chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
つむじ風
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2014/10/11

arrow_drop_down
  • ユートピア老人病棟

    江川晴/小学館文庫2009年9月9日初版。主人公湯浅マキがマダラボケ(初期認知症)になり、息子夫婦が専門病院へ連れて行く。本人はだまされた感覚なのだが、入院生活をするうちに人生を見直すきっかけになる。認知症に対する患者への愛情と理解をより深めるために一冊、或いは老いの価値の再認識ともいえる一冊であった。人(老人)が闊達にいきいきと暮らすには、1.好奇心、物事に興味を抱くこと2.得意なこと、好きなことが出来る環境3.安心、そして愛されること得意なことをすることで人が喜び、その貢献を褒められることが「生き甲斐」につながり、生きる張りになる。これは老人でなくても、人が生きる上で最も基本的なことなのではないだろうか。著者は長く介護の仕事をされたようだが、そんな仕事への暖かい眼差しがあふれているように感じられる。医療制度...ユートピア老人病棟

  • 夜明けまで眠らない

    大沢在昌/双葉社2016年12月18日初版。著者の作品は「烙印の森」から始まって10冊を超える。個々の作品が個性的でかつ丁寧であるぶん、新鮮な読み応えがある。今回の作品では御殿山の丘の上の高級住宅と木更津の古民家の攻防ラストシーンにふさわしいアクションだった。平和ボケな現代日本において傭兵というだけでも隔世の感があるのに、そこにヌールという原始人のような首狩り族を設定した所が面白い。ただ、原始人、石器人たちは決して自分たちのテリトリーから外へ出ようとはしないし、ましてや政府などという得体の知れない組織を信用したり守銭奴になったりもしない。この辺のところがいかにも、今見てきたかのように書くところが小説なのだが。この作品が出た後だと思うが、今、2件の「ヌワン」が改めて注目されている。一つはインドのベンガル湾、北セン...夜明けまで眠らない

  • 震える牛

    相場英雄/小学館文庫2013年5月13日初版。物書きをする前は時事通信社の記者だったそうだが、話の守備範囲は警察モノ、記者モノ、金融モノと実に広い。警察モノはどちらかというと少ない方である。警察モノは「継続捜査班田川信一」シリーズのみ(しかも2冊だけ)と思われる。著者は新潟県三条市出身で、この作品にも何気なく故郷を登場させている。話の要は「おそろしく偏狭で近視眼的で破壊的」資本主義社会と偽装や隠蔽も厭わない食品業界の体質を大手物流会社や食肉業界に例えて、殺人事件の動機解明という切り口から迫るものである。一見すると社会派風に見えるが、しっかりしたサスペンスで話の筋に無理、違和感はないように思う。主人公の田川信一警部補の手帳は著者の記者時代のそれであり、鶴田真純の鋭い追求は著者の記者としての姿勢であったかと思う。地...震える牛

  • あの女

    真梨幸子/幻冬舎文庫2015年4月25日初版。著者の作品は5年前「弧虫症」でお目にかかったことがある。印象として尋常でないグロさは陰を潜め、幾分洗礼されたように思う。その分、ミステリアスな雰囲気が増したような気がする。今回の作品は不動産屋とおぼしき女の「心理的瑕疵物件」の説明から入る訳だが、この重要な意味が最後にならないと判らない。二人の女性作家の確執、嫉妬、妬み、虚栄、底意地の悪さ、したたかさがあらゆる形で出現する。著者は美大の映画科出身、二人の作家は自身の投影か。「どんな手段を使ってでも、這い上がりたい。例え地獄に落ちてでも」という作家の業が火花を散らす。古本屋で店番のアルバイトをする老女、阿部定自称の田中加代。ミステリアスで「晩期梅毒」というグロテスクがここに登場する。現実なのか、幻影なのか判然としない存...あの女

  • ゴーストマネー

    ―警察庁情報官―濱嘉之/講談社文庫2016年11月15日初版。著者の作品は「ハニートラップ」「オメガ」「聖域侵犯」などをランダムに読んできたが、シリーズとしては「ハニートラップ」に続く久々の作品ということになる。シリーズは改題されて、すべてカナのお題になっているようだ。今回の「ゴーストマネー」は日銀が廃棄するはずの古い紙幣が巧妙に盗まれるという事件。新しい組織「情報室」の初仕事となる。室長の黒田純一の活躍は勿論だが、比較的最新の情報分析を取り入れての情報戦となる。警察モノでありながら、ドンパチや切った張ったは一切出てこないというこれまでとは違った異色の警察モノである。殺人事件も出てこないこのような作品はサスペンスというのだろうか。確かに繰り広げられた情報戦はスリリングではあるが、エンターテイメント性としては少し...ゴーストマネー

  • 螻蛄

    黒川博行/角川文庫2015年11月25日初版。「疫病神」シリーズの第四弾、今回は(二宮、桑原の)二人が寺宝の巻物をめぐって宗教法人と争奪戦を繰り広げる。世襲家、宗教法人、住職等、宗教関係者でありながら何等の「徳」を回向する機会もない。例によって騙し、贋作を掴ませ、しまいに町の矢印に始末を依頼するという宗教家にあるまじき行為、堅気よりよほど強欲で始末が悪い。宗派の改革派、独立派、保守派のようなものが絡んでのお家騒動ならぬお寺騒動である。そこで開祖の宝物は重要な意味を持ってくる。そこに怪しげな画商の稗田涼子が絡んでくる。敵なのか味方なのか。いつものように二宮は散々な目にあってしまうが、最後に今回はお目こぼしがあった。しかし、二宮、桑原はいつものことだが、どいつもこいつもカネに目敏い連中ばかりだった。今回はとうとう収...螻蛄

  • 断絶

    堂場瞬一/中公文庫2011年7月25日初版。先日読んだ「汐灘サーガ」シリーズの「長き雨の烙印」に続く第二弾。シリーズと言っても汐灘市の警察モノというだけで、ほぼ独立した話なので、前作はあまり関係がない。前作は伊達明人刑事が中心だったが、今度は石神謙刑事が中心。テーマは父と子、家、血のつながりといったものであろうか。ここに政治家特有の地元との結びつき、犯罪スレスレの駆け引き、権益の奪い合い、陰謀、裏切りが渦巻く。どこに政治の高い志があるのかまったくわからない。自殺か事故か、或いは事件なのか判断の付かない案件に不審の念を抱きながらの捜査、何の痕跡もないまま手詰まりになろうとしているとき、どこからか捜査に「自殺で閉める」よう圧力がかかる。引退間際の政治家と父親の親交、外で作った子供を引き受けた父、10年前の知事失脚の...断絶

  • Red

    島本理生(女流)/中公文庫2017年9月25日初版、2018年7月30日第六刷。497pという長編だが登場人物は意外に少ない。村主一家の嫁(塔子)が主人公。その勤め先の社外役員鞍田(秋彦)、SEの小鷹が主人公の引き立て役。主人公の夫(真)との関係、二人の上司(鞍田、小鷹)との関係から、その性的官能描写に圧倒されてしまいがちだが、よく考えてみると極めて精神的な話しである。言葉で「精神的な自由、解放」「精神的な安定、充足、充実」などと簡単に言うけれども、人間それほど単純ではなく割り切れるというものでもない。自分でも自覚のないままに渇望し、うろたえ、忍従する。著者が求める真と思える心の解放、自由への道程が主人公を通して追求される。命に対して、生きることに対して意外とクールであるようにも思う。現代人の危うさかもしれない...Red

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、つむじ風さんをフォローしませんか?

ハンドル名
つむじ風さん
ブログタイトル
つむじ風
フォロー
つむじ風

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用