Greyhound&Tomas-3-

最初のテンションが嘘のように彼は目を閉じて、眠りに着いていた。その脇にはトマト型のクッションを大事そうに抱えられている。僕は幾分か落ち着きを取り戻して、音楽と…

Greyhound&Tomas-2-

「よう、お前中国人か？」トーマスはそう聞きながら、スボンのポケットに手を忍ばせていた。僕は同じ日に2回中国人に間違えられたショックと、突然の質問への反射の遅れ…

Greyhound＆Tomas-1-

数時間後、僕はボストンに向かうバスの中にいた。僕が乗り込んだのは『グレイハウンド』という会社のバスだ。アメリカを長距離移動する人々にはかなりメジャーな会社で、…

バッファロー−2−

バッファローの街は、冬の張りつめた空気の中にもゆっくりとした時間が流れていた。バスの運転手の言う通り、5分ほど歩くと、大きな施設が眼前に現れた。バスターミナル…

バッファローー1−

アメリカ側の国境の街、バッファロー。日本ではあまり知名度のない街だ。そして、僕がアメリカで初めて訪れた街でもある。たった橋一本を渡っただけで、眺める景色に特別…

アメリカ国境ー臆病な姿勢と考察ー

橋を最後まで渡ってから、僕は一度だけカナダ側の光景を眺めた。写真を一枚だけ取る。シャッターの乾いた音が風に掻き消されて、デジカメの画面には無惨に切り取られた映…

ナイアガラフォールズー2ー

滝の音は一定のリズムを刻む鼓動のようで、僕はどこか心地よさを覚える。日本のそれとは確かに規模は違う。それでもその恒久的に続く自然の営みの音色は、人間がはかるこ…

ナイアガラフォールズー1ー

バスはナイアガラフォールズ近くの乗降場にゆっくりと停車した。激しく降っていた雪はその勢いを少し弱めている。僕は車掌にチケットを渡し、バックパックを背負いバスか…

IN THE BUSー存在意義とコーヒーフレッシュー

バスはどこまでも続くような高速道路の上をひた走っている。人工物を失った景色をしばらく眺めていると、永遠に同じ場所を歩き続きているような錯覚を覚える。そして僕は…

IN THE BUSー回想と考察ー

僕は国境に向かうバスに乗っている。旅立つ前の日。日暮れ頃、ローレンスウェスト51にはとても静かな時間が流れていた。僕は彼らのために最後の料理を作った。蓋の壊れ…