いやあ、参っちまいました。「6月に誕生日を迎えられたので、身体検査をしますなんて、月一回の定期検診でいわれました。「体重は……。あらあ、大台ですねえ、80.5kgです」「身長は……。あらあ、縮んじゃいましたねえ、171.3cmです」「あらあ」が、口ぐせの看護師さん。すこし、ショックが和らぎましたけど……。でもほんとに、「あらあ」でした、ものの見事に。じつは、もういっちよ!「あらあ……。お腹周り、81cmですねえ。メタボの更新ですねえ……」身体検査
「のんびりしますな、ここは」「ああ、東京の喧騒が嘘のようだ」「まったく、です。ところで、女将と話が弾んでいたようですね。で、どんな話を?」「なんだ、気になるのか?」「いや、あれだけの女傑は、そんじょそこらには居ませんて。女将でなかったら、社長の伴侶に迎えたいもんですよ」「五平もそう思うか?」我が意を得たりとばかりに身を乗り出す武蔵に、「ってことは、社長!まさか?ただですねえ。あの女将、後家さんなんです。それでもいいとおっしゃるなら、話をつけますがね」と、応じる五平に対し「ばか言うな。ここを捨ててまで、俺について来る訳がねえだろうが。おい、ちょっと待て。後家さんだと誰に聞いた?俺には旦那が居るって口ぶりだったぞ。いや待て、そう言えば生き死にの話はしなかったな。こりゃだめってことか」と、肩を落とした。「いやいや、社...水たまりの中の青空~第一部~(九十一)
「どういうことです?」「会社経営をなされていますお客さまが、いかに大変なご苦労をなされているか、いかに大きなご心痛をお持ちになっていらっしゃるか、思いが至りませんでした」「それを、今朝の僕に見た、と?」「はい、海を眺めていらっしゃる御手洗さまに。大変失礼なことを申し上げまして」。深々と頭を下げる、女将だった。「いやあ。女将と、一戦交えたいものですなあ」。突然、武蔵が言う。「あらあら、こんなおばさんでよろしいんですの?」と、女将は受け流した。「その色香は、そんじょそこらの女どもでは出ません。口はばったいですが、僕も年の割には遊んだと自負しています」なおも食い下がる武蔵に「まあ、まあ、まあ、どうしましょう。都会の殿方はお口が、お上手ですから。でも、おからかいもほどほどに。でないと、大やけどなさるかも」と、さらに妖艶...水たまりの中の青空~第一部~(九十)
昨日に入りました!三代目ローンレンジャー号です。どうです!この車体のカラーは。わたしとは真逆な雰囲気を漂わせていますよ。上品で、いいじゃないですか。どういう色名なんでしょう?「ライト・パープル・メタリックです」女性を意識した、いえ、女性向けのカラーですね。わたし最近、紫色に興味を持ち始めていたので、値段やら内装、そして装備を聞く前に即断していました。まあねえ、値段についてはもう40年以上の長い付き合いですから、わたしの懐具合も少しは分かっていてくれていると思いますからねえ。内装の趣味についても、先代なんかぴったりのものを用意してくれましたし。その点では安心して任せられます。装備については、さほどのこだわりもありませんし-CDプレーヤーだけ付いていればOKです。欲を言って、ナビですかね。そうだ!CDにしろナビにし...お披露目!三代目ローンレンジャー号です。
日光・東北旅行、そして東京へ。 [6月11日~6月13日](二十)
ガイドさんと別れたのが、13時少し前でした。「50分ほどです」と言われたけれども、ぴったりの時間でしたね。「さすがプロ。時間配分が素晴らしい!」ですわ。その後にもう一度縄文の世に戻って、写真をパチリパチリ。余計な人物が入り込んでいますが、確かに縄文の世に入り込んだのだと言いたいがための、証拠作りのようなものです。わたしのツアーなんですから。なんて御託を並べるくせに、日光東照宮では一枚も撮らずとは、これ如何に?前回にたっぷり撮ったから、などと己に言い訳をしたけれども、実はバスに置いてきたバッグの中にしまい込んでいたからー要するに忘れただけの話。でも、「雨の中では良い写真は撮れなかったさ」と、己を慰めました。現代に戻ったのが14時でしたから、1時間ほどうろついたことになりますか。先日に縄文女性のおしゃれ度をお話しし...日光・東北旅行、そして東京へ。[6月11日~6月13日](二十)
二代目ローンレーンジャー号との別れの日がとうとう来ました。断腸の想いです、慚愧の念に堪えません。前部後部車内車内ミラジーノ・クラシック初年度登録=2001月8月20年間頑張ってきたんですよね。わたしとの出逢いは、6年前になるのですが。一昨年には、福岡県中間市から12時間ほどかけて、岐阜市まで走りました。中間市をお昼の12:00頃に立って、帰り着いたのが午前0時5分ぐらいでしたかね。関門トンネルを初めて走ってのことです、いつだったかご報告しましたよね。よく頑張ってくれました。その他では、鎌倉市から山中を通って長野県の松本市だったかな、行きました。箱根山中では濃霧の中を走ったり、いろは坂をクネクネと……は、バスだったか。東京にも入ったのですが、一方通行やら首都高速での車線変更やら、色々と悩まされたものです。一番思い...断腸の思いです
神は、常にそばにいてくださる。そして、正しき道へと導いてくださる。しかし、愚かにも人間はそれを、その手を邪険にはらい己の、欲望のままに生きてしまう。神は、いち度のあやまちを許してくださる。神は、に度のあやまちを許してくださる。神は、さん度のあやまちを許してくださる。神は、よん度のご度のあやまちを許してくださる。そして神は、六度目のあやまちを許して下る。なれど、あやまちを犯した人間は罰を受けねばならぬ。現世での罰をうけねばならぬ。現世での罪は現世で清めねばならぬ。獄界に行きたければ、それも良し。獄界で罰をうけたくば、それも良し。-己の罪深さは、己自身が良く知るもの。ならばそれは、己の罰は、己が決めよ。(背景と解説)この頃は、ゲーテ作の「ファウスト」とかダンテ作の「神曲」などに被れていた時期ではなかったかと、そう思...ポエム・ポエム・ポエム=番外編=~罪と罰~
酒の追加を命じた折に、空の徳利を下げたいという女将の言を、床の間に並べ尽くすからと拒否した武蔵だった。女将の泣き言を聞いてみたいと言う、いたずら心からのことだったが、女将はあっさりと引き下がった。「どうしました?実際のところは」「はい。番頭さんに言いつけて、他の旅館よりお借りいたしました。お恥ずかしいことでございます」女将は、涼しい顔でさらりと答えた。「ほお、そうですか。無茶な要求だと思ったのだが」「ほんとうに。ほほほ」今度は、声を上げて笑う女将だった。「気に入った!女傑だねえ、女将は。よし!徳利を進呈しよう。戻り次第、手配させる。いいんだ、そうさせて欲しいんだ。なあに、日用雑貨品は、お手の物さ」「ありがとうございます、甘えさせていただきますわ」深々と頭を下げて武蔵の申し出を受ける女将の襟足から、そこはかとなく...水たまりの中の青空~第一部~(八十九)
「それにしても、ご酒がお強いのですね?驚きましたわ、本当に。ご用意が間に合わずに、失礼致しました」女将は、庭に設置してある椅子を勧めながら、自らも腰をおろした。「いやいや。ぼくも専務も、あれ程に飲んだのは、初めてで。何せ、床の間を埋め尽くせ!とばかりに、やりましたから」「お体の方は、大丈夫でございますか?少しは、お寝みになられましたでしょうか?」「うん、少しね。しかしこんな飲み方をしていちゃあ、先が短いでしょう。まっ、太く短くですな」「そんなこと……」「いやいや、早死にしますよ。自分の体ですからね、分かるんです」話の勢いで出た言葉だったが、何かしら予言じみたものに感じられた。死を恐れる気持ちがないわけではないが、もしも選択を迫られたら――御手洗武蔵という男に胸を張ることが出来ない状態に追い込まれたら、きっとその...水たまりの中の青空~第一部~(八十八)
「内もね、苦しいんだ。思ったように、捌けないんだ。倉庫を見てくれよ、商品の山なんだ。事務所の廊下にまで、溢れかえっているだろう。といって、手ぶらで帰ってもらう訳にもいかんし。どうだろう?君らの給料の五掛けで、手を打ってくれないか?本来なら、社長に支払うべきものなんだ。街金に談じ込まれたら、返答に窮してしまう。その代わりと言っちゃなんだが、ほとぼりが冷めた頃にだ、富士商会に入らないか?君らなら、諸手を上げて歓迎するが」武蔵は、残金、確かに受領致しました。という、一札と引き換えに個々の従業員に手渡した。総額がいくらなのか、誰にも分からぬよう処理したこと、そしてまた残金と書かせたことで、金壱拾萬円の支払済みとしてしまった。実のところは、三萬円そこそこの金額だったのだが。その後、何人かが職を求めてやって来たが、武蔵の入...水たまりの中の青空~第一部~(八十七)
最終日、東京にUターンです。もちろん、高速夜行バス利用でした。首都高の渋滞に巻き込まれて、当初予定から20分遅れの午前8:50着です。特段に急がねばならない理由もありませんが、早く体を伸ばしたいと言う気持ちが強くありましたがね。高速バス停車場から出て鍛治屋橋交差点へと向かいます。地図には「左へ」とあるのですが、どちらを向いての左かが分からず、です。ここを直進なのかそれとも右折すべきなのか、書いてなーい!不覚、です。が、ここは直感を信じて(ものすごい不安感の中)、右折してみました。これまた正解!皆さん、ぜひとも拍手を頂戴したいものです。令和元年の話ですので、まだスマホは持っていません。もっとも昨年にスマホに切り替えましたが、まだ地図アプリは使っていません。コロナ禍で旅行には一切行っていませんから、当然と言えば当然...日光・東北旅行[6月11日~6月13日](十九)
サラ寂しいんだ雨が降ってきたサラ寒いんだ星が凍り付いてるサラサラサラサラ花は咲いてるかい鳥たちは鳴いてるかい風は優しいかい雲はゆったりと流れているかいサラサラサラぼくもいいかいサラのそばに行きたいよその胸に顔を埋めたいその心に包まれていたいサラサラサラこんな僕を許してくれるかいサラサラサラ何度も呼ぶよ今夜も呼ぶよサラサラサラサラサラサラサラ君のいないここに未練はないそばにいたいふれていたい吐息を感じたい声を聞いていたい唇を重ねていたい肌を合わせていたいサラ君と一つになりたい……なりたかったボレロのようにはじめは静かにゆったりとそして激しく力強くたたみかけるようにきみを抱いていたいそしてきみと溶け合いたい(背景と解説)うーん、どうしょうか……。個人情報なので、控えるべきだな。でも少しだけ。ネットで知り合った女性を...ポエム・ポエム・ポエム=番外編=~君を恋うる詩・弐~
朝方近くまで痛飲した武蔵は、酔いつぶれてしまった五平を残して、そろそろ明るくなり始めた外に出た。眼前に広がる海原を、感慨深げに見つめた。一面に敷かれた芝生が、素足で歩く武蔵に心地よく感じられる。海からの風も、武蔵に心地よい。“俺も、ここまで昇りついたんだな。苗字のせいで、やれ厠だ、臭いだの、と揶揄されたもんだ。蔑まされ続けたが、何くそ!と発奮してきたんだ。運にも恵まれたが、スレスレの事もやった。潰した同業も、数多あった。テキヤ相手に啖呵も切ったし、暴力団と渡り合った事もある。そう言えば、首を縊った奴もいた。あの時は、若い者を外で待たせていたんだ。すぐにどうこうと言うことはなかったが、支払いが滞り始めたからなあ。しかしあの男も、納得ずくだったんだ”「社長!どう、ここらで楽になんない?うまく立ち回ろうよ、ねえ。酷な...水たまりの中の青空~第一部~(八十六)
意外なことに、武蔵の表情は笑っていた。怒りを隠してのことではなく、自嘲気味でもなく心底から笑っていた。「良い勉強をさせてもらったよ。親父は反面教師で、あの従兄は、俺の先生さまだ。あの方をじっくりと観察することで、色々と勉強させてもらったからな」「それじゃ」と腰を上げかけた五平に「まだ良いだろう。ちょっと話しときたいことがある」と、小声で耳打ちした。今日は休みですし、と再度腰を下ろした。「夜逃げした店の、雇い人たちのことだ。明日にでもやって来るかもしれん。適当にあしらってくれ。口から出任せで、『従業員たちの面倒をみる』と言ってある。もしも、というか来るだろう、きっと。「知らぬ存ぜぬ」で押し通してくれ。それから残金なんだが、のらりくらりで踏み倒せ。どうせ社長は夜逃げしてるだろうから」武蔵の言い放った言葉に、相手次第...水たまりの中の青空~第一部~(八十五)
「社長。やっぱり、首切りはすべきだったんですよ。不幸中の幸いというか、今回の社長の入院でとりあえず落ち着きはしましたがね。結果的に6人が辞めましたが、本音の部分では辞めたくなかったようです。実家に連れ戻された娘やら、親の商売を継ぐということで辞めた者、あとはやっぱり家計が持たないということでした。持ち直したら再雇用して欲しいなんて言う奴もいましたがね」「そうか、そういう気持ちか。嬉しいことを言ってくれる。しかし一旦辞めた奴を雇い直すことはしないぞ。それを許してしまったら、残った奴らに申し訳がない。はっきり言って、富士商会を見捨てた奴らだからな。しかし、残念だよ。賃金の遅配やら欠配やらの事態にまで追い込まれた、いや追い込んだのは俺だ。申し訳ない気持ちだ。社員は家族も同然だからな。家族ってのは、家長がしっかりと守っ...水たまりの中の青空~第一部~(八十四)
縄文人の食卓には、結構な品数が並んだのでしょうか?木の実類に山菜・根菜などの植物類、そして海の幸。以前にお話ししましたが、この地に魚介類を運んだとみられる道がありました。その両脇を盛り土して、ご先祖さまのお墓を並べていたということも。縄文人は狩猟民族であり、「定着することなく……」と学んだ記憶がありましたが、この三内丸山遺跡に来て、それが根底から覆されました。縄文人の四季(大野市歴史展示室資料)どうやら季節ごとに食するものが変わったようなのです。そう!現代で言う「旬」を採っていたようです。春から夏には、山で山菜類を取り海では魚介類を捕りました、秋から冬にかけては、鹿・イノシシ狩りに精を出し、木の実拾いをしていたようです。そうそう魚介類といえば、シャコのことです。シャコ縄文人が食したかどうかは知りませんが、あれを...日光・東北旅行[6月11日~6月13日](十八)
服部、山田、そして竹田の三人が、大浴場の湯船に貸し切り状態で浸かっている。他の一般客を閉め出しているわけではないのだが、時間が遅いことと富士商会の面々は夜の街に繰り出していることからのことだ。実のところは、それだけではない。服部のいたずらで「清掃中」という立て看板を立てている。五平からの多額の心付けを受け取っている仲居頭の黙認と、服部のお茶目な頼みに部屋付きの仲居が協力しているのだ。「社長、変わったよな」「どんな風に」「おとなしくなったというか、さ」服部と山田の会話に、竹田は黙って聞きいっている。「竹田、そう思わないか」またこいつ打ち沈んでいるのか、と疑った服部が竹田の顔に手で水鉄砲をかけた。「なあ、社長と加藤専務ってさ、どっちが怖い?」竹田が、その問いに答えることなく、二人に質問を投げかけた。「はあ?」と怪訝...水たまりの中の青空~第一部~(八十三)
「これからは、五平にはキチンと話をしてから物事を進めていこうかと思ってる。今、反省している。独断過ぎたな、俺が。あのことだよ、首切りが流行っていた。俺が社員たちのそれをしなかったのには、他所に対する意地があった。けどもちろん、それだけじゃないけれどもさ」「タケさん、いや社長。これからは仕事の話なんで、社長と呼ばせてもらいます。今日はどちらに行かれたんで?今おっしゃってくださったでしょう、わたしには事前に話してくださると。社長がなんの思惑もなしに、熱海くんだりまで来られるわけがない。いや、待ってください。先に言わせてくださいな」口を挟もうとする武蔵を制して、五平が続けた。今自分の思いの丈をすべて吐き出さねば、武蔵の言葉に飲み込まれてしまうと思ったのだ。これまでにもあったことだ。特に五平に堪えたのは、やはりあの刺傷...水たまりの中の青空~第一部~(八十二)
「俺の後継者は、五平、お前だぜ」突然の武蔵の言葉に、危うく酒を噴き出しそうになった。「何を言い出すんですか、坊ちゃんを作ってくださいよ。今、その話をしたばかりじゃないですか」「いや。運良く息子を授かったとしても、こんな商売はやらせられん。堅気の会社に勤めさせる」波々と注がれた酒を一気に飲み干し、また大きくため息を吐いた。「タケさん!怒りますよ、まったく。どうかしてる、今夜のタケさんは。堅気の会社にすればいいじゃないですか!タケさんが頑張って、坊ちゃんに安心して継がせられる会社にすればいいんだ。タケさん。あんた、今、何歳です?やっと三十を越えた若造ですぜ」「そうだな、そういうことだな」「まず、嫁さんですよ」「分かった、分かった」五平のまくし立てる剣幕に閉口した武蔵は、早々に矛を収めた。しかし本音の部分では、生き馬...水たまりの中の青空~第一部~(八十一)
一旦、現代の縄文時遊館に戻り、館内を見て回りました。時遊館マップ土偶(女性)先ずは、このお方でしょうね。おっぱいが二つに、おへその突起物がありました。縄文人は、出べそだったのでしょうか。いやいやそうではなく、「へそだよ」と強調しているのでしょう。土偶自体に丸みはなく、形状としては板状であり、いわゆる人形ではありませんね。身長図平均身長男:157cm女:147cmということです。平均寿命30歳ぐらい。短命ですね、やはり。発掘骨数大人=500体赤児=700体始めに「縄文人はお洒落」とお話ししましたが、その証拠となるものがこれらです。装身具類イヤリング(耳飾り)かんざし櫛指輪ペンダントブレスレット(腕輪)石ですけれども、ほんとの宝石ですって。さすがにダイヤはなかったですが、その殆どが黒曜石か翡翠だとのこと。それを細か...日光・東北旅行[6月11日~6月13日](十七)
君のエガオがこわい君のナキガオがこわい君のオコリガオがこわい作り笑顔なんていらないうそ泣きなんていらない脅かしなんていらない仕事後の一杯のビール“おいしい”って言ったきみ風呂上りの一杯のビール“おいしい”って言ったきみジョギング後の一杯のビール“おいしい”って言ったきみいつでも、どこでも、なんでも[おいしい]のきみバスルームで白い湯気で見えないたっぷりの泡で隠してる湯舟に浸かってずるいぞベッドで誘うきみ“きて…”乱れるきみ“すてき…”たずねるきみ“かえるの?…”玄関で舌を出すきみ“べーだ”わらい出すきみ“バ、ハハァイ”泣きまねするきみ“アッカンベー”(背景と解説)四つだったか、年上の女性です。キス(いやベーゼと言いたいです)が、とっても上手なひとでした。もうとにかく、夢中になって貪ったものです。が、若すぎたわた...ポエム・ポエム・ポエム=番外編=~bokuwa~
だだっ広い広間に、二人だけが残った。仲居たちが「よろしいでしょうか」と声をかけて片付けにかかった。「いいぞ。ただ、ここには酒をジャンジャン頼むよ」と声をかけた。二本のお銚子を持ってきた仲居に対して「面倒だろうから、冷やで良い。とに角10本ぐらいを持ってきてくれ。で呼んだら、また追加だ。今夜はここで飲み明かすから、よろしく頼むよ」と、手の中に札を握らせた。こんなに、と恐縮するが返すそぶりは見せなかった。「それじゃ、社長。あらためて、ということで」と、杯を上げて酌み交わした。「おい、五平。今だけは、タケさんでいこうや」杯じゃ面倒だと、コップ酒に切り替えた。「五平よ。俺は、どのくらいの寿命をもらってると思う。子供を持たせてもらえるだろうか」大きくため息を吐きながら、思いもかけぬ言葉が洩れた。「何を気弱になってるんです...水たまりの中の青空~第一部~(八十)
二人の話が一段落したとみた服部、竹田、そして山田の三人が、「社長、お流れを頂きにきました」と、武蔵の元にやってきた。「おゝ、ご苦労だったな。三人共、良く頑張ってくれた。これからも、加藤専務を助けてやってくれよ」「もちろんです!専務同様に、我々も、社長に惚れこんでいますから」「社長の社員思いには、感激しました。みんな、喜んでます」と服部が言い「ありがたいすです。社長と言えば、どこも威張り散らすだけですから」と、山田が続けた。寡黙な竹田は、二人の言葉にただ大きく頷くだけだった。「おい、おい。これ以上は、何も出んぞ。それより、お前らも早くくり出せ。ほれっ、あそこで待ってるじゃないか。それとも気に入った芸者がいるんだったら、番頭に話を付けてやるぞ。専務に頼め、頼め」「シャチョー~!私たちにも、お流れえ~!」と、三人が立...水たまりの中の青空~第一部~(七十九)
大広間に集まった社員の前で、えびす顔の武蔵が声を上げた。「みんな、ご苦労だった。良く頑張ってくれた。加藤専務には、ほんとうに苦労をかけた。感謝したい、ありがとう。みんなの入院中の頑張りについては、加藤専務から報告があった。苦しい中、良く残ってくれた。良く耐えてくれた。そのお陰で、会社は残れた。本来ならもっとお前たちに還元してやりたいんだが、この景気がいつまでも続くわけがない。以前の俺なら、どーんと弾むところだが、入院中に色々考えた。やはり、会社自体に少しは利益を残しておかないとな。もう二度と、あんな思いはたくさんだ」武蔵の顔が苦渋に満ちたものに変わった。社員たちもまた、下を向いたり上を向いたりと、それぞれに思いを馳せた。「いや、すまんすまん。楽しい席での言葉じゃなかったな。勘弁してくれ」武蔵の言葉を遮るように、...水たまりの中の青空~第一部~(七十八)
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いやあ、参っちまいました。「6月に誕生日を迎えられたので、身体検査をしますなんて、月一回の定期検診でいわれました。「体重は……。あらあ、大台ですねえ、80.5kgです」「身長は……。あらあ、縮んじゃいましたねえ、171.3cmです」「あらあ」が、口ぐせの看護師さん。すこし、ショックが和らぎましたけど……。でもほんとに、「あらあ」でした、ものの見事に。じつは、もういっちよ!「あらあ……。お腹周り、81cmですねえ。メタボの更新ですねえ……」身体検査
彼は、心のなかを見せない。たにんの侵入を極端にきらう。それゆえか、彼の部屋をおとずれる者はいない。そのくせ彼自身は、ひとの部屋にズカズカと入ってくる。仲間と友人。彼は、区切りをつけている。それが何故なのか?いままで考えもしなかった。が、学友との口論から、それを考えるに至った。町工場での俺は、労働の代価を受け取る。しかし夜学での俺は、支払う側のわけだ。とうぜん、時間の自由があってしかるべきだ。労働中の俺に、自由のないことは理解できる。しかし何故に、授業の選択が許されない?規則だからと、諦めにも似た気持ちになっている。入学時の誓約書は、強制であり交渉事ではなかった。町工場への就職時には、形だけであっても交渉があった。奇天烈~蒼い殺意~人間性(一)
それが9時近くになって、やっと帰ってきた。その時間が麗子には長く感じられ、不安だけが募った。裏通りにあるアパートである。人通りはまるでない。街頭にしても、アパートの階段に設置してある電灯だけだ。しかもまだ修理されていない。あとは、50mほど先にある。しかも、何時になるのかわからない。麗子の心は、恐怖感におそわれていた。いつなんどき暴漢が現れるかもしれない。そのときには誰かの部屋をノックすればいい。いやこのアパートの住人すらあぶない。〝どんな人が住んでいるのか、まるで分からないんだ。素性はもちろん、男か女かもわからない。というより、こんな場所だ。おとこだろうけどね〟男にきいた話だ。といって帰る気にもなれず、途方に暮れていた。そんなときの、男の帰宅だった。ムラムラと、怒りの気持ちと嫉妬心が渦巻いた。で、悪態を...[淫(あふれる想い)]舟のない港(三十四)それが9時近くになって、
話をもどします。まいどまいど、横道にそれてすみません。校舎のうら手に車をまわしたところで、思わず「ああ!」と叫んでしまいました。見覚えのある大木と、その横に土俵が見えました。あれえ……。でも土俵はあっちではなく、こっちの角のはずじゃ……。すみません。あっちやらこっちやらでは、どこなのかわかりませんよね。東西南北の観念がないので。(ナビで調べれば一発でしたね)。車の進行方向の向こうがあっちで、敷地にそって曲がってそしてまたまがってすぐの角で、停車した場所がこっちなんです。土俵のうえに屋根があるんですが、大木の枝がおおいかぶさっています。台風の進路によっては、屋根をおしつぶしませんかねえ。すこし心配です。たしか、相撲が体育の授業にはいっていると聞いた気がします。やせぎすだったわたしは、それがいやでいやでしてね...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(四十五)話を戻します。
「山本さん、5番におはいんなさい」当初は聞きまちがいかと思ったが、なんど思い返しても、「おはいんなさい」だった。わたしの前に数人が呼ばれていたが、たしかに「おはいんなさい」だった。なんとも、暖かさを感じさせる呼びかけで、嬉しさを感じたわたしだった。名医だ、瞬間的にそう思った。「良い先生ですよ」が頭で反すうされた。こころがある、なぜか直感的に思った。ドアを開けると背筋がピンと伸びた老医師が、にこやかに迎えてくれた。「はいはい、山本さん。きょうは気分が良さそうだね。うん、良かったよかった。さあさあ、お座んなさい」またしても、「り」ではなく「ん」だった。なんとも、人なつっこい話し方だ。やはりベテラン医師はちがう。なんというか、お医者さま、という雰囲気がある。患者に人気があるのもムリはないと感じた。「ほうほう。山...ドール [お取り扱い注意!](十六)山本さん、5番におはいんなさい
しかしふと不安になった。武蔵のいないいま、だれが「奥さま」と呼んでくれるだろう。「ミタライさん」と呼ばれるのだろうか。御手洗家の主はあるけれども、武蔵はいないけれども、それでもやはり「奥さん」と呼ばれたい。御手洗家の主は、やっぱり武蔵であってほしいと願う小夜子だった。「パッ、パッ、パアー!」。けたたましいクラクションが鳴った。「バカヤロー!」。だれ?だれへの叫び声なの?大勢が立ち止まっている交差点。なのに小夜子は足を止めなかった。赤になっていることに気づかなかった。「ごめんなさい」と、頭をさげる小夜子に「気をつけろ、この有閑マダムが!」と、捨てゼリフをのこして、商用車が行く。やめて、そのことばは。小夜子のもっとも忌み嫌う、有閑マダム。新しい女の対極ともいえる、蔑称ととらえている小夜子。夫の地位そして財力に...水たまりの中の青空~第二部~(四百八十三)
異端の天才ベートーベン「運命」その烈しさに魂が揺さぶられるああ佳きかな佳きかないにしえの旋律(背景と解説)好きなクラシック音楽家のひとりです。他にも好きな楽曲はあるのですが、まずはこの作品をえらんでみました。キモはですねえ、……ないです。強いて言えば、「畏怖」でしょうか。そうだ。初めて聞き入ったクラシックでしたよ。ジャジャジャーン!ジャジャジャーン!jajajajajaja,jajaja~n!CDで、パソコンやら車で聴いています。ポエム~五行歌~クラシック賛歌(ベートーベン)
シゲ子は、その日のうちに長男に問いただした。シゲ子のたしなめるような物言いに萎縮してしまった長男は、口をつぐんでしまった。幼いときから、人に甘えるということのできない長男で、とくに祖母であるシゲ子にたいしては身構えてしまう。シゲ子の長男にたいするぎこちなさが、そうさせてしまっていた。シゲ子のしつような追求にたえきれず「ごめんなさい」と、あやまる長男だった。孝道が「目くじらを立てるほどのことでもないだろうに」と、長男をかばうと「いいんです、食べたことは。でもね、翌日にでも『ありがとう、美味しかった』と、ひと言ぐらいあっても。ほんとに、卑しい子だよ」と、長男を叱りつけてしまった。美味しいサツマイモをほのかに食べさせてやれなかったということ、すこしだけでも残していれば…という、たしょうの罪悪感にもにた感情にとら...[青春群像]にあんちゃん((通夜の席でのことだ。))(十)
彼の頭のなかでは、数多の声がとびかっている。ひとつひとつの言葉は、断定的でしかも独善である。無道徳とはいったい何か?社会いっぱんの道徳は、常識なのか?幾多の矛盾を擁する道徳でもか?住みなれた町の地図は必要か?コンパスまでもか?俺は無道徳か?道徳はどうとく、常識はじょうしき?俺は反道徳だ!では、ニュー道徳を創るべきか?では、それに従えるか?違うぞ!単にスネているだけだ!ニュー道徳は、偽善の産物だ!ホワイトカラー族の目的は?教師とは、如何なる人種か?教える義務と、従わせる権利。学ぶ権利と、従う義務。そして反発する権利。殺す自由、生きる権利。人間を殺すことは罪であり、「家畜類の屠殺は許される」という現実。and,その是非は論外、という現実。食べる自由と権利。断食もまた然り。自然界の法則とは?地球の歴史、人間のれ...奇天烈~蒼い殺意~いち日の過ごし方(五)
「そう、あのむすめね…。あの娘のこと、好きなのね」と、小声で呟いた。いつもの男なら、そのまま聞きながしてしまう。しかし、今夜の男はちがった。このまま無言をとおせば、気性の激しい麗子のことだ。どんなしっぺ返しをくらうやもしれない。それこそ私立探偵をつかってでも、ミドリの特定をしてしまうかもしれない。そして……。考えるだけでもおそろしい。気色ばんで男は言った。「な、なにを言いだ出すんだ。あの人とは何でもない。友人の妹だ。3人での食事の約束だったんだ。友人の都合が悪くなってのことだ。だからふたりだけの食事になっただけだ」「あら、そう。お食事のできるナイトクラブがあるとは、知らなかったわ」服を着おわった麗子は、いつもの麗子に戻っていた。「時間が早かったからだ。ナイトクラブを知らないと言うから、連れて行ったんだ。だ...[淫(あふれる想い)]舟のない港(三十三)そう、あのむすめね…。
そうでした、学校です。当然ながら、まるで違います。当時は木造でしたが、いまはコンクリートの校舎です。正門まえに立ちますが、まるで思い出せません。車をうごかして、裏手にまわることにしました。運動場なんですが、意外にちいさいです。もっと広く大きかった記憶なんですが。敷地に沿ってまがると、せまい道路です。大型の車がきたらすれ違えないかもしれません。学校のフェンスをこするか、相手の車が畑に落ちてしまうか、どちらかでしょうね。いっそのこと一方通行にしてしまえばいいのに、なんて勝手なことを考えてしまいました。そういえば、こんなことがありました。いくつだったか、五十過ぎたころだったと記憶しています。両側が畑のせまい道で、ここではすれ違うことはできません。半分以上を過ぎたところで、中型の車がはいってきました。当然ながらわ...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(四十四)そうでした、学校です。
待合の席にすわろうとしたわたしに、通りがかった看護婦が声をかけてきた。この間の入院時に世話をしてくれた看護婦だった。じつに気立ての良い娘で、いつも明るく笑う娘だった。退院するときに「ありがとうね」と声をかけたかったのだが、シフトで会えずだった。「山本さん、ラッキーでしたね」「なんで?」。笑みを返しながら、尋ねてみた。「良い先生ですよ、岩井先生って。いつもは予約だけの先生なんですよ。ね、島田さん」「きょうはね、畑中先生が休みなものだから、急きょピンチヒッターでお願いしたの」「山本さん、ついてるわ」。うんうんと頷きながら、ひとり納得して去って行った。良い先生かどうかは、診察を受けてからだと、あまり期待もせずにいた。しかしこの医師に会ったことで、わたしの人生が一変したと言っても過言ではなかった。ほどなく看護婦に...ドール [お取り扱い注意!](十五)待合の席にすわろうとしたわたしに
感傷的になるかと思っていた小夜子だったが、意外にもサバサバとした気持ちになった。空はあいにくの曇り空なのに、ウキウキとした気分でビルを出た。全員がお見送りをしたいと申し出たが、五平と竹田のふたりが通りで見送った。最敬礼をするふたりに「やめてよ、そんな大げさなことを」と言いつつも、感慨ぶかいものがあった。はじめて会社におとずれたとき、水たまりがあるからと、武蔵にお姫さま抱っこで車からおろされた。大きな歓声と冷やかしの声、また近隣ビルの窓から、なにごとかと覗かれたこともなつかしい。なにからなにまで、なつかしい想い出だ。帰りの車をことわり、ひとり日本橋界隈をねりあるくことにした。そういえば通りをあるいた記憶がない。いつも契約ハイヤーで会社前まで乗りつけた。竹田の送迎もあったわね、と思いだす。〝大層なご身分だった...水たまりの中の青空~第二部~(四百八十二)
茶目っ気モーツァルト「25番ト短調」そのミステリアスな曲調にこころがうち震えるああ佳きかな佳きかないにしえの旋律(背景と解説)好きなクラシック音楽家のひとりです。他にも好きな楽曲はあるのですが、まずはこの作品をえらんでみました。CDで、パソコンやら車で聴いています。ポエム~五行歌~クラシック賛歌(モーツァルト)
翌日のこと。「きのうのお芋さんは美味しかったろう。ばあちゃんもね、おじいさんとおいしく食べたんだよ」ほのかかキョトンとした顔つきで、「きのうはよらずにかえったよ」と、こたえた。誰かが食べたはずなのだ。「ツグオちゃんだったかね」首をふりながら、つづけてこたえた。「にあんちゃんは、ほのかといっしょだったよ」思いもよらぬ返事がかえってきた。「それじゃだれだったんだろうね。ツグオでもないんだね。近所のだれかかしらね」そうことばにしつつも、だれもいない家にはいりこんで、ましてやなにかを食べていくなどありえない。“まさかナガオが…。いやいや、あの子は寄りはしない”と、否定してしまった。「あんちゃんだよ、きっと。夕食、めずらしくすこししか食べなかったから。それに、もしにあんちゃんだったら、きっとぜんぶ食べてたよ。にあん...[青春群像]にあんちゃん((通夜の席でのことだ。))(九)
実はこの1週間、彼は悩んでいる。学友との些細な口論のためだった。さっこん耳にする”フリーセックス”についてだ。まだ青い我々は、真面目に論じあった。勉学上の口論はまるでない我らだが、ことセックスに類するものは好んで論じあう。が、残念ながらお互い言いっ放しで終わってしまう。面白いのは、”革新”そして”保守”と、イデオロギーの立場をお互いに押しつける―なすりつけて終わることだ。革新にしろ保守にしろ、じつの所あまり分かっていないのに。『70年安保』の後遺症といっては失礼か。「アンポ、ハンタイ!」が流行語になっていた頃を、多感な中学時代に我々は過ごした。彼はいま窓際でひざを抱いている。そしてときにそのひざに接吻をしたりして、体のぬくもりを感じている。生きている実感があるという。ときおり、バサバサの髪をかき上げては、...奇天烈~蒼い殺意~いち日の過ごし方(四)
「舟のない港」というタイトルが気に入って書きはじめた作品です。気乗りのしないままにストーリーを重ねて、次第しだいに二人のヒロインたちの心情にとらわれだしました。なかなか女性心理がわからず、キーボードをたたいてはDeleteを押して、またたたいて、また消しての連続です。時間の移動がはげしいためご迷惑をおかけしていますが、一気読みをご希望の方には、4月の初めには[やせっぽちの愛]にてupする予定です。よろしければ、どうぞ。------------麗子が起きるころには、母親はすでに台所にいる。父親もまた、食卓に着いていた。気むずかしい顔つきで、新聞を読みふけっている父親だった。一日のはじまりに家族そろって食卓を囲む。なによりも大切にしている父親だった。夜の食事は父親の仕事しだいではそろうことが難しい。休日にして...[淫(あふれる想い)]舟のない港(三十二)麗子が起きるころには、
吉野ヶ里遺跡公園をあとにして、福岡県柳川市の昭代第一小学校へ向かいました。小学なん年生だったか、低学年には違いありませんが新入生ではなかったはずです。幼稚園児だった頃に伊万里市をはなれて、それからどこに移り住んだか。柳川市?いや待て、もう1ヶ所、どこかの……そうだ!大分県の佐伯市に入ったような……。そこで幼稚園に入る予定だったのが、いまでいう引きこもりになったのか、通ったという記憶がありませんね。それじゃ、佐伯市の小学校に入学した?うーん……。新入学したのはどこの小学校だったのか、まるで記憶がない……。昭代第一小学校まえでお店――駄菓子屋さんだと思っていたら、じっさいは酒屋さんでした。店の横にビールびんやら酒びんが山積みされていました。失礼ながら、小学校の真ん前なんですが。でも、すこしばかりの文具もありま...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(四十三)吉野ヶ里遺跡公園をあとにして、
“やれやれ今はやりの自己責任ですか。大丈夫、先生を訴えたりしませんよ”「はい、これで良いですか?」「ほんとにね、生命に危険があるんですよ。考え直しませんか?山本さん」「先生の言うことを聞いた方が良いですよ」なおもしつこく入院を迫ってくる。わたしのことを考えてくれているとは分かるが、イライラしてきた。「今夜ひと晩だけで良いんです。経過をね、観察したいんです」真剣な目で、せまってくる。「お気持ちだけいただいておきます。ほんとにね、もうずいぶんと楽になりましたから」意地の突っぱり合いの様相をていしてきた。しかし意地っ張りということに関しては、わたしの方にいち日の長がある。医師に書面をわたして、看護婦に会釈をして、意気軒昂にベッドをはなれた。あの老婆、わたしと目があったとたんに目をそらしてきた。聞いてはならぬこと...ドール [お取り扱い注意!](十四)やれやれ今はやりの自己責任ですか。
自宅でのこと、その毎日がなくなるのかと思うと、ここで感傷的になった。平日の朝9時、閑静な住宅街にある自宅を出る。日々の暮らしは、もうはじまっている。学童たちのげんきな声は、もう聞こえない。おはようございますと声をかけあう人々にあふれ、「あら、ごめんなさい」と、声をかけあいながら、ほこりっぽい道路に水をまいている。「小夜子おくさま、おはようございます。これからご出勤ですか?」ななめ向かいの佐藤家のよめである道子が声をかけてくる。「おはようございます」と返事をし、かるく会釈する。するととなりの家からあわてて、大西家の姑であるサトが出てくる。「もうこんな時間ですか、行ってらっしゃいませ」わざわざ外に出てこなくとも、と小夜子は思うのだが、女性たちは必ず声をかける。小夜子にあいさつをするが、じつは小夜子ではない。御...水たまりの中の青空~第二部~(四百八十一)
その日の昼すぎ、あの三郎が顔を腫れ上がらせて、明水館に転がり込んできた。背広の袖口が破れ、ズボンには泥がこびりついている。泥の乾き具合から見て、まだすこしの時間しか経っていないことが分かる。騒然とした中、光子の指示の元に昨夜三郎が泊まった部屋に運び込まれた。すぐに医者を、と光子の指示かあるものと思っていたが、聞こえたのは驚くものだった。場に居合わせた二人の仲居に対して「他には漏らさぬように」と、厳命してきたのだ。「お客さまのたっての希望です」ということばも付け加えられた。一時間ほど後に、上気した表情の光子が番頭に対して「近江さまをお医者さまに診てもらうことになりましたから」と言い残して、三郎と共に出かけていった。「行ってらっしゃいませ」と声をかけつつも、何かしら違和感のようなものを感じた。旅館に転がり込ん...スピンオフ作品~名水館女将、光子!~(十五)(光子の駆け落ち:三)
その女子は真面目派より一学年下だったが、幸か不幸かふたりと同じバレーボール部だ。ゆえに、放課後にふたりに帯同すれば、ひんぱんに会える。行動派が部活動に熱心なこともあり、ヒネクレ派も必然とがんばっている。そんなふたりを待つという口実のもとに居残りをきめこんでいた。三年ほど前の夏季大会ののちに、理由は分からないが部員ゼロとなってしまった。そして今年までの三年間、廃部となっていた。そんな男子バレーボール部を、行動派が復活させたのだ。気乗りのしないヒネクレ派をムリヤり入部させ、ほかに数人の幽霊部員を仕立て上げた。大会ごとに集合して、試合前のわずかな時間だけ練習をする。そして作戦も何もなく、むろんコーチもいない。どころか、役割すらあいまいだ。皆がみなアタッカーであり、やむなくレシーバーやらセッターにもなる。正直、勝...原木【Takeitfast!】(九)初恋
とうとう、結婚式の前夜がやって参りました。式の日が近づくにつれ平静さをとりもどしつつあったわたくしは、暖かく送りだしてやろうという気持ちになっていました。が、いざ前夜になりますと、どうしてもフッ切れないのでございます。いっそのこと、あの合宿時のいまわしい事件を相手につげて、破談にもちこもうかとも考えはじめました。いえ、考えるだけでなく、受話器を手に持ちもしました。ハハハ、勇気がございません。娘の悲しむ顔が浮かんで、どうにもなりません。そのまま、受話器を下ろしてしまいました。妻は、ひとりで張り切っております。ひとりっ子の娘でございます。最初でさいごのことでございます。一世一代の晴れ舞台にと、いそがしく動きまわっております。わたくしはといえば、何をするでもなく、ただただ家の中をグルグルと歩きまわっては、妻にた...愛の横顔~地獄変~(二十一)式前夜:前
「けどもこんどは、本場で聞こうな。アメリカに行って、アナスターシアだったか?お墓参りをすませてから、ラスベガスに寄ろう。な、なあ。それで機嫌を直してくれよ」涙があふれ出した。揺り起こそうかとも思った小夜子だったが、いまはこのまま夢のなかの小夜子でいいかと思いなおした。「小夜子。俺ほど小夜子を知っているものはいないぞ。頭の髪の毛一本から足のつま先でも、俺は小夜子を当てられる。はらわたの一つひとつまで知っている。肺も心臓も、胃袋だって知っている。きれいだぞ、とっても」ふーっと大きく息を吐いて、カッと目を見開いた。起きたのかと思いきや、またすぐに目を閉じてしまった。「おおおお、ステーキを食べたな?いま胃をとおって、腸にはいった。栄養素に分化されて、肝臓やら腎臓にとどけられるんだ。そしてそのカスが便となって外に出...水たまりの中の青空~第二部~(四百三十二)
時の流れは今川となりました銀の皿は流れるのですその上に空を乗せたままその夜空は消えましたその朝には太陽が消えました(背景と解説)女友だちとの間が冷え切っていたという時期ではないのです。二股交際という言葉がありますが、わたしの場合は殆ど重なりません。不思議なのですが、ある女性との付き合いが疎遠になると、新たな出会いがあるのです。浮気ぐせ、とも違います。そりゃ、血気盛んな青年時代ですから、色んな女性に目が動くことはあったと思います。でも、この年になって色々思い直して-己を見つめ直してみると、一番の原因は、自分に自信が持てなかったのだと思います。短期間ならば薄っぺらい自分を隠せますからね。当時の連絡手段と言えば、固定電話か手紙ぐらいのものでした。手紙は、正直言ってお手のものでしたから。話を戻します。この詩は、自...ポエム焦燥編(朝、太陽が消えた)
時計の針は、二時半をさしている。貴子の希望で、南麓の岩戸公園口におりることになった。こちらの道は彼にもはじめてだった。こちら側の眼下にはビル群はすくなく、二階建ての個人宅がおおく見うけられた。国道ぞいに車のディーラーやら銀行、そして飲食店がチラホラとあるだけだった。すこし行くと、小ぢんまりとした台地があった。貴子の提案で、時間も早いし腹ごなしもかねて散歩でもということになった。彼に異はなく、真理子もまたすぐに賛成した。外にでた貴子が大きく深呼吸すると、真理子もならんで、大きく空気を吸いこんだ。とその時、強い風がふき、ふたりの体が大きく揺らいだ。とっさに真理子の背を抱くようにし、片方の手で貴子の腕をしっかりとつかんだ。悲鳴にもちかい声を出した真理子だったが、強風に驚いた声だったのか、彼の対応におどろいての声...青春群像ごめんね……えそらごと(三十)
訝しげに見る目を気にしつつ、付け足した。「目が、痛いんだ!」言葉が空を横切った途端、“嘘だ!”と、心が叫んでいた。そう、心が叫ぶまでもなく脳は刺激され、サングラスのない世界の恐ろしさが瞼の裏に醸し出された。そこによぎる全てが眩しいものだった。“信じられないんです”ある時、目に見えぬ何ものかに向かってそう叫んだ時、また心は叫んでいた。“嘘だ!”決して言葉のせいではなく、といって“信じなさい、信じることが唯一の道です”という言葉をはねつけたせいでもない。[ブルーの住人]第七章:もう一つの「じゃあず」(二)
日一日と、光子への周りの視線が変わってきた。子をうしなった母親という憐憫の視線がしだいに、子を産まぬ女という蔑視さえ感じるようになった。そもそもが清子を産んだあとに、二子、三子を産もうとする気配のないことに疑念が持たれていた。そして清子の死という事態をむかえて、導火線に火がついた。光子の年齢からしてためらう必要などなにもないはずなのだから、もうそろそろおめでたの話が出ても……と、口の端にのりはじめた。折に触れてかばってくれた珠恵からも、ことばには出さないが「もうそろそろ」という声が聞こえてくる気がしている光子だった。合原家という家系を考えたとき、光子は言わずもがなで、清二もまた妾の息子ということで他所者として扱われている。ふたりの間にまた娘が産まれたとして、女将を継ぐだろう事は想像にかたくない。しかしそれ...スピンオフ作品~名水館女将、光子!~(十四)(光子の駆け落ち:二)
行動派にもヒネクレ派にも、ガールフレンドがいる。しかし、真面目派にはいない。ふたりに比べると、ハンサムである。成績にしても、当然ながらトップグループにいる。しかし、女子からも敬遠されている。モテていいはずなのだが、作者だけの思いこみだろうか?もっとも、その原因は性格にあるのだろう。なにせ、内向的だし、おとなしい。そんな真面目派のきょうのの発言は、わたしもまた驚かされた。はじめてのことだ。もっとも、当の本人がいちばんん驚いていはいるが。そんな真面目派が、最近だれかに恋をしたらしい。いや、いままでも“いいなあ”とも思える女子生徒がいるにはいた。ただ憧れに近い気分を抱いていることが多かったし、それよりなにより、彼氏がいた。が、今回は違うようだ。“恋している”という、実感があるらしい。夜、ひとりになると、その女子...原木【Takeitfast!】(八)“キュン!”
その翌日、もちろん娘をまともに見られるわけがありません。その翌日も、そしてまたその次の日も……、わたくしは娘を避けました。しかし、そんなわたくしの気持ちも知らず、娘はなにくれと世話をやいてくれます。そしてそうこうしている内に、結納もすみ、式のひどりも一ヶ月後と近づきました。娘としては、嫁ぐまえのさいごの親孝行のつもりの、世話やきなのでございましょう。私の布団の上げ下げやら、下着の洗濯やら、そして又、服の見立て迄もしてくれました。妻は、そういった娘を微笑ましく見ていたようでございます。なにも知らぬ妻も、哀れではあります。しかしわたくしにとっては、感謝のこころどころか苦痛なのでございます。耐えられない事でございました。いちじは、本気になって自殺も考えました。が、娘の「お父さん、長生きしてね!」のことばに、鈍っ...愛の横顔~地獄変~(二十)陵辱
「小夜子。おまえは、ヴァイオリンだ」突然に己のことをふられて、なんと答えれば良いのか窮してしまった。しかし武蔵はお構いなしにことばをつづけた。「おまえは、ビッグバンドの、いやオーケストラのといっても良い、ヴァイオリンなんだよ。そこにいるだけで、あるだけで、光を放っている。華やかな、存在だ。誰もがひれ伏す存在だ。いや、ヴァイオリンがなければ成り立たない」あまりの褒めことばは、小夜子には面はゆい。「やめてよ、もう。どうしたの、今日の武蔵は。熱でもあるんじゃない?」といって、熱に浮かされている節もない。心底からのことばに聞こえる。目を見ればわかる。しっかりとした瞳がそこにあり、そしてしっかりと小夜子を見ている。まるですぐにも居なくなってしまう小夜子を見忘れないようにと、しっかりとめにやきつけようとしているかのご...水たまりの中の青空~第二部~(四百三十一)
ある冬の街角で……、そう、少し雪の散らつく寒い夜のこと。ダウンジャケットのポケットに迄、冷たさが忍び込んできた。路面がうっすらと雪の化粧をし、街灯の灯りで眩しい。ひっそりとして、明かりの消えたビルの前を、ポケットの中の小銭をちゃらつかせながら歩いていた。とその時、後ろから恐ろしく気味の悪いーかすれた、腹からしぼり出すような声がする。”だめだ!左はだめだ。右に、行くんだ!”どぎまぎしながらも後ろを振り向いた。全身が血だらけで、片腕のちぎれかけた男が、呼び止める。生々しいタイヤの跡が、顔面に刻み込まれている。その男、確かにどこかで見たような気がする。が、あまりの形相に思わず目をそむけた。そのまま逃げ出し、左へ折れた。そう。男の言う、行ってはならない左へ行った。と、ふと思い出す。血だらけの男の居た場所は、雪が白...ポエム~焦燥編~(右に、行け!)
五月日ざしは肌に悪いからという貴子のことばで、山肌の木陰で食事をとることになった。「三角おにぎりのつもりなんですけど……」と、真理子がはじめて握ったというおにぎりが出された。「形が悪くてごめんなさい」というそれは、すこしいびつな丸っこい形をしていた。「お味はどう?」と問いかけられ、「うまい!」となんども叫ぶように言いながらぱくついた。満足げに頷く彼にうながされて、ふたりも頬ばった。とたん「塩辛い!」と、目を白黒させながら声をそろえて言った。「ちょうど良いって」という彼の必死のことばに、真理子の警戒心がとれてきた。会社ではぶっきらぼうな態度をとる彼だが、それが照れ隠しによるものなのだと知り、そんな彼に親近感を覚えた。(やっぱり、九州男児なのよね)再確認する真理子だった。そして彼を、故郷にいる兄にダブらせた。...青春群像ごめんね……えそらごと(二十九)
部屋の照明は落としたまま、ベッドぎわの灯りだけを点けた。上向きの灯りは、うす暗くはあったが落ち着いた雰囲気で、気持ちも和やかになってくる。ふとんの中に入れと、小夜子を迎え入れた。しわになりにくい素地の服だということで、小夜子も久しぶりに武蔵に触れられるとウキウキしてくる。しかし武蔵の体を感じたとたん、あまりの痩身ぶりに驚かされた。たしかに腕にしろ足にしろ、細くなっていることは見ていた。が、直接に小夜子の体全体で感じる物とは異質のものだった。“こんなに痩せ細ってるの?ううん、だいじょうぶ。退院したらしっかりと栄養を摂らせるから”小夜子のそんな思いを推し量ってか、「小夜子。病院食ってのは、精進料理そのものだな。まるで脂っ気がないぞ。ああ、中華そば食いたい、ステーキもがっつりといきたいぞ」と、両手を合わせてお願...水たまりの中の青空~第三部~(四百二十九)
海はいつか日暮れてぼくの胸に恋の剣を刺したままその波間に消えた追いかけてもきみは見えない白い闇が迫りくるだけ恋はいつか消えてぼくの胸に涙の粒を残したままその波間に消えていった追いかけてもきみは見えない白い闇が迫りくるだけ昨日も今日もそして明日も夏の渚に立ってきみを探してもあの日のきみはいないあの日のきみはもういない遥かな海………どこまでもどこまでも果てしなく……が、その海もまた…………限りない空……どこまでもどこまでも広がり続く……が、その空もまた…………水平線では、空と海が一つになるなのに………きみとぼくは追いかけても追いかけても水平線はどこまでも果てしなく広がり続ける……わからないわからない追いかけるほどわからない……(背景と解説)彼女が逃げていくわけではないのです。自分の想いと彼女の思惑がずれている...ポエム~焦燥編~(太陽の詩(うた))
(不良だって、俺が?)しかしつらつらと考えてみるに、そう思われるのが当たり前のような気がしてきた。ポマードをしっかり使って、エルビス・プレスリーばりのリーゼントスタイルに髪を整えている。普段は不良っぽさを意識した言葉遣いで話しているし、口ずさむ歌と言えばロックンロール系が多かった。「日ごろの行いって大事なんだよね」そうつぶやく岩田の顔が突如浮かんだ。「年寄りみたいなこと言うなよ」と反論したものの、確かに損をしていると感じる彼だった。同じようなミスをしても、岩田なら仕方ないさとかばわれ、彼のミスには「集中心が足りない」と、小言になる。(不良だと思っているんだ、やっぱり。仕方ないか。不良まがいの日ごろの態度では)と、じくじたる思いが湧いてきた。写真で見た断崖絶壁の縁に立たされたような思いに囚われている彼に、貴...青春群像ごめんね……えそらごと(二十七)
(五)視線その他には、ぐるりと見回しても、とりたてて言うほどのものはない。強いて言うなら、紺いろにいろどられた扉があることか。小さなのぞき窓があり、ときおり神のような冷たい視線がそこから投げつけられる。しかしそれが、どうだと言うのか。冷たい視線など、どれ程のものと言うのか。忘れたころに訪れる、女よ。いくらでも泣くが良い。たとえそれで体中がびしょ濡れになってとしても、それがなんだと言うのだ。ただ無視すれば良いだけのこと。そんなことに気を取られるほどに、暇人ではない。このこころは、深遠な世界にあるのだ。知りたければ、……。はいってくるが良い。そっと足音を忍ばせて、のぞき込めば良い。ごっちんこをすればいい、ドアはいつも開けてあるのだから。窓の外にはポプラがそびえ立ち、その葉をすける太陽の光、そして遙かかなたにか...[ブルーの住人]第六章:蒼い部屋~じゃあーず~
(十一)(周囲の目:二)無事出産を終えて明水館に戻ったとき、大女将の珠恵を始め、番頭に板長そして仲居頭の豊子たちの出迎えを受けた。然も、玄関口でだ。初めてのことだった、これほどの人に笑顔で出迎えられるのは。思わず後ずさりをした。娘だけを取り上げられて、光子はそのまま叩き出されるのではないか、そんな思いにとらえられていた。「お帰りなさい、若女将!」。「お帰り。さあさあ早く入りなさい、奥の部屋で休むと良いわ」。珠恵の優しい言葉は心底のもので、温かい慈愛が感じられるものだった。そしてそのことばで、やっと光子はこの合原家の一員となったことを実感した。それは突然のことだった。珠恵がお使いから帰ったところを見た清子が「おばあちゃま、おかえりなさい!」と、通りの向かい側に飛び出した。急ブレーキ音とともに、ドン!という音...スピンオフ作品~名水館女将、光子!~
行動派が言う。「誰も反対しないようだ。委員長、やってくれ。時間が勿体ない」眼鏡をかけたやせっぽちの男が、渋々と立つ。と、あろうことか「待ってください。みんながそれでいいと言うのなら僕もそうしますが、僕としては、自習とした方がいいと思います。第一、先生も居ないことだし。それに、あと二十分足らずの時間です。討論の時間には少ないと思います。風紀については、重要なことですから、誰かが調査して、その結果を元に討論してはどうでしょうか」と、小声ながらも、はっきりと胸を張って、真面目派が言った。クラス内に、割れんばかりの拍手が起こった。真面目派は、“ドクン・ドクン”という心臓音を耳にしながら、真っ赤になっていた。さすがの行動派も、いつも連れ立っている仲間の一人に反対されては、反論のしようがなかった。「それでは、俺とあと...原木【Takeitfast!】(五)意外なこと
断じて許すことはできません。八つ裂きにしても足りない男どもでございます。しかしもうわたしには気力がございません。お話しする気力が、ございません。もう、このまま死にたい思いでございます。まさしく地獄でございます。……地獄?そう、地獄はこれからでございました。じつは不思議なことに、男どもには顔がなかったのでございます。もちろん、その男どもをわたくしは知りません。見たことがありません。だから顔がない、そうも思えるのではございます。しかし、……。そうですか、お気づきですか?ご聡明なあなたさまは、すべてお見通しでございますか。”申し訳ありません!申し訳ありません!!”わたしは、犬畜生にも劣る人間でございます。“殺してください、わたしをこの場で殺してください。この大罪人の、人非人を!”そうなんでございます、男どもは、...愛の横顔~地獄変~(十七)銀蝿などと!