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2013/05/26

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  • 更新停止

    「note」に移住することにしました。移住先は「https://note.com/morinoakira」です。こちらのブログは更新停止します。ありがとうございました。...

  • 無人駅にて

    秋の暮れ、田舎の寂れた無人駅。夕闇迫る小さな待合室のベンチに、幼い少女が一人、腰かけている。 「何してるの?」 「おかあさん、まってるの」 「お迎えかな?」 「うん。ここでまってなさいって」 「そうなの。偉いね」 少女はうれしそうにこちらを見上げ、にこりとした。座ったまま、小さな足をぶらぶらさせる。薄暗いなか、細い足がはっとするほどの白さを浮かばせる。 待合室の汚れた窓から外を見上げる。空は夕焼...

  • 緊急速報

    突然、脳を刺すような電子音が大音量で鳴り響いた。驚いて反射的に立ち上がる。机の上のスマホが悲鳴をあげて震えている。緊急速報だ。 地震か!? 急いで鳴動するスマホを掴みあげ、操作する。 予想通り画面には「緊急速報」の文字。だが、 「なんだ、これ」 地震ではなかった。津波でも、大雨や暴風などの気象災害でもない。 「警報 太平洋にヒ発生。 強いシに備えて下さい ...

  • おかえり

    Aさんは事故物件に住んでいる。 そこは、とあるアパートの一室だ。単身者向けで少々狭いものの、築年数のわりには綺麗で、収納等が行き届いた造りの、交通アクセスも悪くない、住みやすい物件だそうだ。 とはいえ、「住みやすい」のはAさんの主観である。人によっては重大な瑕疵といえるものが、その事故物件には存在した。 「出る」のだ。 もちろん、通常では有り得ないものが。 夜、Aさんが会社から帰宅する。アパ...

  • ラクガキ(星を見る)

    寝ながら星を見られるというので、友達の家に泊まりに行った。   「こうやって仰向けに寝るでしょ」 電気を消した寝室。並べた布団に横になり、友達と一緒に暗い天井を見上げる。 「上を見て。そう。でも、目で見るんじゃないの。目じゃなくて意識で見るような感じで。意識を上に集中させて……。上を見るの。ううん、天井じゃなくて、もっと上。屋根じゃなくて、もっと上。空よりも、もっと、もっと上。そう、星がた...

  • 深夜放送

    最近、夜中に目が覚めてしまうことが多い。 大体、深夜三時から四時。そのくらいに目が覚める。 覚めたからといってやることもない。わざわざ起き出して何かするのも面倒だ。が、しかし、再び眠りにつくのも、これがなかなかに骨が折れる。 考えた末に、枕元にラジオを置いた。夜中に覚醒すると、スイッチを入れる。音量を小さく絞って囁くような声を楽しむ。こんな時間でも自分の他に起きている人間がいるという安心感。聞く...

  • 天袋の鬼

    私は天袋が怖い。 私と妹のいる子供部屋には天袋がある。クローゼットの上にある小さな収納場所。それが天袋だ。クローゼットの一部じゃない。クローゼットとは別の空間で、ちゃんと扉も別につけられている。普通は押し入れの上にあるもののようだけれど、家ではリフォームのときにお父さんが「絶対に必要だから」とクローゼットの上にわざわざ残した。 その天袋が、私は怖い。 天袋には鬼がいる。うんと小さい頃から、...

  • 曙光

    夜明け近くの空気の冷たさに震え、我に返った。 あれ、どうしたんだっけ? 見回すと、雪の積もった境内に立っている。 ああ、そうだ。新年だから参拝に来たんだった。 白みつつある空の下。人気がなく、静まり返った神社。誰もいない小さな拝殿に登り、賽銭箱に小銭を入れ、手を合わせた。 目を閉じ、静かに祈る。空気が冷たい。息をする度に冴えた冷気が体に染み入る。そしてこの静けさ。生物のたてる音はおろか、木々の葉...

  • ラクガキ(赤いハイヒール)

    あ、と思う間だった。 ビルの上にいた女が飛び降りた。 説得を続けていた警官の手が空を切り、女は宙へと身を躍らせた。白いスカートの裾が空気をはらんでふわりと広がる。赤いハイヒールが脱げ、煌めきながらビルの谷間へ落ちていく。 一瞬の出来事だった。 数秒後にはビルの足元に人だかりが出来ていた。 その後のことは、見ていなかったから知らない。 自宅への道を歩く。頭の中ではさっき見た光景が延々とリプレイさ...

  • ラクガキ

    友人たちと、「視える」と評判の占い師を訪ねた。 ただの興味本位なので結果はどうでもいい。 そう思っていたのだが、手を見せると「赤い糸が小指に巻き付いている」と言う。 それはいわゆる「運命の赤い糸」ではないだろうか。 俄かに色めき立つ友人たち。 私も気になってきた。 噂では、この占い師の占いは外れることがないのだという。 ということは、私には運命の人が……? 占い師は渋い顔をした。 「貴女には運命の...

  • 通り抜け禁止

    「この路地は通り抜け禁止ですよ」 ちょっと近道させてもらおうと、路地の入口に渡してある黄色いロープを跨いだ時、背後から声を掛けられた。 しまったと内心焦るが、反射的に笑顔を作って振り向く。 「いやあ、ちょっと急いでて。ささっと行くんで。駄目ですかね?」 気まずくはあったけれど、ダメ元で言ってみた。目の前の路地は直線で20メートルほど。出口はすぐそこだ。歩いても通り抜けるのに1分も掛からない。 だが...

  • ラクガキ(「高橋さん」)

    うちのマンションには決まりがある。 「毎朝、302号室の高橋さんに挨拶をすること」。 とはいっても、「高橋さん」がどんな人なのかは誰も知らない。「高橋さん」らしき人が302号室から出ていく様子、または入っていく様子を見た者はいない。マンション内や外で、それらしき人に会ったという話もない。誰も知らない「高橋さん」。 それでも住民は毎朝一回、302号室のインターフォンを鳴らし、特に反応のないそれに向...

  • ラクガキ(「夢日記」)

    なんとなく興味が出て「夢日記」をつけてみることにした。枕元に専用のノートを用意し、眠りにつき、朝、見た夢の内容を記すことにする。 だが、ノートを置くようになった途端、夢の内容を全く思い出せなくなった。断片的にも、雰囲気だけも、思い出せない。それどころか、夢を見たかどうかすら、いくら考えても分からなかった。 しばらく続けてみたが、状態は変わらない。仕方なく、諦めてノートを片付けようとした、その時だ...

  • 花火大会の夜

    藍色の夜空に、大輪の花が咲く。 ぱっと綻んだ瞬間、見る間に広がり、絢爛と輝く赤い花。白く長い尾を引いて昇り、炸裂し、キラキラと瞬く光の粒を残す花。大輪の菊のように、黄色く豊満にしなだれる、優雅な花。 空を染める色とりどりの光は、地上で影となった群集に降り注ぐ。光を浴びた群衆は一瞬、赤や黄色に浮かび上がり、すぐにまた黒い影の塊に戻る。誰が誰かも分からない黒い影の集まりは、次の花を待ち侘び、そこここ...

  • 影踏み

    春の陽光が降り注ぐ公園内。 青空の下、爽やかな風が吹き抜け、砂地は白く輝いている。 塗料の剥げかけたすべり台や、風に揺れるブランコが、太陽の光を鈍く反射している。ただ、それらはロープが張り巡らされていて使えない。老朽化が激しく、危険だからだ。 しかし、そんなことは子供たちには関係ないようだ。遊具などなくても、きゃあきゃあと声を上げ、楽しそうに走り回っている。 様子を見ていると、どうも影踏み鬼をやっ...

  • ラクガキ(レジの人)

    スーパーに買い物に行った。レジに行くと、大変な混雑で、どの列も長く伸びきっている。思わず、うんざりした。今日は沢山カゴに入れているので、あまり待つのは辛い。それに忙しいから早く帰りたいのだが……。 ふと見ると、一番奥のレジが空いている。誰も並んでいない。ラッキーと移動すると、何か妙だった。店員の若い女性は俯いたまま。こちらをちらりとも見ず、白い手をエプロンの前で重ねたきり動かない。なんだ?と様子を...

  • ラクガキ(「沼に咲くもの」)

    毎年、梅雨の時期に咲くんです。雨が降ると、生き生きと映えて、それは綺麗ですよ。そう誘われて、裏山へと続く小道に入った。くねくねと登る坂道を随分と歩いて、鬱蒼とした木々に囲まれた沼へとたどり着く。周囲は木々に覆われ薄暗いが、沼の水面にはまっすぐ帯のように日が当たっている。さざ波がきらきらと光る、その波間に。ほら。あそこです。指された先には、水から突き出た右手が。苦しさに耐えかねるように、助けを求める...

  • ラクガキ(「壁の向こう」)

    中古の一軒家に、一家で引っ越した。 半年経ったころ、奥の物置から風の吹き抜けるような音がするのに気付いた。隙間でもあったらと覗いてみたが、特に何もない。ただ、壁の向こうでひゅるひゅると妙に強い風の音がする。 一応、と壁を壊してみて、ぎょっとした。壁の向こうに小さな密室があった。窓や通風口など一切ない、暗く狭い、床の間ほどの部屋。そこにぽつりと古びた墓石があった。長年風雨に晒されたように角が削れ、...

  • ラクガキ(テスト)

    「では、こちらの紙を見てください。ここに描いてある模様が何に見えるか言ってくれますか?」 「え……でも……」 「あはは。ぐちゃぐちゃの染みのように見えますか。まあ、そうです。厳密にはインクの染みです。ただ、この図形から貴方が何を連想するか。それが重要なんです。さあ、何に見えるか言ってください」 「いえ……」 「何でもいいんですよ。何のように見えるとか、感じるとか。自由に」 「……」 「うーん。どんな形も...

  • ラクガキ

    電柱の足元に、水を入れたガラス瓶があり、中で花が揺れている。その黄色い花の名は知らない。風が吹くたび、大きめの花弁が俯き泣くように揺れている。ここで事故があったなんて聞いたことがないが……。家に帰って妻に話すと、やはりあそこで事故など起こった記憶はないという。近所の噂にも全く出たことがないらしい。情報通の誰々さんが何も言ってないんだから、事故なんてあるはずないわよ。妻の言葉に、そうだよなあとうなずい...

  • ラクガキ

    「これは、人魚の涙」夜の波打ち際で、彼女は微笑う。青く透き通った欠片を、銀の月にかざしながら。きらきらと、欠片が光を放つ。「嘘だ。それはシーグラスだ。波に洗われた硝子だよ」月の砂浜は白銀に輝き、波は静かに泡を織る。星がゆるやかに銀河を流れる。夜の海は夢を見る。暗い海底で生まれた夢は波打ち際で泡となる。それは消えるか消えないか。白い足を波がさらう。彼女は微笑う。「でも、これは、人魚の涙」儚い色で、彼...

  • ラクガキ

    「もしもし?今、どこにいるの?」 どこも何もないよ。運転中。掛けてこないで。 「え?何?聞こえない。電波が……聞こえ……」 ああ、今、トンネルだしね。早く気付いてよ。そしたら切って。頼むから。 「気を付け……そのトンネル……むかし……事故……」 どうでもいいから、早く切って。 「事故で……死んだ……出る……」 いい加減諦めて。 「気を付けて。気を付けて。気を」 トンネルを抜けた。 携帯の通話も切れた。元から電源を...

  • ラクガキ

    「じゃあね、また明日」「うん、また明日」みかげちゃんとは、いつも階段をおりたところでおわかれする。学校からずうっとおなじ道を歩いてきて、公園を通りすぎて、すこししたところにある階段。きゅうな坂にある階段をいっしょにおりたら、そこがおわかれする場所。みかげちゃんは左に、わたしは右にいく。ばいばい、と手をふって、みかげちゃんは走っていく。その先にはトンネルがある。黒く口をあけた、光のない、まっくらやみ...

  • 冷蔵庫

    夏休みの暑い昼下がり。宿題が一段落したTさんは、麦茶を飲もうとキッチンに向かった。 冷蔵庫の扉を開け、常備されている麦茶のペットボトルに手を伸ばす。冷蔵庫から流れ出す冷気とペットボトルの冷たさが暑さに茹った体に心地良い。ペットボトルを掴んで持ち上げる。 突然、冷蔵庫の奥が開いた。冷蔵庫の中の物を挟んだ向う、奥の壁が開いたのだ。勿論、本来なら開くはずはない。ただの面だ。しかし、何故か開いた。Tさん...

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