静寂と躍動。抽象画の登場によって、絵画は対象やテーマの呪縛から解き放たれて音楽と同じ力を持つようになった。野中氏の個人史においては、20代終わり、60年になんなんとする画業の初期にこの転換は起こった。幼年期にすでにカラーチップで飽かず遊んでいるような子供であったそうだから、それは遅すぎる発露だったのかもしれない。楽器で心の赴くまま即興的に音を鳴らすように、抽象画にはまったく自由に色彩とフォルムを置いて、コンポジションを形づくる喜びがある。水平と垂直の矩形が交差する画家の作品に特徴的なシンプルなフォルムは、物思わしげな形がつくってしまうお定まりの具象風景や俗な物語世界に流れ、抽象画の基準線から逸脱してしまうことを拒んでいる。自作の絵の具によるオリジナルな色とその物質感、和紙特有の色彩の重なりが生み出す絶妙な...野中光正&村山耕二展2023/11/20Mon.~26Sun.11:00~18:00●野中光正在廊日11/23(木)~24(金)