母さんが好きでたまらない、ただそれだけの話。ライトなラノベコンテスト参加作品。
若々しい母さん、孤独な姉、そして僕の三人家族。普通の家庭に見えて、僕たちには大きな秘密があった。家族の不思議な繋がりを描いたホームストーリー。
ララノコン応募二作品目の本作も完結することができました。このブログの管理人、そして『母さんが好きでたまらない、ただそれだけの話。』作者の「すみやき」と申します。この記事の上の方にも書いてありますが、大学時代に集英社さんからライトノベル系の賞をいただき、そ
◇ やっぱり、キスの感触っていうのは人によって違うのだと思う。母さんの唇の暖かさは姉さんのそれとまた違ったものがある。 僕は、今まで愛した女の人は二人だけで。今日はその愛した女の人二人と唇を重ねた。 この感情はなんだろう。幸福とは違う。欲情とも
それで彼女は急に僕の前からいなくなった。「彼は私を愛してくれた。娘として……。相変わらずの強面で私をおっかなびっくり接してくれた。ぶっきらぼうだけど優しかった。私は思ったの。いつか大きくなったら――。彼と出会った歳になったら、生まれ変わりであることを告
珈琲を飲み終わった後で本当によかった。もしもまだ飲み終わってなかったら口の中の珈琲を思わず吹き出してしまっていただろう。「前世って信じる?」 僕は何も答えなかった。黙ってマグカップを口元に傾ける。もう、珈琲は入ってないのに。 ただ、口元を姉さんに見られ
◇ 日曜日。 部活も休みだった僕は、ベランダで洗濯物を干していた。洗濯物、洗い物、掃除は僕の仕事だった。特に抵抗なくこの作業を続けられるのは、生前もこれらの家事は僕の担当だったからだ。 洗濯物を全て干し終わった僕は、縁側に座ってぼんやり空を見上
いつも明るく振る舞ってくれる妻を見るのが逆に辛かった。 元々、引っ込み思案で内気だった妻も僕が死んでからこんなにも変わってしまった。その原因は紛れもなく僕であり、無理をしているとわかるのはおそらく僕だけだ。 だから、僕はなるべく妻――いや、母さんに苦労
◇ 生まれ変わり、なんて物語の中の話だと思っていた。 前世、とか輪廻転生、とか、そんなものはありえないと思っていた。 だって、そうじゃない。人は死んだらそれで終わりだから。体を焼かれて骨になって、それでおしまい。 死んだ後の世界もない。天国?
◇「母さん、ご飯できたってー」 二階に上がって母さんを呼ぶ。 高校生の姉さんと中学生の僕、そして会社帰りの母さんがそろって夕食をとるのは決まって夜の八時だ。 一般的な家庭と比べたら遅いかもしれないけど、高校生の姉と部活帰りの僕と仕事終わりの母親
なんでかわからないけど、母さんからはいつもいい匂いがする。そもそも、女の人からはいい匂いがするものだと思う。 なんでいい匂いがするのかがどうしても知りたくて、一回クラスメイトの女子に聞いたことがある。「女の子っていい匂いするよね」 僕がそう言うと女子は
◇ 酔いつぶれた母さんを部屋に運ぶのは僕の仕事だった。母さんはとても軽い。だからいわゆる「お姫様だっこ」が可能だ。 一階のリビングから二階の母の自室までのお姫様だっこはいい筋トレになる。おかげで普段運動をやっていない僕が学校の体力テストでそこそこ
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