千一夜 第五夜 華子

玄関のドアの鍵を閉めて、シャワーを浴びた。自分の体が汚らわしい。何度も何度も、ボディーシャンプーを体にすり込み、全身を洗い続けた。パジャマに着替え、ベッドに横たわる。眠たいはずなのに、眠れない。身体が休みたいと悲鳴を上げているはずなのに、 目が冴えきって

千一夜 第四夜 華子

私の母は、『華子ちゃんのお母さんは美人でいいね』と、周囲からよく言われる女性だった。美しい母は、幼い私を抱きかかえその膝に乗せ、「可哀想に、華子のお鼻があと1センチ、 いえ5ミリでも高けりゃねぇ。 華子はお父さんより、お母さんに似ればよかったのに・・・

千一夜 第三夜

ふと気付くと、いつの間にかバーのカウンターで眠り込んでいた。 肩には、ブランケットがかかっていた。「あら、起こしちゃったかしら」女店主が眠ってしまった私にブランケットをかけた途端、どうやら私が目を覚ましたようだ。「すみません。 飲みながら眠ってしまうなん

千一夜 第二夜

女店主と談笑している内に、いつしかまどろんで私は眠ってしまったようだ。眠る間の夢は、過去の記憶ばかりだ。ファンタジーの世界を楽しむような夢は、見たことが、ない。夢の中に、一年前に別れた女が現れた。名前は、翔子と言う。

千一夜 第一夜

私は、静かに怒っていた。腹の底ではたぎるマグマのように、血流に乗せて全身に怒りがみなぎっているようだ。 何に対して怒っているのかというと、自分でもよく分からない。 何に対し・・・・・・女に対して、か。女なんてのはろくなもんじゃない。そうだ、そもそもはあい