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2014/10/11

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  • あの家に暮らす四人の女

    三浦しをん/中公文庫2018年6月25日初版。2014年7月3日「まほろば駅前便利軒」でお目にかかって以来の二度目。あれから5年、作品の書き筋に変化はあったか、など少なからず興味を抱きながら読む。背景は杉並区の古い洋館で暮らす四人の女たちの話。読んでみると、筆の進め方、調子は以前に読んだ「まほろば駅前便利軒」と変わらないように思うが、内容は全く異なる。話のターゲットが違うのだから当然だが、女ばかりのかしましい話の裏側に「父親不在」という無意識的な問題がある。問題というよりも「在りようの不在」への問と言うべきか。実はこの作品は谷崎潤一郎没後50年という節目を迎えて創作されたものらしい。「細雪」の現代版である。「細雪」を読んだかどうか、記憶は定かでないが、「四人の女たちと朽ちてゆく名家」という設定は同じらしい。場所...あの家に暮らす四人の女

  • 回転木馬のデッド・ヒート

    村上春樹/講談社文庫1988年10月15日初版、1993年9月14日第15刷。著者によれば、この短編作品集は「スケッチ」のようなものなのだとか。何かのカスのように溜まっていく「おり」のようなものらしい。ともかく著者がある日ある時聞いた話としてまとめられている。「スケッチ」しようという意欲が起きる分だけ確かに奇妙な話しである。・レーダーホーゼンドイツ式吊り半ズボンと母の離婚・タクシーに乗った男Newyorkで買った「タクシーに乗った男」という絵・プールサイド水泳競技のように人生を折り返した男・今は亡き女王のため「他人がもたらす不在の痛み」98p・嘔吐1979見知らぬ人からの電話と嘔吐の関係・雨やどりその間に昔の編集者に会う「金で女を買う」話し・野球場学生の時、彼女が住む近隣に越した銀行員の話し・ハンティング・ナイ...回転木馬のデッド・ヒート

  • ユタが愛した探偵

    内田康夫/角川文庫2005年10月25日初版。今回の「旅と歴史」は沖縄。沖縄には現在もいろいろな民族的な古い風習や習慣がたくさん残っているらしい。3年ほど前の2016年6月20日「お祓い師」と題して、知人の話を掲載したことがある。この作品を読んでいて、それを思い出さずにはいられなかった。「ユタ」もその系列の人で、沖縄には今も随分たくさんの「ユタ」さんが居るらしい。「旅と歴史」としては琉球王国の盛衰と現代に残る風習が主要な話し。そこに、絡めて殺人事件が起きる。やがて浮かび上がってきたのは「10年前の両親の交通死亡事故」だった。沖縄の「ユタ」の存在は、何だか卑弥呼の時代と同じような感覚に陥る。色々な矛盾はあるのかもしれないが、それが現代と同居しているのだから面白い。それを許している人間の寛容力、許容力、包容力という...ユタが愛した探偵

  • ツナグ

    辻村深月/新潮文庫2012年9月1日初版、2012年10月15日第8刷。形式としては以前に読んだ「会計天国」とよく似たようなスタイル。最終章では主人公本人の総括的な内容になるのも同じ。話の内容は何の関連も無いが、ある条件のもとに、一部分だけ特別な仕組みを入れて、話をまとめ上げる手法。仕組みは約束事だから、不可能も無理難題も無視してファンタジックに、或いはミステリアスに作ってしまう。実のところ結構「重い」話なのだが、一切の宗教的な色を排して流れるように話しが続く。もともと「死」の世界そのものでなく、現世との繋ぎ目がテーマ。一貫しているのは、亡くなった人に対して、もしもう一度会うことが可能だとしたら、あなたは何をどうするか、という問いと同時にその実現サンプルを示すというもの。いうなれば「たられば」のことだから、最初...ツナグ

  • イタリア幻想曲

    ―貴賓室の怪人Ⅱ―内田康夫/角川文庫2007年10月25日初版。前作「貴賓室の怪人」はインドまでの航海で、そこから先がこの「イタリア幻想曲」になるらしい。前作の内容はすっかり忘れてしまったが、これはこれで楽しめる。出だしは兄の陽一郎が学生の時の話から始まる。今回は陽一郎が主人公なのかと思ったが、そうではない。陽一郎が体験したイタリアでの出来事が、37年を経て蘇るといういかにもそれらしい話し。それが、日本赤軍と聖骸布をからめて実にうまく歴史を利用して創作を織り込んでいる。そこにイタリア・トスカーナ地方の風光明媚はまったく似合わないが、カッシアーナ・アルタのヴィラ・オルシーニ家の館に埋もれている人間の歴史が悲しい。バジル・ディーツラー夫婦やダニエラ・デ・ヴィータ、通訳を務めた野瀬真抄子などこれからの若い人々に思わず...イタリア幻想曲

  • あなたは、誰かの大切な人

    原田ハマ/講談社文庫2017年5月16日初版、2017年6月20日第三刷。著者の作品は1月27日に読んだ「キネマの神様」以来2回目にお目にかかる。前作はファンタジックな部分もあって、映画館の廃館に伴う哀愁たっぷりの話しだったが、今回はグッと深刻で現実的な話しになる。女性が社会進出することで見えてきたいろいろな問題、立ち塞がる諸問題との対峙が深刻だ。改めて「社会」というものの実態が見えてくる。六つの短編が収録されているが、いずれも女性が主人公。「自立した」と言いたいところだが、ほとんどが悪戦苦闘状態である。そして何故か、登場する男の多くは既に他界しているか、ロクでもない奴が多い。そう言えば前作「キネマの神様」の、主人公の父親とダブってしまうようなところがある。どうも著者は男を「しょうもない、頼りにならない、役立た...あなたは、誰かの大切な人

  • 遺骨

    内田康夫/角川文庫2001年5月25日初版。浅見光彦シリーズNo.77、今回の旅は淡路島の北側、山口県の長門市仙崎、茨城県の足尾が中心。特に長門市仙崎は詩人金子みすゞの故郷であることから、興味深く読み進めることが出来た。金子みすゞの略歴やプロフィールを見ても、いまひとつ理解が及ばないのだが、こんな形で読んでみると、「とりあえず心に浮かんだ心象風景」とは言え、その風景が目の前に広がるから不思議なものだ。76p~の藤田編集長のご意見(西城八十との関係)は、成る程確かに、と納得する。それで「雑誌の売れ行きUP」を目論むというのはいかがなものかとは思うが。また、今回のもう一つのテーマは「人の尊厳」について、生命の観点から見つめてみるといもの。つい先ごろ読んだ「わたしを離さないで」に続く医療と移植に関係する「倫理」の問題...遺骨

  • わたしを離さないで

    カズオ・イシグロ(土屋政雄訳)/ハヤカワepi文庫2008年8月25日初版、2017年10月17日第66刷。「わたしたちが孤児だったころ」「遠い山なみの光」「日の名残り」に続く四作品目。別段著者の作品を求めているわけではないが、縁あって機会が巡って来た。個々の作品に独立性が高く、しっかりしていて読み応えがある。この作品も例外ではない。1990年代末、20年ほど前のイギリスが舞台。ある程度の規模の寄宿舎(寮)のような施設で子供たちが生活している。しかし、それは「特別な子供達」だった。淡々と語られる毎日の生活の中でいろいろなことが子供たちの成長と共に徐々に明らかになっていく。最初は孤児の集団かと思っていた。それにしては何となくおかしい。それが、具体的になったのは127pまで進んだ時だった。著者はこんな作品も書くのか...わたしを離さないで

  • 斎王の葬列

    内田康夫/角川文庫1997年5月25日初版。シリーズNo.61。今回はなかなかの力作。時の天皇の代理で、伊勢神宮で巫女として勤める皇女がいたことは承知していたが、それが「斎王」と呼ばれ、660年もの間、制度として引き継がれてきたことは知らなかった。勿論、往路(群行路)の5か所の頓宮についても初めて知り、その唯一現存する「垂水頓宮」も初めて知った。地図を見ながら浅見さんと同じように、伊勢までの皇女の群行に思いを馳せながら読み進んだ。話は「垂水頓宮」が中心だから復路(帰京路)のことは触れられていないが、復路は「垂水頓宮」を通らずに途中の壱志から南側の路を辿って京都へ帰るらしい。やはり復路にも頓宮はあったものと思われる。明和町のWebPageによれば、斎宮址が明らかになったのは昭和45年(1970年)、既に50年ほど...斎王の葬列

  • 「紫の女」殺人事件

    内田康夫/徳間文庫2014年6月15日初版、2014年6月20日第二刷。浅見光彦シリーズNo.52、今回の「旅」は静岡県の熱海及び網代が舞台。最初の登場人物が何と著者本人であった。どうやら網代のマンションで単身赴任して原稿を書いているらしい。自炊も得意なようでいささか感心した。そこに浅見が訪ねて来る、という寸法だ。しかし、著者は「お気に入り」かもしれないが、読者としては今一つ、印象の薄い作品だったように思う。「旅」という意味で熱海、網代や宇治は悪くはなかったけれど、京都の文化、古典文学の掘り下げが表面的で散漫な感じがする。毒殺の動機が極めて現実的なだけに、虚脱する作品だった。老舗の宇治・和菓子屋「薫り木」の伝統と継承の問題、源氏物語から採用した和菓子の名前(ネーミング)商標登録という問題などを絡めてのミステリー...「紫の女」殺人事件

  • 紅藍の女殺人事件

    内田康夫/徳間文庫2017年6月15日初。シリーズNo.43。冤罪で35年間も刑務所に入っていた人間が、やっと世間に出て来ると、たちまち新たな毒に侵されるという悲しい事件。「冤罪の恨みを晴らす」ではなく「恨みを利用されてしまう」というストーリーは、いささか悲しい。たとえどんな理由があったにしても、(そこは著者の倫理観なのだが)何らかの形で「禍福」を描いてもよかったのではないかと思う。冤罪に触れることはあっても、そこは身内の贔屓、過激な批判はしない。もはや過ぎてしまったことなのだから忘れろということなのか、当事者にとってそんなこと出来るわけがない。まったく怪しからんと思う。まあ、たかが小説なんだからそう怒りなさんなということか。折しも多感な時期、ちょっとしたやっかみ、嫉妬がやがて、嫌みや皮肉になり、そして深刻ない...紅藍の女殺人事件

  • 平城山を超えた女

    内田康夫/講談社文庫1994年1月15日初版、2009年2月23日第39刷。浅見光彦シリーズNo.42、今回の舞台は奈良県の平城山という所、地図を見ながら、想像力を膨らませて情景を思い浮かべながら読み進んだ。近鉄奈良駅の東に春日大社、その北側に向かって東大寺、二月堂、正倉院、般若寺と続く。平城山駅から木津駅の南北に線路と並行する国道はR24号線だ。一日で各所を観光しながら歩くには、ちょっと厳しい。何と言っても古い街、裏通りなどに逸れると、それだけで半日は掛かってしまいそう。今回のお相手は同業関係の阿部美果。K出版で文芸誌の編集者として仕事をしている。若いのに神社仏閣の拝観趣味で、それが祟りかこの度美術全集編纂室へ異動になるらしい。まあ、それはよいとして今回、奈良の新薬師寺本堂「黄金仏」と呼ばれる香薬師像が関係す...平城山を超えた女

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