フラジャイル。 (4)
その宵のこと、真弓は学校から帰宅した後、部屋に入ったきりだった。母の陽子は台所にいていらいらしていた。真弓を塾に送って行く時刻が近づいている。その前に陽子は真弓に、かるい食事をとらせようともくろんでいたから、真弓がてきぱきと動かないと計算どおりにものごとが運ばない。思いあぐねて、陽子が階段下から、常ならぬ声を上げた。「まゆちゃんどうしたの。お母さんってもうたいへん。わたしこと助けると思ってさっさと降りて来てよお」途中で、悲鳴に変わった。それでも、しばらく経っても、階段を降りる真弓の足音が聞こえない。陽子は頭をかかえた。感情が高ぶってきて、セットしてもらったばかりの頭髪が、あやうくぼさぼさになるところだった。思わず、ダイニングのソウファにすわりこみ、どうにかして自分の心を穏やかにしようと試みた。(なんとかし...フラジャイル。(4)
2024/05/28 13:40