「ジャスミン」。かわらぬ白さ。この一行を読んだとき、何か衝撃を受けた。「白さ」が、私の目のなかで、一瞬強くなった気がした。ギリシャ語のことは知らないが、この一行の思いがけない強烈さは、日本語ならではのものかもしれない。「白さ」は「白い」という形容詞の語幹に「さ」をつけることで、状態をあらわす名詞に変えたもの。日本語の形容詞は「用言」である。動詞と同じように活用がある。変化する。しかし、名詞は変化しない。名詞の白は白であり、変わることがない。形容詞の白いは「白かった」「白くなる」「白い」と変化する。「白さ」という状態は、変化する。形容詞派生だから、そこには変化が含まれているということなのか。(こういう論理でいいかどうかわからないが……。)その変わることを含んだことば「白さ」を「かわらぬ」ということばで否定す...中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(101)