「平木先生、大丈夫かい?」中年男性が心配そうに声をかける。「え、ボクがどうかしましたか?」平木は、はっとして返事を返す。「最近、いつも以上にぼけっとしてるけど調子でも悪いの?」「ちょっと忙しくて疲れてるだけなので大丈夫ですよ。」平木は、苦笑いを浮かべる。「医者が、過労で倒れるなんて縁起でもないから頼むよ。」「斎藤さんが、退院してから倒れるんで問題ないです。」「ははは、なら安心して任せられるよ。」「...
平木は、脳外科の沢井を訪ねた。「どうした、こんなところに来て。」沢井は、いつものクールな表情で平木を迎えた。「どうしても知りたいことがありまして。ここでは話せないので場所を変えていいですか?」「コーヒーが飲みたかったからちょうどいい。行こう。」沢井は、すっと席を立つ。自販機で二人はコーヒーを買い、中庭のベンチに腰掛ける。「何が知りたい?」「先生の患者についてです。ボクには何も出来ませんがどうしても...
「また、ぼけっとしてるー。」宮が、うわの空でいる平木にいつもの調子で声をかける。「早く、桜井先生の論文の資料まとめないと大変なことになるわよ。」「ああ。」平木の、いつもとは違う反応に宮が不審がる。「どうしたの?何かいつもと違うんだけど、何かあった?」しばし、沈黙の後「別に、何もないよ。ちょっとコーヒーを買ってくる。」宮は、平木の後姿を心配そうに見続けた。平木は、しばらく少女の姿を見ていない。ただ来...
平木は、小児病棟にいるあづみの元に向かった。皆、何かしらの病気を抱えているのに子供らしさは失っていない。あづみは、平木に目をやるなり走り寄って抱き着いてきた。平木は、恥ずかしがりながらも嬉しさでいっぱいだった。あづみは、とにかくおしゃべりだった。話したくてうずうずしてるのが手に取るようにわかる。話の内容は、子供らしい取り留めのないものだ。手話が、出来る人間は限られるので、ボクに話せるのが嬉しいのだ...
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