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  • 業容拡大

    「では今週の日曜日によろしくお願いします」という電話をもらっていた。自由業をしている岩国時遊塾の会員の一人が、店の看板の塗装が劣化して各所に錆が出て見苦しくなってきているので塗装したいという。1か月も前から、協力を頼まれていた。「暇を持て余しているのでいつでもいいですよ」と安請け合いをしていた。当日の朝9時に迎えに来てくれた。天気は良いが風の強い日である。汚れてもいいような防寒着を着て、必要な道具を抱えて迎えの車に乗った。湾曲した看板の上に、日傘を差したような形で厚い鉄板を覆いかぶせた構造である。見ると、3本の鉄製の支柱と鉄板がかなり錆て赤くなっている。早速脚立を立て、まずは電動ドライバーの先にワイヤーブラシを取り付けたものを2人が1台ずつ持って錆落としを始める。30分もやったころ、赤い錆はきれいに落とすことが...業容拡大

  • 立ち話

    家の前に立って、今を盛りに咲いているハナミズキを眺めているとき、裏の団地に住んでいる同年配のMさんが自転車で通りかかった。目が合って挨拶をすると、自転車にまたがったまま止めて話しかけてきた。奥さんの認知機能が少し衰えていることは以前から聞いていた。「近くのグループホームに入所している。コロナ禍で会いに行っても面会はできない」とこぼす。奥さんと2人だけの生活であったが、1人の生活になっている。「朝早くから、どちらにお出かけですか?」と聞くと「門前にあるスーパーまで買い物に行こうと思っている」と答える。「そんなに遠くまで行くのですか」に、「あそこは、アナゴの巻きずしが1本120円と安くておいしく、女房が好きだったのでよく買いに行く。ミカンも便秘にいいので、買って持っていってやろうと思って」と話す。短い会話であったが...立ち話

  • アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ・ボンゴレ

    昼前のテレビを見ているとき、有名なイタリアンのシェフが、簡単に出来るパスタを紹介している番組を見た。料理の名前は「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ・ボンゴレ」というものである。名前は長いが、一体どんな料理なのか?まずはイタリア語の解説から。アーリオはニンニク、オーリオはオリーブオイル、ペペロンチーノは赤唐辛子、ボンゴレはアサリを意味し、塩ゆでしたスパゲティをニンニクとオリーブオイルだけで調味し、これに唐辛子を加えてアサリで炒めたものである。お昼前のことである。久しぶりにスパゲティが食べたくなった時、先日見た料理番組を思い出した。いつか作ってみようと思い、メモ用紙にレシピを丁寧に書いておいた。奥さんにそのことを宣言し、アサリを買ってきてもらえば、私が作ってみることを宣言した。奥さんが買い出しに出かけている間、ニ...アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ・ボンゴレ

  • カフェ開店情報

    我が家から国道2号線を西に300m下ったところに、昨年末から「麻里布珈琲」というカフェと軽食の店の建設が始まっていた。ちょっとお洒落な外観が目を引き、このところ散歩の都度、工事の進捗状況を見ていた。「アルバイト募集」という仮設の看板が掲げられていて、そこには「3月中旬オープン」と書いてあったが、その時期が過ぎたあとには、その文字は消され、工事だけは進んでいた。昨日のことである。奥さんと散歩で店の前を通りがかり、立ち止まって店の構造を観察していると、中から若いイケメンが出てきた。すかさず奥さんが「いつ開店するのですか?」と聞くと「今月の20日です」と愛想よく答える。「いつも通りがかるたびに、開店を楽しみにしていました。何時に開店ですか?」と聞くと、「ちょっと待って下さい。聞いてきます」と言って中に入った後「9時半...カフェ開店情報

  • 折れた枝

    33年前、家を建てたとき、奥さんが狭い南の庭に紅白2本のハナミズキを植えていた。土地との相性がよかったのだろうか、すくすくと成長し、今では背丈は6、7mほどになっている。ハナミズキの寿命は長く、約80年だと言われている。それであれば我が家のハナミズキはまだ若い方だと言えるが、紅い花をつける木は、ここ数年、花の数が少しずつ減ってきていたり、小枝が枯れてきているのが気になっている。その木が、素晴らしい気力を見せてくれているのに気がついた。一昨年の秋のことである。出窓から見える太い枝に、長さが50cmばかりの細い枝が1本上向きに伸びていた。台風ではないが強い風が吹く日であった。ふと見ると、その枝は元から折れて垂れ下がっていて、吹く風にあおられてぶらぶらと揺れている。そのまま年を越したが、枯れ落ちることもなく、風に揺れ...折れた枝

  • 根本的対策

    日本にコロナの感染者が出始めて、すでに1年と2カ月が経過している。この間、新聞やテレビでまさに連日のごとく、日々の感染者数や感染防止対策について、繰り返し巻き返し国民がとるべき行動についての指導が行われている。なかでも今年に入ってから、対策の切り札とされるワクチンの接種が始まったが、今もってその供給を輸入に頼っているため、国民全体に行き渡る見通しは示されていない。ワクチンこそが大流行の対策に欠かせないものである。医療先進国と自負していたはずの日本が、肝心なワクチンの製造を外国に頼るしかない現状を、国はどう認識しているのであろうか。テレビでも新聞でも、この点を厳しく追及しているのを見たことがないと憤慨しているとき(4月8日)、毎日新聞の社説で初めてこのことが掲載されていた。「国内ワクチンの遅れ中長期的な戦略が必要...根本的対策

  • バックカメラ義務付け

    国土交通省は来年5月にも、新車を対象に自動車後方の状況が確認できるバックカメラか、センサーの装備を自動車メーカーに義務付ける方針を明らかにした。駐車場などでバックする際、死角を補うことで歩行者を巻き込むような事故を防ぐことを目的にしたものである。義務化するのは「後退時車両直後確認装置」で、二輪車を除く全ての自動車が対象。バックカメラは車体の後方0.3~3.5メートルの範囲にいる歩行者を運転席で確認できる必要があるという。現在私が保有している車は年式が古いため、バックカメラなどは装備されていなかった。2年前、煽り運転による事故が何件か起きたのを機会に、市販されている安価なドライブレコーダーをネットで購入して取り付けた。電源をシガーソケットに差し込み、車のフロントガラスと後方にカメラをセットするだけで、立派なバック...バックカメラ義務付け

  • さくら

    3月に入った途端、身辺にいろいろなことが起きた。連日その対応に努め、全てが無事に解決し、気がつけばもう3月の終わり。古い新聞を取り出して読んでみると、今年の錦帯橋の桜の開花日は、3月18日と出ている。それから11日後となる29日の月曜日、散歩がてら錦帯橋に出かけてみた。時おり吹いてくる強い春風に数片が舞い散る程度で、今が真っ盛りに咲いている。上河原には、そこかしこに2~3人の家族連れが弁当を広げている。大勢が車座になって大声を出しているようなものはいない。さすがにコロナ禍である。皆さん節度を保って花見を楽しんでいる。暖かい日差しを浴びながらお茶を飲み、奥さんと2人だけの花見を楽しんで帰ってきた。絶好の花見日和ではあったが、人出は随分少なかったと夕方のテレビが伝えていた。今年の錦帯橋には、例年よりも一足早く、そし...さくら

  • 岩国検定の残り火

    2010年の1月に10人の仲間と「岩国検定」というご当地検定を立ち上げて、その年の11月に第1回の検定試験を実施した。その後2012年と2014年に試験を実施して以来、受験者が減ってきたのを機会に活動を休止している。世代が代われば又ぞろ始めてもいいのではないかと思い、全ての資料は大切に保存し、新しい情報など追記したりしている。そんな中、突然見知らぬ人から電話がかかってきた。「岩国検定の事務局ですか?」という。周南市に住む若々しい声の男性からであった。過去、周南市と山口市の検定を受験したことがある。岩国検定も受験したいというが、現在は休止している旨を説明する。検定というものに非常に熱心なので「失礼ですがお年は?」と聞いてみると、昭和13年生まれ・82歳だというではないか。未だ現役で、公民館で仕事をしているという。...岩国検定の残り火

  • 運否天賦(うんぷてんぷ)

    徳川家康の良く知られた遺訓がある。「人の一生というものは、重い荷を背負って遠い道を行くようなものだ。急いではいけない。不自由が当たり前と考えれば、不満は生じない。心に欲が起きたときには、苦しかった時を思い出すことだ」という意味のことが書かれている。昨日、いつものように奥さんと2人で裏山の散歩に出かけた。その都度、夫婦連れや仲間と連れ立って上る何組かと挨拶したり、少し立ち止まってその日の天気やよもやま話をしたりする仲となっている。裏の団地に住むKさんが、白いスポーツウエアを着て、竹の杖を突いて下りてくるのと出会った。1年以上も顔を見ることはなかったが、元気そうな足取りである。お母さんと2人だけの住まいであるが、5年前にお母さんが脳梗塞で倒れたあと、1人息子で独身のKさんが自宅で面倒をみていることは以前聞いていた。...運否天賦(うんぷてんぷ)

  • ニセアカシア

    裏山の散歩道の2合目に、ミモザの木が1本ぽつんと立っていて、数日前からポンポンのような小さく丸い黄色の花が咲き始めている。4合目にある林には、背の高いアカシアの木が10本ばかり群生している。5月になれば、藤のように房状の白い小花を沢山咲かせる。アカシアと言えば、中国の大連で生まれた私にとっては忘れることのできない花である。街路樹には、どこにもアカシアが植えられていたことを覚えている。引き揚げた後も母から「アカシアの花房は、よく天ぷらにして食べていた」と何度も聞かされていた。ところが十数年前、私が知っているアカシアは本来のアカシアではなく、マメ科ハリエンジュ属の「ニセアカシア」といい、和名は「ハリエンジュ」というものであることを知った。明治期に日本に輸入された当初は、このニセアカシアをアカシアと呼んでいた。後に本...ニセアカシア

  • 八重山神社

    日曜日の夜、今人気のある「ポツンと一軒家」というテレビ番組を見ていた。今回は島根県の出雲の山奥に住む老夫婦の物語であった。場所は雲南市の掛合町入間で、冬は雪深いが江戸時代から住んでいる。昔は、たたら製鉄や炭焼きで随分と賑わったようであるが、今はたった一軒でひっそりと暮らしている。近くに、巨大な岸壁に張り付くように八重山神社という立派な神社が建っている。テレビ局のスタッフをこの神社に案内した。昔から、氏子のいない神社であり、牛馬の守護神として崇敬されてきた。岩窟の中に建つ八重山神社への苔むした長い石段は、さながら幽玄の世界へ誘われるようである。神社に登る石段の下に、一瞬、テレビの画面に神社の案内板が映った。書かれている文字の中に「宇野千代」という文字が目に入った。「あっ、宇野千代と何か関係がある神社なのか」と思い...八重山神社

  • 合目

    先日、裏山の桜ヶ峠までの1.4kmの登山道を10等分した個所に、山登りする人の目安として自称「1町塚」という道標を掲げておいた。太いマジックインキで、立木やガードレールに「1号目」とか「5号目」などと目立つような個所を選んで書いておいた。数日たったころ、この道標を見ながら山歩きしているとき、奥さんが「この『号目』という書き方はおかしいのではないかしら」と言う。改めて言われてみればそうである。山歩きをしているときに見る道標では「号目」ではなくて「合目」と書いてある。改めて「合目」と書く理由を調べてみた。「合」とは、尺貫法における体積の単位である。中国・漢代の長さの標準器であった黄鐘管を満たす水の量の2倍の量に由来するもので、2倍であるので「合」という名称となった。後に升と関連づけられて、その10分の1の量とされる...合目

  • 小積の河津桜

    毎年この季節に「川津桜を見に行った」という話を聞くことがある。河津桜と言っても、伊豆の河津町まで出かけてきたという話ではない。近くに植樹されている所があり、このシーズンに一般の人に解放されているのを見に行ったという話である。この年になるまで、ソメイヨシノの下では毎年花見をしてきたが、ついぞ河津桜のお世話になったことはない。ネットで調べてみると、近くの周防大島町の小積(おつみ)、下松市の笠戸島、上関町の城山歴史公園などで見ることが出来ることを知り、小積に行ってみることにした。その前に河津桜についても少し調べてみた。「河津桜とは、日本固有種のオオシマザクラとカンヒザクラの自然交雑から生まれた日本原産の栽培品種の桜のこと。一重咲きで4cmから5cmの大輪の花を咲かせ、花弁の色は紫紅。早咲きが大きな特徴で、2月から3月...小積の河津桜

  • 格安スマホプラン

    4年前、電話機能しかないケータイから、UQモバイルという格安のスマホに乗り換えた。車を運転するとき、公衆電話の代わりの備品として携帯している。そのほかは、外出時、ネットで情報取集するために時々使う程度である。そんな使い方でも、毎月2950円ばかりを支払っていた。ところが、昨年来、大手の携帯電話の各社が、競うようにして低額のスマホプランを売り出し始めた。2㎇、5分以内かけ放題の電話であれば、毎月2980円という低額プランを売り出した。ずいぶん安くなったものだと感心していたが、これであれば今使っている格安スマホのUQモバイルの出番はなくなっている。こちらの方も割安のものは出ないものかと思っているとき、先日、期待していた新料金の広告が出ているのを見つけた。3㎇、10分以内かけ放題の電話で、月額が約2300円というもの...格安スマホプラン

  • 「生クリームの中の蛙」

    生クリームの瓶に落ちてしまった蛙が2匹いた。2匹とも浮いていることが難しく沈み始める。手足をばたつかせても浮き上がることが出来ない。1匹は「こんなことをしてもどうせだめだ」と諦めて沈んでいった。もう1匹は「いくら死が迫っていても最後まで生きるんだ」と足をばたつかせている。しかし、1cmも上がれず同じ場所で何度も足を動かし続けていた。すると、さんざん足を動かしたために突然生クリームが固まってバターになり、蛙は驚いて足をけると瓶の縁に飛び移ることが出来て助かった。以上は、ブエノスアイレスの精神科医で作家のホルヘ・ブカイ氏の「寓話セラピー」という作品中の「生クリームの中の蛙」という寓話である。この話には「どうやってもダメ」と思って努力を放棄する傾向がある時のヒントが隠されている。今いる環境の中で「自分が出来る限りのこ...「生クリームの中の蛙」

  • 一町塚

    江戸幕府は、慶長9年(1604年)に全国の主要街道を整備し、日本橋を起点として1里(約4㎞)ごとに道路の両側に5間四方の塚を築き、その上に榎・松・欅などの木を植えた。これを一里塚といい、旅人のための里程標となった。1里は、人間が1時間に歩く距離にほぼ等しく、長距離を歩く旅人にとってはいい目標であったものと思われる。最近、夕方の散歩のルートを変えて、少し坂はあるものの裏山に登っている。狭いけれど車が走ることが出来る舗装道路は、桜ヶ峠を越えて隣の和木町まで続いている。朝夕は混雑する国道の抜け道として通勤する車が多い道路となっている。麓から標高150mの桜ヶ峠までの距離は1.4㎞ある。先日、久しぶりにその峠まで歩いてみた。ひと頃に比べると足腰が少し辛く感じられる。そうは言いながら30分そこらで登ることが出来た。そして...一町塚

  • 差別発言

    「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと、時代錯誤の女性蔑視発言をしたあげく、居直り謝罪の醜態にもかかわらず、東京オリ・パラ大会組織委員会会長の座にとどまっている森喜朗元首相に対する風当たりは、日を増すごとに強くなっている。この発言がテレビで流されたとき、世間が猛烈なバッシングをするのを見て、あの程度の発言で辞任を迫るなんて少し大げさ過ぎないかと一時は感じていた。しかし、ここぞとばかりに、我も我もと森会長たたきはエスカレートしてゆき、今や、女性蔑視の権化にまでされつつある。最近はとみに「差別」に厳しくなってきている。行動のみならず言葉でも差別用語は禁じられている。子供の頃は、日常会話で使っていた単語も、今は禁句となっているものは結構ある。森会長が発した言葉の中では、単語としての禁句はないが、語られ...差別発言

  • 五橋を渡る

    2月に入って第1日曜日の7日、日中は16度という3月上旬の陽気に誘われて、久しぶりに錦帯橋へ出かけた。吉香公園の中をゆっくりと車に乗って回ってみるが、どの駐車場も満車状態で止めるところはない。錦帯橋の上河原にある広い駐車場もほぼ満車の有り様。少し待って、やっと空いた所に止めることが出来た。下河原の駐車場を見ると、乗用車は日ごろになく多いが、観光バスは1台も止まっていない。コロナ下で不要不急の外出がはばかれ、不本意にも巣ごもり状態を強いられている人が、家族単位で観光に来ているだけであろう。団体客は全くいないようである。久しぶりに錦帯橋を渡ってみる。岩国市に住む高齢者に配られている敬老優待券を示せば無料で渡ることが出来る。欄干が思いの外、痛みが進んでいることに気がついた。思えば「平成の架け替え」があったのが、200...五橋を渡る

  • ああ、ややこしや

    先日、「任期満了に伴う西之表(にしのおもて)市長選挙は、開票の結果、現職が2期目の当選を果たしました」というテレビのニュースを見ていた奥さんが、「『にしのおもて』じゃあなくて、『いりおもて』でしょう。アナウンサーは間違って読んでいるんじゃあないの」という。この市長選は、同市の無人島・馬毛島で、国が計画する米空母艦載機の陸上離着陸訓練の移転と自衛隊基地整備が大きな争点となっていた。基地整備に反対していた無所属現職が自民推薦候補を抑えて当選したことが、全国ニュースとなって流されていた。「西之表」という文字を見て私も「いりおもて」と読みそうになったが、そう読むには「之」という字が余分である。果たして、アナウンサーの読み違いかどうか、ネットで調べてみた。西之表市とは、鹿児島の南西、僅か30㎞のところにある鹿児島県の種子...ああ、ややこしや

  • 辛いを幸いに

    今朝(4日)、東レの渥美由喜氏が書いた新聞のコラムで、いいことを学んだ。自殺大国と言われて久しいに日本は、危機感を持って対策を講じ、2019年の自殺者数は、1978年以降、最低水準まで下がった。しかしながら、コロナ禍で11年ぶりに増勢に転じ、6年前の水準に戻る勢いだという。対策の一つは、自らが多面性を持つこと。辛い時には家族の声援や、家庭人やボランティアなどの地域人としての側面に支えられる。もう一つの対策は、辛い人には横から手を伸ばしてあげる。「辛い」という字は、横に一本線を引くと「幸い」という字に代わる。つまり、横から差し伸べられる手があれば、幸いな日に変わるという。こうして人の心を照らした輝きは、明るいところでは分からない。薄暗い中で周りの人を照らす人が、輝いている人である。先の見えないコロナ禍であるからこ...辛いを幸いに

  • 縁の下の力持ち

    お昼を済ませた後、奥さんがスーパーに買い物に出かけてくると言って、出窓の下にあるガレージに出た。しばらくすると、出窓のガラスを叩いて私を呼ぶ。窓を開けると「エンジンがかからないのよ」と訴えるではないか。そう言われれば、心当たりは無きにしもあらずであった。昨年の9月、車検を受けた時、バッテリーの交換を勧められていたが、まだ特に不都合を感じるようなことはなかったので、「またの機会にします」と断っていた。年が明けると毎日寒い日が続いていた。そんな日々、車で出かけようとしてエンジンのスイッチを押す。いつもなら直ぐにブルブルと快音を残してエンジンがかかるのに、10日くらい前からエンジンの始動が、ブルブルブル~と少し時間がかかるようになっていた。思えば7年も前に買ったバッテリーである。そろそろ寿命が近づいたのかなとは思って...縁の下の力持ち

  • 感性って何

    散歩しているとき、名も知らぬ野の花が咲いているところを通りかかる。その時、①花が咲いていることに気がつかない人、②花が咲いていることに気がつく人、③花を見つけて、何という名前の花だろうと思う人、④家に帰ってこの花の名前を調べてみる人と、人それぞれである。①は感性のない人。②はごく普通の人。③は感性がある人。④は感性の鋭い人だという。「感性」を表現する面白い例えであるが、「感性」とは一体何だろうと思って調べてみた。辞書を引くと、「感性」とは、「人間の持つ知覚的な能力のひとつ」と書いてある。「何かを見たり聞いたりした時に深く心に感じ取ることや、感覚的に物事に対して感じていること」ともある。「感性」とよく似た言葉に「感受性」というものがあるが、この違いは何か。共に外から受けた刺激を、知覚や感情に結びつけるという点では...感性って何

  • 問題解決の手法

    「今日の予定は何ですか?」と朝のテレビニュースを見終わったとき、奥さんが聞いてきた。「別に、特に予定はない」というと、「それなら、今日は久しぶりにシフォンケーキを作ってみるわ」と言って、器具類を取り出して準備を始める。間もなくすると、ガラガラガラと器械で何かを混ぜている音がし始めた。その時「あら、動かなくなった」と言う。20年前に買った電動のミキサーが、卵白の泡立てをしている最中に何かの拍子に急に動かなくなったようである。仕方なく手でかき混ぜて何とか泡立てを終えている。その間、私はというと、すぐさまドライバーを取り出してケーシングを開けて、修理に取りかかる。何段階にも回転数を変更できるようになっているため、内部にはいろいろな電子部品が組み込まれている。さてどうするか。現役時代に習った問題が起きた時の解決手法を思...問題解決の手法

  • コロナか

    朝食後、新聞を読んでいるとき、テレビのワイドショーを見ていた奥さんが、「これって、どういう意味なの?」と聞いてきた。画面を見ると「コロナ禍の避難所の在り方」と題して、有識者が何か話している。奥さんの疑問は「コロナ禍を避けるために避難所が設けられていて、その在り方が紹介されている」と解釈したようで、そんなものが設置されているのかというものであった。そんな避難所がある訳はない。「コロナ禍の避難所の在り方」と書いてあるのを見て誤解を招く表現であることに気がついた。なんとなくわかる表現であるが、奥さんのように誤解する人はいるに違いない。ではどういう言い方をすればいいのか。伝えたいことは「コロナ禍の下での避難所の……」という意味である。正確を期して「コロナ禍下での……」ではくど過ぎるので「コロナ下での……」くらいでどうだ...コロナか

  • ケータイがない頃

    40歳のころ、工場に新設するプラントの基本設計をするために、半年間東京の本社で仕事をしたことがあった。3食付きの三鷹にある寮で過ごしたが、休みの日にはお上りさんよろしく、目ぼしいところを巡り歩いた。ある日、高校で一緒だったが東京で仕事をしている友達と、新宿で会う約束を会社の電話でした。「おい、どこで会おうか?」というと「そうだな、新宿駅の西口、改札口を出た所にしよう」と答えてくれた。その日約束の時間より10分早く電車で新宿駅に行き、西口の改札口を出た。ところが、西口のロビーは小学校の運動場くらい広いし行きかう人も多い。しかも大きな四角いコンクリートの柱が10m間隔に沢山立っている。岩国駅で待ち合わせるのとは大きな違いがあった。はてさて、どこで待とうかと考えた後、改札口に背を向けて柱に寄りかかって待つことにした。...ケータイがない頃

  • 地域の絆

    つい先日のことである。近くに住んでいる幼馴染の女性が通りかかった。庭でお茶を飲みながら久しぶりに話をした。「余り会うこともないけれど、近所の人はみんな元気でやっていますか?」と聞いてみた。近所の人と言っても、自治会で同じ班・33世帯の人をイメージして聞いてみた。驚いたことに、私が知らない内に2人が亡くなっていた。かつては、班長さんが「訃報」と書いた紙をポストに入れて知らせてくれていた。それが、どんな事情があるの知らないが、訃報として回ってこない。当事者が他人に知らせたくないからであろう。2人の家はいずれも、我が家から100m足らずのところにある。昔はこんなことはなかった。葬式も各人の家で執り行っていたころの話ではあるが、班内の人はみんな顔見知りの人ばかりであった。しかし、今は違う。新築して転入してきた人や代替わ...地域の絆

  • 年中行事

    定年退職後20年、年金生活とはいえこの季節、決して欠かすことのできない年中行事がある。それは確定申告である。昨日(21日)、今年の確定申告書が郵送されてきた。税務署は、送ってくる書類の中で「e-Tax」という電子申告を利用することを推奨している。しかしながら私は毎年、手書きしたものを税務署に提出するやり方をしている。パソコンを持っているので、e-Taxを利用しようと思って過去何度か挑戦してみた。使い方をネットで調べてみるも、事前に準備すべき手続きが分かりにくくて、かたくなに手書きした申告書を持参している。記入する数字は年毎少しは変わるが、ほとんど似たような数字である。今年は「課税される所得金額」や「課税額」の計算式が昨年とは少し変わってはいるが、課税額としては昨年とほぼ同じくらいとなり、少しばかりが小遣いとして...年中行事

  • 手間いらず

    2004年の11月にブログを書き始めた。以来、書き溜めた自称「エッセイ」と称するものを、毎年、B6版の1冊の本にして書棚の肥やしにしている。ページ数は多い年で300数十ページあったが、最近は真面目さに欠けたというか、書き尽くしてネタ不足になったというか、200数十ページに落ち着いている。今日、買ったばかりのプリンターを使って2020年分のエッセイを印刷した。ページ数は250ページであった。昨年までは、プリンターの紙送りがスムーズにいかなくて、付きっ切りで1枚ずつ後ろのトレーに手で差し込んでやらなければいけなかった。表面を125回、裏面でまた125回、時に詰まりトラブルを抱えながら合計250回余りを手で差し込んだ。年に1回の作業なので我慢してやっていたが、プリンターを買い替えた今年は、まさに夢を見ているような楽な...手間いらず

  • 7人目の自費出版

    15年前、「岩国エッセイサロン」という、エッセイを創作し新聞に投稿する同好会を創設し主宰していたが1年前に解散した。その間、19人の会員中、私を含めて6人の会員が、自分が創作したものを1冊の「エッセイ集」として自費出版した。今日のことである。山陽小野田市から12年間、同好会の会員として活躍してくれたKさんが、ご主人が運転する車で我が家にやって来た。目的は、昨年還暦を迎えたのを機に、それまでに投稿し掲載された65編を「エッセイ集」として自費出版するためである。本にする原稿は、私がお手伝いしてパソコンで作っておいた。その出来栄えを確認した後、USBに記録したものをもって、いつもお世話になっている印刷屋へ向かった。B6版で100ページのものを100部作ってもらうように頼んだ。還暦を機に作る本なので、表紙は渋い赤色で発...7人目の自費出版

  • 年賀状当選

    昨日(17日)、お年玉付き年賀はがきの抽選会があった。当選番号が決まり、今朝の新聞に当選番号が載っている。毎年のことながら、100数十枚のはがきから当選番号を見つけ出す作業は面倒である。しかも、当選しているはがきを見落とさないようにしなければいけない。お年玉切手シートが当たる3等は、下2桁が当選番号となっている。100本に3本の割合で入っている。3等ではあるが、毎年数枚が当選している。何枚当選しているかが直ぐ分かるように、今年はあらかじめ対策を講じておいた。つまり、10*10のマトリックスを作り、00~99までの欄に各年賀状の下2桁の番号の欄にチェックを入れておいた。こうしておくと、当選番号の発表があると、直ぐに何枚が当選していたかがわかることと、当選枚数を見落とさなくなるという策である。さて今朝のことである。...年賀状当選

  • 冬のリヴィエラ(海岸)

    昨年末から厳しい寒波が襲来し、外に掛けている温度計はマイナス4度を指す日もあった。2年ぶりに雪が積もるなど、部屋の中に居ても震えるような日が続いていた。ところが今日(14日)は一変し、気温はまさにうなぎ上りして、昼には15度と3月の下旬並みの暖かさとなった。ここしばらくは、夕方の散歩以外コロナもあって、家から出歩くことはなく、じっとしていたが、春の陽気とあれば出て行くしかない。奥さんを誘って車に乗り、いつものところを目指して出発した。通津の海に面した高台に瀟洒な住宅が並んでいるところがある。その下に広がるリヴィエラに向かった。車を止めて坂道を下ると、誰もいない静かな浜辺がある。繰り返す波の音以外は何も聞こえない。突然轟音がとどろく上空を見ると、2機のジェット機が基地に向かって低く飛んで行く。遠くの島々は冬という...冬のリヴィエラ(海岸)

  • 座右の銘

    買い替えたばかりのプリンターで、知人が自費出版する予定の原稿を30枚印刷してみることにした。プリンターは今まで使っていたものと同じメーカーのキヤノン製で、TS6330という型式のものである。お役御免となったプリンターは、全く動かなくなったので諦めたが、動いていたときでも紙送りに大きな問題があった。2Lサイズの用紙やハガキなどに印刷する場合、プリンターの背面にある「後ろトレー」に差し込んで印刷を始める。買ってしばらくしてから紙送りがうまくいかず、直ぐにトラブルのランプが点滅していた。仕方なく、1枚ずつ用紙を手で差し込まなければうまくいかない。製本の原稿や年賀ハガキなど印刷するときには、それぞれ100枚以上もプリンターに付きっ切りでやっていた。そんなこともあったが、機械が動く限りは何とかだましだましでも使っていたが...座右の銘

  • 別れの時

    愛情がなくなったとか、一緒にいる意味が見いだせなくなったとかで、長い間愛し合っていた人と残念ながら別れたくなる時はあろう。そんな時、最後の台詞は何て言ったらいいのだろう。そんな深刻なことではないものの、心と懐を傷めるような別れの時が、ある日突然やって来た。2009年以来11年間も付き合ってきたプリンターが、遂に言うことをきかなくなった。いくら優しく接してやっても、うんともすんとも言わなくなった。思えば、大した面倒を見てやることなく、昼と言わず夜と言わず、指先ひとつで指示するだけでよく頑張ってくれた。カラー印刷と言えば年賀状を作る時だけで、後はただひたすら「自費出版」のエッセイ集や、「岩国検定」の問題集の印刷など、黒インクでの文書の印刷がほとんどであった。そんなプリンターが、年賀状の印刷も無事に終えて年が明けた途...別れの時

  • 伝える力

    コロナ対策で後手後手の感がぬぐえない菅政権は、首都圏1都3県を対象にした緊急事態宣言の再発令をやっと決めた。「菅首相は、その30分間の会見で、39回も語尾に『思います』『思っています』とつけた。自信のなさや責任逃れの印象を与え、人々の絶望感や不安を増幅している」と、コミュニケーションのスペシャリストである岡本純子氏は述べている。「改めてコロナ対策の強化を図っていきたいと思います」「不要不急の外出などは控えていただきたいと思います」「国民の皆様と共に、この危機を乗り越えていきたいと思います」という調子であった。「……と思います」という表現は、「やってみるけど、できなかったら勘弁してね」という逃げのニュアンスがにじみ出ているという。確かに「強化を図ります」「控えてください」「危機を乗り越えます」と短く強く言い切れば...伝える力

  • 雪雪雪また雪よ

    昨日(7日)、いつものようにエアコンをつけているにもかかわらず、足が冷たい。厚手の靴下を履いてみたが、冷え込みが厳しく寒い。昼近くになったとき、部屋の中が薄暗くなった。木の枝が激しく揺れ始めたと思ったら、急に横殴りに吹雪のような雪が降り始めた。屋外に掲げている温度計を見に出てみると、マイナス1度を指している。寒いはずだ。裏山を見上げると、細かな雪で空間が遮断され、まるで横山大観の水墨画を見ているように見える。雪と言えば、新沼謙治の「津軽恋女」という歌の中で、津軽には7種類の雪があると歌っている。♪津軽の海よ竜飛岬は吹雪に凍えるよ(中略)降りつもる雪雪雪また雪よ津軽には七つの雪が降るとかこな雪つぶ雪わた雪ざらめ雪みず雪かた雪春待つ氷雪♪この他にどんな雪があるのかを調べてみた。降る時期、降る雪の状態、積もった状態に...雪雪雪また雪よ

  • 回復力

    暮れも押し詰まったころ、毎年のことながら奥さんが鉢に入ったピンク色のシクラメンを買ってきた。適度な日当たりのある出窓に置き「水やりはお父さんにお願いしますね」と言う。その日から、私は水やり当番を任せられた。鉢の構造を観察すると「底面給水」のタイプである。鉢の表土から水やりをするのではなく、底面の受け皿に水を溜めておき、不織布を介して土に水をしみ込ませる根から水やりをするタイプである。年末の忙しい時でも、3日に1度くらいの頻度で給水をしてやると、毎日勢いよく上に向けて花を咲かせ、楽しませてくれていた。ところが今日の昼のことである。相変わらず、出窓には暖かい日が差している。ふとシクラメンの鉢に目をやると、あろうことか花を支えている茎は萎れて張りはなく大きく曲がり、花は鉢の外に出てぐったりと下を向いているではないか。...回復力

  • ずる休み

    「ずる休み」とは「勤務先や学校などを、正当な理由がなく休むこと」と定義されている。若いころ、「体調が不良で会社に行きたくないな」という日が、時にあった。そんな日には、出勤時間を見計らって、上司に欠勤する理由の電話を入れる。風邪を引いて体調が不良という言い訳が多かったように記憶している。コロナ禍の昨年は、仮病ではなく本当に熱が出たため、欠勤する旨の電話をした人は多かったことだろう。コロナのように感染しやすい病気の場合には、無理をして出社しない方がいいに決まっている。普通の風邪も、やはり感染病の一つである。病原菌は患者の口からばらまかれ、周囲の空気の中をさまよい、ほかの人の体の中に潜入して新しい患者を作る。一人のサラリーマンが風邪にもめげず会社に出勤すると、何人かの新しい患者を作ることになりかねない。彼一人が休む分...ずる休み

  • 年賀状あれこれ

    2021年が天気にも恵まれて静かに明けた。大晦日は、見知らぬ歌手ばかりが出る紅白歌合戦を見ることなく、BS放送で、往年のゲイリー・クーパーが主演の西部劇「真昼の決闘」を見ながら、例年とは違う過ごし方をした。テレビで延暦寺の除夜の鐘が、ゴーンと厳かに響くのを聞いたあと床に就く。ゆっくりと起き出した元旦、神棚に向かって神妙に手を合わせる。分厚い新聞にざっと目を通すと10時を回っていた。そのとき、ポストから奥さんが年賀状の束を抱えて部屋に入って来る。差し出した枚数見合いの年賀状が届く。表書きを見ただけで「あ~、○○さんからだな~」と直ぐに分かるのが嬉しい。贈ってもらった年賀状の内、表書きが手書きのものは約1/4で、大半が印刷である。私も書ける間は手書きを努めたい。毎年のように特徴ある年賀状が届く。差出人の住所も名前も...年賀状あれこれ

  • しめ縄

    大晦日の夕方、今年最後の散歩に出かけた。散歩をするということ以外、もうひとつ目的を持って出かけた。家々のお正月の準備状況を見ることである。昨年、同じように大晦日に散歩した時、あることに気がついた。玄関に、しめ縄を飾っていない家が多いのに驚いた。新興住宅といわず、古い家でもしめ飾りを掲げていない。100軒中、掲げている家は約半数くらいだとみた。ここでちょっと、お正月のそもそも論を言ってみると、「お正月とは、新しい1年の幸せや豊作をもたらしてくれる『年神様』をお迎えする大切な行事。『しめ縄』とは、神様を祭る清浄な場所を表し、不浄なものが入らない結界線のような役割がある。つまり、しめ縄を飾ることで、年神様が安心して降りて来られる神域を作り、お迎えするということ」である。従って言ってみれば、「お正月とは神事」である。そ...しめ縄

  • 大晦日・初氷

    いろいろあった2020年も大晦日を迎えた。新聞を取りに出た時、玄関のアプローチに置いている睡蓮の鉢に氷が張っているのを見た。そういえば昨日はこの冬1番の寒波が襲来し、この辺りでも昼間に雪が舞った。そんな夜もきっと冷えたに違いない。そそくさと家に入り、厚みゲージを持ち出して氷の厚さを測ってみることにした。直径が50cmほどの鉢の真上から、げんこつを作って氷の表面を叩いてみるが割れない。少し力を入れてやってみるが、手が痛いだけでやっぱり割れない。納屋から大きめのドライバーと金槌を持ってきて、強い力で叩いてみるとやっと割れた。氷の破片をつまんで厚さを計ってみると7mmもある。昨冬はついぞ氷が張るようなことはなかったが、今年最後の日になって厚い初氷を見た。暖冬が続き、氷を見る機会はめっきり少なくなっているだけに、氷が張...大晦日・初氷

  • 有権者の仕事

    今朝(28日)の毎日新聞のコラム「余禄」に「まさにこれだ。これに尽きる」と、手のひらでパシッと膝を叩くような、検察に係る歯切れのいいコラムが掲載されていた。今年は「検察とは何か」が問われた1年であったという。1月の黒川元東京高検検事長の定年延長閣議決定・定年延長を盛り込んだ検察庁法改正案の国会提出から、12月の「桜を見る会」の前夜祭を巡る安倍前首相の不起訴まで、率直に失望の念を禁じ得ない年であった。人事で検察を押さえつける政権のおごり。政権に侮られた検察のふがいなさ。政権も検察もトップが代わったが、関係はどこまで変わったのか。検察は安倍氏の捜査を尽くしたと胸を張れるのか。国民の眼からは到底そうは見えない、と書いている。ここで改めて「検察」とは何か。「警察が把握した事件について、警察に対して捜査指揮をするとともに...有権者の仕事

  • 天知る地知る

    テレビで、もうこんな顔は見たくない。そんな気にさせる厚顔無恥な安倍前首相の記者会見を、こともあろうにクリスマスイブの聖夜に見せられた。「厚顔」とは面の皮が厚い、恥知らずでずうずうしいという意味、「無恥」も、恥が無い、恥を知らない、恥ずべきことを恥だと思わないという意味である。「桜を観る会」前夜に開催した夕食会をめぐり、東京地検は安倍氏を嫌疑不十分で不起訴とした。政治資金収支報告書の不記載への関与が認められなかったことが理由だが、国会で事実でない答弁を続けた政治責任の重さに変わりはない。国会でしつこく何度となく追及されたにもかかわらず、自らがホテルからの明細書や請求書を確認しなかったのも理解しがたい。何はともあれ、前夜祭について安倍氏は「補填はない」などと、5か月間で少なくとも118回にも上る虚偽答弁をした。不起...天知る地知る

  • 薬局で再会

    月に1度、コレステロールの薬をもらうため、近くの病院へ出かけている。診察が終わり処方箋をもらって、隣にある薬局へ持っていく。数人の客が待っている。3人掛けの長椅子の端に1人の女性が座っていた。椅子のもう一方の端に腰を下ろし、置いてある週刊誌に手を伸ばした。その時である。その女性が野太い声で「茅野さん」と声をかけてきた。顔を見ても大きなマスクをしているので目元しか見えない。そういう私もマフラーを首にぐるぐる巻きをした上に、やはり大きなマスクをした姿である。「えーと、どなたでしょうか?」と聞くと「駅前のスタンドバーWにいました」という。「ああ、チーママのMさんですね。お元気そうで。それにしても、よく分かりましたね」「ええ、昔のままでお変わりありませんから」と、相変わらずの上手だとは知りながらも嬉しい。20数年前、現...薬局で再会

  • おもんぱかる

    購読していない新聞に、エッセイサロンの仲間であったSさんが投稿したエッセイを、仲間がメールで送ってきてくれた。「アッちゃん」という幼馴染の思い出話である。田舎の小学校の運動会の日、翌年入学するSさんも参加して、グラウンドの中央に置いてある菓子袋を、走って行ってそれぞれが持ち帰る競技があった。運悪く体調不良のため、参加はしたが競技には出ずにしゃがんでいたSさんは、競技が終わっても当然のことながら菓子袋は手にしていない。それを見た近所に住む1歳上の「アッちゃん」は、中央へ走っていき、菓子袋を1つつかんで戻りSさんに手渡してくれた。これほど感動したことはなかった。以来、川で泳いだり魚釣りをしたりと、いつも一緒に遊んでくれたお兄ちゃんであった。そんな思い出がいくつもよぎるお兄ちゃんが、つい先日亡くなった。別れる時、1輪...おもんぱかる

  • 忘却の彼方

    朝一番、予約していた歯医者に出かけた。コロナ対策のため、新聞や雑誌は取り払われている。誰もいない待合室で、NHKのテレビを見ていた。年末の特別番組であろう、今年を振り返っての話を数人が談笑している。番組の終わりに、次週のテーマが出された。「今まで生きてきて一番良かったこと」といっている。今まで生きてきて一番良かったこと?とっさに、わが身に置き換えて考えてみた。気がつけば、79年間という長い年月を生きている。真珠湾攻撃の1週間前に満州で生まれ、5歳の時に引き揚げてきた。戦後の混乱期を生き延び、学業を修めて就職・結婚・子育てを経て、あっという間に定年退職をむかえたように思う。その間、人並みに、苦しいことや悩ましいこと、辛いこと、まさに艱難辛苦を非力ながらも何とか乗り越えてやって来た。その反面、嬉しかったことや楽しか...忘却の彼方

  • 35人学級

    「政府は、現在は40人と定められている公立小中学校の学級基準について、きめ細かな指導体制の計画的な整備を目的に、小学校に限り全学年を来年度から5年かけて段階的に35人まで引き下げる方針を固めた」という記事を読んだ。小学校の学級基準の一律引き下げが決まれば約40年ぶりだという。公立小中学校の学級基準は1958年の制定時は「50人」だったが、その後段階的に5人ずつ減らして、1991年には現在の「40人」に引き下げられてきた。その後、少人数化の議論は停滞していたが、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに導入論が浮上したようである。少人数化には賛否両論があるようで、教員がきめ細かな指導ができるとか、発表機会が増え授業参加がより積極化するなどの効果が期待できる半面、切磋琢磨がなくなり子どもたちの社会性が育たない、などの...35人学級

  • コロナワクチン

    日本の医療水準は、世界195か国の中で11番目だといわれ、技術的にも高い水準であると思っていた。そんな日本に生まれ、何かあって入院した時も安心して治療を受け、無事に退院することが出来る幸せを、その都度感じていた。このところ、新型コロナの感染者が増加傾向を示し、ワクチンの開発・接種が1日も早くと待たれるようになっている。ところが、肝心のワクチンの開発がなかなか進まない。そんな中、何とか開発できたという情報は、アメリカやイギリスなどの欧米や中国や韓国などからのものばかり。世界の中でも医療先進国だと自負している日本からの、開発品の情報はまだまだ先のようである。政府も、日本の技術を当てにすることなく、恥も外聞もなく海外で開発されたワクチンを購入して接種するのだと、ためらいなくお金の準備をしているようである。では医療先進...コロナワクチン

  • 教養と教育のない日々

    朝一番、新聞を読み終えてテーブルの上に置いたとき、奥さんがいつものように「さあ、今日の予定は何ですか?」と聞いてきた。「うーん、何もないなあ」と気合の入らない返事を返す。停年退職をした直後は、仕事からは完全に足を洗い、趣味らしいことを見つけて同好会を立ち上げるなどして昨年まで楽しく過ごしてきた。毎日とは言えないまでも、月に数日は、それなりに出かけたり家の中でやる作業はあった。ところが昨年の末で、もろもろの活動を終えることにしてからというもの、どうしても出かけなければならない仕事と言えば、月に1度と、3ケ月に1度の病院通いだけの身となった。そのお陰と言おうか、暇つぶしと言おうか、長い間、見て見ぬふりをしていた庭や家のことで、手をかけてやらなければいけない個所の手入れに力を入れた。そんなこともあったが夏が終わったこ...教養と教育のない日々

  • いびき

    新聞に、85歳の女性が投稿しているエッセイを読んで、朝から笑わせてもらった。タイトルは「いびき」とある。病気で入院し、4人部屋に入った。初日に「私いびきをかきます。ご迷惑をかけるかと思いますが、お許しください」と断っておいた。隣のベッドの人が「私ゃかかん。気にせんでええよ」と言った。ところがその夜、すごい音で目を覚まして眠れなかった。いびきをかかない筈のお婆さんが「グォーッ、グォーッ」と豪快な往復いびき。他の2人も、結構ないびきをかいている。翌朝、豪快いびきのお婆さんが「あんた、いびきは気にならなかったばい」と言う。だって、私は眠っていないんだもん、と書いている。確かに、寝ているとき自分のいびきは幸せなことに全く聞こえない。反対に、他人のいびきはよく聞こえるのが不思議ではある。こんなことは私も入院した時に経験し...いびき

  • シルバーラブの日

    「今日は何の日?」。なんと「シルバーラブの日」だという。こんな艶っぽい日があるなんて、今まで知らずに生きてきた。シルバー世代の人が、伴侶がいるいないにかかわらず、誰はばかることなく恋をしてもよい日のことかと思ったが、どうもそんな節操もない話とは違うようである。1948年(昭和23年)の11月30日、歌人の川田順(1882~1966年)が弟子の大学教授夫人と共に家出した。当時、川田順は66歳で、3年前から続いていた40歳の教授夫人との恋の行く末を悲観して、死を覚悟しての行動だったが、養子に連れ戻された。その後、2人は結婚した。川田が「恋の重荷」という詩を詠んだのが11月30日で、この日にちなんで11月30日を「シルバーラブの日」に決めたという。”若き日の恋は、はにかみておもて赤らめ壮子時(おさかり)の40歳(よそ...シルバーラブの日

  • Microsoft Edge

    4年前のことである。7年間使っていたWindowsVistaのサポートが終了するのを機会に、windows10のパソコンに買い替えて、日々難なく使っていた。ところが1カ月前から、パソコンの動きが異常に重くなったばかりか、検索欄にキーで打ち込もうとするが、文字が直ぐには表示されない。そればかりか、画面の右下に「webページの回復」という警告がたびたび出てきて、しばらく待って、やっと文字を打ち込めるようになる。また、ネットサーフインをしようと目当ての記事をクリックするが、1、2分待ってやっと記事が出てくる。いくら待っても出てこないこともある。これでは、パソコンの機能を発揮しているとはいえないので、ない知識を絞ってCディスクのクリーンアップや、不用と思われるプログラムのアンインストールなどを試みるも、解決しないまま悶...MicrosoftEdge

  • 13日の金曜日

    今朝、目がさめたとき、ラジオのスイッチを入れた。7時の時報が鳴った後、「おはようございます。今日は11月13日、金曜日です」と明るい声でアナウンサーが挨拶をする。むむっ。13日の金曜日だとっ!私の古い記憶にスイッチが入った。それは58年前、1962年(昭和37年)の学生時代の出来事である。高校時代の同級生と、10日間の北海道周遊旅行を計画した。7月13日に岩国駅を、夜行寝台列車ではなく座席指定の特急列車「第2つばめ」に乗って出発した。翌朝、東京駅で常磐線に乗り継いで青森駅を目指そうとしたが、大雨のため常磐線が不通だという。出だしから計画は大幅に狂い、道内に予約していた宿は全部キャンセルせざるを得なかった。そんなこともあったが、無事に旅を終えて帰った後、7月13日は金曜日であったことに気がついた。英語圏やドイツ、...13日の金曜日

  • 八十肩

    ここ2カ月ばかり、人知れず悩んでいることがあった。右肩の痛みである。日中は痛みを感じることは殆どないが、夜寝ていると鈍痛で目が覚めることがたびたびあって、睡眠不足を感じる日が続いていた。古い手帳をめくってみると、10年前には左肩が、6年前には右肩が痛くなり、整形外科に数回通い、注射や電気を当てたりしたが直ぐには良くならなかった。結局、肩の痛みは「時間が薬」といわれる通り、半年ばかりが過ぎたころ、やっと傷みがなくなったことがある。そんな経験から、今回は医者には通うことなく、サロンパスを貼るくらいのことでお茶を濁し、痛みに耐える夜を過ごしていたが、2ケ月が過ぎても一向に改善の気配はない。1週間前の日曜日のことである。相変わらず、夜になると痛む日が続くので、ついに我慢ができず、あれほど病院へは行かないと決めていたにも...八十肩

  • 準備万全

    10年前に、玄関のアプローチに少し濃い紅い花をつける花水木を1本植えた。木はまだ小さいが、数年前からたくさん花をつけ始め、通りがかりの人から「今年もきれいに咲きましたね」と声を掛けられることがたびたびあった。ところがどうしたことか、今年は例年の3割方しか花を咲かせることがなく、淋しい思いで眺めていた。調べてみると、成長期にある木は、木の成長に栄養をとられて花を咲かせる余裕のない年があるという。そんなものかなと思いながら、今日、久しぶりにこの木をじっくりと眺めて見て驚いた。高さが3mもある梢の細い先まで、小さなつぼみを無数にと言っていいほど付けているではないか。これなら来年の春は大いに期待できそうである。ここ数年、ハナミズキは少しずつ花を咲かせる時期が早くなっている。当初は5月の連休の頃が満開であったものが、最近...準備万全

  • 最終コーナー

    新聞の読者投稿欄に「秋のウオーカー」と題して、71歳の男性が書いたエッセイが掲載されていた。退職後、奥さんと2人でウオーキングを始め、自然から思いがけない多くの発見をして楽しんでいるというものである。そのエッセイの締めくくりに「人生も既に最終コーナー、日々を楽しむ工夫をしたい」と結んでいる。「最終コーナー」とは、よく使う言葉であるが、人生では一体、何歳くらいから使ってもいいものかを考えてみた。そもそも「最終コーナー」とは何なのか。どうやら競馬場での「第4コーナー」のことのようである。競馬では、1周が2000m強のコースで、スタート地点を移動させることによって、走る距離を1500m~3500mの範囲で変えることが出来るようにしている。ゴールはメインスタンドの真ん前に固定してあり、その位置は第4コーナーを出たところ...最終コーナー

  • 線香のあげ方

    先日、新聞の読者投稿の欄に投稿していた「線香占い」という短いエッセイが掲載された。仏様に線香をあげる時に、1本を2つ折りにして香炉に立てるとき、私がこだわっていることを書いたものである。このエッセイが掲載される日の前日のことである。新聞社の担当者から電話がかかってきた。「線香を折って立てるというやり方は、そちらの地方の風習ですか?」と聞かれ「いいえ、単にお坊さんがやっておられることを真似ているだけです」と答えておいた。掲載されたエッセイを読んだ数人の知人から「読んだよ」というメールが来たり電話がかかってきた。いずれの人からも「私はこうしてあげている」という自己流の線香のあげ方の話があった。線香をあげるという動作は、幼いころから数えきれないほどやってきてた。正式にはどんな作法があるのか一切知らず、我が家の仏さまに...線香のあげ方

  • 恋する灯台

    10月16日に現役の4灯台が重要文化財に指定された。その灯台は犬吠埼(銚子市)、角島灯台(下関市)、六連島灯台(下関市)、部埼灯台(北九州市)。いずれも明治初期に英国人技師の指導で建設された。現役灯台の重要文化財指定は初めてで、山口県からは2基の灯台が選ばれた。その一つ角島灯台は、下関市の北西、響灘から日本海へ廻る交通の要衝にある角島に建っている。2000年(平成12年)には角島に渡る長さ1780mの角島大橋が開通し、コバルトブルーの海士ヶ瀬をまたぎ、景観と調和した雄姿は、北長門海岸地域随一の景勝地となっている。角島灯台は、日本海側に最初に設置された洋式灯台で、明治9年に初点灯した。総御影石造りの灯台で、140年以上経った現在でも現役で点灯しており、歴史的文化財的価値が高いAランクの保存灯台のひとつである。高さ...恋する灯台

  • 伊根の舟屋

    天橋立は丹後半島の東の付け根にある。そこから車で30分ばかり半島の東海岸を北上すると、伊根町という漁村に着く。言うまでもなく「伊根の舟屋」として知られ、テレビの旅番組などでよく紹介される地域である。伊根の家屋は直接海に接していて、1階は船を収蔵するためのガレージ、2階が居住スペースになっている。漁業と生活とが一体となって発展した舟屋の町並みは大変めずらしく「国の重要伝統的建造物群保存地区」に選定されている。約230軒の舟屋に囲まれた伊根湾は日本海側にありながら南に開けており、三方を山と島で囲われているため波も穏やかで、ゆったりとした情緒ある景観を楽しませてくれる。車で伊根町に入った所に「遊覧船乗り場」という看板が目に入る。何台か車が駐車場に止まっているのに誘われて、車を止めた。丁度10分後に、湾内への観光船が出...伊根の舟屋

  • 邸宅美術館5

    先日、久しぶりに幼馴染で女流画家として活躍している坂井幸子さんから電話がかかってきた。「お宅に、また絵を飾らせてくれませんか」という。「ありがとうございます。ぜひお願いいたします」と、二つ返事で答えた。11年前のことであった。岩国の絵画クラブの作品展を見に行ったとき、坂井さんの描いた大きな絵が展示してあった。「こんな絵を家に飾ってみたいですね」と本人に言っておいた。直後、その絵を我が家に運んできてくれた。それ以後、数年おきに絵を取り換えてくれ、我が家の居間を「邸宅美術館」に変えてくれた。「邸宅」とは本来は家、住まいのことをいうが、特に構えが大きくて、りっぱな造りの家をいう時に使う言葉のようである。邸宅と呼ぶにはほど遠い我が家であるが、「庭園美術館」といわれるものに対抗して、単に「邸宅美術館」と言ってみただけであ...邸宅美術館5

  • 天橋立

    城崎温泉に向かう途中、宮津湾にある「天橋立」を初めて訪れてみた。ご存知の通り、陸奥の「松島」・安芸の「宮島」とともに、日本三景とされている特別名勝のひとつである。平日であるにもかかわらず、さすがに観光客が大勢来ている。車を止めると、係員がリフトに乗って展望台へ行くように勧めてくれる。言われた通りリフトに乗ると、たちまち標高が131mの「天橋立ビューランド」というところにたどり着いた。そこから眺める天橋立は、天気も幸いして、青い海と青い空とが一体となり、そこに横たわる美しい緑の松並木は、まさに天へと昇る龍の姿である。そのため、天橋立ビューランドは「飛龍観」とも呼ばれているという。幅が約20~170m・全長約3.6kmの砂洲に約5000本もの松が茂っている珍しい地形で、その形が、天に架かる橋のように見えることから「...天橋立

  • 天空の城

    車で岩国から城崎へ向かうルートは、山陽道を走るか山陰道を走るかの何れしかない。往きは山陽道を走ることにし、ちょっと赤穂市に立ち寄ったあと姫路に1泊する。翌朝8時に出発し、一般道を使ってまずは天橋立を目指した。真っ直ぐに北に伸びる国道312号線を130km走ると天橋立に着く。姫路から75kmくらいの、河沿いの田舎道を走っているとき、奥さんが「何かしら、あの山の上に要塞のようなものが見えるわ」と言って、窓の左上の方を指差す。ちょっとした広場に車を止めて見上げると、確かに幅広く石垣が築かれているように見えた。地図で確認すると「朝木市」である。図らずも、かの有名な竹田城のふもとであった。竹田城跡は、標高353mの古城山の山頂に築かれた山城で、山全体が虎が伏せているように見えることから、別名「虎臥城」とも呼ばれている。東...天空の城

  • 城の崎にて

    志賀直哉は、「城の崎にて」という5千字程度のごく短編の小説を30歳の時に書いている。1913年、東京に滞在していた直哉は「出来事」という小説を書き上げた晩に、里見弴と一緒に素人相撲を見に行くが、その帰り道に、山手線の電車にはねられ重傷を負い入院する。その養生のために城崎温泉に3週間滞在した。その時、蜂・鼠・イモリという3つの小動物の死を目撃する。事故に際した自らの体験から、徹底した観察力で生と死の意味を考えて書いたものが「城の崎にて」で結実する。簡素で無駄のない文体と適切な描写で無類の名文とされている。城崎温泉といえば、平安時代以前から知られる温泉で、7つある外湯めぐりを主とした温泉である。筆頭とされる「一の湯」は、江戸時代中期の漢方医が泉質を絶賛し、「日本一」の意味を込めて後に「一の湯」と命名したものだという...城の崎にて

  • 線香占い

    忙しいわけではないが、毎日は仏前で手を合わせてはいない。仏壇の花瓶に挿した花が、しおれかけたのを見て慌てて水を替える。先祖に対し、私は少し失礼をしているかもしれない。毎日拝んでいる人を知っているが、本当に頭が下がる。時々仏前に座り、線香を立てて先祖に近況の報告をする。火災予防のため、線香は半分に折って立てる。お坊さんがしていることを見習ってやっているが、この時私がこだわっていることがある。まず、1本の線香の端を左手で水平に持つ。そして、真半分だと思うところを、右手の親指の爪で折る。2本になった線香の背丈を比べるが、全く同じ長さということはまずない。調子の悪いときには、1センチ以上も異なっている。そんな日は言動を慎み、なるべくおとなしくしている。ところが今朝のことである。いつものように仏前で線香を折った。なんと2...線香占い

  • 線香占い

    忙しくしているわけではないが、毎日仏前で手を合わせてはいない。仏壇の花瓶に挿した花が、萎れかけたのを見て慌てて水を替える。先祖に対して、私は少し失礼をしているかもしれない。毎日拝んでいる人を知っているが、本当に頭が下がる。時々仏前に座り、線香を立てて先祖に近況の報告をする。火災予防のため、線香は半分に折って立てるようにしている。これはお坊さんがしていることを見習ってやっていることであるが、この時私がこだわっていることがある。まず、1本の線香の端を左手で水平に持つ。そして、ここが真半分だと思うところを、右手の親指の爪で折る。2本になった線香の背丈を比べてみるが、全く同じ長さということはまずない。調子の悪いときには、1cm以上も異なっているときもある。そんな日は、言動を慎み、なるべくおとなしくしているように心がけて...線香占い

  • 外敵対策

    夏に日本本土で発生したアサギマダラの個体の多くは、秋になると南西諸島や台湾まで長距離を飛んで南下することが知られている。あんな小さな体で、よくも移動できるものであると感心するばかりである。このアサギマダラは、何故フジバカマの花にしか寄ってこないのか。疑問に思って調べてみた。アサギマダラの幼虫が食べる草は、ガガイモ科のキジョラン、カモメズルなどで、アルカロイドを含む有毒植物として知られているものである。幼虫時代に有毒物質を体内に蓄積させ、成虫になっても体内に蓄積され続けるので鳥などの捕食者に忌避される。成虫したアサギマダラが好むフジバカマを含むヒヨドリバナ属も、アルカロイドを含む有毒植物で、特に雄はフジバカマの花蜜からアルカロイドを取り込んで天敵から身を守るばかりでなく毒物を代謝し、性フェロモンとして分泌する。ア...外敵対策

  • 怪投乱魔

    「快刀乱麻」という熟語がある。「快刀」とは鋭利な刃物、「乱麻」とはもつれた麻のことで、「鋭利な刃物で、もつれた麻糸を断ち切るように物事を処理する意から、こじれた物事を非常にあざやかに処理し解決すること」をいう。昨日(17日)のプロ野球、広島対中日の試合である。広島の今期は優勝などは夢のまた夢。最下位だけは避けたいという淋しいリーグ戦を戦っているが、昨日の試合は、今期いやというほど見せてもらった試合内容であった。新人賞の最有力候補の森下投手が、まさに快刀乱麻の好投で、7回をわずかに1失点で投げ切り、2対1と1点をリードしているところで、このところ8回の中継ぎを任されている塹江がリリーフとして登板した。いつものことながら不安定な投球で、1アウトでランナーを1、2塁に残して抑えのフランスワと交代した。ところがと言おう...怪投乱魔

  • 一穴

    奥さんが運動がてら自転車に乗って、スーパーまで買い物に行ってくると言って玄関を出た。直ぐに戻ってきて「前輪の空気が抜けている」と言う。代わりに折り畳み式の小型自転車に乗って出かけた。先日、空気が抜けているのを見て、虫ゴムを調べてみると劣化して破れていたので取り替えておいたのに、また空気が抜けている。これはパンクしているに違いない。そう判断して、パンク修理に取り掛かった。パンクの修理なんぞ、ここ5、6年はやっていないが、要領はしっかり覚えている。まずタイヤを外しチューブを取り出す。そのチューブに軽く空気を注いで膨らませ、水を張った洗面器に浸ける。回しながら半周くらい調べたとき、ブクブクブクと小さな泡が出るところを見つけた。「ここだっ!」、刑事が指名手配の犯人を見つけた時のような気分でマジックで印をつけておく。かな...一穴

  • 林真理子ギネス認定

    文芸春秋は14日、作家の林真理子(66)が週刊文春に連載しているエッセイが「同一雑誌におけるエッセイの最多掲載回数」としてギネス世界記録(2020年7月2日時点で1655回)に公式認定されたと発表した。林さんの連載は1983年にスタート。連載タイトルは「こよいひとりよがり」「今夜も思い出し笑い」「マリコの絵日記」と変わり、現在の「夜ふけのなわとび」になってからは約17年で、通算37年もの長い間連載してきた。過去34冊が文庫化され、文庫累計部数は426万部に達している。林さんは「エッセイのネタがなくて辛いときもありましたが、37年間続けることができてうれしい」と話している。林さんといえば、日大芸術学部卒業後、コピーライターとして活躍。82年に刊行された初のエッセイ集「ルンルンを買っておうちに帰ろう」がベストセラー...林真理子ギネス認定

  • 見て見ぬふり

    「見て見ぬふり」とは、実際には目撃しているが、見ていないために知らないということにして、やり過ごすことをいう。裏庭の菜園は、キュウリやナスなどの夏野菜が収穫できたあとは、暑さにかまけて雑草が伸び放題。バラ園までが、数株に秋咲きの花を咲かせてはいるものの、見る影がないほど草が繁殖しているのは知っていた。庭がそんな状態になっていることは、奥さんもよく知っている。真夏は暑すぎる、9月になっても残暑が厳しい、やっと涼しくなったと思ったら今度は台風だ。そんな言い訳めいたことを言いながらも時は過ぎていった。9月も終わろうとする頃、2カ月ぶりくらいに裏庭に出た。誰はばかることなく菜園もバラ園も雑草は膝の上まで伸び伸びと育っている。さながらサバンナでライオンが身を伏せることが出来るくらいの草原となっているではないか。気を取り直...見て見ぬふり

  • 独壇場

    今朝テレビで、女性アナウンサーが「独擅場」(どくせんじょう)のことを「独壇場」(どくだんじょう)という言い方をしているのを聞いた。「『擅』という文字は『壇』とよく似ていることから読み誤って生じた語が一般化し、誤った読み方と書き方が定着・慣用化したもの」である。意味は「その人だけが思いのままにふるまうことができ、他人の追随を許さない場所・場面。独り舞台」のことである。現在では,むしろ「独壇場」のほうが一般的となっている。「岩波国語辞典」では「独壇場」を本見出しにし、「独擅場」を、から見出しにしている。また,「NHK編新用字用語辞典」では「独壇場」しか見出しになく、「朝日新聞の用語の手引」では「独擅場」は「独り舞台や独壇場」に書きかえることになっているという。言葉や文字は世につれて変化していくものだと言う。一昔前ま...独壇場

  • 烏骨鶏の卵

    先輩の知人Hさんから電話がかかってきた。「今から珍しいものを持っていこうと思うけど家にいる?」という。物をもらえるのであれば、少々の用事は差し置いて待つしかない。間もなくするとHさんがやって来た。部屋に入るや「これ、烏骨鶏が産んだ卵。今朝と一昨日に産んだもの」と言って机の上に2個が入ったポリ袋を置いた。烏骨鶏の卵なんて、道の駅などで売られているのを見ることはあるが、じっくりと見たことはない。今年の春先のことである。Hさんが「烏骨鶏の有精卵を5個手に入れた。孵化させて、卵を生ませようと思う」と話をしたことがあった。直後、DIYで小さな鳥小屋を作り、白熱電球で37度に温度を保って孵化させたと聞いていた。5羽の内メスは2羽だけだった。そのうちの1羽が成長し卵を産み始めたのを持ってきてくれた。エサは、スーパーへ出向き、...烏骨鶏の卵

  • 傷心の名月

    昨夜(10月1日)、テレビでカープ対巨人戦を見ているとき、中秋の名月であることを思い出して、夜8時、デジカメをもって写真を撮りに出た。むら雲もなく、いい写真が撮れたが、昨年もこの日、ブログに「中秋の名月」をアップしたことを思い出し、どんなことを書いていたか読んでみた。「広島対巨人戦をテレビで見ていた。4回を終えて3対1と巨人がリードしていた。巨人に移籍した丸選手は相変わらず調子がよく、巨人優勝に向かっての立役者の1人として大活躍をしている。まるで、付き合っていた彼女が自分を振って、新しい恋人と結婚して幸せいっぱいの生活をしているのを垣間見るような気分とは、こんな気持ちのことかと思うほどである。人は悲しくなった時や、せつなくなった時には、何故か月や星を観たくなる。時まさしく中秋の名月であった。写真を撮りに外に出た...傷心の名月

  • Go To キャンペーン

    テレビを見ていると、毎日「GoToキャンペーン」を使って旅行に出かけよう」というような言葉をよく聞くようになっている。知っているようでよく知らない「GoToキャンペーン」とやらを、調べてみた。GoToキャンペーンとは、国内における観光などの需要を喚起して、新型コロナウイルス感染症の流行と、その流行による緊急事態宣言に伴う外出自粛と休業要請で疲弊した景気・経済を再興させることを目的とした政府による経済政策のこと。今年の4月発表した108兆円におよぶ「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を実行するため、16兆8,057億円にのぼる2020年度補正予算案を閣議決定した。この内、1兆6794億円が「GoToトラベル」と称して、旅行などの観光関連産業に充てられるという。詳しいことを知らなかったが、こんなことがあるからだ...GoToキャンペーン

  • 余人台頭

    9月16日、安倍内閣に代わって菅内閣が発足し、閣僚名簿が発表された。新内閣の顔触れを見て、巷では面白い名前を菅内閣に付けているが、それぞれが特徴をうまく捉えている。「第3次安倍内閣」;まさにズバリ継承内閣。「実務最優先内閣」;行動力があり、かつ即戦力になりそうな安定した顔ぶれだから。「仕事師内閣」;つい「仕事しないないかく」と読みそうであるが、それまでは仕事をしなかった内閣だったのかと突っ込みを入れたくもなる。「たたきあげ内閣」;非世襲という菅首相の経歴から。「おじいさん内閣」;平均年齢は60.4歳、79歳の麻生太郎副総理兼財務相、81歳の二階俊博自民党幹事長らベテランの印象が強い。こんな揶揄に負けず、これから始まる菅仕事師内閣には大いに期待したい。とは言いながら、もう少し元気のいい若手を起用してもらいたいもの...余人台頭

  • 誰もいない高原

    9月も残すところあと1日、このところ、朝夕は肌寒さを感じるようになってきた。そんな先日、確たる当てもなく北に向かって車を走らせてみた。秋の山の景色は、陽のせいかギラギラしたところがなく、見ていて心が落ち着くような気がする。しばらく走ったところで、久しく行っていない羅漢高原に行ってみることにした。子供が小さいころキャンプ道具をもって何回か来たところである。岩国から約45km、標高が800mの高原である。曲がりくねった登山道は、訪れる車が少ないからだろうか、木の葉が落ちたままになっている。すれ違う車もないまま高原に着いた。展望台のあるレストハウスで車を降りると、2人乗りの大型バイクで来ている1組の熟年夫婦が、コーヒーを飲みながら休んでいる。屋外の展望台に立ち、掲げてある案内図を見ながら遥か遠くの下界を眺めてみた。瀬...誰もいない高原

  • ジャガタラお春

    この季節、散歩をしていると必ず目に入る花がある。競うように真っ直ぐに茎をのばして咲く彼岸花、別名を曼殊沙華という花である。今朝のことである。奥さんに「♪赤い花なら曼珠沙華♪という歌を知っている?」と出だしだけを歌って聞いてみた。「知っているわよ。母がよく歌っていたから」と言って、歌の途中までふしを付けて歌う。私も子供の頃、母が口ずさむのを聞いて、歌詞はうろ覚えだが曲はよく覚えている。♪赤い花なら曼珠沙華阿蘭陀(オランダ)屋敷に雨が降る濡れて泣いてるじゃがたらお春未練な出船のああ鐘が鳴るララ鐘が鳴る♪「じゃがたら」という歌詞が気になってネットで調べてみると、昭和14年(1939)、ビクターから発売された「長崎物語」という歌であった。徳川幕府がキリシタン弾圧を強化したとき、オランダ人をジャワ島のジャガタラ、現在のジ...ジャガタラお春

  • 失 言

    歌手の華原朋美が開設しているU-TUBEに、投稿した動画の中で発言した言葉に対して多くの批判が出ているという。発言の内容は「どんどん口座から自分のお金が減っていく」と語り、世の中全体がコロナ禍でそうなっていると思うと説明した。「お金がなくなったときには、レジ打ちでもしようかな」と発言したことに対して「レジ打ちをなめているのか」「ばかにしている」と批判のコメントが殺到し失言を謝罪したという記事を読んだ。確かに「レジ打ちでも」と言われると、レジを打つ仕事をしている人にとっては、上から目線で何だか虐げられたような気持になる。レジを打ったことのない者からそんなことを言われたら「お前が打ってみろよ。スムーズに打てるまでどんだけ努力がいると思っているのか。しかもレジを打つだけではなく、お客さんへの対応も色々あって大変な仕事...失言

  • 「老人の日」

    昨日、9月21日・月曜日は「敬老の日」であった。まさに天高く秋晴れのいい天気に加えて4連休、しかもGoToトラベルのキャンぺーン期間とあって、いずこも沢山の人出で賑わったようである。「敬老の日」は日本生まれの記念日。その発祥はというと、昭和22年(1947年)に兵庫県多可郡野間谷村で「お年寄りを大切にし、お年寄りの知恵を生かした村作りをしよう」という考えのもと「としよりの日」が提唱されたのが始まりだという。農閑期であり気候も良い9月15日を「としよりの日」と定めた提唱は全国に広がっていき、昭和41年(1966年)に「敬老の日」と名を変え、「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」という趣旨で9月15日を祝日として制定された。ところが時を経て、単に連休を増やす目的でハッピーマンデー制度とやらが適用...「老人の日」

  • 5度目の車検

    5度目の車検をディーラーで受けた。人間と同じで寄る年波に逆らうことが出来ず、手を加えなければいけないところが数か所出ていた。まずは、ディスクブレーキのパッドの交換、エアエレメントの交換、スパークプラグの交換、オイルフィルターからのオイル漏れ補修、エンジンオイルとフィルターの交換などが主なものであった。あらかじめ見積額は聞いていたが、大方、中古の軽自動車が1台買えるくらいのものとなった。しかし、乗ってみると、室内の清掃も行き届いているばかりか、ブレーキの利きもよく、交換したばかりのスパークプラグやタイヤのせいもあってか、走りも快適となっている。これなら、もうしばらく愛車として乗っていてもいいかなと思いながら、少し遠回りをして帰ってきた。毎度のことではあるが、車検で車を預けている間、代車としてミニクーパーという新車...5度目の車検

  • 存在感

    自民党の総裁選は14日に行われるというが、候補者が出そろう前からすでに主だった派閥の領袖の意向によって、次期総裁は菅官房長官に決まったようである。これでは開かれた自民党というキャッチフレーズはお題目で、派閥の領袖による密室談議で決まったとしか言えない。会社勤めのサラリーマンであれば、能力のない、いやな上司と言えども、上司が白と言えば白に、黒と言えば黒にしないと、たちまち自分の首が飛んでしまうか可能性がなきにしもあらずである。ところが、国会議員であれば、生殺与奪の権利は地元の国民が握っていて、派閥の領袖ではない。それであればいくら派閥の一員であっても、自分の意見というものはきちんと言わなければ、国民を代表した国会議員だとは言えない。そうはいっても、余りたてついたりすると冷や飯を食わされるのを見ていると、「もの言え...存在感

  • 台風の風圧

    9月に入り台風シーズンを迎えたと思ったら、2日になって早速、最大風速が45m/sという非常に強い台風9号がやって来た。九州北部をかすって通過し、大きな被害はなかったが、ひと安心する間もなく、今度は特別警報級の勢力を持つ10号が北上接近しつつある。中心気圧930hPa以下、最大風速50m/s以上にまで発達する可能性があり、6~7日には日本に上陸する恐れがあるという。1959年に大きな被害を出した伊勢湾台風に匹敵する規模だという。台風は大雨を伴うが、強風による被害も甚大である。よく知られているように、台風の渦は反時計回りしているので、進路の右側のほうが左側よりも風速は早くなる。台風の進む速度を30㎞/h(8.3m/s)、最大風速を50m/sとした場合、左側の風速は50-8.3=41.7m/s,右側の風速は50+8....台風の風圧

  • 夏の雪崩

    安倍首相の退陣表明を受けて、後継を選ぶ自民党の総裁選が始まった。岸田氏、石破氏に続いて菅氏が出馬し、3氏による選挙戦となる構図が固まった。本命の菅氏が出馬を表明する前に、すでに主要派閥が雪崩を打つかのように、寄らば大樹の陰とばかりに菅氏の支援を決めており、国会議員票で大きく優位に立っている中、党員投票はせず、両院議員総会方式で新総裁を選出することが決定している。自民党の両院議員の総数は394人だという。従って無派閥議員の64人を除いて、菅氏には派閥単位での総数だけで280票くらいが集まり、47都道府県連票の141票に期待しなくても菅氏が選出されることになる。岸田氏と石破氏は、明らかに負け戦であることは明白であるにもかかわらず立候補した。1年後には必ずある自民党の総裁選をにらんで、止むに止まれぬ訳がそれぞれあるの...夏の雪崩

  • 白羽の矢

    28日に安倍首相は、体長不良のため突然辞任を表明した。その後継を決める党総裁選に、菅官房長官が立候補する意向を固めたと、今朝(31日)の毎日新聞の1面トップで報じられている。インターネットの時事通信社の記事にも、これに関連したものが出ているのを読んでみた。「主流派、菅氏に白羽の矢派閥主導で石破氏封じ」という見出しで、菅官房長官が出馬を固めるに至った経緯が書かれている。いつの時代も、相も変らぬ内輪の論理で繰り返される総裁選びであるが、見出しにある「白羽の矢」という言葉が気になって、改めて調べてみた。「白羽の矢」とは、文字の通り「白い羽がついた矢」を意味する言葉である。ヤマタノオロチの伝説などにおける「人身御供」が語源である。神様の怒りを沈めるために、川や池に人を沈めて捧げる人身御供の儀式で、白い羽の矢を生贄にする...白羽の矢

  • 残暑に思う

    昨日、庭に植えているナツツバキ、ヤマボウシ、ヒメシャラを見上げると、葉の水分が失われて、張りのない縮んだ状態になっている。こんな様子を見るのは初めてである。そういえば、8月に入ってからというもの、雨らしい雨が降った記憶はない。慌てて散水ホースを伸ばして木の根元に水をかけてやった。どれほどの水をやれば生気を取り戻すのか見当はつかないが、たっぷりと撒いておいた。ふと裏の山を見ると、相変わらず木々は青い葉を茂らせ、元気そうに風にそよいでいる。山だって、雨は降ってはいないのに、枯れるような気配は見えない。庭の植木だって放っておいてもいいのかなと思いながら家に入った。今日も、相変わらず朝から暑い。1歩も出歩かない日が続いているが、これではいけない。意を決して久しぶりに錦帯橋へ出かけてみた。目的は、橋の真下の日陰に座って、...残暑に思う

  • 同音異義語

    「同音異義語」とは、発音が同じで意味の異なる語のことをいう。パソコンで、キーを叩いてブログなどを書いていると、手書きで文字を書いている場合とは違って、意識せずに同音異義語を打ち込んで見過ごしたまま公開していることが間々ある。最近では、「四球」を「死球」、「初めて」を「始めて」、「最近」を「細菌」などと打っていた。公開する前に、書き終わった文章を読み返した時に、はっきりと意味が間違っている同音異義語はすぐに気がついて直すことが出来るが、気がつきにくい同音異義語が日本語にはたくさんある。例えば「答える」と「応える」、「回答する」と「解答する」、「関心する」と「感心する」、「機械」と「器械」、「電気」と「電器」、「時期」と「時機」、「制作」と「製作」、「終了」と「修了」、「特徴」と「特長」などがその例である。ここで問...同音異義語

  • TPO

    TPOとは、time(時)・place(場所)・occasion(場合)の頭文字をとって作られた和製英語である。「時と場所によって服装や言葉を使い分ける」という意味で、1964年に東京オリンピックが開催されるのを機に使われるようになった。テレビのワイドショーなどで、ときどき気になる会話を聞くことがある。社会的にしかるべき立場にあるようなゲストを呼んでメインキャスター(MC)が色々と話を聞きだすような場面がある。問題はMCがゲストと学生時代の同級生であったり、個人的に親しい間柄の場合、会話の口調が「これはどうなん?」とか「そういうことなの?」というようなタメ口となる時がある。ゲストへの呼びかけも「○○君」とか「おい○○、それは違うんじゃあないの」など名前も呼び捨てとなることもある。全国放送であるにもかかわらず、ま...TPO

  • 「カープ 3タテ」?

    目下、セ・リーグの最下位を、首位の巨人からなんと10ゲーム差で独走していた広島カープが、本当に久しぶりに溜飲が下がるような試合をしてくれた。21日からマツダズームズームスタジアムで行われた対巨人の3連戦である。初戦はエースの大瀬良が、第2戦はドラフト1位の森下が好投して大差で勝った。さて、3連勝が期待される第3戦である。若手の島内が先発し、1点は取られたが、誠也がホームランを放ち、1対1のまま7回まで好投した。8回は塹江が2アウト2、3塁まで攻められたが何とか抑えた。その裏、代打・坂倉がホームランを打って2対1とリードする。さあ、最終回だ。押さえには、このところ好調のフランスワが登板する。どうしたことか先頭打者にヒットを打たれ、犠打で走者は2塁となった。続く打者の坂本は三振して2アウト。あと1人で勝利という段に...「カープ3タテ」?

  • 記者の眼

    安倍首相が8月17日午前、東京・信濃町の慶応大病院に入った。日帰りの検診だとみられるが、新型コロナウイルスへの対応が長期化する中、野党が要求する閉会中審査への出席を拒否。長時間の記者会見には姿を見せない状態が続いており、健康状態を不安視する声もあがっている。そんな中、首相が毎朝車から降りて官邸の玄関に入った後、記者の前を通り過ぎて姿が消えるまでの歩く速度を測定・解析しているのをテレビのニュースでやっていた。4月の初めから8月まで、1カ月おきの所用時間をグラフ化している。正確な数字は記憶していないが、初めは9.5秒であったものが、月を追って徐々に長くなり、8月には12秒くらいまでになっている。元気な時には、首相が官邸内を歩く速度は比較的早い足取りであった。私が、速足で散歩するときは、1.2m/s(4.3km/h)...記者の眼

  • いじわる爺さん

    裏庭での用事を思いついて玄関のドアを開けたとき、ドアの外枠のちょうど目の高さのところに、久しぶりに見る面白いものを見つけた。緑色をしたオンブバッタのカップルが、上向きにとまっていた。名前の通り、体長4㌢くらいのメスの上に、体長2.5㌢ほどのオスがちゃっかりと乗っかっている。まるでジャンボ機に乗せられたスペースシアトルのようである。白菜などに対しては害虫だというが、情が移ってアオムシと同じように踏みつぶすことができない。デジカメを取りに入って又出て見ても、依然としておんぶしたままで移動していない。見るからに固い絆で結ばれたカップルに見える。この状態は交尾の際に観察されるが、他のバッタ類が速やかに離れるのに対し、オンブバッタは交尾時以外でもオスはメスの背中に乗り続けるという。それにしてもオンブバッタのオスは、なんと...いじわる爺さん

  • デッキでシャワー

    お盆休みの最後の日、残暑とはいえ朝から暑く、気温はうなぎ上りでエアコンのセットを1度下げた。その時、奥さんが「お父さん、デッキでシャワーを浴びることが出来るようにしてほしいわ」と言うではないか。「シャワーなら、風呂場で浴びればいいじゃあないか」と答えると「青空を眺めながらの解放感がある方が気持ちいいわよ」とのたまう。それならば、一肌脱いでやろうということで、デッキシャワーの設備工事を開始した。シャワー本体は、近くにある洗車用のスプレーノズルが付いたホースをデッキまで引っ張ってくる。次は、このスプレーノズルを頭上に固定する細工をしなければいけない。そんな時のために保管していたアルミパイプと取付金具を持ち出して、デッキの支柱にビスで取り付ける。試運転してみると、当然のことながらデッキの上がびしょ濡れとなった。これで...デッキでシャワー

  • 瑞風のフレンチ

    先日、山陰の益田に出かける時、昼食をとる店を予約しておいた。人口がわずか4.6万人という小さな町にしては珍しく、フレンチレストラン「BONNE-MAMANNOBU」(ボンヌママンノブ)という店がある。ネットで調べて見つけた店である。2017年にJR西日本が「美しい日本をホテルが走る」というキャッチフレーズで豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風」を山陽・山陰線にデビューさせた。以来、車内のフレンチ料理のプロデュースは、沿線でレストランを経営しているシェフの中から数名が抜擢されて担当している。そのうちの1人が、この店のオーナーシェフだと書いてある。地元の老舗料亭の息子だという。店の名前を翻訳すると「やさしいお婆ちゃんのぶさん」というところか。オーナーシェフのやさしかったお婆ちゃんをイメージしてつけた名前なのか...瑞風のフレンチ

  • 天空の避暑地

    8月に入ってすぐ、東京にいる2人の息子から「今年はお盆に帰らないことにしたよ」という電話がかかってきた。「そのほうがいいよ。こちらは2人とも元気にしているから」と答えておいた。さあ、こうなると、例年なら帰省してくる孫の相手をする必要もない。お盆休みといっても、今年は日中の最高気温は37、38度になるという。体温をも超える気温では安易に出かけると干物になりそうである。そうだ、こんな時には海ではなく、山に行って避暑をしよう。数日前から調べておいた周南市の北45km、中国山脈の中にある標高が1015mの「長野山」を目指すことにした。岩国からは75km、錦川の源流の里である鹿野町を経由して、車で2時間足らずで標高1000mの長野山緑地公園に到着する。家を出る時に32度を示していた温度計が、着いた時には27度になっている...天空の避暑地

  • 山陰のモンサンミッシェル

    先日、島根県の益田に日帰りのドライブをしてきた。水平線しか見えない夏の日本海を見たくなって106㎞走ると、誰一人いない美しい白浜が続く小浜海岸というところに着いた。そこには、紺碧の海の上に浮かぶ絶景の神社「宮ヶ島衣毘須(えびす)神社」という小さな神社が、小さな島の上に祀ってある。これこそが知る人ぞ知る「山陰のモンサンミッシェル」と呼ばれている神社である。あの有名なモンサンミッシェルとは、フランス西北海岸にあるサン・マロ湾上に浮かぶ小島にそびえる修道院のことである。この2つに共通することといえば、ふだんは海で隔てられた陸地と島が、干潮の時にのみ隔てていた砂州が現れて繋がる「トンボロ現象」が見られ、島の頂上には象徴的な建物が立っていることである。この衣毘須神社が脚光を浴びたのは、昭和43年4月に昭和を代表する日本絵...山陰のモンサンミッシェル

  • 電池の残量

    外側に面した掃き出し窓には「どろぼーセンサー」と命名された防犯用のアラームを取り付けている。万一、泥棒がガラスを破ってロックを外し、侵入するために引き戸を開けると大音響を出すという代物である。泥棒が入っても、家の中に価値のあるようなものは何もないが、身の危険を避けるために数年前にこのアラームを取り付けた。部屋の掃除をするときなど、このアラームを解除するのを忘れて開けて、大音響を響かせるようなことを過去何度も繰り返している。ある日、アラームを解除することなく窓を開けたとき、音が出ないことに気がついた。「あっ、電池が切れたんだ」と思い、交換する前に電圧計を持ち出してチェックしてみた。電池は公証3Vの「CR2032」という二酸化マンガンリチュウムイオンボタン電池である。測定してみると2.4Vあった。新品が3Vなのでま...電池の残量

  • 真夏の夜の珍事

    我が家は、東西を走る国道から100m離れたところにある。国道の直ぐ向こう側には岩徳線が並行して走っていて、近くには普通車がやっと1台通り抜けることができるほどの踏切がある。線路は国道側に出っ張った形で湾曲しており、列車の接近が見えづらい踏切である。そのため、子供のころから何度も人身事故が起きたことから、後になって警報機付きの遮断機が設置され、以後事故は無くなっている。そんな踏切であるが、朝は5時過ぎから夜は12時近くまで、上り下り合わせて1日に46便の列車が通過している。その都度、約1分間警報機の音が家の中にいても聞こえてくるが、もはや生活音となっているので気に障るようなことはない。ところが昨夜のことである。2階のベッドでエアコンをつけて寝ていた時、警報機が鳴る時間ではないと思う真夜中に鳴る音が聞こえてきた。時...真夏の夜の珍事

  • 目 線

    以前から、テレビを見ていてどうしても気になっていることがある。アナウンサーがニュースを伝えるときや、ワイドショーなどのゲストが自分が出ているドラマの番組を宣伝するようなときのことである。あらかじめ準備されている原稿を読むときには、ときどき目線を上げて視聴者をしっかりと見ながら伝えてくれる。ところが時に、番組スタッフがカンペを掲げたものを読み上げる場面がある。そんな時、画面にアップされた顔はなんとか視聴者の方に向けているにもかかわらず、目線は視聴者の方ではなく、正面から外れたカンペの方に向けている。目線を外していては伝える力は半減する。なまじっかカンペを読むよりは手渡されたペーパーをきちんと読むほうが自然な画面のように感じている。人に話しかける時には、相手の目を見ながら話すのがまずは基本であろう。目線を合わさない...目線

  • 萬福寺

    梅雨が明けた翌日から、雲の多い日が続いていた。朝からすかっとした夏らしい陽が照る朝、一度ゆっくり巡ってみたいと思っていた街に車で出かけることにした。岩国から110kmのところにある島根県の益田市である。国道187号線を北上し、途中道の駅で小休止しながらひた走ること2時間半、昼前に益田駅に到着する。日本海に面した丘の上に立つ藍色の瀟洒なレストランで食事をした後、日本絵画の巨匠・東山魁夷が宮内庁から障壁画の依頼を受けた際にモデルにしたという「宮ヶ島衣毘須神社」に向かった。碧く美しい海に囲まれ、白い砂浜でつながる参道は、潮の満ち引きにより砂洲が現れたり消えたりするトンボロ現象で刻々と姿を変える。観光パンフレットによれば「山陰のモンサンミッシェル」と呼ばれているという。規模は小さいが、まさにあのモンサンミッシェルを彷彿...萬福寺

  • 雷 鳴

    昨日(30日)のことである。天気図を見てことのほか長かった今年の梅雨もようやく明けたと判断して、朝から梅の土用干しを行った。案の定、昼のニュースで「中国地方に梅雨明け宣言が出されました」と知らせていた。書棚から古い文庫本を取り出して、久しぶりに読み返していると、突如、天を真っ黒な雲が覆い始めたのを機に慌てて梅を取り込んだ。その直後、大粒の雨が激しい音を立てて降り始めたと思ったとき、ドカンドカンと鳴り始める。出梅の最後の儀式かのように、雷が轟音をとどろかせて落ちている。そのうち家が震えるほどの大きな音がした。ピカッと稲妻が光ってから音が聞こえるまでの時間を数えてみると2秒から3秒くらいのものが多い。距離に換算すると、音速は340m/sなので、我が家から約700m~1000mくらいのところに落ちた雷の音であろう。少...雷鳴

  • 土用干し

    7月30日、梅雨前線がやっと遠ざかった。朝から真夏の太陽が照り、待ちに待った梅雨がようやく明けて、しばらくいい天気が続くと判断した。例年になく今年は、奥さん共々この日を今か今かと待っていた。6月19日に漬けておいた2kgの梅を、我が人生で初めて「土用干し」するためである。聞きかじりした「土用干し」という言葉の中には、よく知らない言葉がある。まずは「土用」という意味である。「土用」とは、立春、立夏、立秋、立冬の前の日から数えた18日間のことをいい、夏の土用は7月20日頃に始まり、立秋の前日までとなる。有名な「土用の丑の日」は、夏の土用の丑の日のことで、季節の変わり目にあたる為に体調を崩しやすいので、疲労回復や食欲増進に効果的な成分が多いウナギを食べようということだという。ではなぜ夏の土用に梅を干すのか。7月20日...土用干し

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