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2013/03/02

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  • あずまぬめり

    何年も前から、都内の某私鉄を使って通勤している。 ご多分に漏れず、その電車も相当混雑している。一日仕事をして消耗するエネルギーの多くが、朝の通勤ラッシュ時に費やされているのではと思ったりすることもあり、そういう風に思ってしまうと途端に疲れがどっと足に溜まってくるような気怠い気分となる。 電車がホームに着くと、狭いドアから多くの人が一斉に細いホームに溢れ、改札を出るためや乗り換えのために階段を昇りはじめる。途中でゴミが落ちていたり、端が少し欠けていたりする古びた階段なのにも関わらず、きれいなリズムが乱れることもなく、多くの人の後頭部が一定の間隔で上下に少しずつ揺れながら徐々に階段を昇っていく。寝…

  • みなぎる世界

    ふと目を覚ました。まるでコトリと音がしたような、音がしたから目が覚めたとか、音がしそうだったから目を覚ましたとか、そういうタイミングではなく、コトリという音でスイッチが入ったように目が覚めた。いつものくせでまぶたを両手で何度も擦りながら、いつもと違う雰囲気を感じた。 今が朝だとか夜だとか時間とか曜日とか、そういったものが全部あやふやなのに一向に気にならない。やわらかい空気のクッションで全身を包まれているような感覚。部屋の全方位から微かに朝日のような陽射しが零れている。 私はゆっくりとベッドの縁に座り、軽く伸びをしながら横に脱いであるスリッパを爪先で探した。いくらか爪先を動かしたがスリッパが見つ…

  • やぶれかぶれという職業

    私がこうして『やぶれかぶれ』という職種で、永らく第一人者の座に君臨し続けることができたのは、ひとえに運が良かっただけなのだと、今となれば思う。 一時期、『やぶれかぶれ』という職業に対する私の仕事ぶりを見た一部の人々から、「十把一絡げである」とか、「偶然脚光を浴びただけに違いない、素人の産物」とか、「彼のことを、幸運の申し子なだけ、と命名してやろう」といった、謗りややっかみを大いに受けていた。その時は、「そんなことはない。私とみなさんとの決定的な違い。それは圧倒的な経験の差に委ねられているものである」といちいち反論していた。 そして、更に議論を吹っ掛けようとする輩には、「あなたを含めた多くの人が…

  • 舐め地図

    私が初めて、舐め地図ということばを耳にしたのは、たしか、小学五年の夏だった。 ある年から、父方の祖父と祖母の住む千葉の外房に数日の間、家族揃って帰省しており、それは私にとっては三度目の訪問であった。 若い頃、祖父とそりの合わなかった父は、地元の学校を卒業すると東京に出たきり、結婚の報告すら長い間、実家にしなかったようだった。 父の祖先は、何代も地元の議員としての公務に就いていた。祖先と同じく議員の職に就いていた祖父の厳格さを、若い頃の父は受け付けることができなかった。そんな話を、祖父と出会う前に、何度か母から聞いた事があったので、祖父は、厳めしい顔つきをした、無口で傲岸な老人に違いないと想像し…

  • 決議

    「はい、そこまで!」 ラインズマンの笛が鳴ったと同時に、主審は声を張り上げた。 室内の空気を、中心から外へ向かって張りつけていた鋭角な均衡が、ぬるりとしたものに変わる。この瞬間、ここにいる人々は集団を守る動きから個人の体を守る動きへと、一瞬にその集中していた対象を変更させる。もちろん、これは誰しもが行なわなくてならないことではないが、怪我から身を防ぐために、凡そ全ての参加者が実行しているはずだ。 「汗を吹けーっ」 監督の声が室内に響く。 もう200年近くの歴史を持つ会議場は、その床には、数多の汗と、感激と無念による涙が吸い込まれており、その壁には、今のように、歓喜とも慟哭ともつかない、溢れ出さ…

  • ウルトラマリン

    矢継ぎ早に質問が飛んできて、それがカマドウ=カマロを一層苦悩させた。そもそも人前で意見を交換すること自体が苦手なのに、そのうえ、こんなに大勢の好奇の視線と挑発的な質問を一身に浴びせられるとは。 隣りに座って、カマドウ=カマロの額に浮かびはじめた大粒の鈍い汗を眺めていたロロッソは、自分がその立場でないことを心から祝福した。一歩間違っていたら、自分がこうなっていたのだ。そう意識すると背中に、極寒の地からやってきたアリが一気によじ登ってくるような感じがして、一瞬で背筋が伸び上がったようになった。 「カマロ。そうしていつまでも黙っておっては、埒が明かない」 ついに堪忍袋の緒が切れたようにアネロソが机を…

  • ぬこたそそと星降る男

    だいぶ大きな爆発音がして、それを鮨河原は決して大きくないと言うのだけど、そこのところで議論が白熱している最中に、今度は米次が、ちゃんと決着をつけるべきだと口を挿む。ぼくは急場凌ぎではあるけど、自生のブーツをサッと履いて外に飛び出した。 何かがすごく離れた高い場所から落っこちてきたような音に違いない。それを確認するのは興味というより、むしろ使命感に近いものであるとすら感じた。 見渡す限りいつもと何ら変わりない大地というものは、それはそれで不自然で、路上に一旦停止しているセダンの型番とかタイヤの減り具合とか看板に反射する陽射しの鋭角とかを一応は調べてみるものの、途方に暮れようとしているところに菜種…

  • 宇宙遠足旅行

    宇宙遠足旅行に行くことになった。なったと書いちゃったが、ずっと前から、明日は宇宙旅行遠足だって知っている。ぼくは、ずっと前から宇宙旅行遠足に行くのが嫌で、いつまでも4年生にならなければいいのになあと思っていた。同じ通学団で近所に住む5年生や6年生の友達は、「宇宙遠足旅行はたいへんだぞ」とか「あんなに苦しかったところには、もう二度と行きたくないよ」と今までに何度も話してきて、ぼくを不安がらせた。いつも仲良くしてる友達なのに、こういう話を聞かされるときは、すごく嫌なヤツらだと思ったし、でも、みんなはもう既に、そんなたいへんなことを過ごしてきているのだと思うと、普段は同級生と同じように遊んでいるその…

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