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BL小説『いつか君に咲く色へ』連載中です。人の感情を色で把握できるDKとその色をもたない同級生のおはなし。ゆっくり恋になっていきます。

『ありえない設定』⇒『影遺失者』と『保護監視官』、『廃園設計士』や『対町対話士』(coming soon!)など。…ですが、現在は日常ものを書いております。ご足労いただけるとうれしいです。

風埜なぎさ
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2014/08/13

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  • 星のなまえ #10

    永崎はゆるりと僕を抱きしめたまま、僕の耳元に言葉を落とした。「峰邨、好きだよ」甘やかな永崎の言葉をかみ砕いて飲み込んで、理解するのに時間がかかった。こんなに単純なフレーズなのに。頭が言葉を飲んだ瞬間、「はぁ?」と、とてつもなくとがった声が出た。永崎がびくっと肩を揺らす。「僕、永崎に好かれる要因がゼロなんだけど、皆無だよ皆無」永崎の自業自得とはいえ厄介者でしかないし、八つ当たりのようにずいぶんひどい...

  • 星のなまえ #9

    『できないこと探し』をしながら、筆頭が進学就職、そのつぎあたりに結婚、という事実に気がついて震えあがったのは図書館に行った日から数えて一週間くらい経ったころだった。それが事実だろう。家族や永崎に一生面倒を見てもらえるはずもなく、そうなると引きこもりニートになるしかない。ニートまでいかずとも、在宅でできる仕事があったにしろ、これといった特技も技能もない僕にできることは限られている。そんな僕と婚姻関係...

  • 星のなまえ #8

    図書館へと僕を導く永崎の足取りは軽い。明るい声で話しかけてくる。「お前、ほんとに本が好きだったんだな」「ついても仕方のない嘘はつかないよ」たまに、僕がなにかをしたいという意思を示すと、永崎は途端に張り切って、明らかにうれしそうな声になる。きょうがその最たる例だ。わかりやすくて笑ってしまう。なんてかわいそうなんだろう。そう思う僕は性格がわるいのだろうか。あの『事故』をきっかけにしてそうなったのか、も...

  • 星のなまえ #7

    図書館に拡大読書器があるらしいということを知ったのは、通院を続けている病院でだった。どんなものかはだいたいの想像しかつかないけれど、試してみたいと思った。永崎に「図書館に行きたい」と、もう冬に差し掛かった冷たい風の吹き抜ける帰り道に言うと「うん、行こう。いますぐ行こう」と妙にうれしそうに返事があった。永崎は平日、ほとんどうちにきている。教室では常に、僕とともに真ん中最前列の席だ。学校内で起きた件だ...

  • 星のなまえ #6

    もういい加減にしなきゃ、これじゃただ永崎に絡んでいるだけだ。そう思うのに僕の言葉は止まらない。「休みになっても星も本もないから退屈だし、なにかこの先、僕の人生に楽しいことってあるのかな。あのとき、外傷で死んでた方がましだった。ねぇ、そう思わない?」かすかな、とてもかすかな震える声がした。「……めん。ごめん。ごめん、なさい」以前の永崎からは考えることもできない、細く頼りない声だった。あっ、と思った。息...

  • 星のなまえ #5

    「……星を見るのが好きだった、本を読むのが好きだった」永崎の背中にむけてぼそっとそう言ったのは、校内でつねに行動を共にするようになってから一か月経ったころのことだった。とくに親しくなるわけでも、口をきく回数が増えたわけでもなかった。永崎にとって僕は枷でしかなく、僕にとって永崎は怨恨の対象でしかない。黒い髪、黒い制服、黒いリュック。全体的に黒い影のようなぼやぼやした人影が、それでもこちらを向くのがわか...

  • 星のなまえ #4

    『事故』後、はじめて登校する日。朝早くに玄関のインターフォンが鳴った。僕には見えない画面越しに、永崎のぼそぼそとした声が言う。『約束したとおりに、峰邨くんを迎えに参りました』両家のあいだで話が決まっていたらしい。永崎の、そんな声を聞くのははじめてだった。いつも陽気で気さくで、クラスの中心にいて、人をひきつけてやまない男子、そんな彼の声が緊張のあまりぶるぶる震えていた。「……きょうくらい、うちで送り届...

  • 星のなまえ #3

    何度目かのパニックと意識喪失のあと、僕は否が応でも思い知る。僕を取り囲む世界は、いままでとは全く違うのだと。ぼやぼやにふやけた世界のなかで、僕はなんとか生きていかなければならないのだと。失明を免れたのは不幸中の幸いだった、と僕を診てくれた医師は言った。それは、何とか見える範囲で暮らしていかなければならないという最終通達で、僕の視界が二度と元には戻らないと遠回しに告げる、残酷な事実を診断するものだっ...

  • 星のなまえ #2

    意識を取り戻した時には、世界の様相は一変していた。強打した頭は何か包帯のようなもので厳重にぐるぐる巻きにされているのがわかる。ずきずきと頭が痛く、ひどく気持ち悪かった。気持ち悪い……そうだ、水が飲みたい。そっと目を開けると、ぼやけた視界がそこにあった。なにもかもがひどくぼんやりしていた。目を開けた僕に気がついた人影も、そっと近づいてくる指先も。「よかった、気がついて。すぐに看護師さんを呼ぶね」そう言...

  • 星のなまえ #1

    ある日突然、僕の世界の輪郭は頼りなく、ぼやぼやにぼやけてしまった。まるで、溶けかけたゼリーみたいに。透明なくらげ越しに、海の底から見た景色みたいに。 * * *『事故』が起こったのは、高校一年の二学期がはじまったばかりの昼休みの教室だった。クラスメイトたちは自由そのものだった夏休みを引きずって、みんなうきうきそわそわしていた。とりわけ、僕が苦手だった男子のグループがそうだった。声の大きな...

  • LITMUS 《最終話》

    終わったあとなんとなく抱き合ったまま、ぽつりぽつりと雨垂れのように会話を交わす。小紅とセックスするようになったはじめのころ、気恥ずかしくて行為のあとにはすぐ服を着ていた。けれどいまではお互いの肌に触れたまま会話をする時間が気に入っている。隣で小紅はさっきからずっと僕の髪をやわらかな手つきで梳いている。こんなふうに僕の髪に触れるのがけっこう好きだと言う。「ルームシェアなんかしたら、僕たち結局セックス...

  • LITMUS #34

    からんだ視線の先で小紅が言う。「ひさしぶりだからかな、碧音、めっちゃえろいな。もう一回、出しとくか?」「いきたい……っ!いかせて、小紅、出したい」めちゃくちゃにせがむと、うしろをうかがっていた指をなかでばらばらに動かされて、かかとがシーツを蹴る。放出の瞬間は頭が真っ白になるくらい気持ちよかった。ふうふうとあがった息を整えていると、小紅が苦笑する。「夢よりえろいわ。何回も、碧音を抱く夢を見たよ」指を引...

  • LITMUS #33

    笑う僕を小紅が怪訝そうに見おろす。「どうした、碧音」「いや、このアングルはひさしぶりだなぁと思って」ばか、と僕をいなすと熱心なキスを再開した小紅は、その合間に器用に僕のパーカーを脱がせてしまう。その下のTシャツをたくし上げられじかに素肌に触れられて、それだけでどうしようもなくふるえた。小紅の身体を自分の身体で受け止められるのがうれしかった。唇で首筋をなぞられ、耳朶を食まれ、その性急さに小紅の余裕の...

  • LITMUS #32

    翌日、約束の時間のきっかり15分まえに小紅が家にやってきた。玄関で迎えるとひどく神妙な顔をしている。「小紅」顔を見ることができる。名前を呼ぶことかできる。たったそれだけのことが、いまはこんなにうれしい。碧音、と僕を呼ぶ小紅もおなじ気持ちだったらいいと思った。ぎゅっと上がり框で抱きすくめられて、胸が高鳴る。抱きしめられた身体があたたかい。僕の部屋のローテーブルのまえにきちんと正座した小紅は「碧音、悪...

  • LITMUS #31

    みじかく息を吸い込んだ。自分の言葉と心の精いっぱいで、細大漏らさず小紅に伝えたかった。「僕、小紅と離れるの、やっぱりいやだよ。わがままだってわかっていても」小紅の選択肢を奪っているよね、僕がいなければ小紅にはもっとちがう人間関係や恋ができたはずなんだ。いろいろなものを断って、いままで小紅は僕のそばにいてくれた。それをわかっているのに、そばにいたいと願ってしまうことだけ、許して。考え考え、言った。通...

  • LITMUS #30

    そんな日々をなんとか乗り切っているさなかの金曜日の夜だった。ふいに目が醒めた。なんだろう、とてもいやな予感がする。ぞわぞわと背中を得体のしれないものが這い回っているような。普段はあまりしないけれど、家族に何かあったら後悔してもしきれないので、意識を集中させて、なにが起きようとしているのか感覚をさぐる。小紅。小紅の家。火事。そこまで直感をたぐったところで飛び起きた。枕元のスマホをひっつかみ、震える指...

  • LITMUS #29

    翌日、朝のホームルームのまえに、ぎりぎりで駆け込んできた小紅と目が合った。すっと目を逸らす直前、小紅の泣き出しそうな瞳を見た気がした。それでも、昼休みになってもいつものように小紅が僕の前の席に陣取ることはなく、小紅と僕はめいめいの席で弁当と購買のパンを食べた。昼食を終えて、イヤフォンを耳に突っ込んで、音楽を聴きながら机に突っ伏す。なにも見たくなかった。なにも聞きたくなかった。ひとりで購買のパンを食...

  • LITMUS #28

    どうやって家まで帰り着いたのか覚えていない。むしろ、家まで帰り着けたのが奇跡だとすら思えた。小紅が、僕から離れたいと言った。一緒にいて楽しいのに。顔を見れば穏やかな気持ちになれるのに。セックスすればあんなに気持ちいいのに。僕を受け止めてくれていたのに。自分のなかのどの感情を選べばいいのかわからなくて、着替えもせずにベッドにもぐりこんだ。おなじ大学に行きたいって言わなきゃよかった?ルームシェアなんて...

  • LITMUS #27

    「小紅、合格したらルームシェアしようよ。一緒に暮らそう?」「ちょっとびっくりなんだけど、碧音って俺のこと、けっこうどうしようもない感じで好きでいてくれてるよな」帰宅途中に自然公園に寄り道して、いつもの東屋で話していた。小紅の面食らった表情がおかしくてくすくす笑うと、照れたように、どこか困ったように「ずっとこのまま碧音と一緒にいられるのかな」と小紅が視線を遠くにさまよわせながら言った。どこか遠い声を...

  • LITMUS #26

    夏休みがあけて3日後の朝礼で、進路希望調査票が配られた。調査票はただの紙なのに、なんだか生殺与奪の権を握られている気がする。理不尽だ。昼休みになると、プリントをひらひらさせながら小紅が僕の前の席にやってきた。小紅にとって紙切れは紙切れにすぎないようだ。碧音はどうするの?と尋ねられる。小声でぼそぼそ話しあう。「いまのところは、四年制大学進学希望にしようかなって」「だよな。一応、進学校だしな」小紅はす...

  • LITMUS #25

    二泊三日で何回したのか正直覚えていないけれど、一日でこんなにできるのかと驚くほどの回数、小紅に抱かれた。小紅に導かれるまま、様々な体位を試したし、つながったままで二回目に突入することもあった。肝心の夏期講習の授業中はほとんどすべて沈没して過ごしてしまった。ほんとうに名残惜しそうに夏期講習(というか実際にはお泊り重視なのだけれど)の終わりを迎えた小紅が帰っていくのをみて、僕ももう夏休みが終わってしま...

  • LITMUS #24

    身体じゅうにキスをされる。なんども「好きだよ」とささやかれる。ベルトを外され、下着ごとズボンを脱がされて性器に触れられるころには、ひさしぶりに身体と心に小紅が与えてくれる快感のせいで眦に涙が浮かんでいた。いやらしい音を立てて前を扱きながら、ローションをまとった小紅の指が後孔をうかがう。なんどしてもこの瞬間は緊張するのか、小紅がタイミングをはかっているのがわかる。挿り込んできた小紅の指が、僕がなかで...

  • LITMUS #23

    その日を境に、小紅とはしょっちゅうセックスするようになった。どちらかの両親が家を空けていればすかさず連れ込んだり連れ込まれたりした。小紅の家で階下に小紅の母親がいるときにそういう雰囲気になってしまい、ふたりとも我慢できずに必死に声を殺して行為に耽った日すらあった。僕たちがどっぷりと快楽に溺れているあいだにも季節はめぐって、梅雨がきて、ちゃんと夏がきて、期末考査が終わるとすぐに夏休みがはじまった。僕...

  • LITMUS #22

    かばんのなかをさぐっている小紅の背中に声をかける。「小紅、単語帳を学校に忘れてきてる」「えっ?」「たぶん、机のなかに入ったまんまだよ」小紅が目をしばたたいた。「そっか、うん、ありがとう。とりあえず、あしたの範囲は碧音の単語帳のコピーとらせてもらっていい?」うなずいて立ち上がる。財布を持った小紅と連れ立って、借りた傘をさしてコンビニへ向かう。キッチンペーパーががんばってくれたのか、スニーカーの水濡れ...

  • LITMUS #21

    「あの、あのさ、動いてもいい?」小紅がどこか不安そうに、おっかなびっくり言う。機械仕掛けの人形がしゃべっているみたいだった。いいよ、と答えると、控えめな抽挿がはじまった。僕の喉からは言葉を結ばない声があふれる。「あっ、あぁ!いい……っ、やぁ、あっ、あっ!」小紅が僕の目を覗き込んでくる。かすかに細められた目が色っぽくて、まなざしにずくずくと感じてしまう。強い律動も、浅いところの動きも、なにをされても気...

  • LITMUS #20

    「碧音、脚、ひらいて」熱を帯びた小紅のその言葉に逆らえようはずもなく、膝を立てておそるおそる脚をひろげる。性器より奥まったところにぬめる感触があって、小紅が僕の後孔に指を忍ばせてくる。「なに、してるの……?」「俺が碧音とセックスする準備。男もちゃんとなかに気持ちいいところがあるんだよ」僕が出したばかりのものをまとった小紅の指がそっと僕の内腑をさぐる。痛みより違和感でそれを押し出そうとする身体を深呼吸...

  • LITMUS #19

    ふたりして小紅の部屋にもつれ込むように飛び込むと、背中をドアに押し付けられ、いままでとはまったく違う温度のキスをされた。小紅が僕の唇を舌先でなんどもなぞる。ひらいて、とせがんでいるようだった。うすく開くと小紅の舌が口腔に忍び込んでくる。舌を絡め合うようにして一心に口づけられ、気持ちよさにくらくらして身体の重心が危うくなる。小紅の手を借りながらベッドまでたどり着くと、慎重に押し倒された。小紅の体重を...

  • LITMUS #18

    玄関先ですこし身震いしながら「寒いな」と言う小紅に、そうだね、と返すと脱衣所まで連れていかれる。「服脱いで、とりあえず衣類乾燥機に入れといて。替えの服とってくるな」と言った小紅が脱衣所を出ていった。階段をのぼっていく足音。きっと小紅の部屋にむかったのだろう。とりあえず脱いだアンダーシャツや下着類はどうしたものかと考えていると、自室から戻ってきた小紅が「碧音、ぶかぶかだったらごめんな」と言いながら脱...

  • LITMUS #17

    小紅も帰宅部なので、告白の翌日からどちらから誘うでもなく学校帰りにこっそり寄り道して、徒歩15分くらいの自然公園でささやかにデートするようになった。公園にいくつか設けられた東屋で手をつなぎながら話したり、人目を忍んでキスしたり、たわいもなくかわいらしいデートだった。指をからめて握るのも、ごく軽いキスも僕をどきどきさせるには充分すぎる。そのたわいもなさやかわいらしさに逆にリアリティーがあって、小紅は...

  • LITMUS #16

    不安そうに指のあいだから目をのぞかせている小紅を見つめた。心を声にするのが下手な僕なりに、考え考え告げる。ばらばらのビーズに糸を通すように、ひと針ずつ刺繡を施すように、間違えないように、慎重に。「小紅、僕のことを好きでいてくれてありがとう。気持ち悪いなんて思わない。僕だって小紅が好きだよ、ちいさいころから特別な意味で好きだった。小紅がいればなにもいらないくらい」「え?」「小紅が女の子に告白されて断...

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