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  • 喪失 小田 晃

    (プロローグ)寒さでブルっと震えた拍子に目が覚めてしまった。気のすすまぬままベッドから抜け出し、入念に顔を洗い、髭を剃り、髪を梳かし、テーブルに昨夜用意しておいたクロワッサンを二つ、ぬるめに温めたカフェ・オレとともに腹に入れた。これが最後に口に含む朝食だと思うと、カフェで口にするたいしてうまくもない、いつもの食事が幾分愛おしく感じられるのが不思議だった。もう一度洗面台に向かい歯を磨き上げ、1週間前に出来上がってきた仕立てのよいスーツの内ポケットの奥底には、ベレッタ銃を注意深くしまい込んだ。9mm弾だが自分の頭を吹き飛ばすには十分だろう。何年も前になるが、明子に臓器移植するために、自分の命を棄てようとして、ツテを使ってフランスから密輸入した同じ銃を手にしたかったのである。その時日本に持ち込んだベレッタは、明子に脳...喪失小田晃

  • 棄てる(9) 小田 晃

    (28)まず必要なものは、エアコンだ。家電量販店で一番安いのを買おう。それからペットボトルの水を箱買いしておこう。最小限の食べ物として、ノンカロリーのコンニャクゼリーをかなりな量確保しておく必要がある。味つけの人工甘味料が心を少しは宥めてくれる。身体を出来るだけ永くかけて徐々に弱らせながら死に至らしめることで明晰な思考力を保ち、書き続けることを目指す。これがオレなりの餓死のあり方を考えた結果である。また、死後の状態の醜悪さを少しでも回避するために、エアコンを最低温度に設定してかけ続ける。電気代はオレの残りの預金通帳に残った金で支払えるだろう。さて、後は強烈な下剤で腸内の消化物を排泄し尽くし、体力があるうちは自分でトイレで用を足すが、いよいよ足も萎えてしまったら、後は介護用のおむつに頼ることにする。これも自分で取...棄てる(9)小田晃

  • 棄てる(8) 小田 晃

    (24)AIやIOTによって、従来の退屈極まりないルーティーンワークを、人間の代わりになって、人間以上に効率的にやってくれることになるのは必然だし、そのことによって、ロボットに人間がとって替わられるなんて怖れているようではダメだ。そんな思考回路ではイギリスで起こった産業革命時のラッダイト運動と本質はまるで変わらない。幸いと云おうか、政府統計によれば人口減少はますます進むらしい。令和という元号になってから、日本の出生率が過去最低なのだそうだ。まあ、世の中の仕組みが激変してきているのである。政府統計なんかそのまま信じるほど素朴ではないが、人口減少がAIやIOTと帆走するようにして、これからの日本は発展していく方法を見出すのが、知恵の意義ではないか!オレは、これまでのような単純労働も含めて、知的労働だと認識している分...棄てる(8)小田晃

  • 棄てる(7)

    (20)AIだとかIOTだとか、それに伴うデジタル時代の到来によって、ロボットが人間の仕事を奪う、という恐怖感と多くの人々は闘っているのだそうだ。ぼんやり眺めているテレビ報道や討論番組の論調は、ほぼ同じように時代が変わり、仕事の質量も変わるというような感じだ。しかし、そういうことをテレビ番組の司会者や多くの論者たちは、事の本質を伝えている側であるからこそ、自分たちは安泰だと云う顔をしているのを観ると、オレはついつい吹き出しそうになる。何故って、この時代、誰もが例外にはなれないということだからね。特に激変をまともに食らうのは、大学を出て、就職活動をして職を得た中間層の人間たちだと云うことは当然のことだとオレは思う。だって、彼らの事務仕事や営業の仕事等々こそがAIの得意な分野ではないか!事務仕事をコンピュータを操っ...棄てる(7)

  • 棄てる(6) 小田 晃

    (17)オレは自分の卑近な経験則から、恐らく世界を支配している実体が何であるのかということに気がついたのである。世界はすでに機械化されていると言っても過言ではない。我々がこの世界に存在したいと願うなら、機械化された世界の構造の中に身を委ね、時折は不満タラタラでよいが、適度なところで自分に「世の中こんなものだ」などと言い聞かせ、不満の炎(ほむら)に自ら水をかけるのである。こういう自動機械論も思想の一片には違いないが、思想にはそもそもある考え方から別の考え方へと変化・変節していくエネルギーが内包されている。しかし、自動機械論にはそういう意味のダイナミズムは微塵もない。また、大多数の人々を支配する自動機械論は常に体制に歯向かうことがない。日常語でいうと、世の中の決まり事に対する無批判な盲従や世間様に対する見栄の保持な...棄てる(6)小田晃

  • 棄てる(5) 小田 晃

    (14)あれから何年も経ってから、中山が展開していた店舗がすべて閉店の憂き目に遇っていたことを知った。その頃すでにオレは中山たちに関心を失ってしまっていたので、たまたま河原町をフラフラしていたら、河原町通りに面する店舗が閉まっていることに気がついた。京都市内の中山が経営する全ての店舗に行ってみたら、どの店舗も閉鎖されているか、別の店に変わってしまっていた。あの小賢しい中山なら、別の事業を新らたに立ち上げてうまくやっているのだろう、と云う想いで舌打ちしてしまったが、ともあれ岡崎のペントハウスの様子を見てやろうと足を運んでみたら、管理人の話では夜逃げ同然にマンションから立ち退いたのだ、という。中山もかつてのオレのように、理恵に棄てられるのだ。中山に対してザマを見ろという気持ちより、不思議なことに憐憫の情さえ湧いて来...棄てる(5)小田晃

  • 棄てる(3) 小田 晃

    (11)上司の中山は抜け目のない男だったと思うが、唯一の計算違いは理恵という女を甘く見たことだろう。男と遊びまくっている女だ、オレもこの女を味わい尽くしてやろう、と欲を出したのがそもそもの間違いのもとだった。理恵という女は単なる全方位型の男狂いではなかった。彼女のゆるい股は、最もうまそうな餌を探すための有効な道具だったと断定してもよいのではなかろうか。妻子ある中山は、求めればすぐに応じてくる理恵を理想的に便利なセックス処理の対象だと錯誤したのだ。中山にしてみれば、オレのようなバカで世間知らずの部下に結婚相手として押し付けることで、危機を乗り切ったつもりでいたに違いない。しかし、理恵の食指にひっかかった最高の獲物は実は中山の方だった。理恵がオレとの結婚を承諾したのは中山を油断させる手段だったのである。まあ、それほ...棄てる(3)小田晃

  • 棄てる(3) 小田 晃

    (8)オレはこの歳になるまで、あまり物事を深く考えない人間だったと正直に告白すべきだと思っている。若い頃は殆ど皮膚感覚で、いやだ、おかしい、と感じていることにも言語化出来ずに結局は人から勧められるまま斜陽の呉服問屋に就職したし、上司から勧められるままに職場結婚した。紹介された女はオレには不釣り合いなほど男の欲情をそそるタイプの女だった。オレに断る理由など何一つなかった。愛を育むなんて概念も分からないまま、25歳で結婚した。妻の理恵は二つ年上だったが、確かにオレは舞い上がった。理恵は結婚後も仕事を続けたが、オレはそれでよかった。呉服問屋の給料はよくなかったし、共働きでないと経済的な将来展望など持ちようがなかったからだ。理恵も働きたいと言っていたから、当時のオレには願ったりかなったりだったというわけだ。その頃の理恵...棄てる(3)小田晃

  • 棄てる!(2)

    (6)最近、身体が自由に動かないのでかえってスポーツに興味が湧くから不思議だ。腰の骨を折って、自由歩行に支障を来すまでの長い期間、オレはずっと運動なんかに興味のひとかけらも抱かなかったのに。そう云えば、テニス界の貴公子なんて謂われているロジャー・フェデラーはスイスの選手らしいが、昨今彼はドバイに住居を構えているという。フェデラークラスになると世界中にいくつも住居はあるだろうが、本拠地としてドバイに住まいを構えているらしい。何でなんだ?ドバイは所得税がないのだそうだ。彼みたいに年間億単位で稼ぐ人々にとっては金にものを云わせて、税金を払わない方法を実際にやってのけられる。ジョコビッチなんて、モナコ公国に住んでいるそうだ。ここも所得税はとられないらしい。が、住むには億単位の資産がなければモナコ公国の市民にはなれないそ...棄てる!(2)

  • 棄てる!(1)

    棄てる!小田晃(1)西向きの窓から差し込む陽ざしが、薄っぺらなカーテン越しに容赦なく照りつける。まだ6月だというのに、昨今の日本の気候はどうかしていて、オレが子どもの頃の夏休みの朝の、蒸せるような暑さと同じくらい厳しい。今朝も全身汗まみれで起こされた。そう、毎朝オレは目を覚ましたくもないのに、この暑さで無理やり起こされる。全身汗だくだ。家賃3万5千円の二階建て木造アパートで、風呂は勿論ない。だいぶ歩かないと銭湯がないし、そこも経営者が爺さん婆さんの二人なので、そのうち閉まることになるだろう。玄関を入ったすぐ横に流し台とカタチだけのガスコンロがある。板間の台所兼リビングのつもりだろう空間に、小さなテーブルと椅子が二脚置いてある。オレが座るのは決まって玄関から遠い方で、もう一脚はまず誰も座らない無意味な存在だ。家具...棄てる!(1)

  • エレジー(2)

    エレジー小田晃(30)翌日、遅い朝食をホテルの近くの喫茶店で軽く済ませ、電話で信田に礼を言い、帰りの阪急電車に乗り込んだ。車窓から見える神戸の風景がじんわりと心に沁み入るように見えるのがありがたかった。それを眺めながら、数日後にもどって来る多恵との今後をどうすべきかを考えようとしたが、文男は眠りに落ちた。文男の存在そのものが、考えることを拒否したのだ。数日して、玄関から多恵のいつもと変わらぬ声がした。―文男さん、帰りました!ほんとにありがとう。両親があなたにくれぐれもよろしく伝えておいてほしい、と言っていたわ。私からもお礼を言います。ありがとう。母も近々退院出来るそうです。―そうか、よかったなぁ。君もたいへんだったな。今夜は一緒に食事に行こう。多恵の慰労会だよ。そう言ったとき、文男の今後が決まったのである。自分...エレジー(2)

  • エレジー

    エレジー小田晃(1)田村文男は、歳を重ねるにつれて深い憂鬱に襲われことがおおくなった。この数年間特にそうだ。夜は殆ど眠れない。どうやら生きていくための基本的な心身の仕組みに本格的なガタが来ているようだ。騙し騙しやって来たが、医者の意見も聞いておくか、と文男にしては珍しく総合病院の門をくぐった。問診の後、MRIの検査をするというので、何だか大げさなことになってきたな、という想いと同時に、何やら嫌な予感めいたものが頭の中を駆け巡った。何時間か待たされて、その日のうちに検査結果が出るのだという。昨今は随分と医療も進んだものだ、と感心して診察室に入ったら、担当医はそれが患者にとっては気が楽だと謂わんばかりの、気楽な態度で癌宣告をしてくれたのだった。肝臓がんのステージ4だというではないか。抗癌剤は信用していなかったが、何...エレジー

  • 遅まきながら、アウトプットを!

    ひどく疲れた日々だった。ほぼひと月。別の側面から言うと、このひと月で、やっと自分の実年齢に意識が追いついたのかも知れない。ずっと何かにとりつかれたような日々を過ごしてきた。人生のどこから始まったのか?といえば、たぶん、もの心ついたころから、だ。ずっと焦り続けてきた日々の正体が、人生の終焉に近づいたいまになって初めて理解出来た気がするこの頃だ。これまでずっと自分に関わることをこの場に書き綴ってきたけれど、そして、それらを自己の人生の総括なんていう都合のよい言葉で定義してきたけれど、それはたぶん、大いなる誤謬だ。この場に書き綴ってきたことの殆どは、自分の馬鹿げた自己中心的な、生きた軌跡の言い訳である。自虐的に言っているのではなく、これは非常にリアルな感覚なのである。僕の人生のコアーは、一言で表現することが出来る。そ...遅まきながら、アウトプットを!

  • 無知の無知

    ソクラテスと云えば、<無知の知>という深い哲学的概念の意味を世界に投げかけた真正の知的存在である。ソクラテスのことに想いを馳せると、僕は、知性というものを誤解していた典型的なエセインテリとして生きてきたと、しばしば想う昨今なのである。簡単に敷衍し、換言すると、自分には人の数段上を行く理解力と創造力を兼ね備えているという、誤謬のオン・パレードそのものを生きてきた、ということなのである。たぶん、ごく最近まで、自分にとって大して怖いものなどこの世界に存在しない、と錯誤出来たのも、実はこの種の己に対する誤謬あるいは誤謬に対する無知ゆえである。もっと言うならば、自分が無知であることが分からず、小さな領域の知識を、自己の理解力とか、知性と思い込んでいただけのことだ。別に自虐的にものを言っているのではない。たぶん、世の中には...無知の無知

  • デラシネとしての生を生きるなんて、ダサいよ。ー自己への戒めとして語る。

    デラシネという言葉がある。フランス語から来たカタカタ語だそうな。言葉の定義は、<根無し草、故郷を持たぬ人>のことらしい。ずっと昔、少年の頃、五木寛之という作家(いまは仏教回帰のただのおっさんになりさがり、人生を分かったふうに啓発する本を書いて自己満足しているから、作家とは認めていない)の「青年は荒野をめざす」という文庫本を読んで結構感激して読んだ覚えがある。五木の作品はいくつか読み続けていたが、どの作品だったか、デラシネという言葉を拾い出して、それが頭から離れないだけの話なのである。その後興味が失せて、だいぶ長い間存在すら忘れていて、本棚の埃を被った古びた文庫本のいくつにさっと目を通してみると、どれもこれも何ともつまらない内実で、それどころか作家としても三流どころがいいところで、若き頃の読書なんてあてにならない...デラシネとしての生を生きるなんて、ダサいよ。ー自己への戒めとして語る。

  • ○省察(6)

    ○省察(6)23年間の教師生活に関わる観想をあらゆる角度から総括してきましたが、なぜかずっと不全感があり、そのことに苛まれていました。が、今日、理由が分かりました。「遠い空の向こうに」(OctoberSky)という映画を観たことで、僕の心の奥底にうもれていた感覚が呼び覚まさられたのです。この映画は、人間として生まれてきたことの意味、人には可能性が誰にもある、と思わせるだけの説得力を持っています。背景は、1957年のソビエトのスプートニク打ち上げの、ちょうどその時代の実話にもとづいた物語。斜陽し、閉山に追い込まれつつあるバージニア州の炭鉱町で、炭鉱夫になることを運命づけられた少年たちが、スプートニクに触発されて自らロケットを制作し、試行錯誤を繰り返した後に打ち上げに成功し、その結果、4人の少年たちは大学進学への奨...○省察(6)

  • ○省察(5)

    ○省察(5)人はあまりに耐え難き事象が身に降りかかったとき、しばしばリアルな視点を見失う。いや、もっと正確に言うと、過酷なリアリティを虚構に仕立て上げて自分をごまかすのである。かなりなリアリストであるはずだ、と自分に言い聞かせてきたし、この場に書き続けてきたことの殆どはそのような視点で貫かれていると思うが、実像からは程遠い虚構を書き綴ってきたことがある。今日、それを書くことにした。それは何度となく自分の父親のことを書き綴ってきたことである。この場に書き現した父親像とは、社会人としてはハミ出し者だが、豪胆にして、時として女性的とも云えるやさしさを持ち合わせた男として、僕の幼き頃からオトナの世界を見せてくれた粋な父親として登場する。無論、上記のような要素が現実にあったにせよ、それらを、いや、それらだけを強調すること...○省察(5)

  • ○省察(4)

    ○省察(4)人はどこまで行っても、他者と繋がりたいという想いが消し難く裡にある。しかし、その一方で、他者に対する言い知れぬ嫌悪感を抱くことから自由にはなれない。その意味で、ヒューマニズムは、人間のこの種の相反する心性を相殺させようとする壮大な試みであったことを僕は否定しない。が、それ以上に正しいと思えるのは、拭い難い瑕疵のごとき人の精神構造の方だ。もしも、ヒューマニズムというものが実現され得るとか、すでにそのような考え方に基づいた人の歴史が綿々と続いているなどと公言する人がいるとするなら、さらに云うなら、ヒューマニスティックであることが、人間のあらゆる高次元の心的現象の中の、極めて価値ある存在であると認識している人がいるとするなら、僕はそういう人を信用しない。今さらながら僕は想うのである。自分の言葉、言葉によっ...○省察(4)

  • ○省察(3)

    ○省察(3)あらゆる党派的思考というものが、僕は嫌いである。どういう意味でか?それは勿論、人が自由な個人という思想的闊達さ、それに伴って襲い来る負の要素、すなわち、思想的足場の危うさと精神的な脆さを伴ってこその思想に価値あり、と僕は思っているからである。人が党派的思想に甘んずると、当然のことながら、思想は一方向へと収斂されていくものであるゆえに、考える自由、考えあぐねた末に紡ぎだされる批判精神の芽生えを犠牲にすることになることは必然である。ならば、なぜ人は党派的思想に惹かれるのか?それは、元来人というのは、何かを構築すると、その結果はどうあれ、まったく無意味なものでない限り、構築されたものを保守しようとする心性があるからだ。このような心性は、表層的な政治的保守主義とか進歩派、革新派などの区分けに関わりなく、思想...○省察(3)

  • ○省察(2)

    ○省察(2)「失敗多き人生だった」などと、僕はこの場でしばしば書いてきましたが、僕にとっての失敗とは実のところ何だったのか?と、このところ考えることが多くなりました。確かに現象的な失敗譚は数え上げればキリがありませんし、その意味では僕という人間はいかにも出来の悪い男だとも思います。悔やんでも悔やみきれないほどです。多岐に渡る出来事、それもあまりいいイメージを持てないそれらは、僕の中では、あるひとつの慨嘆と連結しています。それは、自分という人間は、他者のために何かを、いや、何一つなし得ることが出来なかったのではなかろうか?ということです。時折、過去に関わった人から自分のその折々のイメージを聞かされることがあります。直接的・間接的にあります。そういうとき、自分の中の思い出というものを掘り起こしながらの過去への傾斜に...○省察(2)

  • ○省察(1)

    ○省察(1)意味あって、過去を捨て去ろうという想うのはよくあることです。想えば、唾棄したくなるような出来事というのは、生きている限りいくらも襲い来るものだからです。どうしようもなく耐えられないものに押し潰されそうになると、人は生理的に、そう生理的に、なのであって、いろんな理窟をつけて思想的あるいは論理的に過去の出来事を唾棄するのではないのです。角度を換えて言いましょう。人が過去をかなぐり捨てたいと思い、実際にそのように行動するのは、生存本能がそうさせているからです。自分の過去がどうにもこうにも耐え難きものだ、ということに立ち至ったとき、とるべき路は二つしかありません。生存本能が勝っていれば、思い切りよく過去を唾棄します。無論そういう生き方を選びとるのであって、実際には過去は消しようもなく体内に残存し続けます。そ...○省察(1)

  • ○3月のニューヨークで考えたこと。

    ○3月のニューヨークで考えたこと。その1:トロツキーの苦悩ー人の本質に気づいたことー堅牢たる保守主義ー体制であれ反体制であれ人はいったん手中にした権力を保守するという心性ーそれを刷新し続けるために彼は世界同時革命と云い、そして世界永久革命と主張し続けた。不可能性への挑戦。トロツキーは思想の、あるいは人間の眼界性に殺されたようなものだ。チェ・ゲバラブームは忘れた頃に繰り返しやって来るが、それは人の心の片隅に眠っているトロツキズムへの夢想ー実現不可能なーが目を醒ますからだ。しかし、それは自らの保守主義によって葬られるというのに。その2:他の国のことはよく知らないが、アメリカもカナダもオーストラリアもイギリスも(僕が渡航したことのある西欧諸国はこれくらのものなんだけど)、日本の冠たるウォシュレットがないのはどうしたこ...○3月のニューヨークで考えたこと。

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