序章 愛する君へ
ルカ、君がいなくなってから、もう18度目の夏が来る。僕の机の上は、その時々の気分で本棚から取り出された書物で埋まっている。写真立ての中の君は、いつまでも18歳の、あのときの笑顔のままだ。人生で一番可能性があって、輝いている時。そして横にはシルバーの指輪がある。 僕はもう30代も後半になってしまった。空は君と裏山で見た時と同じように、今日も晴れている。誰かが、「空に手を伸ばせば、離れていてもいつもつながっている。」と歌っていたけど、18年の年月が流れていても、僕達はつながれることが出来るのだろうか。君と出逢うまでの僕は仕事もできず、社会ともつながれず、不安と恐怖で誰にも気付かれない下水溝の中で、…
2014/09/28 06:45