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かみつれ http://kamitsure87.blog.fc2.com/

草木栞です。 オリジナルBL小説を書いています。 よろしくお願いします。

草木栞
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2013/10/06

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  • 2人1

    何もしなくていいと言うのに、淡雪は何かしたくて堪らないらしい。しかし、やってはみるものの、不器用でいまいち上手くいかない。だから常盤は目が離せない。折角怪我が治ったというのに、次々に新しい傷を作ってしまう。黙って見ていることが出来ず、結局一緒に家事をすることになる。面倒だとは思わない。今までやってきたことだ。気を揉むことは増えたけれど。 それにしても、見ていて危なっかしい。少し目を放した隙に、淡...

  • 手紙2

    今日は天気が崩れ、雷雨になる。雷鳴は怒りを帯びた咆哮のように響き、窓に叩き付ける雨が、不安を煽る。淡雪は強い光と音に身を竦めているが、それでも窓の傍で外に視線を向けている。「そんなに怖いならこっちにおいで」と、桜花は淡雪の身体を引き寄せる。そのまま大人しくしているのは、余程怖いからなのだろう。 「そんなに怖がらなくてもそのうち止むさ。何も起こりはしない」悪天候ではあるが、空気は淀んでいない。邪悪...

  • 手紙1

    少し戻ります。 この山は平和だ。静かで、秩序が保たれている。元々豊かな山なのだが、燈火と桜花がいることで、より良い状態を維持している。この平和は、桜花にとってはいささか退屈なものだった。しかし、数年前、その退屈から桜花は解放される。眺めるだけだった世界。それは、突然空から降って来た。 淡雪が此処で暮らすようになってから、季節は少しずつ動き、短い春は足早に過ぎようとしている。淡雪は朝日と打ち解けたよ...

  • 家6

    今日も何事もなく終る筈だった常盤の家に、淡雪が居る。目の前でちょこんと座っている。家に入れたのは自分なのだけれど、常盤は戸惑っている。それを察してか、淡雪も何か言葉を探しているようだ。 「あの…常盤さん」呼ばれて、それが自分の名前だと気付く。淡雪を見ると、服の裾を掴んで俯いていた。常盤の顔は見えていない。「僕は、此処に居てもいいですか?」「俺と居ても良いことは無いぞ」「いいえ。僕、助けてもらった...

  • 家5

    常盤の一日は、とても静かに過ぎていく。 畑仕事をして、山に薬の材料になるものを採りに行く。その後、採集した材料を乾燥させ、調合し薬にする。そして、月に何度か出来た薬を街まで売りに行く。それが常盤の仕事だ。 街に行くとき以外に、常盤が人と話をすることは殆ど無い。燈火達に会いに行くことも、頻繁にあるわけではない。誰とも会話をせずに一日を終えるということは、よくある。そんな黙々とした生活に、常盤は満足...

  • 家4

    燈火は来客があり、席を外す。常盤としては、桜花と2人でいるのは何処か気分が重い。しかし、話をするには2人きりの方が都合がいいかと我慢する。桜花はそんな常盤の無言の逡巡を察して、口を開くのを待っている。「頼みたいことがある」と切り出した常盤に、桜花は「珍しいな」と言った。「お前の頼みなら聞かないわけにはいかないな。燈火と朝日も世話になっていることだし」桜花は機嫌良さそうに笑う。常盤にとっては、その...

  • 家3

    脱衣所で朝日が来ている服を脱いでいる。帯や紐を解き、肌が見えると、其処には思ったよりも大きな痣があった。首から胸にかけて、血のような色のそれは広がっている。どうしてできたものなのか、淡雪は聞くことが出来ないだろうと思う。 服を脱いだ朝日は、兎の姿の淡雪を軽々と抱き上げる。体温は無く、胸の近くに居ても、鼓動を感じることが出来ない。この身体の仕組みは、淡雪のものとは異なる。精霊が存在するということは...

  • 家2

    「常盤、ありがとう」「いや」朝日の言葉に素っ気なく答えるその人が「常盤」という名前だということを、淡雪は初めて知る。「どうして兎になってるの?」「歩くのがしんどそうだったんだ。途中転んで泥だらけになった」「じゃあ、お風呂入ろう」朝日が言うと、何処からか燈火も現れて「それがいい」と言った。「燈火、桜花は今何処にいる?」「桜花なら、もう帰って来る」燈火の言葉に、朝日は嬉しそうな顔をした。「桜花様帰っ...

  • 家1

    どうせ迷うだろうし、身体のことを考えても1人で行かせるわけにはいかないだろうと、常盤は淡雪を送って行くことにした。今日は何の予定も入っていない。 昨夜の雨で、道は大分ぬかるんでいる。足を取られながらよちよち歩く淡雪に「ちゃんと歩けるか?」と聞くと「大丈夫」と答えるから、気にせず歩いていたら、いつの間にか居なくなっていた。振り返ると転んで泥だらけになっている。もう「大丈夫」と言われても信用できない...

  • 4周年です。

    ゴールデンウィークですね。私はひたすらゆっくりしたいと思っているのですが、皆様はいかがお過ごしですか?気が付いたらこのブログは4周年を迎えていました。今年は、更新が滞っている間に随分過ぎてしまいました。うっかりしていました。今回の話も、更新できないでいる為に全く進みません。キャラクターも出揃っていません。しかし、かなり先のところまで考えていて、長く続ける予定なので、あと1年くらいは続けたいと思って...

  • 晴れた朝

    常盤が目を覚ますと、淡雪はまだ眠っていた。もう朝になっている。日差しが温かそうだ。自分もあれから随分寝てしまったのだと気付く。 動こうとするけれど、淡雪に服を掴まれていて動くことが出来ない。どうしたものかと考えていると、淡雪もぼんやりと目を覚ました。 目をぱちぱちさせて、はっとしたように常盤を見ると、さっと顔を赤くした。「起きたなら放してくれないか?」「…ごめんなさい」「よく眠れたか?」「はい…あ...

  • そこは、薄暗くて狭い所だった。寒くて不安で、何処からかすすり泣くような声が聞こえてきた。1人ずつ居なくなり、また連れて来られる。自分の番はすぐにやって来る。人間が何人かで話をしている。うんざりした声。もう1人も同じ調子で言葉を返す。イライラした人間の手は怖くて、噛み付いた。すると、怒鳴り声を上げながら蹴り飛ばされる。怒りの感情が流れ込んでくる。怖い… 同じ部屋で布団を敷いて寝ている淡雪が、苦しそ...

  • 町外れの家3

    夕食を口に運ぶ常盤に続いて、淡雪もスープを一口飲む。「美味しいです」と言う淡雪に、「毒でも入ってると思ったか?」と常盤が聞くと、淡雪は一気に顔を曇らせた。どうも正解だったらしい。 「僕は、人間に捕まって…それで…」 淡雪は、ばらばらになってしまった家族を探していた。しかし、人間に騙されて何処かに連れて行かれてしまったらしい。「其処には、僕みたいな人が何人か閉じ込められていたみたいです。1人ずつ何処...

  • 町外れの家2

    常盤が溜め息を吐いて部屋を出て行っても、淡雪が顔を上げることは無い。土と草のにおい。それから雨の音。強く降っているようだ。まるで、外に出てはいけないと言われているように。 暫くすると部屋に人の気配がして、小さな淡雪を覆うように毛布が掛けられた。「俺が怖いか?」優しさを感じる声ではない。淡雪が正直に頷くと、溜め息を吐く気配がした。「お前に何かをするつもりは無い。疲れた身体で雨に濡れるよりはいいかと...

  • 町外れの家1

    慣れない山の道を散々歩き回って、やっと開けた所に出た。よく晴れていた空には雲が広がり、空気も冷たくなり始めている。日が落ちてくれば、もう暗くなるばかりだ。 何とか山からは下りることが出来たようだが、迷って歩き回っているうちにすっかり体力を消耗してしまった。それでも淡雪はふらふらと歩き続ける。すると、小さな家を見つけた。大きな庭がある。緑色の庭。畑なのだろうか。そう思いながら見ていると、後ろから声...

  • 常盤

    大分身体の自由も効くようになり、表で来るかもしれない人を待つ。そうしていれば、迎えに来てくれるのではないかと思って。 椅子に座り、午後の日差しに淡雪がうとうとしてきた頃、誰かがやって来た。知らない人間の男性だった。その人は、淡雪に気付いて口を開いたように見えたけれど、何かを言うのを待つことも無く、淡雪は逃げ出してしまった。 彼は、兄と同じにおいがした。土のにおい。大地と共に生きている人のにおい。...

  • 兎と癒しの山7

    「燈火様、今日は此処で淡雪と寝てもいい?」「淡雪が良いなら」「燈火様も」「私も?…構わないかい?」燈火の問い掛けに、淡雪は頷く。それを見て、「布団持って来る」と、朝日は部屋から出て行った。 「可愛いだろう?あの子は」視線を戻すと、燈火は青年の姿に戻っていた。「私の宝物なんだ」燈火は目を細め、微笑んでいる。兄もそうだった。彼も、いつも優しい目をしていた。宝物のような時間だった。此処に来る間、誰かの...

  • 兎と癒しの山6

    道具を片し終えた朝日に、「ゆっくり休んでね」と言われると、独りになることが途端に心細くなる。留まってほしいと思い、立ち上がろうとする朝日の手を掴むと、不思議な顔をされる。 「ごめんなさい。あの…」「どうしたの?」「あの…もう少し…」「傍にいてほしい」と言ってもいいだろうかと考えて口籠っていると、朝日は淡雪に顔を寄せて「一緒に寝る?」と聞いた。 「1人は寂しいから」頷くと、頭を撫でられる。そうすると...

  • 兎と癒しの山5

    食事が終わり、淡雪は朝日と向き合っている。「脱いで」「恥ずかしいです」「身体拭けない」「自分で…」「痛いのに?」進まない会話が続く。確かに腕を上げるのは痛いが、あまり知らない人に裸を見られるのは、どうしても恥ずかしい。朝日は淡雪の身体を拭こうとしているだけなのだけれど。 淡雪は、自分の白くて年よりも幼い身体を気にしているのだ。しかしその思いは届かず、朝日はふわふわと湯気の立つタオルを構えている。...

  • 兎と癒しの山4

    料理が並ぶと、食事が始まる。温かい料理が嬉しくて、淡雪は手を止めることなく食べ続ける。ふと気づくと、2人に見られていた。ふっと笑われて恥ずかしくなる。 「美味しいかい?」「…はい。凄く」「そうか。良かったな」後半の言葉は、燈火の隣に座る朝日に向かって言ったようだ。燈火は、朝日の頭を撫で、撫でられた朝日は嬉しそうにしている。朝日が笑っているところを始めて見た。幼く見える淡雪よりも、朝日は更に幼い。...

  • 兎と癒しの山3

    淡雪が次に目を覚ますと、辺りは暗く、ぞっとするほど静かだった。恐ろしく思うけれど、勝手のわからない場所で、明りが何処かももわからない。身体を動かすと、前よりは辛くないような気がした。 せめて明るい所へ行きたい。誰か居ないだろうかと身を捩り起き上がろうとすると、細い明りが入って来て、朝日が顔を見せた。ふっと明かりが点いて、辺りが明るくなり、ほっとする。 「起きた?」安心したような、不安を含んでいる...

  • 兎と癒しの山2

    「燈火様」朝日に呼ばれて、燈火は声のする方へ視線を向け、身体を少し屈める。「淡雪は、常盤の弟?」「そんなことは、何も言っていなかったけどな」「違うのかな?」「淡雪が勘違いしてるのかもしれない」「…そうだったら…」目を伏せる朝日を見て、燈火も困惑を顔に浮かべる。淡雪の身体に付いた傷は、新しいものばかりではなかった。火傷のようなものもあり、明らかに付けられたものだ。 酷い傷を負い、置き去りにされ、此処...

  • 兎と癒しの山1

    夕焼けが迫る、山へと続く道。深い影の中に、男は、黒い塊を見つけた。ボロボロのゴミか何かにしか見えなかったのだけれど、どうもそうではないらしい。持ち上げてみると、確かに温かい。動物だ。かなり弱っているようだけれど、まだ息をしている。 男は、両手に納まってしまう程小さなその動物を、服に血が付くことも構わずに抱えて歩き出す。このままにはしておけば、野生の動物に襲われるかもしれない。そうでなくても、ぐっ...

  • 祈りの声、願いの形

    ファンタジーを書きます。いつまで続くかわかりませんが、出来るだけ長く続けたいと思っています。続き物ですが、タイトルを小まめに変えてみる予定です。カテゴリは「ファンタジー・SF」の中の『祈りの声、願いの形』になります。和風ファンタジーを目指します。既存のファンタジーや伝承、民族研究などは、あまり調べていません。参考程度です。私の都合のいいような設定にしていますので、その点はご理解いただけたらと思います...

  • 更新について。

    皆様こんばんは。もう2月になりますね。寒いですね。これからは花粉も飛んでくるらしいですね。花粉症でない私にはいまいち実感のない話ですが。これからの更新の話をします。1年間くらいは、今迄よりも更にゆっくり、不定期に更新していきたいと思います。1週間おきになるかもしれませんが、調子が良かったら次の日にも更新できるかもしれません。時間も、朝にはならないかもしれません。それから、もしコメントを書いて頂いた...

  • あとがきなど-冬の話-

    暑い夏が終わり、寒い冬が来ました。夏で満足するつもりで作った話でしたが、もう一つの視点でも書きたくなり、ならば冬にと、どんどん長くなってしまいました。もう少し書くことが出来そうですが、これで終わりにします。真冬に温かい話をと思い書きました。大きな毛布のような、作りたてのココアのような、安心できる居場所のような、そんなものを目指していました。今回だけでなく、いつもそうであればと思っています。今回も読...

  • バレンタインの話8

    「そうだ。お前にプレゼント用意したんだ」「え?そうなの?」「食事御馳走してくれるって言うから、俺も何かと思って…。何か渡すタイミングずっと逃してた」「嬉しいな。何?」「明日でいいか?今日はもう眠い」「うん。楽しみにしてるよ」 俺の為に敷いてくれた布団に入り、2人で話をしている。「もうちょっと」と言って潜り込んできた真澄は、「涼さんが寝たら戻る」と言っていたから、朝には隣には居ないのだろう。 懐か...

  • バレンタインの話7※

    このページには、軽い性的な表現があります。閲覧の際は注意してくださいますよう、お願いいたします。 キスを重ねているうちに、手が服の中に入って来て、肌を撫でる。「真澄…駄目」「あんまり大きい声出さなきゃわかんないよ。親はテレビ見てる時間だし、妹は多分起きてられなくてもう寝てる」それでもと思う俺に、真澄は「心配しないで」と言う。「ちょっとだけで我慢するから。今度会ったらいっぱいしよう」同意し辛い提案に...

  • バレンタインの話6

    真澄の部屋に行くと、「とりあえずこっち」と、ベッドの中まで引っ張られる。懐かしい部屋の中を見回す余裕も無いままに布団を掛けられて、抱き締められてしまえば、逃げることも出来ない。「真澄…」「大丈夫。誰も勝手に入って来ないから」真澄のにおいのする布団の中は温かく、抜け出す気など直ぐに溶けてなくなってしまう。 「雪がさ、降ってよかったと思ったんだ」「どうして?」「涼さんに来てほしいと思ってたから」「え...

  • バレンタインの話5

    真澄の家に着くと、挨拶もそこそこに風呂に入れられた。久しぶりに会った真澄の妹は、こちらを窺いつつも真澄の雪を払おうと手を伸ばしている。仲の良い兄妹で羨ましい。俺にも、もし兄弟が居たら、仲良くすることが出来ただろうか。真澄達のように、大切に思い合うことが出来ただろうか。それとも、やっぱり上手くいかないのだろうか。一人っ子の自分には、きっと永遠にわからない。 真澄の母親は、色々と世話をしてくれようと...

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