2023年に公開された日本映画です。弁護士でもある五十嵐律人さんの小説が原作で映画化された作品で、いわゆる“法廷モノ”ですが、正直なところまったく入っていけませんでした。アメリカの法廷モノとは全く別物ですね。プロット自体のリアリティが極めて希薄なのでストーリーが上滑りしているように感じたのが最大の要因ですが、併せて登場人物のキャラクタや相互関係も“作為的”過ぎて全く興覚めでした。法廷遊戯通常版[DVD]永瀬廉TCエンタテインメント〔映画〕法廷遊戯
世界はこうしてできている 美しい物理のしくみ (川村 康文)
いつもの図書館の新着本リストの中で見つけた本です。私は高校時代「文系」だったので、「物理」についての素養は今から50年近く前の中学校理科のレベルです。そういう背景もあり、こういった“科学の入門書”には大いに興味をいだきます。本書は、PART1美しい自然現象の物理のしくみPART2美しい人工物の物理のしくみに分かれていて、夕焼けはなぜ赤いのかナイアガラの滝のエネルギーはどれほど凄いのか美しい雪の結晶ができるしくみとはクレーターができるほどの隕石の衝撃とは地球はなぜ回っているのか太陽からは、何が降り注いでいるのか気球はなぜ空に浮かぶラップフィルムには「ファンデルワールス力」がはたらく「落ち続ける」宇宙ステーションのしくみ等々といった身近に感じられるような項目が取り上げられています。写真と図解が豊富で、説明もこ...世界はこうしてできている美しい物理のしくみ(川村康文)
小松菜奈さんと菅田将暉さんが共演した映画です。中島みゆきさんの「糸」をモチーフにしたオリジナルシナリオとのことですが、正直、映像作品としてはイマイチでしたね。「平成」へのこだわりに納得感が得られず、テーマの一貫性を阻害していたように感じます。観る前の期待値が高かったことは否めないのですが、ともかく予定調和のラストに向かってあれこれとエピソードが盛り込まれ過ぎで、これでもかと右往左往させられた気分です。唯一の見どころといえば、やはり小松菜奈さんですかね。あのピュアな透明感溢れる演技は流石だと思います。糸DVD通常版菅田将暉ポニーキャニオン〔映画〕糸
松本清張さんの代表作を映画化した作品です。清張さんの作品は、以前そこそこ読んでいたのですが、この作品はこれだけ有名なのにもかかわらず、何故か手に取っていませんでした。なので、映画と原作でどの程度異なっているのかわからないのですが、映画は映画でサスペンス作品としてもしっかりとした出来栄えだったと思います。3人の女優さんはそれぞれ対照的な役柄をうまく演じていましたね。久我美子さんはあのころから落ち着いた雰囲気で違和感はありませんでしたが、出色だったのは有馬稲子さん。健気な明るさをもつ役柄にはぴったりでした。あとは、西村晃さん、加藤嘉さん、壮年期の重鎮の登場シーンもなかなか興味深かったです。<あの頃映画>ゼロの焦点[DVD]久我美子SHOCHIKUCo.,Ltd.(SH)(D)〔映画〕ゼロの焦点
原作であるアガサ・クリスティーの「オリエント急行の殺人」を読み終え、待ったましたとばかりに見た作品です。今まで、映画としては1974年版、2017年版ともに観ていますが、この作品は原作を現代風にアレンジしたという長編テレビドラマです。映画の方はかなり力を入れた作品だったので、その点こちらはストーリーもキャスティングもグレードダウンしているのは止むを得ないところですが、それでも結構予想外に楽しめました。変更した部分も、原作を損なうことなくうまく活かそうという気遣いが感じられて好感が持てますし、出演した役者さんたちも、それぞれの登場人物のキャラクタをうまく演じ分けていました。難しいチャレンジを試みた作品で、その“心意気や良し”ですね。オリエント急行殺人事件~死の片道切符~[DVD]アルフレッド・モリナハピネッ...〔映画〕オリエント急行殺人事件~死の片道切符~
この時期(8月)には、できるだけ「戦争」を扱った本を読んでみようと思っています。少し前になりますが、半藤一利さんの「日本人の宿題:歴史探偵、平和を謳う」を読んでいて、“太平洋戦争”をテーマにした大座談会の話が登場していました。本書は、その座談会の様子を記した著作です。8月15日を挟んだ終戦前後、様々な立場、様々な場所で同じ時を迎えた30人の人々の証言は、心に留め置くべき真実の吐露でした。それは、読む人の心に、改めて戦争の悲惨さや理不尽さを刻み直すものもあれば、戦争に至らしめた人の無責任さへの怒りや虚しさを思わせるものもありました。たとえば、ポツダム宣言受諾をめぐる8月10日ごろの政権内の様子を振り返ってのやりとりです。(p69より引用)松本俊一(当時、外務次官)終戦工作というのは、要するに、今になると実感...日本のいちばん長い夏(半藤一利)
1977年公開の角川作品ですから、もう45年も前の話題作です。原作は森村誠一さんの長編小説ですが、プロットやストーリーは、映画化にあたりかなり手が加えられたようです。できあがった作品の方は、正直とても残念な出来栄えだったと思います。織り込まれているエピソードがことごとく表層的で唐突感に溢れ、サスペンスとしてもエンターテインメントとしても全く楽しめるレベルに至っていません。ところどころに登場するワザとらしい演出も逆効果でしたね。その反面、キャスティングは三船敏郎、鶴田浩二、長門裕之、ハナ肇、夏八木勲、伴淳三郎・・・等々錚々たる役者がそろい踏み。かえって作品の質とのギャップが際立ってしまいました。人間の証明角川映画THEBEST[DVD]松田優作KADOKAWA/角川書店〔映画〕人間の証明
2015年、ロンドンで実際に発生した窃盗事件を映画化したものとのことです。観終わっての印象ですが、何とも“中途半端”な出来の作品でした。「実話」という面を重視すると“ドキュメンタリー”としてのリアリティや重厚さを期待するのですが、「老人たちの犯行」という点以外にインパクトはなく、かといって、実話をモチーフにした“映像作品”だとしてもストーリー展開が平凡で全く「エンターテインメント性」が感じられません。マイケル・ケインが主演ということで期待して観てみたのですが、正直なところ大いに残念な作品でした。キング・オブ・シーヴズ(字幕版)マイケル・ケイン〔映画〕キング・オブ・シーヴズ
ロマンティック・サスペンス映画の王道を行くような出来栄えです。こういった過度にセンセーショナルな演出を施していない作品はいいですね。やはり軸となる役者さんがしっかりしていると違います。映像自体に惹き込まれますし、ストーリーの展開にも素直に入っていけます。本作品の場合はブラッド・ピットとマリオン・コティヤール、二人とも流石の存在感だったと思います。特にマリオン・コティヤールは役柄にぴったり、とても魅力的でした。マリアンヌ[DVD]ブラッド・ピットパラマウント〔映画〕マリアンヌ
ちょっと前に映画「ナイル殺人事件(1978年版)」を観ました。最近もまた映画化されたようで、そうなってくると、やはりアガサ・クリスティーの「原作」を読んでみようという気になってくるのです。ということで、いつも行く近所の図書館から文庫本を借りてきました。ネタバレになるとまずいので、内容には触れませんが、読み終わっての印象は、彼女の代表作のひとつということもあり、流石にしっかりとした構成の密度の濃い作品だと感じますね。少々欲張り過ぎのような印象を与える枝葉のエピソードも、物語の展開の中できちんと丁寧に回収しています。映画の方も、結構、原作に忠実に作ってあるようです。最後、オリエント急行殺人事件と同様に、関係者が一堂に会した場でエルキュール・ポアロが謎解きを披露するのですが、これは映画ならではの演出でした。ちな...ナイルに死す(アガサ・クリスティー)
ちょっと前に「アメイジング・スパイダーマン」を観たので、その流れで続編にもトライしてみました。出来栄えはといえば、本作も2作目のジンクスに引っかかったようです。1作目との連続性が濃いプロットとストーリーで、その点はいいチャレンジで好感が持てるのですが、如何せん敵役のキャラクターに問題ありでした。登場背景もスパイダーマンに対峙する動機も説得力に欠けていて意味不明です。また、「アメイジング・スパイダーマン」シリーズとしては、この二作で完結させるということだったらしく、ヒロインを悲劇的結末に至らしめたのは大いに残念でしたね。それだけに、本シリーズでのエマ・ストーンの存在感は抜きん出ていたということでしょう。アメイジング・スパイダーマン2アンドリュー・ガーフィールド〔映画〕アメイジング・スパイダーマン2
以前に観た「ヴェノム」の続編です。やはり、私は、この手の特にアメリカ映画でありがちな“造形”は好きではありません。主人公にも親しみや魅力は感じませんし・・・。それに加え、ストーリーにも何の物語性もないので、観終わっても全く気分が良くないのです。まあ、マーベル・コミックのキャラクタ映画なので話題にはなるでしょうから、今後も続編があれば観るだけは観ると思いますが・・・。そういう点では“興行的”には成功している作品といえるのかもしれません。ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジブルーレイ&DVDセット[Blu-ray]トム・ハーディソニー・ピクチャーズエンタテインメント〔映画〕ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ
久しぶりの韓国映画です。追うものと追われるもの、シンプルな対立の構造のストーリーですが、シーンの切り替えがテンポよくスピーディーで観ていて心地よい緊迫感を感じました。また、新人刑事の成長物語でもあるので、その新人刑事役の役者さんのキャラクタも本作の印象を大きく左右するポイントだと思うのですが、この点は大正解だったと思います。演じたハン・ヒョジュさん、ひとつひとつの表情がキラキラしていました。とてもよかったですよ。全体的な作品の雰囲気は一昔前のノリでしたが、結構楽しめた作品でしたね。監視者たち通常版[DVD]チョン・ウソンTCエンタテインメント〔映画〕監視者たち
いつも利用している図書館で、この暑い日々の中、気楽に読めるサスペンスものはないかと探していて目に付いた本です。内田康夫さんの小説は、かなり前に結構集中して読んだのですが、この作品は抜けていました。今回の舞台が私の大好きな街「札幌」ということで、躊躇なく借りてきました。数年前、仕事の関係で、2年間にわたりほぼ毎週札幌出張をしていたので、札幌の街には特別の思い入れがあります。また、そういった経緯から、わずかですが土地勘もあるので、光彦が訪れる街並みや通りの姿をなんとなくイメージしながら楽しむことができました。ネタバレになるとまずいので、内容には触れませんが、この作品は、内田さんの「浅見光彦シリーズ」の中では、比較的オーソドックスで“硬派”な印象です。登場人物にまつわる伏線をしっかりと回収していく丁寧さがいいで...札幌殺人事件(上・下)(内田康夫)
このところ改めて「マーベル・コミック」系の映画を観直しています。この作品も観るのは2・3回目だと思いますが、エンターテインメント作品としては、無難なハイレベルの出来ですね。ストーリーは比較的シンプルですが、節々のエピソードがとても効果的です。特に、伏線の回収でもある終盤の「クレーン」のシーンは、よく思いついたものだと思います。あとはキャスティング。白眉はマーティン・シーンとサリー・フィールドです。主人公の心のよりどころとしての“家族”をベテランの存在感で見事に描き出していました。そして、エマ・ストーン。ラストシーンの表情は最高でしょう。私の好きな女優さんのひとりです。アメイジング・スパイダーマンアンドリュー・ガーフィールド〔映画〕アメイジング・スパイダーマン
久しぶりにDVDを借りてきました。観るのは3・4回目かもしれません。比較的評価は高い作品ですね。シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」をモチーフに、流石によく練られたストーリーだと思います。そして、この作品の華は、やはり何と言っても「グウィネス・パルトロー」ですね。少年っぽさも漂わせつつの自然な輝きは、彼女ならではでしょう。最近の作品でもそういったキャラクタが活きています。私が大いに気になっている女優さんのひとりです。あと、忘れてならないのが「ジュディ・デンチ」。彼女の“イギリスの女王”役は、まさにはまり役ですね。恋におちたシェイクスピア[DVD]グウィネス・パルトロウユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン〔映画〕恋におちたシェイクスピア
かなり以前に、本作の続編「ハスラー2」は観たことがあります。ただ、本作と25年もの年月の隔たりがあって、続編といってもポール・ニューマンが出演していること、ビリヤードが舞台になっていること以外につながりはありません。作品のテイストも全く違います。この第1作目、どうにも“暗い”ですね。本作のヒロインのサラの活かし方はもっとあったと思います。あの結末ではやり切れなさが残ります。致命的なのは、主人公にまったく魅力が感じられないことです。そもそものプロットの甘さのせいだと思いますが、“人間的には未熟な腕のいいハスラー”というだけではマズイでしょう。ラストも、想定内の展開で、何とも雑なエンディングでした。ハスラー[DVD]ポール・ニューマン20世紀フォックスホームエンターテイメント〔映画〕ハスラー
横浜中華街 ―世界に誇るチャイナタウンの地理・歴史 (山下 清海)
いつも利用している図書館の新着本の棚を観ていて目に付いた本です。ちょっと前、横浜中華街の聘珍楼閉店のニュースが流れました。今から30年以上前、結婚して最初の社宅が横浜(南区)で中華街まで歩いて行けるところでした。20数年前、神奈川支店勤務時のオフィスは中華街そばのビルでした。その後も時折訪れることがあり、中華街は私にはとても馴染みのある街です。その中華街をテーマにした解説本ということで手に取ってみました。あれこれと興味を惹いたところがありましたが、そのいくつかを書き留めておきます。まずは、「はじめに」に記されている「横浜中華街の特徴」です。(p17より引用)まずチャイナタウンとしての横浜中華街の規模は、サンフランシスコやニューヨーク・マンハッタンのチャイナタウンには及ばない。しかし、世界のチャイナタウンの...横浜中華街―世界に誇るチャイナタウンの地理・歴史(山下清海)
「マーベルコミック」のヒーロー「キャプテン・アメリカ」の実写版です。ちょっと前に、第1作目の「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」を観ましたが、本作品はその続編です。第2作目は第1作目に比べてレベルダウンするのが通常ですが、本作はよくできていたと思います。大体のストーリー展開は誰もが予想できるものですが、そういった素直なつくりは、今時貴重です。奇を衒わず正攻法のエンターテインメント作品に仕上がっていますね。戦闘シーンも、過度にセンセーショナルな映像はなく、それでいて充分迫力のある絵になっていました。本シリーズの大きな成功要因は、正邪、敵味方をはっきりさせた登場人物の明確な性格付けにあるように思います。主人公は徹頭徹尾“いい人”です。そして仲間たちも“爽やか系”です。今回は「ナターシャ・ロマ...〔映画〕キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー
重松清さんの新聞連載小説の映画化版です。阿部寛さんが演じる主人公のキャラクタを受け入れられるかどうかで、作品の好悪が決まるでしょう。私の場合はダメでした。ストーリー展開も、細々としたエピソードを盛り込み過ぎているようでどうにも落ち着きません。最後の方のエピソードも唐突感満載で不自然さを感じてしまいました。キャスティング面で言えば、主人公役の阿部寛さんはともかく、北村匠海さんは正直ちょっと合わなかったですね、年相応のシーンは無難でしたが、高校生時代や最晩年のころの写りにはかなり無理がありました。半面、薬師丸ひろ子さんは流石の安定感、あと出色だったのは安田顕さんと大島優子さん。この二人の細かな神経の行き届いたさり気ない演技は見事でした。とんびDVD(通常版)阿部寛バップ〔映画〕とんび
原作は辻仁成さんの小説です。好みの問題ではありますが、こういった“現実感のないいい加減な主人公”が登場する話には全く入っていけません。個別のエピソードも“わざとらしさ感”満載で、これまたいただけないですね。空港のシーンとかは有り得無いでしょう。このあたり、原作がそうなのか、映画化した時の演出がそうなのか・・・。こういうグダグダのストーリーの収束もお決まりのパターンで、これにも閉口です。その中で、主役を演じた中山美穂さん、メリハリの利いた立ち居振る舞いで良かったと思いますね。女優さんとしての力量は確かでした。サヨナライツカ[Blu-ray]中山美穂アスミック・エース〔映画〕サヨナライツカ
人気コミックの実写版ですが、先日地上波で初放映されたので観てみました。コミックの原作もアニメも見ていないのですが、映画の方は“今ひとつ”でしたね。タイムトラベルものですが、そのプロットはあまりにありふれていますし、ストーリー自体にも惹かれるところはありません。キャスティングは、当代の人気若手俳優のみなさんオールスター登場といったところで、そこだけは異様に豪華でしたね。主役の北村匠海さんを除いて、山田裕貴さん、磯村勇斗さん、間宮祥太朗さん、吉沢亮さん・・・と並ぶと、NHKの朝の連続テレビ小説の同窓会のようです。東京リベンジャーズスタンダード・エディション[DVD]北村匠海TCエンタテインメント〔映画〕東京リベンジャーズ
吉村昭さんは私の好きな作家のひとりで、かなり以前には集中して何冊か読んでいました。今回、まだ読んでいない作品が、いつもの図書館の新着本リストの中に並んでいたので手に取ってみました。吉村さんの作品の中では、比較的軽めですね。幕末から明治維新期が舞台。函館に渡った旧幕府軍と新政府軍との一連の戦い(戊辰戦争)におけるエピソードのひとつを取り上げたものです。小説なのでネタバレになるような引用は避けますが、精緻な取材に基づくノンフィクションを基本としつつも、「表現者」としての吉村さんの非凡な筆力を示すところを書き留めておきます。新政府軍艦艇との戦闘に向かう「回天」が、中継地のある湾内に進んでいった場面です。(p91より引用)不意に、甲板上の者たちの間からどよめきに似た声が起った。かれらの視線は、一様に湾をかこむなだ...幕府軍艦「回天」始末(吉村昭)
ちょっと前、久しぶりに内田康夫さんの「浅見光彦シリーズ」の文庫本を読んだので、映画もと思い観てみました。何年かぶりですが、この作品ももう3・4回は観ているかもしれません。ともかく、映画になってしまうと出演する女優さんのラインナップを観ただけで「犯人」はわかってしまうので、楽しみの幾何かは失われてしまいます。さらには、角川作品で、市川崑監督、岸恵子さん、石坂浩二さん、加藤武さん・・・と並ぶと、どんな原作も“横溝正史シリーズ”になってしまいますね。音楽の使い方も似ていますし・・・。しかしこの作品、浅見光彦の愛車が「ジャガー」なのは頂けませんね。ここは絶対「ソアラ」でないと。天河伝説殺人事件[DVD]榎木孝明KADOKAWA/角川書店〔映画〕天河伝説殺人事件
少女向けコミックの映画化です。プロットやストーリーは、この手の作品の王道中の王道を歩んでいる“テッパン”ものです。なので、個々の作品の個性はキャスティングに表われるわけですが、ここに登場する役者のみなさんも「年齢」というフィルタを通すと、結局、いつも同じような顔ぶれということで落ち着いてしまうのです。そして、作品のキャラクタに当てはめていくとさらに主要キャストのパターンが絞られて、まさに何を観ても同じということになるんですね。なので、注目はむしろ脇役陣に移って、私にとっての本作の見どころは「上野樹里さん」でした。同じ“音楽”がモチーフになっている映画「のだめカンタービレ」でのキャラを思い出しては、微笑ましく見入ってしまいます。青空エールDVD通常版土屋太鳳東宝〔映画〕青空エール
劇場公開の予定だったのが、AmazonPrimeVideoでの配信に変更された作品とのことです。この手のSF映画は、その構想が大胆であればあるほど当たり外れは“賭け”になりますね。その点では、正直なところこの作品は「ちょっと、やっちまったなぁ」といった印象です。まずは、意味不明な“黒い物体の群れ”がマズかったですね、メカニカルな造形に徹した方がよかったと思います。また、ストーリーも、家族愛と脱出譚とヒーローの活躍といった手垢に塗れたお決まりの展開で目新しさはなく、大災害の映像も今までのディザスターものと全く変わり映えしません。期待のハル・ベリーも、輝きをみせるようなシーンに恵まれませんでした。残念です。ムーンフォール(字幕/吹替)ハル・ベリー〔映画〕ムーンフォール
ロバート・デ・ニーロの芸域の広さは衆目の一致するところです。この映画が批評家から高評価を得ているところをみると、本作の主人公のようなキャラクタも“彼の得意とする役どころ”のひとつなのかもしれません。ただ、私にはまったく響きませんでしたね。さらには、物語の展開がどうにも不自然で、登場人物のプロットも中途半端な感じがします。キャスティングについて強いて言うなら、ビル・マーレイはまずまずの安定感、ユマ・サーマンは魅力的ではありますが、この作品では今ひとつでした。ともかく、私にとっての「ロバート・デ・ニーロ」は、こういった煮え切らないタイプではないのです。恋に落ちたら…[DVD]ロバート・デ・ニーロユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン〔映画〕恋に落ちたら…
いつも聞いている大竹まことさんのpodcastの番組に著者の鎌田實さんがゲスト出演していて、本書の紹介をしていました。鎌田さんの著作は今までも何冊も読んでいるので、だいたいの内容は想像できるのですが、とはいえやはり最新刊の現物にもあたっておこうと思った次第です。で、読み通してみての印象。いつもながらの鎌田さんのアクティブな姿勢は健在でしたが、正直なところ、新たな気づきは特にありませんでした。鎌田さん自身の入院治療体験を踏まえた「老い」との付き合い方や、第二、第三の人生にチャレンジしている方々の生き様が紹介されています。この本でも、「自分のやりたいことを見つけて、自由にやっていきましょう」という鎌田さんのメッセージは不変です。ただ、私のような視野も狭く経験にも乏しい人間の場合は、そもそも「自分のやりたいこと...ピンピン、ひらり。:鎌田式しなやか老活術(鎌田實)
今から35年近く前の作品です。当時のベストセラー小説を映画化したものですが、物語そのものよりも、競走馬の育成を取り巻く裏方の様子の方が興味深かったですね。この映画、エンターテインメント作品としては平凡だと思います。プロットにもストーリーにも際立って光るところは感じられませんでした。ただ、ワキを固めた役者さんはものすごいラインナップです。仲代達矢さん、緒形拳さん、平幹二朗さん、石坂浩二さん、田中邦衛さん・・・。しかしまあ、超大物の役者さんたちは、芝居がかった芝居をものの見事に演じますね。ひと昔前の日本映画の凄さを感じる作品です。その歴々の中で、斉藤由貴さんはよかったですよ。撮影当時は21~22歳のはずですが、ちょっと驚きました。まあ、このころにはすでにNHK朝の連続テレビ小説(はね駒)の主役もやっていたので...〔映画〕優駿ORACIÓN
例のごとく人気コミックの実写版です。これも「タイムトラベル」ものですが、“戦国時代への時間移動”というのは使い古されたプロットですね。まあ、この手の作品で「ストーリー」の是非を話題にするのは意味がありません。とはいえ、「エンターテインメント作品としては」といえば、無意味な戦闘シーンが延々と続くのには閉口ですし、高校生が主な登場人物であるにも関わらず、救いがない展開や過度に刺激的なシーンがあまりにも無造作に織り込まれていて・・・。ともかく、シナリオや演出の意図がわからない作品でした。ブレイブ-群青戦記-DVD(特典DVD付2枚組)新田真剣佑東宝〔映画〕ブレイブ群青戦記
人気コミックの実写版とのこと。「少女コミック」が原作である以外、考えられないような映画です。「未来の自分からの手紙」というプロットはなかなか面白いですし、タイムトラベルものとして「時間軸の矛盾」を“パラレルワールド”での話と簡単に割り切ってしまう潔さもいいですね。映画化に伴い、大所で原作に手を入れたようですが、私の好みを言えば、そこは原作のままだった方が良かったように思います。とはいえ、ここまで“無邪気なHappyEndの青春物語”に仕立てられると、とやかく言うこともありません。orange-オレンジ-DVD通常版土屋太鳳東宝〔映画〕orange
マット・デイモンはこういったタイプの軍人役を結構演じているように思います。(ブラッド・ピットやレオナルド・ディカプリオと混同しているかもしれませんが・・・)アメリカのイラク侵攻の一側面を描いた作品ですが、フィクションかノンフィクションかはさておき、こういった内容の映画がエンターテインメント作品の装いで一般公開されること自体が、ある意味驚きです。もちろん、こういったスタンスの作品も、内容が正しい方向のものでないと大きな危険を孕んでいるわけで、そのあたりの判断や受け止め方はとても悩ましいものがありますね。映画のラストは、マスコミに委ねた形で終わっていますが、さて、このあとどのくらいのマスコミが動いたのでしょうか?グリーン・ゾーン[DVD]マット・デイモンジェネオン・ユニバーサル〔映画〕グリーン・ゾーン
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2023年に公開された日本映画です。弁護士でもある五十嵐律人さんの小説が原作で映画化された作品で、いわゆる“法廷モノ”ですが、正直なところまったく入っていけませんでした。アメリカの法廷モノとは全く別物ですね。プロット自体のリアリティが極めて希薄なのでストーリーが上滑りしているように感じたのが最大の要因ですが、併せて登場人物のキャラクタや相互関係も“作為的”過ぎて全く興覚めでした。法廷遊戯通常版[DVD]永瀬廉TCエンタテインメント〔映画〕法廷遊戯
2002年に公開されたアメリカ映画です。実際に発生した事故に着想を得た作品とのことですが、「潜水艦」という極めて特殊な環境設定は「緊迫した場面」を作りやすいこともあるのか、今までも数多く映画に使われています。また、そういった閉鎖空間の中での「人間関係の軋轢」もお決まりのパターンです。まさに本作品もそうなので、ストーリーについては想定の範囲内でした。ただ、相対峙する二人の主要人物として超重量級のハリソン・フォードとリーアム・ニーソンが並んで登場するとなると、さすがに見応えが増しますね。K-19[DVD]ハリソン・フォード日本ヘラルド映画(PCH)〔映画〕K-19
2023年~24年に放映されたアニメ作品です。基本的には、よくある“ロードムービー”的な構成ですが、モチーフも作画タッチも登場人物もひと味違っていて、独特の世界観を持ったなかなかの出来栄えの作品ですね。人としての“やさしさ”、人と人とのつながりの“ゆたかさ”が心地よい空気感で伝わってきます。特に、主人公のフリーレンとその弟子フェルンのキャラクタ設定は秀逸で、それにそれぞれの声優の方の繊細な表現力が加わって、見事なファンタジーに仕上がっていると思います。「週刊少年サンデー」に連載中のコミックが原作ですが、そちらはまだ続いているようなので、アニメとしても「シーズン2」が制作されるかもしれませんね。「葬送のフリーレン」Blu-ray(Vol.1初回生産限定版)山田鐘人東宝〔アニメ〕葬送のフリーレン
2019年に制作されたイギリスの長編ドラマです。アガサ・クリスティが離婚後中東に旅行したという実際のエピソードをモチーフに、彼女自身が主人公となって「遭遇した事件の謎解きをする」という設定のミステリーです。ただ、ストーリー自体、ごちゃごちゃした感じでスッキリしません。ミステリーとしての構成が入り組んでいるというより、ミステリー以外のあれやこれやの要素が入り混じって、いったい“なに料理なのか”わからなくなっているようです。出来栄えとしては、かなり残念なレベルですね。アガサとイシュタルの呪い(字幕版)リンゼイ・マーシャル〔ドラマ〕アガサとイシュタルの呪い
いつも聴いている大竹まことさんのpodcast番組に著者の内田樹さんがゲスト出演していて、本書についてお話ししていました。内田さんの著作はいままでも「日本辺境論」をはじめとして何冊か読んでいます。内田さんの主張は、ご自身の“思考の軸足”にブレがないので、昨今のいろいろな社会事象に関する私自身の考え方の揺らぎをアジャストするのにとても参考になります。ということで、いつもながら興味深い気づきは多々ありましたが、それらの中から特に印象に残ったものをいくつか覚えとして書き留めておきます。まずは、「選挙と公約」というタイトルの小文から、「日本の有権者の投票行動における決定要因」について、内田さんの理解を語っているところです。(p98より引用)選挙における政党の得票の多寡と、政党が掲げる公約の適否の間には相関がない。...街場の成熟論(内田樹)
2020年に公開された日本映画です。2011年公開の韓国映画のリメイク版とのことですが、今どきここまで“ベタ”なストーリーは珍しいですね。よくもまあこんな偶然が続くのかといった“割り切った”つくりの作品を、何の衒いもなくストレートに演じ切る吉高由里子さんは、とても稀有なキャラクタの持ち主と言えるでしょう。きみの瞳が問いかけているDVDスタンダード・エディション吉高由里子ギャガ〔映画〕きみの瞳が問いかけている
2023年に公開された日本映画です。小山薫堂さんのオリジナル脚本で、「湯道」という独創的なモチーフをベースにした“人情モノ”といった感じのコミック作品ですね。キャスティングは、小日向文世さんや柄本明さんをはじめとして、笹野高史さん、寺島進さん、吉田鋼太郎さん、角野卓造さん、そして、夏木マリさん、戸田恵子さん、吉行和子さん・・・、と、なかなか芸達者な役者さんを揃えていて結構楽しめました。ヒロインの橋本環奈さんは、こういったライトなノリの作品では、その朗らかな魅力が活きますね。湯道DVD通常版4550510080994生田斗真NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン〔映画〕湯道
1994年に公開されたアメリカ映画です。“復習モノ”のアクション・サスペンス作品ですが、設定やストーリーは今ひとつ工夫に乏しく、出来栄えとしては、“B級”の域を出ていません。キャスティング面で言っても、主役のジェフ・ブリッジスも、まだ中堅どころのフォレスト・ウィテカーも特筆するほどの存在感は発揮していません。強いて言えば、ちょっとサイコパス的な敵役を演じたトミー・リー・ジョーンズが目立っていたぐらいでしょうか。ブローン・アウェイ復讐の序曲[DVD]ジェフ・ブリッジス20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン〔映画〕ブローン・アウェイ/復讐の序曲
2020年に公開された日本映画です。ともかく、広瀬すずさんにフィーチャーした作品なので、内容は何でもよかったのでしょう。人気“コミック”の実写化が一番手っ取り早かったのかもしれませんね。しかしこの映画、広瀬さんを取り巻く出演者の方々はこれでもかというぐらい豪華絢爛です。吉沢亮さん、堤真一さん、リリー・フランキーさん、木村多江さん、松田翔太さん、柄本時生さん、西野七瀬さん、城田優さん、原日出子さん、真壁刀義さん、野口聡一(JAXA宇宙飛行士)さん、佐藤健さん、池田エライザさん、志尊淳さん、大友康平さん、竹中直人さん、妻夫木聡さん・・・このレベルの皆さんがほんの1シーンのために集められるのですから、作品としての力の入れようは半端ではありません。一度死んでみた広瀬すず〔映画〕一度死んでみた
2023年に公開された日本映画です。2021年に放映されたテレビドラマの「続編」という位置づけの作品です。「救急医療現場」が舞台の物語は、ドラマチックなエピソードを織り込みやすく、また登場人物の善悪がはっきりしたステレオタイプのつくりに仕立てやすいので、“単純エンターテインメント”に馴染みます。本作品もまさにそうで、あれこれあっても結局のところ予定調和のHappyEndに収まっています。まあ、気楽に安心して楽しめる作品も、時には貴重でしょう。劇場版『TOKYOMER~走る緊急救命室~』通常版[Blu-ray]鈴木亮平TCエンタテインメント〔映画〕劇場版『TOKYOMER~走る緊急救命室~』
かなり以前に読んでいた内田康夫さんの“浅見光彦シリーズ”ですが、このところ、私の出張先が舞台となった作品を、あるものは初めて、あるものは再度読んでみています。ただ、私の出張先も以前勤務していた会社のころを含めるとそこそこの都道府県にわたるので、どうせなら“浅見光彦シリーズ”の制覇にトライしてみようと思い始ました。この作品は「第20作目」です。今回の舞台は佐賀の“唐津”“有田”。唐津には昔熊本勤務時代に家族で訪れたことがあります。作品に登場している“呼子”にも足を伸ばしました。また本作品は“陶芸”がモチーフになっているのですが、“有田”にはここ数年、毎年のように顔を出しています。町の中心から少し外れたところにある「CHINAONTHEPARK」は深川製磁の工房やギャラリーがあって見学するだけでも楽しいです。...佐用姫伝説殺人事件(内田康夫)
2006年に公開された日本映画です。1976年、一連の「角川映画」のヒットシリーズの嚆矢として制作された「犬神家の一族」のリメイク版です。素人目には、新旧でシナリオや演出もかなり似通った感じなので、大きな違いは、キャスティングということになりますね。主要人物の犬神家の三姉妹は、旧作の高峰三枝子さん、三条美紀さん、草笛光子さんに対し、新作では富司純子さん、松坂慶子さん、萬田久子さん。ヒロイン役は、島田陽子さんに松嶋菜々子さん。どちらもその当時としては超豪華な面々で“甲乙つけ難し”です。そんな中、私としては、坂口良子さんと深田恭子さんの対比が一番際立ちましたね。坂口さんは、この後の横溝正史原作の金田一耕助シリーズには欠かせない存在感を醸し出していました。犬神家の一族(2006)[DVD]石坂浩二KADOKAW...〔映画〕犬神家の一族(2006)
1988年に公開された日本映画です。原作は、井上靖さんの同名の小説なので、どの部分までが「史実」なのか・・・、当時隠匿された幾万もの経典が20世紀に発見され“敦煌学”の礎となったのは事実ですが、それ以外はどうなんでしょうね。さて「映画」としての印象ですが、ストーリーで惹きつけられるというところはなく、また、役者の方々のパフォーマンスも、異国の長期ロケで大変だったとは思いますが、正直なところ特筆して云々ということもありませんでした。見どころといえば、多数の人と馬を動員しての大規模な戦闘シーンぐらいでしょう。中国を舞台にした日本の時代劇のようで、やはりちょっと不自然さが先に立ったようです。敦煌[DVD]西田敏行KADOKAWA/角川書店〔映画〕敦煌
2024年に公開された日本映画です。30年以上前の東野圭吾さんのミステリー小説が原作の作品ですが、映画化にあたって、そこそこストーリーに手が入っているようです。なので、原作を踏まえたミステリーの出来としての評価はできませんね。ただ「映画」としてはどうでしょう・・・、出演者が「劇団員」ということで意識的だったのかもしれませんが、台詞回しは妙に不自然、演出も、役者さんが整列して順番に演技といった“学芸会”的なノリで、かなり残念なレベルでした。ある閉ざされた雪の山荘で重岡大毅〔映画〕ある閉ざされた雪の山荘で
1996年に公開された日本映画です。「必殺仕事人」シリーズのテレビドラマは結構リアルタイムで見ていました。本作品は、その「中村主水シリーズ」の幕引き、最終回との位置づけです。ラストシーンは、今後の復活があっても大丈夫なように“無理やりの連続性”は確保した形にはしていますが、これはこれで“TheEnd”にした方がいい出来栄えでした。ストーリーはともかく、出演者の面々の個々の存在感が格別でしたね。藤田まことさんのメリハリの利いた凄み溢れる表情はもちろん、敵役の津川雅彦さんの“怪演”はまさに彼ならではの迫力でしたし、ヒロイン役の名取裕子さんもとても魅力的でした。あとは、東ちづるさん、美保純さん、細川ふみえさんといった懐かしい方々・・・。最近は、こういった“コテコテのエンターテインメント時代劇”はめっきり見かけな...〔映画〕必殺!主水死す
2023年に公開された日本映画です。2020年公開の台湾映画の「リメイク版」とのことです。タイムトラベルものに代表されるように「時間」の見せ方の工夫は、映画の奇抜なプロットの定番のひとつですが、この作品の設定はなかなか秀逸でした。また、宮藤官九郎さんの脚本も“さわやか系”で、キャスティングと合わせてとても心地よいものだったと思います。そのキャスティングですが、やはり最高に魅力的だったのは、やはり清原果耶さん。気になる若手女優さんの筆頭格ですが、こういう自然体のキャラクタもいいですね。あとは、久しぶりの羽野晶紀さん。そして笑福亭笑瓶さん・・・。1秒先の彼[DVD]岡田将生TCエンタテインメント〔映画〕1秒先の彼
いつも聴いている大竹まことさんのpodcastの番組に著者の伊澤理江さんがゲスト出演していて、本書についてお話ししていました。漁船(第58寿和丸)沈没事故発生(2008年6月23日千葉県銚子市犬吠埼灯台の東方沖350km)から11年後の2019年、別の取材で訪れた小名浜港(福島県いわき市)での事故関係者たちの会話をきっかけに、その沈没時の状況とそれに対する公式報告の不自然さを奇異に思った伊澤さんが、事故の真相を粘り強い調査・取材で顕かにして行きます。数々の興味深いエピソードが記されていましたが、それらの中から特に私の関心を惹いたところをいくつか書き留めておきましょう。まずは、第58寿和丸の運輸安全委員会による事故報告書。それは、まさに東日本大震災が福島を襲った直後に公表されました。(p145より引用)そう...黒い海船は突然、深海へ消えた(伊澤理江)
2023年に公開された日本映画です。オンライン小説が原作とのこと、実写映画のほかにも、コミック・朗読劇・アニメなどいろいろなメディアで人気を博しているようです。物語は、“SFファンタジー”的なテイストですが、キャスティングも、目黒蓮さん、今田美桜さんという旬な二人のダブル主演で、要は「ロマンチック・コメディ」ですね。よくあるトラブルもおとなしめで、とても素直なストーリーだと思います。エンドロール後のワンシーンは続編を予期させるものですが、どうでしょうね。まさかですが、今度は「ヒロインもの」になるのでしょうか・・・。わたしの幸せな結婚DVD通常版[DVD]DVD通常版塚原あゆ子東宝〔映画〕わたしの幸せな結婚
2022-23年に放映された日本アニメです。「キャプテン翼」をはじめとして「サッカー」をモチーフにしたコミック・アニメはそれこそ山のようにありますが、ここまで“サッカー”らしくない描き方をされたものは寡聞にして知りません。ともかく、「方程式」だとか「化学反応」だとか、放送の半分が“ウジウジした独白”で埋まっているので、私にはまったく合いませんでした。こんなことを考えながらサッカーをしていて楽しいですか?と聞きたくなります。ブルーロック第12話二次選考(セレクション)〔アニメ〕ブルーロック
2011年に公開されたアメリカ映画です。ネタバレで済みません。「二重スパイ」という設定は“ひと昔前のスパイ映画”といった趣きですが、ラストのサプライズで、二重スパイをさらに交錯させたのはなかなか面白いアイデアですね。ただ、キャスティング面でいうと、ちょっとピンときませんでした。リチャード・ギアといえば、私の場合、「プリティ・ウーマン」や「ShallWeDance?」をまずは思い浮かべてしまうので、本作での“冷酷なスパイ”という役柄にはちょっと線が細く、押し出し不足といった感じは否めませんでした。顔のないスパイDVDリチャード・ギアTCエンタテインメント〔映画〕顔のないスパイ
2007年に放映された長編テレビドラマです。松岡圭祐さんの小説が原作ですが、サイトの情報ではドラマ化にあたってかなり内容が変わっているとのことです。ドラマのストーリーの方は、正直な印象を言えば“意味不明???”でしたね。ありとあらゆるエピソードがそれぞれ雑なつくりなので、関連があるようでどうにも中途半端、ミステリーとしての構成が甘々です。これでは観ていても納得感は生まれて来ません。まあ、「深田恭子」さんが出演していることに意味があるドラマですから、そのあたりの不満を言ったところで筋違いということでしょう。その点では、予想どおりの出来栄えの作品でした。蒼い瞳とニュアージュ[DVD]萩原聖人ソニー・ピクチャーズエンタテインメント〔ドラマ〕蒼い瞳とニュアージュ
2015年公開のフランス映画です。この頃のジャン・レノが主演の映画なので、そうだろうなと思いつつでしたが、やはり予想通りの“B級アクション”作品でした。物語性のないストーリーと見境のない銃撃シーン、こういう大雑把なつくりでは何とも批評のしようもありません。肝心のジャン・レノも、顔も体形も“ふくよか?”になって重量感だけは発揮していました。ザ・スクワッド(字幕版)ジャン・レノ〔映画〕ザ・スクワッド
いつも聴いている大竹まことさんのpodcastの番組に著者の物江潤さんがゲスト出演していて、本書の紹介をしていました。最近のネット社会で流布している情報は間違いなく“玉石混交”ですが、その中には「いくら何でもそんなことはあり得ないでしょう」といった類の信じ難い内容のものも流通しています。本書は、物江さんによるそういった「妄説」が流れる実態の解説本です。ともかく“事実は小説より奇なり”、ここまで浸食されているのかと大いに驚いたのですが、そういったネット社会と付き合ううえでの警鐘として、「検索すればするほどデマを信じてしまう」の章では、物江さんはこう指摘しています。(p117より引用)フェイクニュースの生みの親は、実は自分かもしれないということ。そしてその多くは、正義感・使命感・感動といった感情の高ぶり、高揚...デマ・陰謀論・カルト(物江潤)
2009年公開のアメリカ映画です。絵に描いたような典型的な“サスペンス”作品ですね。ただ、最後のサプライズまで含めて、ここまで完全に“王道の構成”でストーリーが作り込まれていると、その完璧性故に逆にインパクトが薄れてしまいます。綺麗に並べられたパターンの積み重ねで物語は進んでいくのですが、ひとつひとつのパートを振り返ってみると、結構強引であったり詰めが甘かったりしているんですね。せっかくのマイケル・ダグラスも、その演技の凄みを発揮する場がなかったように思います。ちょっと残念でした。ダウト~偽りの代償~[DVD]マイケル・ダグラスHappinet(SB)(D)〔映画〕ダウト〜偽りの代償〜
2022年公開のアメリカ映画です。原作は、伊坂幸太郎さんの小説、ドラマの舞台も日本です。ただ、日本国内でのロケが実現しなかったいうこともあり、例のごとくとてもデフォルメされた“日本風景”が描かれています。こればっかりは何とかして欲しいと切に思いますね。作品は、私にはまったく合いませんでした。ストーリー展開も映像もゴテゴテした混乱の極みで、とても落ち着いて楽しめるような出来ではありません。主演がブラッド・ピットだったという作品です。ブレット・トレインブルーレイ&DVDセット[Blu-ray]DVD+ブルーレイ(DVD本編ディスク/2Dブルーレイ本編ディスク)デヴィッド・リーチソニー・ピクチャーズエンタテインメント〔映画〕ブレット・トレイン
1978年公開のイギリス映画です。「傭兵物戦争映画の傑作として評価されている」とのことだったので観てみたのですが、私にはその良さがまったくわかりませんでした。「結局、この命がけのミッションは何のためだったのか」という不完全燃焼の思いだけが残った映画です。傭兵たちの戦場での理解不能な行動の連続で、これを見て気分が晴れるのでしょうか・・・。本来は複雑な想いが交錯して演出の腕の見せ所であろうラスト・シーンも何の工夫もなく、二人のやりとりにも感情の深みは感じられませんでしたし、映画の内容の悲惨さ、理不尽さにも関わらず最後のBGMは軽いテイストの曲でした。ワイルド・ギース[DVD]リチャード・バートン東北新社〔映画〕ワイルド・ギース
2020年公開の日本映画です。「AIの暴走」というモチーフは在り来たりですが、まあ“シンギュラリティ”が話題になっているころでもありタイムリーなテーマだと思います。ストーリーとしては、“サスペンス”ものだとすると、主犯が登場したと同時にミエミエになる配役なので意外性もなにもありません。となると、やはり、今こういった“リスク”という切り口でAIを取り上げて、その存在意義について本作に語らせた“メッセージ性”をどう評価するかということでしょうね。ちなみにエンターテインメント作品とみたときのキャスティング面では、大沢たかおさん、松嶋菜々子さんは無難な“王道”の配置でした。あと、主人公をとりまく特にデータセンターのメンバーはなかなか多彩で良かったと思いますね。ただ、三浦友和さんと広瀬アリスさんは、役どころとして中...〔映画〕AI崩壊
このところ気分転換に読んでいるミステリー小説は、シリーズ読破にチャレンジしている内田康夫さんの“浅見光彦シリーズ”に偏っているので、ちょっと息抜きとして、今まであまり読んだことのない作家の方々の作品にトライしてみようと思っています。手始めに、これまた今まで意識的に避けていた「有名な文学賞」を受賞した作品から当たろうと考えて本作品を選んでみました。第151回直木賞受賞作です。さて、エンターテイメント小説なのでネタバレになるとまずいので内容には触れませんが、読み終えた感想としては、正直なところ「こんな感じかぁ・・・」といった印象でした。全編大阪弁のやりとりでテンポよくストーリーは進んでいきますし、特殊な業界のディーテイルもしっかりと書き込まれているのでそれなりの密度は感じますが、物語としてのプロットや登場人物...破門(黒川博行)
1991年公開のアメリカ映画です。「心の旅」という邦題は、あまりセンスを感じませんね。ストーリーはどう評したらいいのか・・・、ハートウォーミング系なのでしょうが、ちょっと作為的過ぎて私にはあまり合いませんでした。ただ、出演した役者のみなさんの配役とパフォーマンスはそれぞれにとても良かったですね。ハリソン・フォードをはじめとして家族役のアネット・ベニング、ミッキー・アレンはピュアな演技で好感度最高でしたし、ビル・ナン、エリザベス・ウィルソンは主人公のよき理解者としての優しさを十分に表現していました。あと、外せないのが“バディ”、ビーグル犬。Takeを重ねたのでしょうが、愛らしくかつユーモラスな演技はお見事、“オスカー”級だったと思います。心の旅[DVD]ハリソン・フォードパラマウントホームエンタテインメント...〔映画〕心の旅
2007年制作のイギリス映画です。原題は「Flood」、シンプルに文字通りですが、邦題「デイ・アフター首都水没」になると、いかにも“B級デザスター映画”感満載になりますね。内容はまさにその通りでした。ある程度登場人物が出揃ったところで、最後までのストーリーラインがほとんど想像できてしまいます。物語は、二組の家族のエピソードで進んでいきます。ただ、その2本柱は、ワンシーンだけ同じスコープに映り込むものの物語としてはまったく絡み合いません。サブの柱はいったい何だったんだろうという感じです。あと、気になったのは副首相役で出演していたデヴィッド・スーシェさん。テレビシリーズの「名探偵ポアロ」役の印象があまりにも強烈過ぎて、ポアロ以外のどんな役を演じても“ポアロの姿が二重写し”になって何とも違和感を感じざるを得ませ...〔映画〕デイ・アフター首都水没
2013年公開のデンマーク映画です。「デンマーク」というのは珍しいですね。「特捜部Q」シリーズの第一作目とのことですが、シリーズものとして後続するのに必要な登場人物の設定や背景を織り込みながら、粛々と物語が進んでいきます。過度なアクションがないのも好印象です。“檻”という仕掛けは少々無理筋のところがありますが、ミステリアスな演出としては独創的ですね。主人公と相棒のキャラクタもそれぞれ一癖あってよかったと思います。決して“大作”ではありませんが、サスペンスとしては結構しっかりとした出来ですね。この感じなら次作も観てみようという気になります。特捜部Q~檻の中の女~[DVD]ニコライ・リー・コスアメイジングD.C.〔映画〕特捜部Q檻の中の女
2022年の映画です。「ジュラシック・ワールド/炎の王国」の続編で、「ジュラシック・ワールド」三部作の第3作目、完結編との位置づけです。今までの作品に比べて、ストーリーは一本調子でラストも“万人、安心”のHappyendですし、本作のウリである恐竜たちの映像も見慣れてしまってインパクトはありません。今日のレベルでは、“並”のエンターテインメント作品と言わざるを得ないでしょう。とはいえ、以前の作品の主要メンバーが数多く登場人物していたり、ところどころに何某か過去の映画の「オマージュ」を想像させるシーンが織り込まれていたりと、昔からのファンに対するサービス精神は大いに感じられますね。しかし、こうやってシリーズ作品を何本か観続けると、やはり第一作目の「ジュラシック・パーク」の衝撃は絶大だったと改めて感じます。当...〔映画〕ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
2016年の映画です。“中途半端なB級サスペンス”かと思っていたら、実話に基づく作品とのこと。ちょっとビックリですが、どこまでがノンフィクションで、どのあたりがフィクションなのか気になりますね。ちなみに私は、いわゆる「B級映画」は嫌いではありません。ストーリーもシンプルで無暗に大げさな演出もなく、単純に楽しめる作品が多いように思います。メキシコ国境が舞台で、ちょっとラテン的な雰囲気のこの作品もまさにそうでした。ラストも予定調和的なHappyendですが、微笑ましいシーンで良かったですよ。12hoursDEA特殊部隊[DVD]ショーン・ロックアメイジングD.C.〔映画〕12hoursDEA特殊部隊
知人のSNSで紹介されていたので気になった本です。磯崎新さんについては著名な建築家という程度しか知りませんが、昨年(2022年)暮に訃報が流れ、改めてその人となりの一端なりともたどってみようと思いました。本書は、現都庁建築時のコンペの場を舞台に、磯崎さんの魅力的な人物像と彼を取り巻く様々な人たちとの営みの様を描き出しています。まずは舞台となった1985年に行われた新宿新都庁舎コンペ(設計競技)についてです。本書で詳述されている鈴木俊一東京都知事(当時)と丹下健三氏との関係を踏まえると、多くの人々は“出来レース”として仕立てられていたのだろうと考えていたようです。(p356より引用)丹下健三が鈴木都知事と共に設立した「東京都設計候補者選定委員会」のメンバーが、新都庁舎コンペを組織し、かつ審査員の大半を占める...磯崎新の「都庁」―戦後日本最大のコンペ(平松剛)
2012年公開の日本映画です。珍しく“地方農業”をモチーフにしたシリーズものの第一作目ですが、内容は、“コミック”を原作としたようなテイストのホームコメディですね。いろいろな意味で“ご都合主義”的な色合いが濃いので、好みは分かれるでしょう。まあ、私としては、こういった単純に観ていてホッとするようなエンターテインメント作品は嫌いではありません。キャスティングもよかったです。柄本明さんや石丸謙二郎さんといったバイプレーヤーとして定評のある役者さんを配したうえで、主役の陣内孝則さんと田中麗奈さんはそれぞれに自分たちの持ち味を十分に発揮していました。特に、陣内さんはこういったコミカルな役柄もうまく演じ切りますね。種まく旅人~みのりの茶~[DVD]陣内孝則TCエンタテインメント〔映画〕種まく旅人〜みのりの茶〜
2015年公開のサスペンス映画です。私の好きなロバート・デ・ニーロが出演しているというので観てみました。バスジャックを舞台にしたモチーフ自体には目新しさはありませんが、ストーリー展開がテンポよく、伏線とサプライズもなかなか良かったと思います。あと、登場人物のキャラクタ設定が秀逸でしたね。ちょっとご都合主義的なところもあってそのぶんリアリティは失われてしまっていますが、エンターテインメントとしてはとても効果的でした。肝心のロバート・デ・ニーロもラストに向かうにつれて役割の重みが増していき、しっかり作品を引き締めていましたね。流石です。正直なところ、観る前はあまり期待していなかったのですが結構楽しめました。私としては十分満足できる出来栄えの映画でしたね。タイム・トゥ・ラン[DVD]ジェフリー・ディーン・モーガ...〔映画〕タイム・トゥ・ラン
2014年の作品です。比較的最近のニコラス・ケイジ出演の映画なのでほとんど期待せずに観たのですが、やはり“期待どおり?”でした。ニコラス・ケイジの演技が酷いわけではないと思うのですが、どうもこのところの彼の出演作品は、そもそものプロットが雑な上にストーリー展開にも新機軸がなく、さらにラストに至っても締まりがないものが多いのでしょう。本作品も、かなり無理筋のプロットですし、相棒の行動も背景や動機の描写がないので意味不明でした。なので、観終わっても「何だったんだろう、この映画は・・・」といった印象なんですね。ラスト・リベンジ[DVD]ニコラス・ケイジHappinet(SB)(D)〔映画〕ラスト・リベンジ
1981年の作品ですから、今から40年以上前のものです。原作は、言うまでもなく池波正太郎さんの代表的な娯楽時代小説シリーズ。主人公は、タイトルそのままに、“仕掛人”鍼医者藤枝梅安です。エンターテインメントに徹したストーリーに加えて、善悪がはっきりしたキャラクターなので、映画に仕立てても単純に楽しめますね。そして、当時の映画のもうひとつの見どころはキャスティング。萬屋錦之介さん、中村嘉葎雄さんという兄弟共演に、悪役の伊丹十三さん、中尾彬さん。女優陣は、小川真由美さん、宮下順子さん、真行寺君枝さん、と時代を感じつつも豪華な面々が並びます。映画「仕掛人梅安」出演萬屋錦之助/小川真由美/〔映画〕仕掛人梅安
2003年、金曜ロードショーの枠で放映された作品です。その点では「ルパン三世カリオストロの城」のような本格的なアニメ映画ではなく、「TVスペシャルシリーズ」との位置づけのようですね。とはいえ、結構しっかりしたストーリー構成で、ルパン三世シリーズの中でもかなりいい出来だったと思います。ルパン三世はもちろん、次元大介、石川五エ門はそれぞれのキャラクタを活かした見せ場がありましたし、峰不二子のアクションも冴えていました。敵役が見せたラストシーンも、それまでの伏線を回収して余りある印象的な幕切れでしたね。ルパン三世お宝返却大作戦!![DVD]栗田貫一バップ〔映画〕ルパン三世お宝返却大作戦!!
いつも利用している図書館の新着本リストで目に付いた本です。タイトルをひと目見て予約したのですが、長大な時間軸の中からどんなエピソードをピックアップするのかとても興味が湧きますね。紹介されている多彩なトピックや解説の中から、特に私の関心を惹いたところをひとつ書き留めておきます。(p266より引用)今後数千年のあいだに、ホモ・サピエンスは消滅するだろう。・・・人類の生息域は地球全体だが、人類は積極的に生息に都合の悪い環境をつくってきた。人類絶滅の最大の理由は、人口の移り変わりがうまくいかないことだ。人類の人口は今世紀中にピークを迎え、その後減少へと転じる。・・・先史時代、太古のむかしの出来事により、遺伝的な多様性が足りないこと、現在の生息地の喪失による絶滅負債、人間の行動や環境の変化による少子化、より局所的な...超圧縮地球生物全史(ヘンリー・ジー)