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2014/10/11

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  • コンバット

    youtubeで懐かしいTVドラマ「コンバット」を見掛けた。TVで見たのは高校生の頃だっただろうか、60年以上昔のことである。今更ではあるが、「コンバット」は原文では「Combat!」と感嘆符が付く。そして、主演はヘンリー少尉「RickJason」サンダース軍曹「VicMorrow」である。この二人は、「StarringRickJasonAndVicMorrow」であったり「StarringVicMorrowAndRickJason」と入れ替わったりする。さすがに152話もやれば、斬新さや新鮮さはやはり薄れてくる。これを防止するために「GuestSatr」によってストーリーに新風を吹き込むという仕組みだ。随分長く放送していたように思うが、全部で152話あるらしい。1962年(S37)から1967年(S42...コンバット

  • 絵が殺した

    黒川博行/角川文庫2020年4月25日初版(2004年9月、創元推理文庫から)吉永誠一刑事と小沢慎一刑事のコンビ、得意の「ボケとツッコミ」のコンビである。それにしても、運転免許を持たない刑事というのは本当に珍しい。おそらく既読の小説の中で初めてではなかろうか。作品の中身を書いてしまうと「ネタばらし」になるのだが、要するに、美術業界と切っても切れない贋作の問題とそれに巻き込まれた個人の復讐という設定で話が展開する。「贋作集団の元締め」を追うのは警察だけではなかったのである。大方途中で犯人の見当が付くものだけど、今回の作品では306pまで判らなかった。刑事たちの地道な長い努力の継続が遂に目標に「辿り着いた」瞬間だった。かと言って「社会派」小説というわけではないけれども、魑魅魍魎的なこの業界の恐ろしさ、「人間の...絵が殺した

  • 暗闇のセレナーデ

    黒川博行/角川文庫2022年10月25日初版。(2006年3月の創元推理文庫から)デビューから3作、単行本が1985年発表だというから結構古い。まだ、いろいろ試行錯誤していた時期だったかもしれない。いや当初は「ミステリーもの」「本格推理もの」を目指していたのかもしれない。さすが元美術の先生、絵画だけでなく彫刻やその加工工程など技術的なことだけでなく、業界事情や関係者の思考などには詳しいはずだ。黒川作品には、比較的「美術もの」が多いように思うが、それは美術に対する憧憬というよりも職業的なものなのかもしれない。「ドライアイスで密室を作る」「粘土槽に死体を隠す」「シリコンラバーで指紋を偽装」など、特有のミステリー構築がある。女子大生二人の「ボケとツッコミ」には、後々の作品に続く面白さが既に埋蔵されているように思...暗闇のセレナーデ

  • 八号古墳に消えて

    黒川博行/角川文庫2021年10月25日初版(2004年1月、創元推理文庫から)。久々の黒川作品。今回は狭い考古学界に渦巻く魑魅魍魎に立ち向かう刑事コンビの話しである。相変わらずのボケとツッコミ。しかし亀田刑事の創造的な分析力には鋭いものがある。そしてそれを怒りながらも「聞く耳を持つ」相棒の黒木刑事がまた素晴らしい。シリーズとしては四作目だが、「黒マメコンビ」はこの作で最後になっているらしい。肩の凝らない「ボケとツッコミ」も楽しいが、せっかく徐々に存在感を増してきた「黒マメコンビ」なのに、残念なことだ。313p「冷徹、傲岸、狡猾、狭量、そして執拗」これが学者の本性かと思えばゾッとするが、別に学者の世界に限ったことでは無い。どんな組織にも、どんな社会にも潜在する人間の「持病」のようなものだ。そこに「博愛、謙...八号古墳に消えて

  • 日本の保守派(自民党)

    どうもよく解らないのだが、日本の保守派について、ちょっと勉強してみた。自民党は1955年、自由党と日本民主党が合同して成立した党である。この合同によって「異なる政治的志向をもつ集団が併存」することになった。「軽武装・経済国家を目指す吉田の路線」と「国粋的志向をより強く持つ岸の路線」である。「吉田路線」は「軍事力よりはむしろ経済力を重んじ、日米安保体制の下、自由な経済活動を重視」、「岸路線」は「日本の独立を強く求め、自主憲法の制定を主張、安保改定では米国に対してより対等な関係を求めた」。そして、この違いの中で「保守本流」と呼ばれたのは「吉田路線」に他ならない。戦後、自民党はこの「保守本流」と「保守傍流」を包含継続してきたと言える。岸信介から安倍晋三に至る自民党右派は、神道系右翼である「日本会議」や反共反日集...日本の保守派(自民党)

  • ウクライナ

    2022年2月24日、突然「ロシアがウクライナに侵攻」というNewsが飛び込んできた。確かに数日前からロシアが侵攻の準備をしているというNewsはあったが、世界はただの脅しと思って眺めていたような気がする。当のウクライナでさえ、そう思っていたのではないだろうか。それが、いきなり現実となって、「ウクライナって何処よ」「日本と何か関係があるのか?」と改めて地図を眺めるような事態になった。確かにユーラシア大陸の中央あたり、ロシアと国境を接している東欧と呼ばれている遠い国だった。周辺にはあまり馴染みのないラトビア、リトアニア、ベラルーシ、スロバキア、ポーランド、モルドバ、ルーマニア、ブルガリア、アルメニア、ジョージアなどの国々がある。(かつて、ソビエト共和国の「共和国」は15もあった)歴史をたどれば、陸続きである...ウクライナ

  • カルト教団

    改めて、カルト教団について考えてみた。カルト教団と目される宗教的な組織は、世界中どこの国にも存在する。アメリカにもロシアにも、フランスにも韓国にも。ブラジルにはキリスト教聖書の個人的な解釈(好きなように解釈すること)によって千以上のカルト教団があるのだという。大きな流れとして、天変地異、未曽有の災害、貧困などの社会不安が生じたとき、雨後の筍のようにカルトが出現するという歴史的経緯(社会的現象)がある。そして時にこのカルトは、信者を心理操作し虐待したり、無償労働を強いたり、高額献金を課したり、法外な金額で物を売りつけたりする。中には、隔離された場所で共同生活を営み、閉鎖的集団を形成し、しばしば反社会的行動に走る。遂には何百人もの集団自殺に誘導したりすることもある。実際、各国政府は自国のカルト集団(新興宗教)...カルト教団

  • 信教の自由

    改めて「信教の自由」について考えてみた。今まで見たこと、聞いたこと、経験したことも含めて、「宗教の本質」「憲法が示す理念」そして「現実」を。【宗教】宗教は信じる人のためのものであって、信じない人には何の役にも立たない。むしろそれは目の前に立ち塞がる障害であり、自己を抑制する不自由でさえある。単に「世界平和」や「心の安寧」、「無病息災」を願うことは宗教ではない。宗教の根幹にあるものは「布教」である。布教だけが宗教を成立させる唯一の手段である。どんな本尊でありどんな教義なのか等ということは、二の次、三の次のことである。従って、布教の無い宗教の存立というものはあり得ない。【布教】以上のような理由から、宗教にとって「布教」というのは避けて通ることの出来ない死活の問題であり、テーマであり、目標となっている。そのため...信教の自由

  • 高額献金・霊感商法

    統一教会が長年やってきた「高額献金」と「霊感商法」、その実態は全く解明されていない。・1970年代に文鮮明教祖が日本の旧統一教会に“送金命令”を下し、10年間で2,000億円が送られたという元幹部の証言が月刊『文藝春秋』に掲載されている。・1987年から2021年までの34年間で、関係弁護士や消費生活センターが受けた相談だけでも、被害件数は約3万4,500件、被害金額は約1,237億円にのぼる。/全国弁連・1998年、埼玉で開かれた集会の様子も流された。韓国経済が破綻した1997年の翌年に行われたこの集会では、教祖である文鮮明氏が「大きな危機に直面している」とされ、信者1家族ごとに凡そ160万円の献金が求められたという。・2007年頃、1日あたり22億円の売上があったとされている。毎日コンスタントにこの金...高額献金・霊感商法

  • 統一教会

    随分昔の話だ。20代の頃、「合同結婚式」や「霊感商法」で「統一教会」の名前を聞いたことがある。その後、世の中から消滅したものと思っていた。しかし、ここに来て忽然と姿を現し、いまだに活動しているのかと驚いた。山上徹也容疑者による問答無用の銃撃によって元総理が倒れるというショッキングな事件によって、図らずも政権との関係が見えてきたことにも驚きを禁じ得ない。昔はその背景を探るにも簡単なことでは無かったが、今はNetの時代。あらゆる情報があふれる中で取捨選択しながら、改めて「統一教会」とは何なのか、探ってみたいと思う。1954年、世界基督教統一神霊協会(通称:統一教会)は韓国で創設された宗教法人。設立者は文鮮明(ぶんせんめい・ムンソンミョン)で、(1920-2012年)92歳で既に亡くなっている。教祖亡き後、教祖...統一教会

  • 市民税・都民税など

    (税金のこと)本日、「市民税・都民税」税額決定通知なるものが送付されてきた。開封してみると、賦票3枚と、年金から天引きの案内。どうやら十月から、「市民税・都民税」も年金から天引きするらしい。取りっぱくれのないように。介護保険料は既に天引きされている。まあ、帳票作成、事務手続きや郵送など手間を省くのは悪いことではないだろう。ひょいと、「市民税・都民税」の内訳を見てみた。何となくおかしい。よく見てみると、昨年1月まで勤めていた会社の社会保険料(一ヶ月分)は計上されているが、それ以降の計上がない。更に、介護保険料の計上も全く無い。これでは控除額が数十万違ってくるのではないか。社会保険料は会社の制度で、任意に2年延長している。確かに、既に退職して給料も出てないので、役所には申告が無いのかもしれない。しかし、介護保...市民税・都民税など

  • 日本美の再発見

    ブルーノ・タウト/篠田英雄訳/岩波新書1939年6月28日初版、1964年10月10日第22刷。1933年来日、1934年から1935年高崎にて指導、1936年イスタンブールへ去るまでのたった3年間のことであるが、建築物以外にも、富山や新潟・佐渡、秋田、青森、仙台の旅行では、第二次大戦前の昭和初期の日本の実情を実によく著わしているように思う。野山、海辺の風景、人々の暮らし、そんな中に見え隠れする日本文化の流れを見出した著者の文化に対する見識、建築物に対する見識には鋭いものがある。伊勢神宮や桂離宮に、日本建築の源泉を見たのは、やはり第三者(外国人)だったからなのだろうか。「建築の聖詞」とまで言われても、当の日本人はすでにその価値を見失い、西洋の模倣に懸命に励んでいるようだ。改めて指摘されて、その形容しがたい価値に...日本美の再発見

  • モモ

    ミヒャエル・エンデ/大島かおり訳/岩波少年文庫2005年6月16日初版、2021年11月5日第34刷。これも何かの紹介で、いつか読みたいと思っていた本の一冊である。何と「岩波少年文庫」ということで、児童文学に類するものだとは思わなかったが、ここで投げ出す訳にもいかず、シブシブ読み始めたのが本当のところ。最初は、どうということもない話から始まるが、83pあたりから「灰色の男たち」が登場する。どうやらここからが話の本筋らしい。「灰色の男たち」は人間から時間を盗む時間泥棒である。この辺は、現代社会に対する批判的な部分だと思われるが、この「時間」の扱いが、先日読んだ「時と永遠」と重なって、とても興味深い部分だった。古くからある人間にとっての「時間性」の問題、認識論の問題だからである。「時間性」の問題は「モモ」の中でもほ...モモ

  • あかね空

    山本一力/文春文庫2004年9月10日初版、2004年10月30日第5刷。著者の作品は「まねき通り十二景」「欅しぐれ」を既読しているが、「あかね空」は最初の長編時代小説ということで、これまたいつか読みたいと思っていた一冊である。宝暦12年からの豆腐屋、親子二代の話である。江戸と上方(京)の食文化の違いをうまく使って、その斬新さや困難さを混ぜながら、長屋の人々と共に(1つの文化が)根付くまでの根気の居る命がけの努力である。それだけでなく商売敵や身内の争いが、更にその困難さに輪を掛ける。しかし、腹を割って話してみれば、寛容になれるのが家族である。そんな家族ほど強いものはない。突然亡くなった著者の母への思いと共に作品に込めた思いであろう。作品の中で「人さらい」が登場する。いかにもこの時代の話だが、博徒一家の傳蔵親分は...あかね空

  • 山小屋の灯

    小林百合子/ヤマケイ文庫2021年2月5日初版。何かの紹介でいつか読みたいと思っていた一冊。早い話が、山のガイド本といったところ。著者は結構飲兵衛で、あちこちの山小屋の主人達と忌憚のない付き合いをしているらしい。薄暗い山小屋の灯の下で、それで「山小屋の灯」なのだ。いつも、カメラマンの野川かさねさんとコンビらしい。この本には文章に負けないくらい野川さんの写真が載っている。よく見掛ける絵葉書風の写真ではなく、山小屋とその生活のリアルなヤツだ。それが文章とよくマッチしていて実に良い。山の写真も多くは雲の中に霞んでいる。これが現実だ。訪れたことのない山もあったが、以外にも馴染みのある山も多かった。秩父、尾瀬、大菩薩峠、中央アルプス、富士山等。ただし、50年も昔の話だ。「雲ノ平」の存在がチラホラ聞こえ始めた時代だったよう...山小屋の灯

  • 時と永遠

    波多野精一/岩波書店1943年6月25日初版、1972年8月15日改定初版、1975年5月30日改定第三版。この本は45年ほど前にいつか読んでやろうと購入したもので、本棚の隅にずっと鎮座していた。大学の宗教哲学の教科書でもあった。少し読み始めたこともあったかと思うが、あまりにも哲学的でしかも旧文体、旧仮名遣いで挫折してしまったように思う。ここで突然読み始めたのは他に適当な本が見当たらなかったからである。「時」は人間の生にとって避けることの出来ない絶対的な有限と認識されるものだが、ここに認識論の限界のようなものがある。この限界を宗教(信仰)的展開によって克服し、永遠性を得ることを試みたのが本書の趣旨と言えるだろう。生の一線を画す「死」というものの認識は、宗教をもってしても簡単に説明し切れるものではないが、過去があ...時と永遠

  • 長いお別れ

    RaymondChandler、清水俊二訳/ハヤカワ文庫1976年4月30日初版、2013年4月10日第78刷。ミステリー作品として、よく引き合いに出されるもので、これもいつか読みたいと思っていた一冊である。70年近く前の1953年に発表された長編の作品で、舞台は花のハリウッドである。主人公は独身の私立探偵(フィリップ・マーロウ)だ。この頃「私立探偵」の設定はひとつの流行りであったかもしれないが、日常的な生活の中からサスペンスが湧き出す厭世的リアリズム、この手法が新しい「ミステリー」の先駆け、新しいスタイルの作品だったのかもしれない。言葉のやり取りはいささか古いが、今読んでも十分に面白い。最後の最後、どんでん返しはこの手の作品に付き物だが、最初テリーと出会ったとき、状況説明の中で「整形」が登場したことで、これが...長いお別れ

  • 手仕事の日本

    柳宗悦/講談社学術文庫2015年6月10日初版、2020年10月6日第三刷。これまた以前から気になっていた、読んでみたい本の一冊である。著書の後記は1943年正月となっている。何と80年も昔の話である。一種の「文化論」或いは「芸術論」であろうか。「美」とは何か、という一つの見識でもあると思う。それにしても、日本はこうもあまねく隅から隅まで「紙」の文化であり「織」の文化であり「焼」の文化であったのかと思い知る。そして悲しいことだが、伝統文化であっても流行り廃れがあり、時代の流れに抗して真に「美」を維持し続けることの難しさがあった。「美」を見失い細に過ぎて崩れていくのを見るのは忍びないが、復活もあるのだから捨てたものではない。著者の持論は「有用であり、健康であり、単純である」中にこそ「手仕事」の真の「美」があるとい...手仕事の日本

  • 口語訳・遠野物語

    柳田国男(佐藤誠輔訳)/河出文庫2014年7月20日初版、2021月10月30日第11版。(1992年7月初版の改訂版)何かに付けて登場する柳田国男の「遠野物語」、いつかは読みたいと思っていた一冊である。明治42年(1909年)佐々木鏡石さんから聞いた話し、ということで物語は始まる。明治42年といえば、もう113年も昔の話しである。更に43年前は徳川慶喜によって大政奉還が行われた時代である。「口語訳」が必要な程古い話しなのだが、はたして「都会人を心底からこわがらせ、目ざめさせる」ことができるのだろうか。遠野は花巻から釜石を結ぶ東西「釜石街道」の中ほどにある山深い所である。北に延びるR340もあって、交通の要所でもあったのだろう。「遠野物語」は、とても短い、数行から数十行の「話し」で、119遍が収録されている。い...口語訳・遠野物語

  • 泥濘

    黒川博行/文春文庫2021年6月10日初版。今回は「病院の診療報酬詐欺」、珍しく桑原が持ち込んで来たヤマだ。分厚い。578pもある。何だか得したような気分で読み始めた。桑原は嶋田が代を継いだのを機に二蝶会と復縁、若頭補佐になったらしい。桑原は、診療報酬詐欺の本当の被害額は2億だという。カネの匂いを嗅ぎつけ、起訴猶予された奴(小沼光男、岸上篤、他)から剥ぎ取る気でいるらしい。調べているうちにオレ詐欺という別件が浮かんでくる。診療報酬詐欺同様事件の背後にいるのは警察OBの「警慈会」メンバーだった。普通なら適当な所で切り上げるとかするのだが、イケイケの桑原は意地でも引かない。これはエライことになったと思っていたら、案の定撃たれてしまった。主人公の片方が死んでしまっては話が続かない。しかしかなりの重傷である。まあ、話の...泥濘

  • 雨に殺せば

    黒川博行/角川文庫2018年4月25日初版、2018年8月5日第三版。(2003年11月、創元推理文庫、初版)この作品は先日読んだ「二度のお別れ」の続編ということになっているらしい。黒まめコンビは黒田がいつのまにか黒木になっているが、亀やんは同じ。他、上司も同様の人物配置になっている。黒田が黒木になったのは「あとがき」にその理由が記されているが、決して誤記ではない。読み所は、著者が「あとがき」に記しているように、305p「大阪人のサービス精神あふれる思考形態、ある種下品なユーモア、バイタリティー、少しばかり怠慢志向のキャラクターを愉しんで」と言っている通りなのだが、読んでいて思ったことは「ボケとツッコミ」付の「刑事コロンボ」だった。それと「亀やん」の閃きが気になった。この手の話はどうしても理詰めで展開するのだが...雨に殺せば

  • 喧嘩

    黒川博行/角川文庫2019年4月25日初版。(2016年12月、角川書店/初版)、疫病神シリーズの6冊目。二宮、桑原のコンビとも言えないような関係と裏社会を出し抜いて生きる活劇モノ。社会派バイオレンスと言えるかもしれないが、ちょっと無理があるか。今回の主な登場人物は「政治家の秘書」である。「政治家の秘書」とくれば利権と贈賄と決まっているようなものである。そこに暴力装置も加わって、二宮、桑原コンビと対決する構図である。「二宮、桑原コンビ」は決して正義の味方ではない。選挙、許認可、既得権益、贈賄という社会悪、不正の弱みに付け込んでカネを引き出すのである。勿論、相手が相手だけに命懸けなのだが、そこはヤ印、弱腰は見せられない。二宮が逃げ腰になった時は既に遅く、桑原は押して押して押しまくるのである。ビビリの二宮、それでも...喧嘩

  • 二度のお別れ

    黒川博行/創元推理文庫2003年9月26日初版、2004年3月26日再版。(1984年、文芸春秋社、初版)表題からどんなヤワな話しかと読み始めたが、いやいやなかなかのミステリー&サスペンスだ。事件としては「銀行強盗」なのだが、そこには巧妙なトリックがあった。先ず、最初に「あのピストルは鉄工所で改造したモノではないか」と推測した。漠然とした勘なのだが、つまり犯人は「垣沼一郎夫婦」ではないか、と。しかし、リアルな説得力ある展開に徐々に迷路に追いやられた、というのが本当の所。黒まめ(黒田、亀田)コンビの努力もむなしく、事件は遂に迷宮入りしてしまった。しかし、ここで終わってしまうのでは面白くない。最後に「種明かし」がある。それは巧妙に構築された「偽装殺人」だった。最後に、221p「犯罪には成功したけれど生きようを誤った...二度のお別れ

  • 切断

    黒川博行/角川文庫2018年10月25日初版。(2004年11月、創元推理文庫、初版)久々の一気読み、止まらなかった。猟奇殺人を偽装したようなトリック。最後まで緊張の連続だった。大阪を舞台にした警察ものではあるが、著者がスリルとサスペンスに富んだこんな作品を残していたとは知らなかった。確かに後の作品に通じるものもあるが、それとはまた別の「スリリングな緊張感」とでも言うべきミステリーであるように思う。小説における「凄惨な場面」は、徐々にエスカレートしてグロになっていく傾向があるが、著者はそこを絶妙に避けて、「疫病神」に見られるようなコミカルなテイストを加えて独自のエンターテインメントを展開していくことになる。それまでの通過点であり、試行錯誤があったのかもしれない。「死」を偽装するのはミステリーの1つの典型だが、並...切断

  • 燻り

    黒川博行/角川文庫2016年9月25日初版。最初は講談社から2002年4月に文庫本で発刊されているから、少なくとも20年以上経過しているが、あまり時間の経過は感じられない。短編集で基本は警察モノ。以下9遍を収録している。・燻り・腐れ縁・地を払う・二兎を追う・夜飛ぶ・迷い骨・タイト・フォーカス・忘れた鍵・錆中には警察が登場しないものもあるが、「燻り」=小悪党の話である。常に競合相手や、上には上が居て、思ったように運ぶことは無いのが常である。にも関わらず、懲りないのが「小悪党」なのだろうか。「どいつもこいつも何て奴らだ!」で、終わってみれば何とも悲しい結末ばかりである。人間の限りない欲望と懲りない性根が哀れなのだが、どこかしら「足りないもの」があり、「おかしみ」がある。まさに「天網恢恢疎にして漏らさず」である。真正...燻り

  • テトロドトキシン

    ―大阪府警・捜査一課事件報告書―黒川博行/角川文庫2014年9月25日初版。著者の初期の作品で以下六編を短編集としてまとめたものらしい。・テトロドトキシン・指環が言った・飛び降りた男・帰り道は遠かった・爪の垢、赤い・ドリーム・ボート「テトロドトキシン」は、黒木刑事の活躍がほとんど無かったのがちょっと残念。それはどの作品にも共通しているようで、1つのスタイルらしい。最後に、鎚田記者が記事を出すまでの過程も興味深いが、大谷、瀬良の顛末まで書いて欲しかった。「飛び降りた男」では、すっかり騙された。考えて見れば、ありそうなことではあるが。「下着を盗む時は、その所有者を確かめてからにしてはいかがか」という助言は納得できる。「ドリーム・ボート」では、思い通りにならない人生の哀愁漂う作品で、警察モノとして一貫した作風、一流の...テトロドトキシン

  • 晩節 密命・終の一刀

    ―巻之二十六―佐伯泰英/祥伝社文庫2011年12月20日初版。剣術大会が終わって後、話は一気に飛び、享保十六年(1731年)の秋から始まる。この間、登場人物の多くにいろいろな事があった。その中でも何と言っても清之助は、吉宗の覚え目出度く立家を許され、大目付にまで出世した。立派な千七百余坪の屋敷を拝領する三千百石直参旗本である。ここで最後のシナリオとして、大目付の立場から、東海道の巡察を命ぜられ、尾張領までやってくるのだが、惣三郎もまた火の粉を払いながら、火付けの元、尾張の安濃一族を殲滅するために尾張にやって来るのだった。惣三郎は武人として最後まで戦い続けた。いや、本当は静かに暮らしたかったが、尾張がそれを許さなかった。清之助も父の武人としてのその姿を見届け、納得したかのように見える。惣三郎は結局、誰の為でもなく...晩節密命・終の一刀

  • 覇者 密命・上覧剣術大試合

    ―巻之二十五―佐伯泰英/祥伝社文庫2011年6月20日初版。享保十一年(1726年)上覧の大試合である。まさかと思ったが、凄まじい登場人物群だ。ここまでキャラクターを考えて準備するとは、圧巻という外はない。それはさておき、江戸時代という平穏な時代において、自らの剣技に自信と誇りを持つために、武士がこの大試合に命を懸けて臨むという設定は、判るような気がする。作中に何度も出て来るように「武芸でメシは食えない」時代なのだ。その矜持を保つことの難しさがここにある。最後はやはり尾張代表の剣術家と清之助の対決だったか。それにしても、惣三郎が育てた佳次郎の最期は辛いものがある一方で、佳次郎と清之助が決勝で戦わずに済んで良かったのかもしれない。最期の惣三郎と清之助の立ち合いは、何とも言い難いものがある。イメージとして、いずれ息...覇者密命・上覧剣術大試合

  • 切羽 密命・潰し合い中山道

    ―巻之二十四―佐伯泰英/祥伝社文庫2010年12月20日初版。尾張の二人が仕掛けた牛中、馬中の争いを避けて、先へ進む惣三郎と佳次郎。十二兼の里、地蔵堂の前でお婆に助けられ、尾張の追手四人と対峙、二人を斃して馬を得た。更に鳥居峠で追手の小弦太以下七人を斃し、先を急いだ。降雪で道に迷い、危うく遭難するところを馬に助けられた。艱難辛苦、七転八倒、とにかく先を急ぐ二人だ。そして、どうにか江戸の尾張上屋敷に辿り着いた二人だが、敵陣の真只中、油断も隙も許されない。惣三郎は老獪を発揮して大会出場権をもぎ取り、待機する。菊屋敷の清之助にも付け狙う監視の目があり、謂れのない刃が突然降ってくる。それでも心を乱すことなく淡々と大会に備えていた。この時、「老いた剣術家の業」とか「剣の妄執に憑かれた愚か者」とか憶測は乱れ飛んでいたが、惣...切羽密命・潰し合い中山道

  • 密命 仇敵 決戦前夜

    ―巻之二十三―佐伯泰英/祥伝社文庫2017年5月20日初版。話は享保十一年(1726年)晩秋から始まる。惣三郎と佳次郎は、「出羽三山」を出たと思ったら何と長年戦ってきたはずの尾張の拠点、藩道場にやって来た。道場破りのようなものだ。惣三郎によれば、尾張から見て敵(清之助)の敵(惣三郎)は味方という屁理屈で説得し、ちゃっかり客分として道場で稽古をすることになるのである。そんな無茶な、と思うかもしれないが、そこは小説だ。何故尾張で、というのは長年の抗争で惣三郎に対する憎しみや恨みが渦巻いているからであって、単なる道場の稽古ではなく、そこは本気度が違う。惣三郎は、そのことが佳次郎にとって修行になると考えたのではないだろうか。江戸に出る途次、清之助は鹿島の米津道場を立て直そうと懸命になる。そもそも決して多い門弟を抱えてい...密命仇敵決戦前夜

  • 再生 密命・恐山地吹雪

    ―巻之二十二―佐伯泰英/祥伝社文庫2009年12月20日初版。いやいや、気仙沼の湊の戦いは、なかなか迫力満点のチャンバラでした。清之助さんは、相変わらずお強いですなあ。賽の河原における掟破りの婆さまとの闘いはアニメ的な妖術の世界だ。困った時の幻惑チャンバラである。もともとイタコの世界だからそれほど違和感はないが、かと言って現実的な訳でもない。このような話しは、体験者だけが納得できるものなのかもしれない。一方、惣三郎と佳次郎は出羽三山に分け入り、黙々と修行していた。一時は目標を失い、全てを投げ出したかに見えた佳次郎だったが、どうやら復活したらしい。しかし、惣三郎が最終的に何を目指しているのか、どうもわからん。「佳次郎の剣者としての死から生への再生」は成ったと思うが、それだけが目的ではないはず。清之助が勝つことで、...再生密命・恐山地吹雪

  • 相剋 密命・陸奥巴波

    ―巻之二十一―佐伯泰英/祥伝社文庫2009年6月20日初版。金杉一家の女たち三人は飛鳥山の菊屋敷に気晴らしに、清之助は羽前、陸前国境の笹谷峠、八丁平を旅していた。一方、惣三郎と佳次郎は突然江戸を出て鹿島に逗留していたと思ったら、いつの間にか仙台に。惣三郎の意図が読めないということもあるが、一体この話はどういう方向に持って行こうとしているのか、皆目予想がつかない。そんなことで、着々と「上覧大試合」の日が近づいて来るのであった。清之助の身辺には妙な連中も寄って来るが、それより周りの人々に助けられ、余裕の稽古三昧の日々が続く。モテるというか、運が良いというか、人柄というか、人徳というか。それに対して、惣三郎と佳次郎が暮らす日々は厳しい修行が続く。しのがふと思い出した平家物語の「盛者必衰の理」は、著者が隠し持っている、...相剋密命・陸奥巴波

  • 宣告 密命・雪中行

    ―巻之二十―佐伯泰英/祥伝社文庫2008年12月20日初版、2011年5月25日第7刷。享保十一年(1726年)が明けたところから話は始まる。清之助は春まで佐渡かと思ったが、運よく寄港した北前船に便乗して越後へ。途中で出会った姉弟を助けて、三国街道を行ったり来たり、なかなか忙しい。かつて鹿島の道場で出会った門人と出会い、秋山郷切明という山奥で修業することになった。更に尾瀬の山小屋でも相変わらずの修業三昧。惣三郎は上覧大試合の出場者掘り起こしのために、江戸の道場を訪ね歩く日々。そこで目に留めた新抜流の青年武士、何を思ったか即席に英才教育を施すことにしたようだ。惣三郎の武士に対する考え方からすると、いささか矛盾するようなことだが、そこにどんな思惑が隠されているのか、期待させる。解説で「時代小説だからこそ描ける現代性...宣告密命・雪中行

  • 意地 密命・具足武者の怪

    ―巻之十九―佐伯泰英/祥伝社文庫2008年6月20日初版。享保十年(1725年)、相変わらず尾張の影がチラつく惣三郎の周辺だが、今回は具足武者という仮想大会の様な連中が現われる。戦の無い江戸時代でも、この戦国武者のような連中の行動はちょっと異なものだったに違いない。それはともかく、武士の本分である武術が長く実践から遠ざかることで、弓を射ることも馬を乗りこなすことも儘ならなくなっていることに、見て見ぬふりをしなければならない将軍の心境はいかばかりだったことだろう。自らの体制が天下を治めているとすれば、それは自らが導き出した結果であることに愕然としたのではないだろうか。176p「上野国吉井藩~先代藩主鷹司信清」ということで、ここでは「吉井藩」だったが、181p「上野国吉川藩~鷹司家」では「吉川藩」になってしまった。...意地密命・具足武者の怪

  • 遺髪 密命・加賀の変

    ―巻之十八―佐伯泰英/祥伝社文庫2007年12月20日初版。享保十年(1725年)、清之助は尋常勝負で立ち会った相手との約束で、金沢から高岡へ旅に出ることに。この途中で相変わらず妙な連中に狙われるが、これを振り払いながら何とか高岡に到着。ここで意外な展開になる訳だが、この辺が今回の読み所か。若い二人が周囲の反対を押し切って・・、という話しはよく聞く。しかし、その先が問題だ。その場に残り、与えられた状況の中で何とか頑張る(周囲の理解を得られるまで努力をする)か、周囲の家族や友人を捨てて二人で逃避行を選ぶかによって、その後の人生は大いに異なる。著者の作品にもこの設定はときどき使われる。しかし、出奔、逐電した二人が幸せになるという設定は今のところ密命シリーズでも、居眠り磐音シリーズでも出てこなかったように思う。そして...遺髪密命・加賀の変

  • 初心 密命・闇参籠

    ―巻之十七―佐伯泰英/祥伝社文庫2007年6月20日初版、2010年6月10日第10刷。江戸ではみわ、結衣の姉妹の青春時代が華々しく展開する。心ときめかす一番いい時代だ。しかし、相変わらず惣三郎を狙う尾張の刺客も後を絶たない。北陸、永平寺では清之助が難修行「闇参籠」に挑戦し、見事乗り越えて「初心」に還った。休む間もなく、修行の旅を再開し、金沢を目指す。享保十年(1725年)、道場破りが頻繁に訪れる時代、そんなことは本当にあったのか。そして、いとも簡単に命のやり取りをする。あまりにも命が軽すぎる。平和な時代の武士、主たる仕事を失って久しい武士の「新しい目標」を、時の政権は掲げ示すことが出来なかった。長々続く慣習と世襲にしがみつき、落ちこぼれたら最後、武士として生きては行けない。確かに、武士を捨てれば道はあるかもし...初心密命・闇参籠

  • 密命 烏鷺 飛鳥山黒白

    ―巻之十六―佐伯泰英/祥伝社文庫2016年10月20日初版。あっという間に享保十年(1725年)の春を迎えた。主人公は長かった大和柳生の訪問を終えて、結衣を伴ってやっと江戸に戻って来た。しばし疲れを取るために例によって飛鳥山の別荘に入った。しかし、ここでも何か不穏な空気が漂う。今回はいささか自信過剰の老人が相手、しかし実は居合の達人だと言う。人生の最後の勝負ということで、尾張の用人に担がれて「華々しい勝利」を夢見ての惣三郎に対する挑戦だった。惣三郎が負けるはずもないのだが、ついつい読み進めてしまう。一方、清之助は「鯖街道:鞍馬口~貴船口~鞍馬寺~針畑峠~若狭・小浜へ」の修行の旅を続けている。「鯖街道」は後に付けた総称で、「魚屋路」と同じような意味合い。実際は「若狭街道」「鞍馬街道」「周山街道」などの主要路と「針...密命烏鷺飛鳥山黒白

  • 無刀 密命・父子鷹

    ―巻之十五―佐伯泰英/祥伝社文庫2006年9月10日初版。今回の話は江戸と大和柳生の庄に分かれて展開する。流れとしては軽快なテンポで進む。相変わらず、金杉親子は大活躍だが、江戸では昇平も負けてはいない。破格の昇進の話までは良かったが、その後が良くない。出し抜かれた格好になった兄貴分が黙っていなかった。それは昇平の責任ではなかったが、人間社会にはよくあることだ。一方、柳生の庄では「大稽古」なるイベントが着々と準備され、近隣諸国から武士たちがやってくる。その中に、例によって尾張柳生もやって来た。参加者の中に紛れ込み、稽古をしながら虎視眈々と金杉親子を狙っている。何と言っても、最後には金杉親子が勝つというのは判っているのだが、ついつい熱中してしまう。211p「柳生街道(地獄道)」の話はなかなか面白い。「磨崖仏」は姥捨...無刀密命・父子鷹

  • 遠謀 密命・血の絆

    ―巻之十四―佐伯泰英/祥伝社文庫2006年4月20日初版。2008年3月25日第11刷。今回の話は金杉家の末娘結衣の家出が原因で、その遠謀と結末まで。無邪気な憧れで、旅の一座に飛び込んだ結衣だったが、それは罠でもあった。名古屋を拠点とする旅の一座が尾張様の命を拒否することは出来ない。結衣を尾張城下まで勾引したところまでは成功したとも言えるが、手段が悪質だ。そこで、惣三郎と清之助が申し合わせて、尾張名古屋城下に攻め込むことになったのである。しかし、この話しにはかなりの無理がある。惣三郎と清之助を斃すために多勢で攻めるというのも、剣聖の柳生らしくもない。そこで30年も前に身罷ったはずの尾張柳生の頭領「柳生七郎兵衛(連也斎)厳包」を引き出すのである。連也斎厳包の助けで父子は尋常の勝負に持ち込み、不逞を働いた人物を見事...遠謀密命・血の絆

  • 追善 密命・死の舞

    ―巻之十三―佐伯泰英/祥伝社文庫2005年10月30日初版。2008年4月15日第13刷。享保八年(1723年)師走から話は始まる。シリーズも半ばだが、相変わらず尾張柳生が金杉親子の所にやって来る。その他にも事件があり、主人公はなかなか忙しい。清之助の修行の旅も、いつ終わるともなく続く。今回は大和柳生の里であった。柳生十兵衛も人気の剣客であったが、清之助も負けてはいない。しかし、一体何番勝負をやっているのだろうか。解説で縄田さんも言っているが、何本もシリーズを並行して書き、他にも作品を手掛けるというから、著者には本当に驚きを禁じ得ない。本当は、密かに書き溜めてあるんじゃないの、とか。もう一人ゴーストライターが居て、密かに書いているんじゃないのとか、そんなことは無いか。信じ難いことだが、本当に量産作家なのである。...追善密命・死の舞

  • 乱雲 密命・傀儡剣合わせ鏡

    ―巻之十二―佐伯泰英/祥伝社文庫2005年4月20日初版。2008年3月25日第14刷。久々に清之助の旅は紀伊和歌山から始まる。居合の田宮流道場で剣技を研鑽する日々だ。しかし、そこにもお家騒動の火の粉は降って来る。142p清之助のあまりの強さに「剣を捨ててよかった」と、園部治平次の思いである。上には上が居て、どう考えても太刀打ち出来ないと思うことは、人生にもままあることだ。しかし、そこで転向したからと言って人生の選択を誤ったとは言えない。むしろ、正しいこともある。長い人生の中で、自信を失い呆然とすることもあるかもしれない。しかし、何かしら選択肢は必ず残されているというのが人生だ。またもや、水野京之助といい、高野聖といい、傀儡夫婦といい尾張兄弟の影がチラつく。史実上、本当にこんな確執が吉宗と尾張兄弟の間にあったか...乱雲密命・傀儡剣合わせ鏡

  • 残夢 密命・熊野秘法剣

    ―巻之十一―佐伯泰英/祥伝社文庫2004年10月20日初版。この話しは享保八年(1723年)のこと、相変わらず江戸は火付けが流行っていた。江戸の町屋は木と紙で出来ていたから、とにかく簡単に燃えた。それなのに照明器具が行灯や蝋燭なのだからたまらない。そんな所に「火盗野分」なる放火犯一味が現われる。調べが進むと一味は紀州熊野からやって来た者たちらしい。それが、主人公達には納得し難く悩ましい。なかなか証拠が掴めないまま、時間だけが過ぎてゆく。早い話が現体制(吉宗)と尾張との確執である。火盗野分なる一味は、尾張におだてられ、目の前に甘い言葉を並べられ、その気になって夢を見た一団であった。主力は勿論主人公だが、今回は相手方の人数が多い。奉行所、町火消しを動員しての大捕り物になった。最後は、主人公が寒月霞斬りで締めくくって...残夢密命・熊野秘法剣

  • 遺恨 密命・影ノ剣

    ―巻之十―佐伯泰英/祥伝社文庫2004年4月20日初版。2010年6月10日第29刷。享保八年(1723年)正月から話は始まる。いきなり、鹿島の米津寛兵衛が亡くなった。80過ぎなので誰もが往生したかと思うが、実は旅の武芸者と立ち合った結果だという。ここに登場したのが代々尾張で影仕事をしてきたという家系の秘太刀表一流、鷲村という人物だ。武士というより用心深い鉄砲玉のような人物で、尋常な勝負など考えない。隙あらば背後からでも襲うという設定だ。狙われるのは主人公だけでなく、最終的には大岡が最終目標ということで、戦々恐々の日々が続く。同時に、無鉄砲な新人門弟北沢毅唯の登場、棟方新左衛門の見合い、伊吹屋葉月の縁談、側室勧誘、追立屋(地上げ屋)という火付け一味、更には清之助の回遊修行を織り交ぜて話はドラマチックに展開する。...遺恨密命・影ノ剣

  • 極意 密命・御庭番斬殺

    ―巻之九―佐伯泰英/祥伝社文庫2007年10月20日初版。2009年10月15日第11刷。今回の話の大筋は将軍吉宗が調達した諜報組織の十六家、更に組織強化で追加した御庭番四家の中で起きた暗殺事件と、清之助が対峙する「尾張柳生七人衆」との激闘である。勿論、御庭番の暗殺に関しては惣三郎が関わる訳だが、何と言っても「御庭番」、簡単には姿を見せない。大岡以下総力を上げての捜査となる。一方、清之助の対する七人衆は順番に現れるから判りやすい。やはり印象に残るのは巌流島の戦いだろうか。「先の先」は勝ってなんぼの弱肉強食、先手必勝の戦国時代の武士。奇襲であり先手である。「後の先」は平和な時代に作られた武士の美意識。そんなことを考えながら、読み進んだ。道場などの神棚に「南無八幡大菩薩」という文言が掲げられているのをよく見かける。...極意密命・御庭番斬殺

  • 悲恋 密命・尾張柳生剣

    ―巻之八―佐伯泰英/祥伝社文庫2007年10月20日初版。2008年3月25日第三刷。享保六年(1721年)師走から話は始まる。お題の「悲恋」はどなたの悲恋か。それは惣三郎の長女みわだった。不良浪人に絡まれて、そこに颯爽と登場した若い剣士だからひとたまりもない。実は、芝居だったのだ。若者は尾張四天王の一人で何とも二重人格的な人物に仕立てられている。みわはこの事件で自信を失い、すっかり落ち込んでしまった。まあ、さもあらん。その他、例によって魑魅魍魎の類のように次々といろいろな人物が惣三郎の前に登場して、もう歳だと言いながらも、相変わらずバッタバッタと薙ぎ倒す。回遊修行の清之助も付けてくる尾張の刺客を振り払いながら旅を続けている。吉宗を取り巻く環境は芳しくない。財政は一向に上向かず、改革も困難を極める。武家社会と台...悲恋密命・尾張柳生剣

  • 初陣 密命・霜夜炎返し

    ―巻之七―佐伯泰英/祥伝社文庫2007年10月20日初版。2008年4月15日第4刷。享保六年(1721年)日本史上初めての国勢調査が行われた。江戸の人口は町民五十万人、武家は参勤交代もあるので定かではないが、やはり五十万人は居たであろうと思われる。この時代、百万人が暮らす江戸は世界にも類を見ない、いかにも巨大都市であったに違いない。この作品の主なテーマは、主人公の倅、清之助の成長と剣術大会だろう。徳川の天下が続く平和な江戸で、武士の本分を確認するために催された剣術大会だ。この大会に清之助も出場するというのは、いかにも小説だが、決勝で勝ちを譲るところがミソだ。そして、数多の引き合いも振り捨てて即座に修行の旅に出るところが潔い。最後に、今回の作品の初めから終わりまで、金杉親子は一条寺菊小童という病的なストーカーに...初陣密命・霜夜炎返し

  • 凶刃 密命・一期一殺

    ―巻之六―佐伯泰英/祥伝社文庫2007年10月20日初版。2009年10月15日第11刷。相変わらずいろいろと考えるもので、結構複雑に二つ三つのストーリーが折り重なって展開する運びは、読み手として油断がならず忙しい。いつも思うことだが、ストーリーの重なりとそのタイミングは、やはり計算されたものなのだろうか。偶然の産物とも思えないが、緻密な計算があるとも思えない。更にこのとき、著者は別のシリーズ作品も並行して書いていたというから驚いてしまう。383p、この巻の諸々が雪崩のように決着するクライマックス。確かに手足をもぎ取られ、柿の種のようになった御用取次の有馬氏倫であったが、これで完全に諦めるとは思えない。これから先、この御用取次と大岡越前を軸にして展開するのだろうなと想像した。一先ず、お家の内紛はこれで決着したよ...凶刃密命・一期一殺

  • 火頭 密命・紅漣剣

    ―巻之五―佐伯泰英/祥伝社文庫2020年12月13日初版。既読の「巻之三」「巻之四」の内容はすっかり忘れてしまったが、過去のレビューを見ると、このようなことであったらしい。巻之三密命残月無想斬り火血刀剣という妖剣を操る石動奇嶽なる怪人との闘い。武田信玄の「草の者」という設定。巻之四刺客密命・斬月剣大岡越前の密命、京都の探査、7人の刺客との闘争。将軍職を争う宗春の陰謀。気を取り直して「巻之五」に取り掛かる。時代は享保四年(1719)だ。「巻之一」で主人公の金杉は35歳だったから、今は45歳である。すっかり中年になってしまった。世は吉宗の「享保の改革」が始まったばかりである。今回の作品は全編を通して「火頭の歌右衛門」なる強盗殺人放火の夜盗との闘い。最終的には主人公達が勝利する訳だが、20人からの夜盗の資金源は吉宗に...火頭密命・紅漣剣

  • 密命 弦月三十二人斬り

    ―巻之二―佐伯泰英/双葉文庫2007年6月20日初版。1716年(享保元年)の夏の終わりから話は始まる。「巻之一」から七年ほど過ぎており、金杉惣三郎は留守居役として広尾の相良藩下屋敷に居た。世は吉宗の時代である。江戸留守居役になっても、相変わらず周辺には風雲が湧き上がる。今回は吉宗の将軍職就位に絡んで、支援するものと阻むものの対立の中に、妙な連中が入り込む。「乗源寺」なる忍者の一団である。将軍職を継ぐような譜代大名には「御庭番」なる一団が組織されており、足元をすくわれないように、或いはライバルの動向をいち早く知る意味でも情報収集の要であったと思われる。幕府といえども「御庭番」や「隠密」を駆使して、体制維持に努めている。吉宗にはそんな話があるのか、単なる小説の中の架空の話なのか判らないが、周辺の世継ぎが次々死亡(...密命弦月三十二人斬り

  • 密命 見参!寒月霞斬り

    ―巻之一―佐伯泰英/祥伝社文庫2007年6月20日初版。2011年6月10日第15刷。将軍綱吉が世を去った1709(宝永6年)年から物語は始まる。例によって南国小藩の内紛が発端である。次期藩主の若者と主人公・金杉惣三郎が綱吉の御代に犬を殺処分して埋めたという秘密を共有するという話しはなかなか面白い設定だ。金杉惣三郎は江戸で分家・斎木丹波の陰謀を次々と妨害し、その計画を阻んだが、遂に国元で息子(清之助)と娘(みわ)を勾引され、窮地に立った。525pの長編、読み応えは充分だった。徳川家康は本多正信、徳川綱吉は柳沢吉保、徳川家治は田沼意次、将軍職にあっては必ず、その後ろ盾、支える者が居た。「密命」はちょうど綱吉、吉保の時代が終わり、新しい時代の幕開けでもある。主人公は「密命」により自藩を出奔し、江戸の長屋で暮らし始め...密命見参!寒月霞斬り

  • 孤軍

    ―越境捜査―笹本稜平/双葉文庫2020年12月13日初版。久々の「相勤者/浅草機動捜査隊」に続いての警察モノ。長々と時代小説に浸っていたので、なんとなく調子が狂ってしまうのだけれど。今回の「越境捜査」は警察組織の内部告発的事件解決を目指すもの。「タスクフォース」と称する組織をフルに生かし、常に先手を取る。97p監察との鷺沼の丁々発止が面白い。返答を誤れば、とんでもないことになる腹の探り合いだ。後手に回ればすべてがそこで終わってしまう。なかなかスリリングな、緊張を強いられる作品だった。首席監察官の村田は「滝野川の豪邸」だそうだが、これは浅見光彦さんの家の近くじゃないの。あの辺は、官僚が多いのかな、なんて要らぬ想像をめぐらした。175p親族相盗例(特例):親族間の窃盗、詐欺、横領等一部の犯罪行為はその刑を免除される...孤軍

  • 相勤者

    ―浅草機動捜査隊No.11―鳴海章/実業之日本社文庫2020年12月15日初版。2019年に「情夜」と「失踪」を読んでいるので、この作品が三冊目。特にシリーズ番号はないので、毎回読み切りということになるだろうか。しかし、登場人物は一貫しており、浅草を舞台にしての「古臭い雰囲気」はしっかり今も維持している。この作品は流石に最近書かれたようで、コロナの影響も少なからず書き込まれている。その後、「緊急事態」は続き、街の雰囲気は更に寂れてしまったが、著者もそこまでは考えなかったに違いない。一人のベテラン部長刑事が何ともあっけなくこの世を去った。バットかジョナサンか、似たような他の猫か、とにかく猫を追いかけて車に轢かれるという最後は何とも評し難い。「失踪」でも登場していたから、当初からの登場人物だったのではないかと思う。...相勤者

  • 旅立ノ朝

    ―居眠り磐音(51)―佐伯泰英/双葉文庫2016年1月9日初版。寛政七年(1795年)夏、坂崎一家が再び関前を訪れるところから始まる。前巻から二年後のことである。国家老の父の見舞いということもあるが、同時にまたもや関前に広がる不正の芽を断ち切ることになった。それは父の置かれた状況と無関係に済ませることは出来ないものであった。話の構成で藩主と国家老の世代交代を軸にして、問題を一挙に解決するという離れ業だ。・七人の刺客・藩主交代・国家老の刷新・流浪の十二年・別れ・新たな旅立ち最後は息子の空也が磐音、おこん等家族の元を離れ、一人薩摩に向かって修行の旅に出た所で終わる。空也は先ず、薩摩示現流を学びたいらしい。まさに「旅立」そのものだ。明和九年(1772年)から始まる長い物語だった。その間二十三年だが、中身は四、五十年詰...旅立ノ朝

  • 竹屋ノ渡

    ―居眠り磐音(50)―佐伯泰英/双葉文庫2016年1月9日初版。田沼意次との最後の暗闘を乗り越えて、この巻は、いきなり1793年(寛政五年)の春を迎える。空也は十四歳になり、道場での稽古を許されていた。色々なことがあった。尚武館の番犬、白山は二年ほど前に死んだらしい。・速水左近の復職・尚武館の再興・尋常の勝負・老中首座の解任・金兵衛身罷るいよいよ終盤を迎える前哨戦。いろいろな意味で世代交代がある。若い人が成長し、年寄りは去ってゆく。それを自然に受け入れることはなかなか難しいが、時間がその痛みを癒してくれるようだ。佐々木道場の地中から出てきた小刀の意味を、政治的に利用されることなく問うことができたことは、主人公の人生の(王道)選択だったように思う。人は豊かな経験と見識を以てしても、なかなかこのようにはいかないもの...竹屋ノ渡

  • 意次ノ妄

    ―居眠り磐音(49)―佐伯泰英/双葉文庫2015年7月15日初版。この巻は天明八年(1788年)夏から始まる。実はこの年の一月三十日、京都では大火があり都の大半が焼け落ちるという事件があった。飢饉も続き、米騒動や打ち壊しも頻発し、そんなこともあって、世の中は不穏な空気に包まれていたことは確かだ。そこに田沼意次の身罷り(七月二十七日)があった。・意次70の身罷り・七人の刺客・霧子の怒り・空也の初陣著者はあとがきで前言の五十巻完結を翻し、五十一巻完結になることを、ここで改めて宣言した。長く書いてきた「書き下ろし」だが、どうやら「締め」の目途がたったらしい。意次ノ妄

  • 白鶴ノ紅

    ―居眠り磐音(48)―佐伯泰英/双葉文庫2015年1月10日初版。この巻は前巻から一年ほど先に飛び、天明六年夏から始まる。二人の住み込み門弟、松平辰平・お杏は祝言を上げて福岡藩黒田家家臣となり、江戸藩邸の長屋へ引っ越し、重富利次郎・霧子も同様に祝言を済ませて、関前藩士、剣術指南方として江戸藩邸へ引っ越していた。新たに(奏者番速水左近の次男)速水右近と(御家人・元鈴木道場門弟)恒柿智之助が住み込み門弟となった。小梅村尚武館を背負うのは実質、依田鐘四郎、田丸輝信、神原辰之助、速水右近の四人となった。・尚武館の世代交代・最上紅前田屋・新規開店・尚武館の刺客・朝比奈切通しの刺客・お代の方、還俗ここしばらく登場しないが、御典医、桂川国瑞と共に若狭小浜藩の蘭医、中川淳庵がいる。作品では触れていないが、彼はこの年(天明六年)...白鶴ノ紅

  • 失意ノ方

    ―居眠り磐音(47)―佐伯泰英/双葉文庫2014年12月14日初版。天明四年、田沼意知の死後、誰もがその後の成り行きを、息を潜めて見守っている江戸である。市井からは片や「世直し大明神」と崇められ、片や早くも忘れ去られようとしていた。天明の大飢饉の最中だが、道場破りや北尾重政を加えて主人公の周辺は相変わらず忙しい。・刺客の再来・忍びの弔い・奈緒の行方・ひなの幻術・北尾重政の新作・再出発敵討ちは武士に許された正当な「復讐」であるが、やがて不惑を迎える主人公にとって、その虚しさは身に沁みている。武士の矜持と矛盾することに悩み、剣術にその答えを見出そうとする。そして、佐々木家に伝わる拝領の小太刀が意味するところは何なのか、思索は尽きない。そこに、235p「人の命を絶つことではのうて、生かす道を考えよ」という玲圓の言葉が...失意ノ方

  • 空蝉ノ念

    ―居眠り磐音(45)―佐伯泰英/双葉文庫2014年1月9日初版。この巻はHappyな事と緊迫した状況とが交差する、妙な緊張感が漂う流れになった。Happyな事は松平辰平と箱崎屋お杏、重富利次郎と雑賀霧子だ。それぞれの情景は若さが眩しく溢れ、何とも羨ましい。誰しも「若い時」はあったはずだが、遥かに過ぎ去ってみれば、自分もそんな時代があったのかと思えてしまう。著者もそう思いながら書いたのではないだろうか。緊迫した状況は例によって田の字との関係だ。先手を取られないように、常々気を遣う日々だが、同時に自分の想念とは別に道場に集う若者たちのことを考えざるを得ない。・流浪の老剣客・道場破り・猪牙舟の割り込み・辰平の仕官・辰平の決意・流浪の終焉それを象徴するかのような「流浪の老剣客」だ。己の生き方に対する信念が少なからず揺ら...空蝉ノ念

  • 湯島ノ罠

    ―居眠り磐音(44)―佐伯泰英/双葉文庫2013年12月15日初版。小伝馬町の牢屋敷というのは北町奉行所と浅草御門の中間くらいにある。どちらからも1kmもない距離で、町屋の只中にあったようだ。流石に牢屋敷だけあって、跡地は「十思公園」になっている。多くの作家が題材、背景に使用している阿鼻叫喚の場所である。今回は尚武館門弟の松平辰平が突然姿を消し、何と小伝馬町の牢屋敷、それも女牢に押し込められるという事件である。押し込めたのは町方の与力や同心である。尚武館門弟というだけでそれが出来るのは田の字以外には考えられない。・利次郎の仕官・辰平、勾引され女牢に閉じ込め・辰平救出主人公の周辺では田の字との抗争がいつ終わるともなく続く。尚武館の一画を崩さんと奉行所まで動員して勾引までするという強引さだ。この頃、世間では天明の飢...湯島ノ罠

  • 徒然ノ冬

    ―居眠り磐音(43)―佐伯泰英/双葉文庫2013年6月16日初版。1783年末、息子の意知は異例の若年寄支配に昇進した。明けて翌年、佐野善左衛門政言(五百石)を黙らせるためにいきなり御小納戸頭取(千五百石)を任命する素振りを示したが、周りが納得しなかった。そのこともあってか佐野善左衛門を江戸から離れた相良に呼び出して密かに暗殺を画策したが、それも失敗に終わった。この辺はいかにも小説らしい所だが、現実はもっと複雑奇怪だったのかもしれない。・霧子復活・母の思いと倅の就職・首尾の松の強盗・秘伝の短刀「秘伝の短刀」というのが、またいかにも小説なのだが、これを今度どのように展開させるのか、少なからず期待させるものがある。山形の奈緒との関係、状況もちょっと気になるところだ。尚武館は意外にも賑やかで、資金の面でも潤沢とは言え...徒然ノ冬

  • 木槿ノ賦

    ―居眠り磐音(42)―佐伯泰英/双葉文庫2013年1月13日初版。この話しは1783年(天明3年)の盛夏の話しになるだろうか。少し前に起こった21p浅間山の大噴火の話が少なからず登場する。磐音の両親はそのまま小梅村で暮らし、藩主の実高は養子の後継ぎを伴って関前から出府してきたところだ。相変わらず、尚武館には金子に釣られた浪人達が現われる。警護に万全を期して行動する日々だが、門弟は徐々に増えて道場も活気と力強さが戻って来た。・実高出府・藩主の後継ぎ・国家老の帰藩・懲りない兄弟・朝比奈切通し・縁切寺(東慶寺)・菜緒の苦境・修太郎の悩み・毒矢・磐音の道場破り224p小梅村の尚武館に佐野善左衛門28が現われた。「貸した「七曜紋の旗」を一向に返さない」「佐野家の系図を返さない」「佐野大明神を横領し田沼大明神に変えたこと」...木槿ノ賦

  • 散華ノ刻

    ―居眠り磐音(41)―佐伯泰英/双葉文庫2012年12月23日初版。今回の章は1783年(天明三年)三月の話しになるだろうか。関前藩に渦巻く陰謀が次第にはっきりしてきて、江戸藩邸を中心に結末の時を迎える。主人公は父を助け、あらゆる伝手を使って戦いに挑むことになる。そんな最中、竹村さんは突然「旅」に出たらしい。当時の「旅」には独特のものがあるようだ。現代においても「旅」の魅力は変わらないが、その不便さ、困難さは命懸けであったはずで、それでも人は「旅」に憧れていた様子がある。時代小説には欠かせない情景の一つになっている・藩主の側室・武左衛門旅に出る・江戸家老の陰謀・国家老の裁定・関前藩の後継者・阿片密売の結末・正室の剃髪江戸家老の陰謀はなかなか疲労感のある話しだった。田沼意次の政略的な血縁で幕藩運営を固めるという手...散華ノ刻

  • 春霞ノ乱

    ―居眠り磐音(40)―佐伯泰英/双葉文庫2012年10月14日初版。今回の話しは天明三年(1783年)春から始まる。おこんは正月十五日、無事女の子(睦月)を生んだ。この年5月、浅間山が大噴火したことで、市井の暮らしは困窮の度合いを増すことになる。その辺のことは作中で触れていないが、その前に関前藩の運営にまたもや怪し気な影が忍び寄る。・同心の嫁・睦月生まれる・関前の悩み・関前国家老の勾引・暗殺者・関前国家老奪還関前藩は順風で船を正徳丸、豊後一丸、豊江丸、明和三丸、と次々と新しくしていた。うまく行っていればこそ、不正もまた育つというもの。しかし、田沼意次の幕藩運営は親類縁者で固めるというのが常套手段。その徹底ぶりには恐れ入る。それをうまく取り込んだのが今回の作品だった。田沼意次の政略的に血縁で幕藩運営を固めることの...春霞ノ乱

  • 東雲ノ空

    ―居眠り磐音(38)―佐伯泰英/双葉文庫2012年1月15日初版。「姥捨の郷」を出て、永い旅路の末、江戸に辿り着いた一行。これから新たな闘争が始まるようだ。今津屋の支援で小梅村に新たな道場を開くことになった。当面小梅村を拠点に活動することになる。いきなり小梅村と聞くと何処の田舎かと思うが、大川から引き込んだ横川沿いで、品川家、竹村家、法恩寺橋の地蔵蕎麦とは比較的近い。この一角は何故か小梅村、押上村、柳島村と「村」が多いところである。・新たな刺客・新たな尚武館・弥助の出自・御庭番の監視の目・無役の悲運尚武館は主人公も含めて多彩な人間が多い。小説だから面白くするにはそれも必要なことだが、そうすると、長編になるとどうしても登場人物の出自が気になって来る。それを折に触れてもっともらしく作り込んでいるのがまた面白い。忍者...東雲ノ空

  • 一矢ノ秋

    ―居眠り磐音(37)―佐伯泰英/双葉文庫2011年7月17日初版。姥捨の郷の戦いの話しは天明二年(1782年)頃の春の話し。田沼意次が放った刺客たちがジワジワと近づいて来る。幕府の丹の専売政策に抵抗し、且つ姥捨の郷の独立を守るため、周りを巻き込んでの闘争となった。久々に闘争、殺陣のシーンが展開する。なかなかダイナミックで読み応えのある巻だった。主人公等が「いつまでも姥捨の郷に居られない」と反撃を決意した瞬間だった。・お有の懐妊・田の字の監視・瀑布の戦い・刺客頭と直接談判・姥捨の郷、七人の侍・おすな捕縛・川の道の戦い(川の道二の口)・空の道の戦い(空の道一の口)・大屋敷の戦い「姥捨の郷」は空也が生まれた故郷になる。生まれ故郷というのは独特のRootsというかIdentityを形成するもので、愛国心の根のような部分...一矢ノ秋

  • 紀伊ノ変

    ―居眠り磐音(36)―佐伯泰英/双葉文庫2011年4月17日初版。息子の誕生から始まって、平穏なはずの隠れ里にもいろいろと問題は起きる。世間とつながっていないように見えて、実は切ることの出来ない関係があった。今回は、一見困難に見える問題を、利害関係者を巻き込みながら、立ち向かう地域社会の姿がある。独自性、独立性を維持しながら生きることの難しさがある。人間、仙人のように暮らすことは難しい。・空也誕生・藩内の二派・特産品の行方・御三家の後継ぎ・新たな刺客・柳次郎の婚礼出来るだけ政には関わらないように暮らしている主人公だが、それでも抗争や軋轢に触れることは避けられない。更に執拗に田の字に雇われた唐人が送り込んでくる刺客は後を絶たない。隠れ里にあっても、一向に気の休まらない主人公であった。紀伊ノ変

  • 姥捨ノ郷

    ―居眠り磐音(34)―佐伯泰英/双葉文庫2011年1月16日初版。一行の新たな逃避先は、まさかの紀州、裏高野山の隠れ里だった。泰平の世が続き、すでに雑賀衆の活躍の場は失われて久しく、僅かばかりの忍びの技が受け継がれていた。それは同行の霧子の故郷であり、里人だけが知る雑賀の邨だ。紀州和歌山は時代小説作家に限らず、「浅見光彦シリーズ」でも度々登場する。その自然の豊かさ、奥深さ、幽玄さに魅せられる人は多い。空海もその一人であったに違いない。・新たな刺客・再び逃避行・高野山の隠れ里・高野山奥之院の勝負・空也誕生無謀にも松平辰平と重富利三郎の二人がやってきた。そして、何よりおこんに子が無事生まれて、「空也」と名付けられ、都合七人のこれからに明るさが増した。しかし、子女、年寄りばかりが暮らすこの隠れ郷に長く暮らすことも憚ら...姥捨ノ郷

  • 尾張ノ夏

    ―居眠り磐音(33)―佐伯泰英/双葉文庫2010年9月19日初版。主人公の行く処、常に風雲立ち込める。尾張の地にも安寧を見出すことは無かった。田沼の追手は相変わらず止むことを知らず煩わしい。しかし、主人公は着々と徳をもって人とのつながり、信頼を強固に築き上げ、来るべき時に備える旅であった。・竹村早苗、鰻蒲焼「宮戸川」に再就職・尾張城下の暮らし・藩道場の客分・雹田平の策謀・木材横流し・示現流の二の太刀今津屋吉右衛門がお艶と大山参りに出掛ける前に水垢離のシーンがあった。今回、終段に金兵衛さんが大山参りの準備と称して、足腰を鍛える徒と水垢離のシーンがある。ここで唱えられているのが「懺悔、懺悔、六根罪障」というものだ。「六根の罪の懺悔(さんげ)を説いた」観普賢菩薩行法経という法典による教えだという説もある。201805...尾張ノ夏

  • 弧愁ノ春

    ―居眠り磐音(32)―佐伯泰英/双葉文庫2010年5月16日初版。俗に言う左遷は「都落ち」とか「島流し」とか言うけれど、追い落とされる身になれば、今まで思いも依らなかっただけに、それはそれでなかなか辛いものがある。この時代、「敗者復活」も「再チャレンジ」も見当たらない。ただいつの日か、機が熟すのを耐えて待つのみということか。・仮の宿・左近の無念・江戸脱出・猪鼻湖の作戦・称名寺の戦い312p「天上に彩雲あり、地に蓮の台(うてな)あり。東西南北広大無辺にしてその果てを人は知らず」「笹の葉は千代田の嵐に耐え抜き常しえの松の朝を待って散るべし」磐音の行く末を暗示するような句だ。・・暗い。弧愁ノ春

  • 更衣ノ鷹(上下)

    ―居眠り磐音(31)―佐伯泰英/双葉文庫(上)2010年1月10日初版。2010年1月12日第2刷、(下)2010年1月10日初版。本章では西の丸が三度の鷹狩を江戸近郊で行う。陰に陽に警戒する主人公達だったが、隙を突かれて遂に毒殺を許してしまう。その結果、大きな運命の波が押し寄せることになった。(上)・尚武館の客分・大納言の御鷹狩・おこん勾引される・雇われ暗殺者・最後の刺客、おこん奪還(下)・田沼派の様子見・佐々木家の秘事・大納言毒を盛られて身罷る・最後の刺客・尚武館閉鎖の沙汰・玲圓自裁佐々木玲圓が、P177「・・おこんとともに生き抜いてくれ」と言うと同時に、P183「われらは捨て石。元々武家というもの、一将のため死するが勤め」という葉隠の武士道的な言葉も残す。闘争に敗れた佐々木玲圓があまりにも潔く言葉通りに自...更衣ノ鷹(上下)

  • 東京時代MAP

    ―大江戸編―松岡満/光村推古書院2005年10月29日初版。2017年10月5日第9刷。元図の詳細、出典は明確になっていないが、表紙の鹿児島大学付属図書館にある「御江戸大絵図」であるとしたら、それは「嘉永5年(1852年)改正、出雲寺万次郎版岡田屋嘉七売出、折本大本、彩色江戸町図/高井蘭山著」ということになる。この地図には「元禄9年旧版、文政5年補改、天保14年(1843年)再板の地図」という履歴があるという。それはともかく、1852年は翌年浦賀に黒船がやって来た時代であり、八年後には「桜田門外の変」が起きる江戸時代末期の江戸絵図ということになると思われる。例えば、本所松坂町にあったはずの吉良上野介の邸はこの地図に載っていない。松坂町、一丁目、二丁目として分割されてしまっているのである。時代小説の読者としては、...東京時代MAP

  • 侘助ノ白

    ―居眠り磐音(30)―佐伯泰英/双葉文庫2009年7月19日初版。長い歴史を積み重ねると多くの組織は必ず腐敗してしまう。これは人が作る組織の宿命のようなものである。そんな中で自浄能力を維持することは至難のことに違いない。・土佐、山内家の改革・槍折れの名人・常泉寺の闘剣士・小田平助、尚武館に就職決まる・道場破り・山内家闘争の決着「闘剣士」なる賭場、時代小説でこのような設定は初めて読む。言うなればコロシアムの「闘牛」であり、ストリートファイターである。その非情な、人間の貪欲な、異常なグロテスクな感覚が地下の賭場に漂う。江戸時代、本当にこのようなことがあったのだろうか。確かに武士はその剣技を競うことをためらわない。主人公も悪党をバッタバッタと薙ぎ倒すが、「闘剣士」が武士の行く末だとは考えたくもないだろう。土佐の藩改革...侘助ノ白

  • 冬桜ノ雀

    ―居眠り磐音(29)―佐伯泰英/双葉文庫2009年4月19日初版。2009年5月15日第3刷。騒動のネタは大小多々あるもので、限りない。今回は再び佐渡送りの悪党共が逃亡し、江戸の市井の人々を不安に陥れる。久々に登場した関前船は新造船。この舞台装置で一網打尽の計画だ。リスクの高い計画だったが、八方丸く収まった。ただ、再就職した門番の竹村さんだけが、何とも情けないことになり、この先が思い遣られる。・利休の茶碗・佐渡送りの逃走・三味芳七代目・最後の刺客最後の盲目刺客は幻術遣いか、左腕を落とされても尚諦めない。著者がどんな結末を描いているのか、とても気になる所。ここまで盛り上げて簡単に決着がつくとは思えない。冬桜ノ雀

  • 照葉ノ露

    ―居眠り磐音(28)―佐伯泰英/双葉文庫2009年1月18日初版。今回も細々と盛沢山。中でも竹村武左衛門の奉公「就職」の話しは、現代でもそのままである。捨てきれない武士の矜持、潰しの効かない武士という職業階級だ。過去の栄光に縋り、身に付いてしまった態度や行動様式は「それではいけない」と解っていても簡単には変えられないのが人間だ。武左衛門の気持ちはよくわかる。開いていたはずの明日が、徐々に狭まっていくことに、誰のせいでもなく年齢という抗し難い壁が立ち塞がっていることに、苛立ちと焦り、絶望が過る。素直に成り切れない自分が哀しい。・設楽家の仇討ち・柳原土手の掏り・刀研ぎ屋の強盗・竹村武左衛門のリクルート・鐘撞き堂・毒殺事件・西の丸・剣術指南・同心の幼馴染・四人目の刺客主人公には相変わらず差し向けられた刺客の陰が迫る。...照葉ノ露

  • 柘榴ノ蠅

    ―居眠り磐音(27)―佐伯泰英/双葉文庫2008年9月14日初版。出羽山形の紅花専売騒動から抜け出して、帰路についた一行だが、江戸を目の前にして、もう次の騒動の芽が現われた。落ち着く暇のない主人公だ。・常陸麻生藩お家騒動・居直り強盗・野洲無宿の平造・武左衛門の悩み・次期将軍の本所、深川探訪巷の喧騒(居直り強盗、違法賭博、強請たかり)のうちに、次期将軍の本所・深川探訪が織り込まれる。そこには敵対する田沼意次派との駆け引きもある。忙し過ぎて、前身の関前藩の様子がすっかり忘れ去られてしまったようだ。柘榴ノ蠅

  • 紅花ノ邨

    ―居眠り磐音(26)―佐伯泰英/双葉文庫2008年7月20日初版。今回は山形に出張。奈緒の窮地を聞き、何か出来ないものかと思案しながらの山形行きだった。そこには山形藩の内紛があった。保守、改革の政争と国家老の恣意的な人事と共に紅花専売を独占しようという輩が暗躍していた。勿論、主人公はこれを解決するのだが、当時の紅花の生産がどのようなものであったか、旅情豊かに語られるところが実にいい。・名人「三味芳」復活・野伏・藩政刷新組・紅花文書・反撃福島の信夫山は市街地に浮かんだように在る山で、とてもよく目立つ山である。春になると近隣の人々はここに集って花見をする。場所は信夫山公園あたりだろうか。この山の東側に「岩谷観音堂」がある。転勤で福島に一年ほど暮らしたのだが、身近にありながら遂に参詣の機会が無かった。地図をよく見ると...紅花ノ邨

  • 白桐ノ夢

    ―居眠り磐音(25)―佐伯泰英/双葉文庫2008年4月20日初版。今回も例によって盛沢山。・次期将軍の美食・女たちの深川散策・竹村早苗の就職・乱派、雑貨衆の幻術・「殴られ屋」の矜持このシリーズには珍しく幻術的な殺陣シーンが登場する。雑貨衆の怨念とでも言うべき奸三郎丸多面だ。女狐おてんの子(二歳)だという話しも幻術的なのだが、普段の現実的な話しとの整合性が難しいと思われるが、実にうまくギリギリ調整されているように思う。著者の「異館/吉原裏同心シリーズ」を思い出す。これを多用すると、居眠り磐音シリーズの根底が崩れるリスクがある。肌合いのまったく異なる話しになってしまうからだ。それともこれからシリーズはこの幻術世界に踏み込むことになるのだろうか。いや25巻まで来て、それはないだろう。白桐ノ夢

  • 朧夜ノ桜

    ―居眠り磐音(24)―佐伯泰英/双葉文庫2008年1月20日初版。日光社参の「家基」護衛以来、すっかり目を付けられた主人公である。道場の増改築の完成で、杮落し大試合を勝ち抜いたことで表にも裏にも有名になってしまった。・野犬組・尚武館道場破り・磐音、佐々木家養子に入る・おこん武家の養女になる・三味芳再建・佐々木家の嫁・暗殺団田沼一派が雇った5人の暗殺団、内3人は既に討ち果たした。琉球古武術では思わぬ負傷を受けてしまったが、それも回復して、残るは宮本武蔵が模範の「独創二天一流」と「薩摩示現流」の二人の浪人。その他にも日々道場破りがやってくるから忙しい。そんな中、おこんは屋根船で神田川を上がり、人々の紙吹雪や木遣り唄に見送られて速水家の養女になった。YouTubeで「木遣り唄」を聞いてみると、神田川をゆるりと遡上する...朧夜ノ桜

  • 万両ノ雪

    ―居眠り磐音(23)―佐伯泰英/双葉文庫2007年8月20日初版。今回もなんだかんだと盛沢山。長い西国の旅だったが、磐音、おこんは江戸への帰路の途上にあった。江戸では磐音、おこんを取り巻く人々が、今か今かと二人の到着を待ち焦がれていた。・内藤新宿の夜盗・島抜けと逐電夫婦・稲荷社の旧一里塚・磐音、江戸帰着・正月の道場破りと赤織部の茶碗・今津屋の後継ぎこの冊には珍しく著者の「あとがき」が載っている。それも、かなり長い。著者がスペインで写真家をやっていた時の話しなのだが、その被写体が「闘牛士」だった。仲良くなった闘牛士を被写体にして旅に同行し、その生活を追った。それが「時代小説」にどんな影響を与えたのか、読者への資料提供でもある。著者はその関係について具体的に述べていないが、そのあたりの質問が多々あるらしい。成る程、...万両ノ雪

  • 荒海ノ津

    ―居眠り磐音(22)―佐伯泰英/双葉文庫2007年4月20日初版。福岡商人の招きでしばらく福岡に留まることになった。江戸に戻る旅の途中でのこと。しかし、ここにも「道場破り」や「駆け落ち」など、波乱が続く。その頃、江戸でもいろいろなことがあった。特に品川家の紆余曲折に、次男坊の柳次郎も困窮したが、幼馴染のお有との出会いを期に、何だか運が開けて来た様子。この際、お有は福の神だったか。・福岡・藩道場(修養館)の稽古・尚武館道場破り・お咲の駆け落ち・柳次郎、八方塞がり・賭場のガサ入れ・修養館道場破り・次男坊、当主になる駄洒落は江戸っ子の啖呵、洒落、粋とともに、文化の一翼を担う。「恐れ入谷の鬼子母神」は現役の言葉遊びだが、その後にこんな続きがあるとは知らなかった。恐れ入谷の鬼子母神、(恐れ入りました)そうで有馬の水天宮、...荒海ノ津

  • 鯖雲ノ城

    ―居眠り磐音(21)―佐伯泰英/双葉文庫2007年1月20日初版、2007年2月10日第4刷。恐怖の船旅を終えて、どうにか主人公の故郷、豊後関前風待湊に到着したが、既に江戸で聞いていたように、ここにも暗雲は漂っていた。出来るだけ関わらないように努めた主人公だったが、例によって災禍は向こうからやってくる。・国家老(正睦)暗殺未遂・郡奉行(東)刺される・家老の策略・仮祝言と出立・最終対決話しがあまりにリアルなものだから、関前藩の白鶴城は想像の産物か、それともモデルはあるのか気にかかる。著者は九州出身だから、地元に詳しいのはわかるが。大分県(豊後)の東海岸沿いで北に「臼杵」、南に「日向」がある。話としては、この間になるはずで、北から津久見、佐伯、延岡の三市があるが、相当するような城は見当たらない。港湾の形も違うような...鯖雲ノ城

  • 野分ノ灘

    ―居眠り磐音(20)―佐伯泰英/双葉文庫2007年1月20日初版、2007年6月10日第7刷。前冊に続き、どうやら刺客を差し向けるのは田沼派らしい。今回も次々と困窮した浪人の足元を見て、雇い入れたであろう刺客がやって来る。同時に主人公の周辺も慌ただしく変化する。・磐音の転職・柳原土手の刺客・南割下水の刺客・同心、一郎太狙われる・船旅・船上の刺客今回の圧巻はやはり千石船の船旅だろう。少し前に「漂流/角幡唯介」を読んだが、船は実に恐ろしい。穏やかな洋上であれば、何の心配もなくこれほど快適な旅はないのだが、ひとたび荒れ狂った洋上では、人間の無力を感じない人は皆無だろう。ましてこの時代、エンジンも無ければGPSも無い。天気予報は船頭の読み次第だ。それでも陸上輸送の困難さに比べれば、やはり利点は大きかったのだろう。刺客も...野分ノ灘

  • 梅雨ノ蝶

    ―居眠り磐音(19)―佐伯泰英/双葉文庫2006年9月20日初版。2018年6月13日第39刷。今回は佐々木道場の改築完成とそのお祝い。道場は新たに「尚武館」と名が付けられ、盛大な剣術大会が開催された。その裏で、磐音を付け狙う刺客がいた。・柳原土手、磐音の油断・尚武館道場、杮落し「剣術大会」・島抜けの強盗殺人集団、一網打尽・刺客との再会、両国橋雨中対決最後に、雨の両国橋で再対決。しかし、刺客を放った人物は遂に判らなかった。刺客は「そなたを邪魔に思うお方が城中におられる」という一言を残しただけだった。「城中」ということは「基家」を警護したことで報復を考えた田沼派か、或いは豊後関前藩江戸家老(福坂利高)の城中関係者か。磐音が潰した大名、旗本は一つ二つではない。どこでどんな恨みを持つか知れたものではないが、これからも...梅雨ノ蝶

  • 捨雛ノ川

    ―居眠り磐音(18)―佐伯泰英/双葉文庫2006年6月20日初版、2009年11月30日第25刷。今回の章はざっと以下の様な具合。・鐘四郎の思い切り・おそめの奉公替え、「縫箔」弟子入り・鐘四郎の婿入り縁談・矢平次の島抜け・おはつの奉公先エントリー今までも、いろいろな情景が描写されてきたが、今回のラスト338p~は秀逸なもの。どうも男が描く情景は無骨で、粗野な感じがするものだが、ここは著者も頑張った。こんな情景が出て来るとは思わなかった。思わず二度読みしてしまった。この場合、川に「流す」という行為は、「怨み辛み、積もり積もった蟠り、辛苦の思い」を形に託して流し去り、心機一転、明日から新たな気持ちで向き合おうという、心の再起動のようなもの。「怨み辛み、積もり積もった蟠り、辛苦の思い」は「人の心の闇」であり「穢れ」な...捨雛ノ川

  • 紅椿ノ谷

    ―居眠り磐音(17)―佐伯泰英/双葉文庫2006年3月20日初版、2008年3月20日第20刷。地図を見ながらの読書だが、今回ちょっとした発見があった。江戸城を取り巻く堀に掛る橋が、同時に堀の内外を結ぶ門になっており、「何々御門」という名が付けられているが、当初「浅草御門」は浅草にあるものと思っていた。話の筋から何かおかしいと思いながら読んでいたが、今回それがはっきりした。何と「浅草御門」は両国にある御門だった。両国の北を大川に流れ込む神田川に掛る二つ目の橋が浅草橋という名前になっており、その袂が「浅草御門」だった。浅草寺、雷門がある浅草は大川の左側、御蔵前(江戸通り)という通りをかなり北へ(2km以上)上ったところにあり、大川には両国橋、吾妻橋(東橋)のこの間に橋はない。そういえば総武本線の駅も「浅草橋」で、...紅椿ノ谷

  • 蛍火ノ宿

    ―居眠り磐音(16)―佐伯泰英/双葉文庫2006年3月20日初版。2007年10月30日第15刷。今回の章の大きなうねりは、やはりかつて許嫁であった小林奈緒との決別であろう。その前に「今津屋吉右衛門・小清水屋佐紀」の話し、脱藩、出奔した「大塚左門・小清水屋香奈」の話しがある。そして「坂崎磐音・小林奈緒」の話しで纏められる。・大塚左門・お香奈のその後・白鶴太夫の落籍・吉原敗者の逆襲・奈緒との別れ「吉右衛門と佐紀」は「幸せ」の門出、「左門と香奈」は再び「流浪」の旅へ、そして「磐音と奈緒」はとうとう「訣別」する。己の努力だけでは如何ともし難い「選択」が人生には多々起きる。これを翻弄されずに乗り切るというのは並大抵ではない。幸せの形は人それぞれであるとしても、「苦汁の選択」だけは避けたいものだ。それでなくても「災厄」は...蛍火ノ宿

  • 駿雨ノ町

    ―居眠り磐音(15)―佐伯泰英/双葉文庫2005年11月20日初版、2007年6月10日第14刷。今回の章は、関前藩江戸家老の裁断が大きな波。そもそも評判の悪い江戸家老で、国家老宍戸文六の再来と言われているくらいであるから、どのような先行きになるかと思っていたが、結果厳しい沙汰となった。細かな事件が周辺を埋めて、なかなか立体的に構成されている。もう一つの読み所は、「富士川下り」かもしれない。殺陣のシーンはいつものこととして、この船上の激闘はなかなか迫力がある。長く大きな川だけに、増水したときの川の恐ろしさは今も昔も変わらない。・江戸家老の乱心・幸吉の失踪・菓子屋強殺・押し込み首領の護送・夜盗一家など。お家の騒動に関わるような場合、後継者がいるのであれば、多くは「病死」として扱われる。その罪が公に知られたことであ...駿雨ノ町

  • 夏燕ノ道

    ―居眠り磐音(14)―佐伯泰英/文春文庫2019年9月10日初版。今回の章は将軍の「日光社参」に終始した。将軍の威光を示すものではあったが、無理に無理を重ねての日光詣でであった。江戸時代、この21年後(1843年)の社参は最終回となる。そして67年後には慶喜によって大政奉還が成され、武家社会の終焉を迎えることになる。それは既に坂崎磐音の時代ではないが、人々は想像することすら出来なかったことだろう。・第18回、日光社参(1776年)・次期将軍(家基)暗殺指令江戸庶民の生活と形骸化した武家社会の表裏がこのように小説化されたものを今まで読んだことはない。「日光社参」は、その象徴的な行事だったと思われる。シリーズはまだ半ばにもならないが、その中でも読み応えのある一冊ではないだろうか。関前藩の国家老宍戸文六も幕府の中老田...夏燕ノ道

  • 残花ノ庭

    ―居眠り磐音(13)―佐伯泰英/文春文庫2019年8月10日初版。今回も盛沢山、とにかく磐音の行くところ事件が次々沸き起こる。・強請、たかり、ご隠居の災難・旗本の町金・美人局・おそめの就活・桜子姫の失恋・おこんのお見合い・カピタン襲われる・種姫の麻疹回復・父の出府・カピタンの将軍謁見・身内の刺客幕藩体制の歪みが徐々に進行し、崩れ始める時代の波、そこに決して無関係とは言えない市井に生きる一生懸命な人々の生活が何とも哀愁がこもる。これから日光社参という破綻の威光と、改革反対派の裏切りが渦巻く関前藩の活路はどう展開していくのだろうか。些細な日常、周囲を巻き込む事件、人々を震撼させる事件、お家騒動、体制を揺るがす疑獄と複雑多重に織りなすところが読みどころだ。丁度某局の「歴史ヒストリア」でこの時代の話しが出た。このカピタ...残花ノ庭

  • 探梅ノ家

    ―居眠り磐音(12)―佐伯泰英/文春文庫2019年8月10日初版。・押し込み強盗、吉祥天の伯王・鎌倉建長寺、お艶の供養・今津屋の後添え探し・小清水屋の姉妹・脱藩、逃避行人生、思うようにはならない。近習の大塚左門が、今津屋の後添えにと思っていた小清水屋のお香奈を伴って脱藩、逃避行を選択した。この思い切りのよさが、いやでも磐音の場合と比較される。そして二人の行く末を案ぜずにはいられない。幸せは「思い」だけでは成就しない。思わず「陰で見守る」決意が揺らぐ磐音だが、この先どんな自己実現が待っているのだろうか。探梅ノ家

  • 無月ノ橋

    ―居眠り磐音(11)―佐伯泰英/文春文庫2019年7月10日初版。「カネ」は確かに便利ではあるけれども、同時に扱い方を誤れば、その分だけ「不幸」を強いられる。違法な利子のカネ貸し、借金地獄、取り立て乗っ取り等、凡そ「カネ」が使われるようになってから起きる問題は、今も昔も変わらない。主軸が「米」であった頃の幕藩体制は、江戸時代になって明らかに時代から落伍し続け、完全に形骸化してしまった。磐音が生きた時代はその典型のような武家社会崩壊の様相である。・直参旗本のカネ貸し・鳥取藩の内紛・与力、辻斬りに逢う・吉原太夫の紅葉狩り何だか「太夫の紅葉狩り」がバブル崩壊前夜のような様相。身分の格差と貧富の格差、更にそれぞれが立場や現実をわきまえない行動によって仇花のように咲き誇るのを見るようだ。無月ノ橋

  • 朝虹ノ島

    ―居眠り磐音(10)―佐伯泰英/文春文庫2019年7月10日初版。今回の大きなテーマは江戸城修復。そのための「石」を求めて、伊豆に出掛ける。江戸城の城壁、あの石はどこから持ってきたものか、考えたことも無かったが、それはどうやら伊豆から運んだものらしい。改めてその事業の大変さが解かる話しだった。公共工事と同じで、カネの動くところに人は集まる。そして権利取得や独占、談合が画策されるのは、今も昔も変わらない。公共工事は平等に競争し、適正な価格で行わなければ意味がない。今津屋もカネを出せばよいというものではない。出すからには最適に使って貰わなければ、後々の結果にも影響するだろう。カネに群がる輩を払いのけ、今回は品川柳次郎も活躍する。ちょっとボコボコになってしまったが。朝虹ノ島

  • 遠霞ノ峠

    ―居眠り磐音(9)―佐伯泰英/文春文庫2019年6月10日初版。相変わらず坂崎は市井の細々したいざこざから藩の経済問題まで何かと忙しい毎日を過ごしている。悪党をバッタバッタとなぎ倒しながら。・新人小僧、騙りに遭う・吉原太夫の人気投票・秩父の貧困、娘の身売り・関前物産所利権の攻防・関前物産、第一便の成否家老の嫡男を誇示する訳でもなく、剣技を盾に威嚇する訳でもない。相手には最大の敬意をもって対峙する姿勢はいささかも崩れない。この潔さと誠意がどこまでも続くようだ。坂崎磐音、品川柳次郎、竹村武左衛門、この人間臭い三人が常に登場するが、これこそ「人の側面」「真の姿」に違いない。何かと誘惑に右往左往し、棚から牡丹餅で一喜一憂し、運が悪いとショボくれる。主人公は出来過ぎだが、品川や武村は何が優れているという訳でもなく、武士の...遠霞ノ峠

  • 朔風ノ岸

    ―居眠り磐音(8)―佐伯泰英/文春文庫2019年6月10日初版。いきなり、・石見銀山による一家毒殺事件から始まって、・修善寺の抗争助っ人・小手斬り佐平次との対決・無頼の極右との対決・・等々。その間に豊後関前藩の不審な動きが横たわる。何者かが画策している様子が、何とも場を盛り上げる。無頼の極右、裏で糸を引く「鐘ヶ淵のお屋方様」の正体が遂に判明、攻守逆転し、主人公等が攻めに入り、年番方与力の協力を得て、今回ようやく決着した。四巻「雪華ノ里」から引き摺って来た案件だ。確かに主人公の周りにはいつも何かと事件が起こる。しかし、ヒーローによる単独解決ではなく、周囲の協力を得て必ず解決するというのが一つのスタイルになっている。同心と岡っ引きのような組織的、あるいは上司部下の関係の中で解決する捕り物とは違う点である。吉原の会所...朔風ノ岸

  • 狐火ノ杜

    ―居眠り磐音(7)―佐伯泰英/文春文庫2019年5月10日初版。今回も「紅葉狩り」「鶴吉の敵討ち」「米沢藩士の苦悩」「不良浪人達との争い」相変わらず付け狙って来る「血覚上人一派」と忙しい。お題の「狐火ノ社」は磐音が何かと世話になっている今津屋の年中行事としてお稲荷さんに参詣する話なのだが、江戸中央から出掛ける「お稲荷さん」には「王子稲荷神社」と「王子稲荷大明神」がある。作品の中ではこの二つが混乱しているようで、荒川鎮撫では「王子稲荷大明神」荒川区東尾久で、話の筋としては「王子稲荷神社」北区岸町のような気もしてくる。区は異なるが、この二つは徒歩で行けるくらいの距離なので、何とも紛らわしい。「王子」といえば、王子~上中里は「浅見光彦」の自宅があるところ。「飛鳥山」「滝野川」「西ヶ原」は度々登場するところである。その...狐火ノ杜

  • 雨降ノ山

    ―居眠り磐音(6)―佐伯泰英/文春文庫2019年5月10日初版。今回も盛沢山。・お兼の悲哀・騙りの安五郎・強請たかりの屋根船・大判詐欺・お艶の辞世等々。261p「人は、だれしも死ぬ。それはこの世に生を受けたときからの理」としてお艶の死を受け止めた吉右衛門の心情が痛々しい。バッサバッサと切り捨てる勧善懲悪の磐音だけれど、こればかりは抗えない。お艶を担いで大山を登る磐音の悔しさが、寄って来る無頼に跳ね返る。藩の再建も遅々として進まず、これからも長い苦節が待ち受けるようだ。雨降ノ山

  • 龍天ノ門

    ―居眠り磐音(5)―佐伯泰英/文春文庫2019年4月10日初版。今回もテンコ盛りです。・おっとり百兵衛五人組押し込み強盗殺人・尾張宮宿の弥平等一行から奈緒を守る・霜夜の鯛造、娘の敵討ち・強欲な医者の末路・道場破り・新たな住人・江戸家老の戒め等々。強盗殺人から人気花魁の奪い合い、裏切りと敵討ち、医者の阿片の悪用、道場破り、政治家(江戸家老)の世間知らず。本当にこれでもかと盛り付けている。時代的な背景の中で、唯一現代的なのが「新しい隣人」かもしれない。現代的というより、この辺の事情は昔から変わらないというのが本当の所。お兼の顛末はシリーズ(6)で迎えるが、未練がましく付きまとい、終いに刃物で刺してみたり、立て籠もってみたり、男の単純さが情けない現代版である。龍天ノ門

  • 雪華ノ里

    ―居眠り磐音(4)―佐伯泰英/文春文庫2019年4月10日初版。今回は、両親を助けるため、自ら身売りした許嫁を探す旅。肥前長崎丸山行に始まり、長門の赤間関、豊前小倉、京都島原、加賀金沢を経て、最終的に江戸吉原に辿り着いた。ここまで、蘭医の中川淳庵、富山の薬売り弥助、鳥追いのおまつ、女衒の鶴吉など、これからも登場しそうな多くの人物に出会いながらの長い旅だった。これらの登場人物は、もしかして、これからの話の展開の布石なのかなと思いながら読み進んだ。百両から始まった身売りだが、吉原では千二百両という法外な値になっていた。極貧の坂崎磐音はこの難局にどう対応するのか。藩の財政改革もこれからだ。鰻割きでは到底間に合いそうにない。だからといって、秘策が飛び出してくる様子も全くないのだが・・・。「おまつ」という人物が「鳥追い」...雪華ノ里

  • 花芒ノ海

    ―居眠り磐音(3)―佐伯泰英/文春文庫2019年3月10日初版。今回は市井の小波が続いた後の大波、関前藩の組織改革が主要なテーマ。藩主の特命で老害家老を何とか退かせることに成功した。その間には、推進派反対派の形勢や、雇われ用心棒との対決がある。かなりダイナミックな展開となった。その後、許嫁の奈緒の行方が知らされる。主人公とは言へ、二つの事を同時に対応することは出来ない。既に人知れず国を出た後だった。この辺の捌きは「藤沢周平」であろう。なかなか読みが止まらない。今まで磐音シリーズ以外に「飛躍」「密命残月無想斬り」「異館/吉原裏同心」「刺客密命斬月剣」「御暇」等ランダムに読んで来たが、こうなるとブレイク作品の「密命シリーズ/26巻」を最初から読まずにはいられない。花芒ノ海

  • 寒雷ノ坂

    ―居眠り磐音(2)―佐伯泰英/文春文庫2019年3月10日初版。普段は市井の中で、アルバイトを掛け持ちし、「なんとかせねば」と思いながら暮らしている主人公とその仲間だが、イザとなったら仲間が集まって何とか解決に導く。大方、仲間は非力で、磐音の活躍が中心である。それでも孤軍奮闘にならずに何とかなっている。ここまでなら時代小説としてよくある「市井の人々の悲喜こもごも」構成なのだが、主人公の出身藩の形骸化した組織の中で行われている無責任な財政運営、既得権益を守りたい老害たちの陰謀が見え隠れするところを織り交ぜることで、別の意味で「緊張感」を維持している。この辺が読み物として「面白い」所なのかもしれない。主人公は「居眠り剣」である割りに、殺陣はド派手で、迫力がある。普段の柔和な主人公とは掛け離れた殺陣である。「痛快」と...寒雷ノ坂

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