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2014/10/11

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  • 日の名残り

    カズオ・イシグロ(土屋政雄・訳)/ハヤカワepi文庫2001年5月31日初版、2017年12月11日第36刷。著者の作品は「わたしたちが孤児だったころ」「遠い山なみの光」に続く三冊目。書かれたのは30年ほど前の1990年頃、時代背景は更に30余年さかのぼる1956年頃のこと。ダーリントン卿はチェンバレン首相、イーデン外相、リッペントロップの三人を館に招待し、極秘の会議を開くという場面がある。なかなか意味深長な作品で、いろいろな見方があると思われる。それはともかく、主に仕える「執事」という立場から、全幅の信頼を持って職務に邁進する姿勢、職業的な高い志、名誉、品格、美徳といった人生の究極目標とさえ思っていたものが、偉大で崇高であると信じていたものが、またその出来事の中心に関わることで職業的自負と誇りを築いてきたもの...日の名残り

  • キネマの神様

    原田マハ/文春文庫2011年5月10日初版、2017年6月10日第24刷。著者の作品は初めてお目にかかる。「マハ」なんてどんな意味で付けたのだろうと思ったが、ゴヤの絵のモデル名(絵のお題)から取ったらしい。それもそのはず、本職(元職)はキュレーターでもあるらしい。著者の信条は「度胸と直感」なのだそうで、ちょうどこの作品の主人公、円山歩に幾分相当と思われる。映画ファンにはたまらない一冊かもしれないが、とにかく映画好きであることは確か。絵画のほうが詳しいのかもしれないが、映画の方も負けてはいない。その熱い思いはそこかしこににじみ出て居る。しかし、町の映画館は世の趨勢というより、古典になる過渡期なのかもしれない。私の趣味、カメラでも同じようなことが言える。今やデジタル全盛で、周辺にはFilm自体見かけなくなってしまっ...キネマの神様

  • どうしてあんな女に私が

    花房観音/幻冬舎文庫2018年8月5日初版。著者の作品には「まつりシリーズ」というものがあるが、他にシリーズは特になし。単発の作品が多い。その中の一冊がこの作品で、最初の出版では「黄泉醜女」というお題になっているらしい。黄泉醜女は日本の神話に登場する鬼女のことらしいが、ここで神話を論ずるわけではない。主人公はポルノ作家という呼称が気に入らない桜川詩子という女流作家であるが、話をリードするのは木戸アミという女性編集者である。それは明らかに「首都圏連続不審死事件」の木嶋佳苗がモデルである。登場するのは全て「春海さくら」に何らかの関係がある女性で、そこで「どうしてあんな女に私が」というお題が生きてくる。関係者を取材するという形で春海さくらという人物像を明らかにしていく手法である。これは「女性心理学」の参考書かと思うく...どうしてあんな女に私が

  • 為吉

    ―北町奉行所ものがたり―宇江佐真理/実業之日本車文庫2017年10月15日初版。北町奉行所を中心に、その周辺で起きた事件を背景にして市井の人々の暮らしを織り交ぜて物語を構成する。主人公は呉服屋の息子だった「為吉」。幼い時、押し込みで家族が殺され、自分だけが残された。親の加護を失った主人公のその後のこともあるが、縁あって北町奉行所の中間になることが出来た。多くの罪人、咎人を見ながら、人間の本当の姿がどこにあるのか考える日々を送る。著者が世の中を見る目がそこにある。兄弟、姉妹の関係、親子の関係、夫婦の関係、人と人の関係、正義の在り方、罪人たちの投げた(露と消える)人生、これほど思い通りにならないものは他にあるだろうか。とても「運命」だけでは片づけられないものがある。最後に天涯孤独の主人公が中間を退き、親分の娘を嫁に...為吉

  • 禿鷹の夜

    逢坂剛/文春文庫2003年6月10日初版、2003年6月30日第2刷。5年ほど前に「百舌の叫ぶ夜」でお目にかかって、この作品で2回目。この作品の主人公は「禿富鷹秋(トクトミタカアキ)」刑事、通称「禿鷹」。ちょっと呼称には無理があるが、それはともかく暴力団を手玉に取る悪徳刑事が主人公。著者は主人公に対する思い入れは全く無いらしい。そのためか、いやに冷たく、同調も共感も難しいという、通常の主人公とはちょっと変わった雰囲気を漂わせている。主人公の恋人が殺される事件が、南米マフィアの進出と重なって、すっかり隠れてしまい、あたかも一連の事件のように思わせておきながら、最後、読者にドンデン返しを喰らわせる、というもの。この展開が面白いということもあるが、作品として注目するところは「愛すべき」「共感できる」「同調できる」主人...禿鷹の夜

  • 為吉

    ―北町奉行所ものがたり―宇江佐真理/実業之日本車文庫2017年10月15日初版。北町奉行所を中心に、その周辺で起きた事件を背景にして市井の人々の暮らしを織り交ぜて物語を構成する。主人公は呉服屋の息子だった「為吉」。幼い時、押し込みで家族が殺され、自分だけが残された。親の加護を失った主人公のその後のこともあるが、縁あって北町奉行所の中間になることが出来た。多くの罪人、咎人を見ながら、人間の本当の姿がどこにあるのか考える日々を送る。著者が世の中を見る目がそこにある。兄弟、姉妹の関係、親子の関係、夫婦の関係、人と人の関係、正義の在り方、罪人たちの投げた(露と消える)人生、これほど思い通りにならないものは他にあるだろうか。とても「運命」だけでは片づけられないものがある。最後に天涯孤独の主人公が中間を退き、親分の娘を嫁に...為吉

  • 高砂

    ―なくて七癖あって四十八癖―宇江佐真理/祥伝社文庫2016年4月20日初版。久々の宇江佐作品、現代で言う定年後の「又兵衛とおいせ」の二人の生活を以下6章で綴る市井時代小説。夫婦茶碗又兵衛、おいせの会所暮らしぼたん雪武家の嫁どんつくとび職人と菓子屋の娘女丈夫口入れ屋の婿灸花おえんとおこう、屁糞葛高砂又兵衛・おいせの人別人が居れば、人の数だけ悩みがあり、事情があり、厄介ごとがある。身近な問題として、少しでも周りの人のお役に立てればと奔走する主人公(又兵衛)だが、友人の孫右衛門の力を借りながら共に悩み共に汗して知恵を出す。思わしくない結果もあれば、雪解けのように消失する思いもある。改めて見えてくる大切なものもある。高砂

  • 村上朝日堂 はいほー!

    村上春樹/新潮文庫1992年5月25日初版。この作品は著者が34歳から39歳の間の、何かの折に書き付けたエッセイである。この作品によって著者の嗜好や性格、生活スタイルや思考がかなり明らかになっている。勿論、公然と披露し難いこともあるだろうけれども。従って、春樹ファンにとっては、かなり重要な一冊なのではないか、と思う。私はファンではないから、ただ漫然と読んでいただけなのだが。このエッセイを読んでいて思うことは、人間というのは恐ろしく多面的でつかみどころがなく、更に経年で変節してしまう部分もあるから、何が何だかわからないということである。何か一面をとらえようとすると、それは「個人的な偏見」になってしまう恐れすらある、ということである。ただ職業柄、言葉尻にはウルサイ。言葉のもつ重さや力(与える印象も含めて)について、...村上朝日堂はいほー!

  • 隻眼の少女

    麻耶雄嵩/文春文庫2013年3月10日初版。著者の作品は初めてお目にかかる。何でも既存のミステリー枠に囚われない「ミステリー」を開拓しているらしい。1985年冬、信州の山深い栖苅村、琴折家に代々継承されたスガルという村の守護者、後を継ぐべく三人の娘が次々と首を切り落とされて殺害される。この難事件に取り組むのは翡翠(左)義眼の娘・御陵みかげ、これをサポートするのが主人公の学生、種田静馬。いずれの登場人物も「訳アリ」で、一筋縄では行かない。みかげは事件に巻き込まれて父親まで失ってしまう。中ほど過ぎて(316p)突然エピローグ。確かに一応の解決を見た形ではあったが、ここから第二部が始まる。2003年冬、琴折家の事件からヒョイと18年が過ぎていた。「既存のミステリー枠に囚われない」ことは確かで、密かにヒロインと思われた...隻眼の少女

  • 樋口一葉「いやだ!」と云ふ

    田中優子/集英社新書2004年7月21日初版。何の著書かと思えば、これは大学の講義、或いはその余談集のようなものになるのだろうか。樋口一葉と言えば「たけくらべ」、「5千円札の肖像」くらいしか思い浮かばない。同じようなイメージで金子みすゞ(26歳)という詩人が居るが、どうもダブってしまう。江戸から明治初頭にかけて、いやさすがに詳しいこと、時代小説読者必携の参考書にもなるかもしれないくらいである。特に吉原の風景はよく解かる。時代小説は結構読んでいるつもりだが、ここまでイメージが描けるのはすばらしい。というか、ありがたい。時代考証の研究をしているわけでもないので、出典の原文を読むわけにもいかない。この手の解説本はいろいろとあるが、今ひとつ面白くないのが常。しかし、樋口一葉という人物、或いはその作品を背景にしての「文学...樋口一葉「いやだ!」と云ふ

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