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ノーラン篤郎の小説 http://nolanaturo7.blog.jp/

各世代のこころの危機と通過を通じて、幸せとは何か?生きる意味とは?というテーマの創作小説です。

タイトルは『生き残りし者』。ある中年男が自分の壮絶で哀しい半生をふりかえりだす…。各世代におけるこころの危機といったテーマを扱うつもりです。たいへん恐縮ですが、ぜひ読んでいただけると嬉しく思います。よろしくお願いします。

小説ブログ / 長編小説

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ノーラン篤郎
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2014/08/18

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  • 『生き残りし者』 第四章 3節 「家」を失った僕

    大学入学後に父と母が離婚をした。後日母から聞いた話では、父は母に「俺と故郷に帰るか、宗教を辞めるか、どちらかを選ぶように」選択を迫ったという。当然、母は何よりも大切な宗教を選んだ。 父はこういう選択を母に迫れば別れられることを分かっていたのだ。なぜかと

  • 『生き残りし者』 第四章 2節 過酷な受験戦争の結末

    僕が小学校の教師を目指して大学受験を始めたのは高2の冬で、非常に遅かった事情は既に語ったけれども、当時は現在と違って学生が多かったから、受験戦争のピークであった。国立大学の教育学部ともなると偏差値も倍率もハンパなかった。 僕の周りの受験生達は、子どもの頃

  • 『生き残りし者』 第四章 1節 僕の育った「家」

    僕の育った家は、父が理想とした芝生の庭つき、2階建ての一戸建てであった。僕は小さなころからその芝生の緑を見るのが好きだった。 母は園芸が好きでたくさんの花を育てていた。特にベコニアが好きであった。ベコニアは生命力が強く繁殖力も高い。「何事も根性や」が口癖

  • 『生き残りし者』 第三章 5節 希が語る

    学校の夕方は、ウサギを介したほぼ無言の希との時間であった。希は確かに皆が頭を抱える問題がない「良い子」だが、僕は相変わらず周囲とどこか距離をとり、ウサギをこよなく愛する希が気になっていたので、この時間は貴重に感じた。 希も僕に少しづつ、自分の家庭のこと

  • 『生き残りし者』 第三章 4節 根無し草

    僕は希との時間を過ごした後、自宅マンション帰宅した。マンションって言っても賃貸だ。僕は大学時代から独りだけれど、下宿の安アパートに始まり、社会人になってから何度か引越しをしたが、ずっと賃貸なのだ。 何と言うか、根を下ろしたいけれど自信がないのだ。根を下

  • 『生き残りし者』 第三章 3節 皆とは違う僕

    2学期も中盤になった。希は皆と何かトラブルがあるわけではないし、受け身的だがクラスの他の児童に関わりをもたれるとそれに応えていた。学業も授業態度も良好である。でも、希はふと窓の外に眼をやる瞬間があるのだが、どこかせつなさと孤独を僕に感じさせるのであった

  • 『生き残りし者』 第三章 2節 希とウサギ

    希は父親の転勤のために引っ越しとなり、僕の勤務する小学校に転校してきた。父親は企業の技術系の部門に所属、母は専業主婦であった。子どもは希だけである。 僕はさりげなく、担任として希がクラスになじめるか、どんな児童か気にしながら観察を続けた。希はクラスの

  • 『生き残りし者』 第三章 1節 希

    夏休みが明けて今日から2学期だ。僕は今年は4年生を担当している。「先生、おはよう」「ああ、おはよう」。ランドセルを背負った子ども達が駆け足で通り過ぎる。 職員室に入り他の教員とも挨拶し、自分のデスクに座る。時代的に、もう職場ではタバコは吸えないから、今朝

  • 『生き残りし者』 第二章 5節 再び開いた「穴」

    井筒先生との別れは僕の心の底に大きな「穴」となった気がした。時間が経過し、哀しみが幾分和らいでくると、その「穴」の感覚は、空虚な虚しさにも似たものとなっていった。 思えば僕は、人生の最初から心の底に「穴」が開いていたような人間だったのかもしれない。生来

  • 『生き残りし者』 第二章 4節 先生との別れ

    井筒先生はそういう人だから、クラスに「問題児」とレッテルを貼られた学生を多く見ていた。先生が積極的であったのと、他の教師がさじを投げて先生に頼んだのだろう。 不良学生も実際は家庭環境が悪く、荒れていた子達で実際はいい奴が多かった。ただ誤解されていたり、本

  • 『生き残りし者』 第二章 3節 本気の大人

    井筒先生の風貌は今の学校教育界ではちょっと考えられないオリジナルあふれるものであった。髪形は大人しめのリーゼント。明らかに思春期はかなりの剃り込みを額に入れていたのがバレバレ。空手で学生時代結構上位にまでいったらしい。強面で一見不良教師。でも既述したよ

  • 『生き残りし者』 第二章 2節 井筒先生

    なぜそこまでして僕は難解な教師への道を孤独に進む決意をしたか。もう一つの理由は過去に僕のことを気にしてくれた教師が1人だけいたのだ。名は井筒先生という男性の体育教師であった。中学の時の担任だった。 母の宗教は教義が非常に奇抜で、普通の友人づきあいが出来な

  • 『生き残りし者』 第二章 1節 僕が教員になった訳

    僕は煙草に火を点けた。50にもなれば自分の生い立ちなどかなり整理できている、と思ってはいたが、やはりモヤモヤとした胸焼けに近い気持ちになる。煙を肺に入れ、ゆっくり吐き出す。こうして僕はリセットをする。そういえば、親父はハイライトだったっけ・・・。 気が付

  • 『生き残りし者』 第一章 4節 『哀しきスティグマ』

    DVというのは男女の相互作用である。母に暴力をふるう父は、きっと母以外の女性がパートナーであっても暴力をふるうだろう。 母は皆からは「けなげに耐え忍ぶおしん」のように見られていたが、実際、「お父ちゃんやから(なぐられても)ええんや」とよく本気で言っていた

  • 『生き残りし者』 第一章 3節 僕の母 その4

    母は宗教活動を中心に自分の生活を考えていたので、家が借金まみれであったにも関わらず、常勤の看護師の仕事にはつかなかった。病院の看護師は三交替制がベースであるから、シフト上いつ休みか、いつ、何勤かわからない。病棟にしろ外来にしろグループで仕事をするわけだ

  • 『生き残りし者』 第一章 3節 僕の母 その3

    母の生活の中心、人生の中心は宗教活動とそこに集う信者たちとの交流だった。そこに僕は常にいさせられた。赤子の頃からこうなら普通は洗脳されるであろう。だが、僕は物心ついたときから違和感があったことは既に述べたが、不思議なことに完全には洗脳されてはいなかった

  • 『生き残りし者』 第一章 3節 僕の母 その2

    父が不在時に家を訪問に来たのは、たまたま布教活動に来た、ある新興宗教の信者の女性であった。母はカソリックだったが、引っ越した町にはカソリック教会がなかったため、実は母は困っていたのだった。 母はこだわりがなかったのか、その女性の語りに魅力を感じたのか、

  • 『生き残りし者』 第一章 3節 僕の母 その1

    父の人物像について言えば、職人的な仕事人、子ども好きだがギャンブルなどを優先したために、結果、子育てにあまり参加しなかった、人の良いところもあるが、金銭感覚に乏しく見栄っ張り、母に対してはDV男、人を笑わせるユーモア感覚と、荒れたチンピラ的な不良性を持ち

  • 『生き残りし者』 第一章 3節 僕の父 その3

    夜、父の運転する車の助手席に、たまに乗ったことがある。新興住宅地であるから、夜中は誰もいない。700mか800m信号なしのまっすぐの道があったのだが、そこに差し掛かると毎回、小学生の僕に「スピードに挑戦」とだけ言って、ハンドルを僕に渡すのだ。 直進1本道だから

  • 『生き残りし者』 第一章 3節 僕の父 その2

    父は自分のことを語らない人であったから、母から父のことを聞いたことがある。父は勉学が出来たのか、父の両親(つまり僕の父方祖父母)からかなり期待されていたらしい。無理をして高校から都会に下宿させてもらっていたくらいであったから。しかし、父のギャンブル癖は

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