくてナマガルだよ」「七曲がる?」「う……ま、いいか。NaMgAlSiPだから」「えと……」「ナトリウムマグネシウムアルミニウムケイ素リンだから」「アハハアルミニウムまではなんとなくなんやけど、Siがケイ素とかPがリンとかは……」「そこが分かってないと、いくら語呂合わせ憶えても意味ないよ」「あははは……」一年の時に憶えた周期律表が間違っていたのが、今日の理科の授業で分かってしまった。それで、帰り道、留美ちゃんに付き合ってもらって憶え直しているところ。あたしはね、こういう風に憶えてた。『水兵リーベー僕のふね名もあるシップスクール』ほんとは(ここでメモを見る)『水兵リーベー...せやさかい・271『スイヘーリーベー』

  • 明神男坂のぼりたい・40〔離婚旅行随伴記・5〕

    明神男坂のぼりたい40〔離婚旅行随伴記・5〕明菜のお父さんが逮捕されてしまった!逮捕理由は、お父さんが杉下さんいう効果係の人といっしょになって、拳銃殺人のドッキリをやったときの血染めのジャケット。ジャケットに付いていた作り物の血に、なんと大量の被害者の血が混じって付いていた。話は、ちょっとヤヤコシイ。ドッキリを面白がった番頭さんが、そのジャケットを借りて、休憩時間中の仲居さんたちを脅かしていた。それで、最初、警察は番頭さんを疑った。しかし、番頭さんにはアリバイがある。お客さんを客室へ案内して仕事中だった。お父さんは、この旅館には泊まり慣れていて、番頭さんとも仲がいいし、旅館の構造にも詳しい。殺人事件のあった時間帯は、旅館の美術品が収められている部屋で、一人で、いろいろ美術品を鑑賞してたらしい。事件に気づいて部屋...明神男坂のぼりたい・40〔離婚旅行随伴記・5〕

  • 明神男坂のぼりたい・39〔離婚旅行随伴記・4〕

    明神男坂のぼりたい39〔離婚旅行随伴記・4〕殺されていたのは新興暴力団の男。見た感じは、普通の会社員みたいだけど、いわゆる経済ヤクザというやつで、うちのお父さんなんかより。よっぽど株やら経済に詳しいインテリさん。で、なんで、このインテリヤクザが、明菜のお父さんの部屋で死んでいたか?どうやら、対立の老舗暴力団とトラブって、温泉に潜んでいたらしい。そして、見つかって逃げ込んだのが、明菜のお父さんの部屋。本人の部屋は隣りなので、どうやら、逃げるときに間違ったらしい。激しく争って奥の部屋はメチャクチャ。で、お父さんのジャケットが窓から外に飛び出した。ここから誤解が始まる。警察は、逃げてきた男と明菜が部屋で出くわして、明菜が騒いでトラブルになった。そして、なにかのはずみで、男が持っていたナイフで刺し殺してしまった。そして...明神男坂のぼりたい・39〔離婚旅行随伴記・4〕

  • 銀河太平記・088『シゲさんと朝ごはん』

    銀河太平記・088『シゲさんと朝ごはん』加藤恵声とか喋り方も変えた方がいい!そんな声が多かったけど、ロボットたちから反対の声が上がる。「そういうことは、パチパチたち本人の意思に任せるべきだ!」いや、でもね……『ぼくはどっちでもいいよ』『音声は、ただの伝達手段に過ぎないでござる。でござろう、イッパチどのも?』『そうある、伝達手段は、明確に早く伝わるのがキモあるね』パチパチたちにパルス鉱センサーを取り付けると、胸に二つの膨らみが出来てしまうので、違和感のないように女性型のボディーにしてやったのだ。いずれも、小学四年生の女の子風になってしまうのだけど、胸の大きさに不自然でないようにしたので、ちょっとアニメ風の少女で。めちゃくちゃ可愛い。それが、声は以前のままの男風。ニッパチは高校の男子生徒風。イッパチは侍風。サンパチ...銀河太平記・088『シゲさんと朝ごはん』

  • 明神男坂のぼりたい・38〔離婚旅行随伴記・3〕

    明神男坂のぼりたい38〔離婚旅行随伴記・3〕フグッ(๐◊๐”)!!放っておいたら「キャー!」と叫ぶ寸前の明菜の口を塞いだ!覗き見男と思われたのは、よく見ると、芝垣の向こうの木の枝に引っかかった男物のジャケットだ。「危うく、ドッキリになるとこだった(;'∀')」「……あの上着……?」明菜は、湯船をあがると芝垣に向かって歩き出した。同性のあたしが見てもほれぼれするような後ろ姿で、お尻をプルンプルンさせながら。「上の階から落ちてきたんだろうね……」「あ、あれ、お父さんのジャケット!?」見上げると、明菜のお父さん夫婦の部屋の窓が開いてた。「なんかあったんじゃない!?」「ちょっと、見てくる!」「待って、あたしも行く!」あたしたちは大急ぎで、旅館の浴衣に丹前ひっかけ、ろくに頭も乾かさないで部屋を飛び出した。正確には、飛び出...明神男坂のぼりたい・38〔離婚旅行随伴記・3〕

  • 鳴かぬなら 信長転生記 53『曹素 総大将の兄』

    鳴かぬなら信長転生記53『曹素総大将の兄』信長「ねえ、豊盃まで行こうよ」眉庇にした右手を下ろしてシイ(市)が言う。日のあるうちに主邑の豊盃まで行こうというのだ。「今夜は、酉盃で宿をとる」「どーして?今から行っても充分日のあるうちには着けるよ」「豊盃には続々と増援の部隊が入っている」「そりゃそうでしょ、戦争をやろうって言うんだから」「兵隊は夜になったら寝るし、飯も食う」「軍隊って、自己完結してる組織だから、泊りも三度の食事も自前でしょ?」「一万の軍隊なら、それと同数以上の輸送部隊やら工作部隊やらが付いている。上級将校は露営ではなく市中の宿に泊まるだろうから、普通に行っては泊まれるところが無い」「そうなの?」「ああ、だから、まず宿を確保しておこう」酉盃の中心部を離れ、酒楼や飯店の看板を掛けている店を物色する。「なん...鳴かぬなら信長転生記53『曹素総大将の兄』

  • 明神男坂のぼりたい・37〔離婚旅行随伴記・2〕

    明神男坂のぼりたい37〔離婚旅行随伴記・2〕明菜のお母さん、稲垣明子だったんだ!ドッポーーン!そう言いながら露天風呂に飛び込む。一つは寒いので、早くお湯に浸かりたかった。もう一つは、人気(ひとけ)のない露天風呂で、明菜からいろいろ聞きたかったから。「キャ!もー明日香は!」悠長に掛かり湯をしていた明菜に盛大にしぶきがかかって、明菜は悲鳴をあげる。「明菜、プロポーション、よくなったなあ!」もう他のことに興味がいってしまってる。我ながらめでたい。「そんなことないよ。明日香だって……」そう言いながら、明菜の視線は一瞬で、あたしの裸を値踏みした。「……捨てたもんじゃないよ」「あ、いま自分の裸と比べただろ!?」「そ、そんなことない(#'∀'#)」壊れたワイパーのように手を振る。なんとも憎めない正直さ。「まあ、温もったら鏡で...明神男坂のぼりたい・37〔離婚旅行随伴記・2〕

  • 紛らいもののセラ・14『愛しき紛らいもの』

    紛らいもののセラ14『愛しき紛らいもの』『出でよハートのエース』はヒットチャートを駆けのぼった。ハイティーンの揺れる心を表現しているだけではなく、「人間は多面的で、可能性のかたまり」という人生を前向きにとらえた曲のテーマが、セラの明るいキャラとマッチして、幅広いファンの心を掴んだ。本当のわたしそれは53枚!ハートのエースもジョーカーもみんな~みんな~わたしの姿だよ(^▽^)♪特に、このサビのところは、曲全体を知らない年寄りでも覚えるようになった。芸能活動と学校の両立は難しかったけど、みんなの応援と、何よりも親友の三宮月子の協力で、なんとか卒業の目途もたった。「いつまでも、一つの体に二つの魂が宿っていてはいけないわ」もう何十回目かになる問いかけを、紛いもののセラは、本物のセラにした。もう午前一時に近いタクシーの中...紛らいもののセラ・14『愛しき紛らいもの』

  • 魔法少女マヂカ・253『クマさん失踪』

    魔法少女マヂカ・253『クマさん失踪』語り手:マヂカクマさーん、旦那様がお呼びでーす。声がかかったので、運転手の松本さんはキュっとブレーキを踏んだ。「すみません」自分が悪いわけでもないのに、クマさんは同乗のみんなに頭を下げて助手席を下りた。余裕のある登校をしているので、五分ぐらいの遅れはなんでもない。松本さんも腕のいい運転手なので、二三分の遅れなら取り戻してくれる。……それが、五分経っても戻ってこない。「クマさん、おそいねえ」ノンコが言うのと、正門から侯爵のパッカードが入って来るのが同時だった。「そうだ、旦那様は、夕べはお泊りだった!」そう言うと、松本さんは運転席を下りてフォードに駆け寄った。フォードも窓を開いて、尚孝侯爵が松本さんに話している。「何かあったんだ!」わたしたちも車を降りた。「さっき、クマさんに声...魔法少女マヂカ・253『クマさん失踪』

  • 明神男坂のぼりたい・36〔離婚旅行随伴記・1〕

    明神男坂のぼりたい36〔離婚旅行随伴記・1〕「ちょっと冷えそうだな」明菜のお父さんは、開けたドアを締め直し、ジャケットを掴んで助手席から車を降りた。仲居さんや番頭さんたちが、案内や荷物運びのために車の周りに寄って来る。予約はしてあったんだろうけど、かなりの常連さんのよう。「あ、タバコ切らしたから買ってくる」「タバコだったら、フロントにございますが……」「ありがとう。でも、先月から銘柄変えてね。なあに、店はとっくに調べてあるから。じゃ、ちょっと」「すみませんね、お寒い中、お待たせしちゃって」お母さんが恐縮する。「ちょっと庭とか見てっていいかな?」「ええ、いいわよ。玉美屋さんの庭はちょっと見ものよ。そうだ、あたしもいっしょに行こう」「では、お荷物はロビーに運ばせていただきます」仲居さん達は甲斐甲斐しく荷物を運ぶだけ...明神男坂のぼりたい・36〔離婚旅行随伴記・1〕

  • 紛らいもののセラ・13『出でよハートのエース』

    紛らいもののセラ13『出でよハートのエース』ちょっと探してしまった。約束した駅の西側に行っても、大木の姿も春美の姿も見えなかった。――いったい、どこなの?――キョロキョロしていると、駐車場の方から小さくクラクション。プ大きめのワンボックスカーのドアから春美がオイデオイデをしている。車の中には、春美さんと大木さんの他にも、カメラさんやらのスタッフがいて驚いたけど、そんな驚きは一瞬で、大木は新曲の歌詞と楽譜をセラの前に広げた。〔出でよハートのエース〕タイトルの下には、何種類かの歌詞が書いてあった。要は、トランプの裏側はみんな同じで、めくるとジョ-カーを含めて53の顔があり、人間本当の姿は、トランプの表をめくるように分からない。それで、宿題の出来から始まって、彼の気持ちをどう受け止めるかまで、韻を踏んで女の子の気持ち...紛らいもののセラ・13『出でよハートのエース』

  • やくもあやかし物語・118『将門の病室・1』

    やくもあやかし物語・118『将門の病室・1』「滝夜叉からもお聞き及びの事とは思うが、儂は病に侵されて居る」「はい、見た感じ、かなり……」「さよう、このままでは寝たきりで神としての実態を失う」「実態を失う?」「はい『お隠れになる』と世間では申します」死ぬのと、どう違うのか分からないけど、重ねては聞かない。それをどうにかしろというのがお願いには違いなさそうだし。「見ていただこう……これ」「「はい、将門さま」」枕もとのメイドさんを促して、寝間着の上をはだけさせる。ワア(>艸<)!露わになった身体は、まさに骸骨に渋皮を張ったみたい。それに、体のあちこちに貼ってあるのは……。「伊勢神宮のお札!」御息所が目を見張った。そう言えば、御息所は斎宮になる娘について伊勢に行っていたはず。間近で神事を執り行う斎宮を見ていて、ピンと来...やくもあやかし物語・118『将門の病室・1』

  • 明神男坂のぼりたい・35〔なんで付いていかなきゃならないの?〕

    明神男坂のぼりたい35〔なんで付いていかなきゃならないの?〕なんで付いていかなきゃならないの?思わず聞き返した。明菜が、離婚旅行に付いてこいと言ってきたから。明菜のいいところは、人との距離が近くて、接し方が前向きなこと。たいていの人なら1メートルは開ける距離が50センチ、話に身が入ると、それさえ超えてくることがある。それが、モテカワ美人の笑顔だよ。参ってしまう。普通メールで済ますことでも、ちゃんと電話してくる。でも、長話することはなく、要点を述べると『じゃあ、失礼します』とか親しい仲でも礼儀正しい。でもね、それが人によっては煩わしく感じるかもしれないとは思った。なんだか、ドラマの中の演技に付き合わされてるみたいな圧と窮屈さ。そう思われてしまうと、逆に明菜の方から距離を取ってしまう。そうなると、セレブのモテカワ美...明神男坂のぼりたい・35〔なんで付いていかなきゃならないの?〕

  • 紛らいもののセラ・12『セラのビフォーアフター』

    紛らいもののセラ12『セラのビフォーアフター』マスコミが騒ぎはじめた。「セラのビフォーアフター」のタイトルで週刊誌が取り上げ、下校中に待ち伏せされることもあった。某局のバラエティーでも特集のコーナーで取り上げられ、レポーターや評論家が適当に面白おかしく言っている。「解離性同一性障害……の可能性がありますね」どこから手に入れたのか、事故前のセラの写真や動画、さらには関係者と思われる匿名で顔ボカシ音声変換をかけたコメントまで出てきた。「解離性同一性障害って、セラセラは男だったんですか!?」性同一性障害と勘違いして、ゲストがボケて笑いを誘う。音響効果で笑い声まで増幅させている。「違います。自分のことが自分のことと思えない症状で、昔は多重人格と言われたものです」精神科の医師が真面目に答える。「ということは、事故をきっか...紛らいもののセラ・12『セラのビフォーアフター』

  • 明神男坂のぼりたい・34〔ナポレオンの結婚記念日〕

    明神男坂のぼりたい34〔ナポレオンの結婚記念日〕今日は、ナポレオンの結婚記念日。なんで、そんなこと知ってるか……明菜が電話してきたから。なんで、明菜が電話してきたら、ナポレオンの結婚記念日と分かるか。「ナポレオンの結婚記念日だから、会わない?」と、明菜が誘ってきたから。なんで、こんな、妙な誘いかたをしてきたか言うと、明菜とは、しばらく疎遠だったからだと思う。明菜は中学の同級生。高校は同じTGHだった。で、ほどほどの友達だった……けれど、明菜は一学期だけで、学校辞めてしまった。ウワサでは、先生(誰とは分からないけど)と適わなかったから。高校では、クラスも違ったし、話す機会も無かったので、それっきり。絵に描いたような『去る者は日々に疎し』だった。その明菜が電話してきて「会って話がしたいんだけど……」だよ。あたしは、...明神男坂のぼりたい・34〔ナポレオンの結婚記念日〕

  • 紛らいもののセラ・11『ちょっと変だな……』

    紛らいもののセラ11『ちょっと変だな……』便宜上プロになったものの、こんなだったとは思わなかった。『ごめん、急にSラジオのゲストが出られなくなったの、ピンチヒッターお願い!』正式なマネージャーになったばかりの春美さんから電話があったのは、月子と放課後のお喋りをしながら駅に向かっていたときだった。「三時って言ったら、ほとんど今からじゃないですか」『打ち合わせとかあるから、二時にはS放送に来てね。『徹子のフライデー』だから断れないの、よろしく!』返事も待たずに、春美さんは電話を切ってしまった。「S放送なら、地下鉄のS駅ね」「わたし、行ったことないから分からないよ……」今までにない、春美の押しつけがましさに、ちょっと不服顔のセラだ。「わたし知ってる。以前、元皇族問題の時に呼ばれたことがあるから」というので、月子の案内...紛らいもののセラ・11『ちょっと変だな……』

  • せやさかい・270『どてらで早起き』

    せやさかい・270『どてらで早起き』さくら目が覚めて手探りでスマホを探す。あっちゃー……電池切れ。時間は確認でけへんかったけど、たぶんいつもの時間。隣のベッドでは、留美ちゃんがまだ寝てる様子。かわいい寝息が聞こえてる。夕べは「おやすみ」言うて寝る時も、まだ勉強やってたから起きられへんねんなあ。もうちょっと寝かしといてあげよ。どてらを羽織って廊下に出る。あ、どてらはお祖母ちゃんの形見。年末の掃除で、このどてらが出てきた。「わあ、もう捨てようか……」おばちゃんが捨てようとしたところを「もろていい?」と、自分の部屋着にしたもの。それまでのフリースやら半纏と違って、足首までの丈なんでヌクヌク。綿入れやさかい、まるで布団を身にまとってる感じ。このどてらが無かったら、きっと二度寝してたと思う。向かいの詩(ことは)ちゃんの部...せやさかい・270『どてらで早起き』

  • 明神男坂のぼりたい・33〔〕

    明神男坂のぼりたい33〔啓蟄(けいちつ)奇譚〕関根先輩の話によると、こうらしい。先輩が昼前に二度寝から目覚め、リビングに降りると、リビングに続いた和室の襖が密やかに開いた。何事かと覗くと、和室の奥に十二単のお雛さまのような女の子がいて、目が合うとニッコリ笑って、こう言った。「おはようさんどす……言うても昼前どすけど、お手水(ちょうず)行かはって、朝餉(あさげ)がお済みやしたら、角の公園まで来とくれやす……なにかて?そら、行かはったら分かります。ほなよろしゅうに……」そう言うと、女の子は扇を広げて、顔の下半分を隠し「オホホホ……」と笑い、笑っているうちに襖が閉まったそうな。「……なんだ、今の?」そう呟いて襖に耳を当てると、三人分くらいの女の子のヒソヒソ声が聞こえる。そろりと二センチほど襖を開けてみると、声はピタリ...明神男坂のぼりたい・33〔〕

  • 紛らいもののセラ・10『公認の約束違反』

    紛らいもののセラ10『公認の約束違反』二度目のスタジオは、少し緊張した。でも、自分のギターをきっかけにイントロが流れ始めると、あとは、スッと曲の世界に入っていけた。男臭い六畳の窓を開け、寒さの中にも、かすかな春を感じる。ちょっと多感すぎるかな……♪歌い終わると一瞬の間があって、スタジオに拍手が満ちた。拍手の中心にいた猫柳徹子さんが後ろからハグしてくれた。「とても良かった。こんな素敵な約束違反、とっても嬉しいわ!」徹子さんは、そう言うと、いつもの「徹子のサンルーム」のセットの方にセラを誘った。セットには、手紙を書いた佐藤良子と、その手紙を詩と感じて見事なバラードに仕立て上げた大木功が控えていた。「ボクが作った以上の仕上がりでしたよ!」「ありがとうございます。曲を頂いて、とっても迷いましたけど、良子さんも、とても喜...紛らいもののセラ・10『公認の約束違反』

  • 銀河太平記・087『オートマ体変更の理由とヒント』

    銀河太平記・087『オートマ体変更の理由とヒント』本多兵二昭和のむかし、天気予報の的中率は64%ほどだったらしい。実は、晴れの確率も64%なので、毎日「明日の天気は晴れです」と言っていれば64%の確率で当たる。なにも、わざわざお金と資材と人員を使って予報しなくてもいいわけで、気象庁無用論を唱える人も居たらしい。じっさい気象庁の運動会に雨が降ることがあったらしいから、そんなものだろう。23世紀の今日、天気予報は100%の的中率を誇る。しかし、地震予知の確率は昭和の時代とさほど変わらない。「ここ50年間には、かならず、この地方に地震が起こります」という程度にしか予測ができない。それは、過去の歴史から地震の記録を見て、その周期を言うのと変わりがない。言ってみれば、それほどに地球の内部は複雑なのだ。素通しの大気を観察す...銀河太平記・087『オートマ体変更の理由とヒント』

  • 明神男坂のぼりたい・32〔魂が抜けるような開放感〕

    明神男坂のぼりたい32〔魂が抜けるような開放感〕試験が終わった!!なんという開放感!最後の数学の終了を告げる鐘が鳴ったとき、クラスが、いや学校中が魂が抜けるような開放感に満ちた。教室のあちこちで、溜息や歓声。中には、三日ぶりぐらいに便秘が治って、ドバっと出たときの感触とか的確な、でも品のない例えを言ってる女子。さっそくスマホを出してスクロールしている男子。監督の先生もニコニコと肩を回しながら出ていく。いや、一週間ぶり!十日ぶり!いや、難産で子どもを産んだあと!開放感の例えが過激になってきている(^_^;)せめてパリの解放とか『三丁目の夕日』で観た東京オリンピックの開会式の抜けるような青い空……ぐらいにしてよ。ま、瞬間思った『魂が抜けるような開放感』が、我ながら秀逸。とにかく、あとは二十日の終業式に来たら、四月の...明神男坂のぼりたい・32〔魂が抜けるような開放感〕

  • 紛らいもののセラ・9『慰霊式』

    紛らいもののセラ9『慰霊式』セラは、一時間早く慰霊式会場に出向いた。手紙の主の、佐藤良子に会うためだ。良子は事故で二人兄妹の兄を亡くした。その思いを手紙にして春美に送っていたのだ。しかし、当の良子は耳が不自由で、唯一の生存者であるセラに代読を依頼してきた。真剣に向き合おうとしたセラは、良子と話をしておきたく、また、良子も同様に思っていたので、一時間前の面談ということになった。「まさか読んでもらえるとは思いませんでした。それもセラさんに」手話通訳の母親が言っている間にも、良子はキラキラした目でセラのことを見ている。「木本(春美)さんから、お話があったときはびっくりしましたけど、お手紙を読んで、わたしが読まなきゃと思ったんです。あれは、もう立派な詩ですね。どれだけやれるか分かりませんが、しっかり務めさせていただきま...紛らいもののセラ・9『慰霊式』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 52『人だかり』

    鳴かぬなら信長転生記52『人だかり』信長朝食を済ませて、街の中心部に向かう。さすがに中心部が近くなると、街路も舗装されて、家並みも雑ながら整ったものになってくる。「なんだろ……」辻に人だかりを見つけると、市は駆けだした。ちょっと不用心だが、興味のあるものにまっしぐらという感性は悪くない。人だかりをザっと見渡してから市の後を追う。人だかりの大半は男だ。人だかりにほとんど隠れてはいるが、どうやら高札らしい。「また年齢が下がったぞ」「今度は、15歳~35歳」「先週は、17歳~33歳だったな」「これで、一万ほどは定員が増えるか」「弟にも声をかけてやろう」「給金は……」「据え置きか……」「いや、十元増しだ」「いいなあ」「おまえは下兵だろ」「下兵は据え置きだな」「上兵は装備支給……」「悪い話じゃないな……」男どもの会話でお...鳴かぬなら信長転生記52『人だかり』

  • 明神男坂のぼりたい・31〔今日は卒業式〕

    明神男坂のぼりたい31〔今日は卒業式〕正式に言うと卒業証書授与式卒業式の方がしっくりくるし、正式は看板と、開会式の時の開会宣言のときぐらいで、先生も生徒も、ごく普通に「卒業式」とよんでる。入学式は、ただの入学式。バランスから言っても、やっぱり「卒業式」の方がぴったりくるよ。なんで、こんなしょーもないことにこだわってるかというと。あたしたち一年は式に出られないから。あたしは馬場先輩から絵をもらうので、式の間は学校に居なくちゃならない。で、担任の毒島先生に式次第もらって、そのタイトルを見て疑問に思ったわけ。調べてみると、文科省では卒業式になっている。まあ、細かいことなので、どう呼ぶかは、学校やら教育委員会任せらしい。ことは、明治の昔に遡る。当時は、小学校は年齢関係なく、試験(筆記と口述)の結果によって進級が決まるシ...明神男坂のぼりたい・31〔今日は卒業式〕

  • 紛らいもののセラ・8『ちょっと多感すぎるかな』

    紛らいもののセラ8『ちょっと多感すぎるかな』春美からもらったアプリは面白かった。日本一の名スカウトで名プロデューサーでもある日野康が、春美にやり込められていることなど笑ってしまった。「日野さんて、目立ちすぎ。スカウトもプロディユーサーも男のパンツといっしょ。しょっちゅう露出するのは変態よ」「出る釘は変態って言われるんだ。いつの時代でもそうだぜ」「でも、レコ大で、アイドルの子たちと一緒の舞台で泣いてるなんてみっともないわよ」「あれは、ファンの気持ちを代表して泣いちゃうんだよ。よくもここまで育ったなあって」「まあ、言って分かる日野ちゃんじゃないけど、そろそろ気づきなさいよ。ズボンのチャック開いたまま」「え、あ、あああ!」慌てて、チャックを締める気配。天下の日野康がチャック全開で、その下にラクダを着ているギャップなん...紛らいもののセラ・8『ちょっと多感すぎるかな』

  • 明神男坂のぼりたい・30〔プチプチ〕

    明神男坂のぼりたい30〔プチプチ〕授業が次々に終わっていく。三学期の最終週だから、ほんとうに二度と帰ってこない授業たち。と……特別な気持ちにはならない(^_^;)。強いて言うなら「サバサバした」いう表現が近い。学校で、うっとうしいものは人間関係と授業。両方に共通してんのは、両方とも気を使うこと。つまらないことでも、つまらない顔をしてはいけない。学校でのモットーは、休まずサボらず前に出ず。一番長い付き合いがクラス。完全にネコっ被り。おかげで、一年間、シカトされることも、ベタベタされることもなかった。授業も同じ。板書書き写したら、たいがい前を向いて虚空を見つめている。それが、時に大人しい子だという印象を持たれ、こないだの中山先生みたいに「白木華に似てるねえ」なんちゅう誤解を生む。あの月曜日の誤解から、あたしはいっそ...明神男坂のぼりたい・30〔プチプチ〕

  • 紛らいもののセラ・7『木本春美』

    紛らいもののセラ7『木本春美』手が込んでいた割には、あっさり引き下がった。セラはバス事故で唯一の生存者。そして、そこらへんのモデルやタレント並にイケている。そのことがニュースで流れたりして「かわいすぎる生存者」とか「神が選んだ奇跡の生存者」などと、他の遺族が見ても心無いキャプションがついてマスコミにとりあげられる。セラは、事故までは無口でハーフということ以外では目立たない女子高生だった。人前で喋ることも苦手、特別に成績がいいわけでも、流行りの軽音楽などにも関心がなく、二年生の今まで帰宅部だった。それが事故の後の鮮やかな記者会見で注目され、マスコミが単なる取材ということではなくセラにアプローチしてくるようになった。その様子を報道で見ていた芸能界の大御所猫柳徹子は自分の番組に呼ぶことで「マスコミの誘いに乗らないよう...紛らいもののセラ・7『木本春美』

  • 魔法少女マヂカ・252『ブリンダのお願い』

    魔法少女マヂカ・252『ブリンダのお願い』語り手:マヂカクマさんと箕作巡査の婚約騒動から三日後、ブリンダが高坂邸にやってきた。「お二人とも、ほんとうにおめでとう!」だれが見ても『二人の婚約をお祝いに来た!』という感じの祝意をホカホカの婚約者たちに述べた後、ブリンダは、わたしの部屋にやってきた。「それで、ほんとうの用事はなによ?」「え、バレてんのか?」「長い付き合いだからね」「さすがは日ノ本一番の魔法少女だ話が早い」とたんに行儀悪くなって、ソファーの上で胡座をかく。「フン」「あ、でも、二人にお祝いの言葉を言うのが半分以上の目的だぞ。だから、こっちは後回しにしただろーが」「どうせ、あたしは後回しなんだ」「おい、からむなよ」「で、アメリカ一番の魔法少女が日ノ本一番の魔法少女になんの用?」「飛行石をかしてくれ」「はあ?...魔法少女マヂカ・252『ブリンダのお願い』

  • 明神男坂のぼりたい・29〔月曜はつまらない〕

    明神男坂のぼりたい29〔月曜はつまらない〕月曜はつまらない。理由は、学校がおもしろくないから。言わなくても分かってる?みんなもそうだもんね。あたしは、このつまらない月曜を、大学を入れたら六年も辛抱しなくちゃならない。え、働いたらもっと……ごもっとも。そこいくと、うちの親は羨ましい。お父さんも、お母さんも早く退職して、このつまらない月曜からは、とっくに解放されている。だから、月曜の「いってきまーす」「いってらっしゃーい」は複雑な心境。お父さんなんか、自称作家だから、時に曜日感覚が飛んでしまってる。今朝の「いってらっしゃーい」は、完全に愛娘が痛々しくも悲劇の月曜を迎えたいうシンパシーが無かった。お父さんが仕事してたころはちがった。保育所の年長さんになったころには分かってた。お父さんは、あたしを保育所に送ってから仕事...明神男坂のぼりたい・29〔月曜はつまらない〕

  • 紛らいもののセラ・6『脱輪』

    紛らいもののセラ6『脱輪』父の龍太は喜びつつも戸惑っていた。表面には出さないが、なんとなくの雰囲気で分かってしまう。事故以来、直接会うのは初めてなのだ。会社で建造中の26DDHのアレンジミスが見つかって、年が明けてから一度も娘に会っていなかった。そこで連休を利用してセラの方から会いに来たのだ。家にも帰れない忙しさなので、父の遅い昼食時を狙って、造船所にやってきた。家から遠いことと、造船所の構内が広いため、兄の竜一に車で付いてもらった。「セラ、なんだかたくましくなったな……」父は、戸惑いを誉め言葉で表現した。「うん、なんだか生まれ変わった感じ……いろんな人に会って、いろんな話をして……なにより遺族の人たちには気を遣う。たった一人の生存者だから、喜びすぎても落ち込みすぎても傷つけちゃうから……ここ何年かは、慰霊祭の...紛らいもののセラ・6『脱輪』

  • せやさかい・269『』

    せやさかい・269『まだ除夜の鐘』頼子ゴ~~~~~~ン元日だというのに、まだ除夜の鐘が鳴っている。NHKのゆく年くる年なんか見てると、除夜の鐘って年を跨っちゃうんだけど、まあ、情緒よね。でも、除夜の鐘って108発。108回?108突き?108打?17年生きてるけど、こういう、何気ないものの数え方って、よく分からない。で、わがヤマセンブルグ総領事館のリビングでは、もう元日の昼下がりだというのに、まだ除夜の鐘が鳴っている。ゴ~~~~~~ンもう1000を超えたんじゃないかしら?「う~~ん、やっぱり分かりませんねえ……」知らせを受けた、一等書記官のオットーさんが音を上げた。「やっぱり、日本の技術は凄いです!」ソフィーが、何度目か分からない感嘆の声をあげる。「ソフィー、君の探究心はすばらしいが、これは国の王立科学院にでも...せやさかい・269『』

  • やくもあやかし物語・117『父上、やくもさまをお連れいたしました』

    やくもあやかし物語・117『父上、やくもさまをお連れいたしました』厳めしい城門を幾つも通って御殿の前に着いた。カチャリラムメイドさんがドアを開けてくれて、滝夜叉姫さんに先導されて馬車を降りる。パチンレムメイドさんが指を鳴らすと馬車はサッカーボールになってしまい、レムメイドさんが――どうぞ――という感じで、滝夜叉姫に促す。セイ!バシュ!滝夜叉姫さんがシュートして、サッカーボールは城壁の向こうに飛んで行ってしまった!おお……!パチパチパチパチメイドさんがポーカーフェイスのまま拍手。馬車がサッカーボールになったのも、滝夜叉姫がきれいにシュートを決めたのも、それに、シュートした時に露わになった滝夜叉姫の脚の美しさにも、メイドさんのシュールな拍手にもビックリした!「すごい……」「次はテニスボールぐらいにしといてね、サッカ...やくもあやかし物語・117『父上、やくもさまをお連れいたしました』

  • 明神男坂のぼりたい・28〔そんなことないです!〕

    明神男坂のぼりたい28〔そんなことないです!〕「そんなことないです!」思わず言ってしまった。国語の時間、中山先生が思わないことを言った。「鈴木さん……あなた白木華に似てるね!」クラスのみんなが振り返った。中には「白木華て、だれ?」言う子もいたけど、たいがいの子は知ってる。金熊賞を取って大河ドラマとか出てる新進気鋭の女優さん。『埴生の宿』に初主演して賞を取った。中山先生は、さっそく、その映画を観てきたらしい。授業の話が途中から映画の話に脱線して……脱線しても、この先生の話はショ-モナイ。だいたい日本の先生は、教職課程の中にディベートやらプレゼンテーションの単位がない。つまり、人に話や思いを伝えるテクニック無しで教師になってる。なにも中山先生だけがショーモナイわけではない。あたしは、授業中は板書の要点だけ書いたら、...明神男坂のぼりたい・28〔そんなことないです!〕

  • 紛らいもののセラ・5『一歩前へ、自分から』

    紛らいもののセラ5『一歩前へ、自分から』予想どおり奇異の目で見られた。露骨に口に出して言われることはなかったが、始業式の学校で、セラは良くも悪くも時の人だった。興味の持たれ方はは二種類だ。あのバス事故から無傷で生還したセラへの畏怖の混じった興味。もう一つはSNSで出回った、事故現場で献花するセラと、家のリビングで大口開いて団子を頬張るセラとのギャップに対してである。――へえ、あの子がねえ――両者の気持ちを言葉にすると同じになる。野次馬根性ということではいっしょだった。そう割り切るとなんでもないことだった。「セラ、大丈夫……?」セラの数少ない友達の中でも、三宮月子だけが親身に声をかけてくれた。月子は元皇族の家系で、ひところ元皇族家の復帰ということが取りざたされたときに、ひと月ほどマスコミに付きまとわれたことがある...紛らいもののセラ・5『一歩前へ、自分から』

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