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歴史小説パーク https://historynovel.hatenablog.com/

あなたの心の糧になる物語を。ただいま、ネット大河小説・畠山重忠を連載中。

オリーブニュースに連載中のネット大河小説「畠山重忠」にリンクしています。源平争乱の時代から鎌倉時代を生き抜いた名将の生涯、ぜひお楽しみください。

菊池道人
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戸塚区
出身
豊橋市
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2012/12/09

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  • 「光秀と藤孝」第4回の読みどころ

    <<新型コロナウイルスのためにお亡くなりになられた皆様のご冥福をお祈り申し上げます。現在治療中の皆様の一日も早い回復をお祈り申し上げます。 医療従事者の皆様のご尽力に心から感謝申し上げます。>> 光秀は天下人の器にあらず。盟友たる藤孝は一度は自身の身の振り方に関して決断するところであったが:。 光秀と藤孝・第4回 *春陽堂「Web新小説」で連載中! 作:菊池道人 <<関連サイト>> 学びの場とそのまわり 不死鳥会(早大歴史文学ロマンの会を再建する有志の集い) 本の博物館 青空歴史教室 一人(いちにん)社 菊池道人の電子書籍 菊池道人note支店 フェイスブック 総合ブログ

  • 「光秀と藤孝」第3回の読みどころ

    光秀謀反の報せを聞いた盟友・細川藤孝。出会いと人となりについて思いを巡らしていた。 第三回 作:菊池道人 <バックナンバー> 第二回 第一回 <関連サイト> 学びの場とそのまわり 不死鳥会(早大歴史文学ロマンの会を再建する有志の集い) 本の博物館 青空歴史教室 一人(いちにん)社 菊池道人の電子書籍 フェイスブック 総合ブログ

  • 「光秀と藤孝」第二回の読みどころ

    本能寺に信長を討ち果たした光秀の心境は?そしてこの時、光秀が最も頼みにしていた男は? 光秀と藤孝・第二回 株式会社 春陽堂書店刊 web新小説 学びの場とそのまわり 不死鳥会(早大歴史文学ロマンの会を再建する有志の集い) 一人(いちにん)社 菊池道人の電子書籍 フェイスブック 総合ブログ

  • 「光秀と藤孝」第一回の読みどころ

    人間心理は複雑なものであり、ちょっとしたことで心の持ちようが変わり、それに伴う行動も異なったものとなっていく。そしてそれが歴史の流れを変えることも。 「敵は本能寺にあり」備中高松城を攻略中の秀吉を救援に向かうはずの光秀の思いも寄らぬ言葉。戸惑う兵卒たちを前に吐露した胸中は? 「光秀と藤孝・第一回」Web新小説 菊池道人 一人(いちにん)社 菊池道人の電子書籍 不死鳥会(早大歴史文学ロマンの会を再建する有志の集い) 総合ブログ <a href="https://novel.blogmura.com/novel_historical/ranking/in?p_cid=10529712" targe…

  • 「Web新小説」に連載小説

    この度、「Web新小説」(春陽堂書店刊)に「光秀と藤孝」を連載することと相成りました。 下記サイトから会員登録の上、ご高覧頂ければ幸甚に存じます。 https://shinshosetsu.com 会員登録は有料となります(月額1000円)。 ただし2月号(創刊号)は無料です。課金は3月1日からとなります。退会手続きをされる方は2月29日までにお願いします。 取り急ぎ、ご報告とご挨拶まで。 菊池道人 ichinin@mvj.biglobe.ne.jp 一人(いちにん)社 菊池道人の電子書籍

  • 本の博物館移転のお知らせ

    はてなダイアリーの閉鎖に伴い、本の博物館は下記に移転します。移転後もどうかよろしくお願いします。移転先 https://bookmuseum.hatenablog.com/ 本の博物館館長代理・菊池道人

  • 畠山重忠・全四巻

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  • 「畠山重忠(三)」全館揃いました。。

    豪族同士の争いを調停するなど、鎌倉政権の体制確立にも尽力する重忠。しかし、頼朝の死を境にして、御家人たちの力関係は大きく変化し、心ならずも新たな権力抗争に巻き込まれる。一方、袂を分かったはずの左近は:。武士としてのそして人間としてのあり方を問う一作、ここに完結! 畠山重忠(四) bccks.jp 歴史文学ロマンの会を再建する有志の集いhttp://www7a.biglobe.ne.jp/~reroman/ 学びの場とそのまわりhttp://www5e.biglobe.ne.jp/~manabi/ にほんブログ村 にほんブログ村

  • 「畠山重忠(三)」刊行しました。

    後白河法皇の「毒を以て毒を制す」策謀は結局は騒乱を誘発するだけではないか、との疑問を抱いた傀儡子の左近は、平家側にある神器を奪還することで戦争終結させることを企てる。一方の重忠は武士の道理に基づく政を目指す頼朝に共感するも、弟である義経までも排除しようとする冷徹さには違和感も覚えるが:。変革期に苦悩する男たちのの姿は:。 「畠山重忠(三)」https://bccks.jp/bccks/151467 学びの場とそのまわり http://www5e.biglobe.ne.jp/~manabi/ 早大歴史文学ロマンの会を再建する有志の集い http://www7a.biglobe.ne.jp/~re…

  • 「畠山重忠(二)」刊行しました。

    変革に対する受け止め方の違いから父と子が敵味方に分かれて:。木曽義仲との宇治川の戦い。平家の拠点である福原攻防戦。激動の嵐の中、重忠の重忠たるゆえんはどのように発揮されていくのか。 「畠山重忠(二)」 http:// https://bccks.jp/bcck/151394/info 歴史文学ロマンの会を再建する有志の集いhttp://www7a.biglobe.ne.jp/~reroman/ 学びの場とそのまわりhttp://www5e.biglobe.ne.jp/~manabi/ にほんブログ村 にほんブログ村

  • 「畠山重忠」単行本化

    皆様にご愛顧頂きました「畠山重忠」はこの度、単行本化しました。 畠山重忠(一) https://bccks.jp/bcck/151173/info 源平合戦、鎌倉幕府創業の時代を生き抜いた名将の生涯を綴り、日本人の倫理観の原点を問う!全四巻。一巻では、重忠の少年時代、青春期そして中世社会の幕開けとなった頼朝挙兵にどのように対応していくかを描く。 早大歴史文学ロマンの会を再建する有志の集い http://www7a.biglobe.ne.jp/~reroman/ フェイスブック https://www.facebook.com/michito.kikuchi?ref=tn_tnmn 総合ブログ …

  • 畠山重忠・後書き

    ご高覧への御礼を兼ねて かつては鎌倉街道といわれた道がある。横浜市戸塚区内の筆者宅からさほど遠くない所にも通っている。日常的に歩く道でもある。 この物語の主人公・畠山重忠もあの日、この道を通って鎌倉に向かうはずであった。 あくまでも、この道をいつも通りに:。それが最期に当たっての意志であった。 今から十年近く前のことであろうか。自宅から歩いて約一時間、山を一つ越えたくらいの場所にある二俣川の古戦場近くを歩きながら、いつの日か、重忠を主人公にした小説を描いてみようと思い立った。そして、その時の漠然としていた思いは歳月を重ねるうちに強いものとなり、いつしか使命感、義務感に近いものになっていた。 拍…

  • 畠山重忠・主要参考文献

    主要参考文献 ★史料「平家物語」「源平盛衰記」「源平闘諍録」「吾妻鏡」「玉葉」「義経記」「明月記」「鎌倉遺文」「梁塵秘抄」「愚管抄」「保暦間記」「御室相承記」「承久記」「百錬抄」「曽我物語」「法然上人絵伝」「武蔵七党系図」「伊乱記」「万川集海」「新編武蔵風土記稿」「今昔物語集」「傀儡子記」「古今著聞集」 ★研究書「畠山重忠」 貫達人 吉川弘文館「シリーズ・中世武士の研究・第七巻 畠山重忠」清水亮他 戎光祥出版「武蔵武士」渡辺世祐 八代国治 有峰書店「武蔵武将伝」稲垣史生 歴史図書社「秩父氏の盛衰 畠山重忠と葛西清重」埼玉県立武蔵嵐山史跡の博物館 葛飾区郷土と天文の博物館編 勉誠出版「動乱の東国…

  • 畠山重忠287(作:菊池道人)<最終回>

    さて、その後の話にもう少しだけ触れて、この物語を結びたいと思う。 先ず秀子であるが、一時は出世欲に目がくらみ、若い命を奪おうとしたことを懺悔して落飾、さる尼寺に入った。 識之助は郷里の伊賀服部にて、忍びの術をさらに極めた上で後進を導いていった。伊賀の人々は識之助の技も含め、日本固有、外来を問わずあらゆる技術を集大成して、伊賀流忍術を創り上げた。 室町時代から戦国期にかけて数多くの伊賀流忍者が大名たちの情報収集、諜報活動などに暗躍したが、徳川家康を助けたことで知られる服部半蔵は識之助が少年時代に仕えていた服部家長の子孫であると伝えられている。 そして、左近のことである。 重忠の戦没と平賀朝雅事件…

  • 畠山重忠286(作:菊池道人)

    御所内の一室で後鳥羽上皇と朝雅は碁を打っている。 時政の実朝暗殺の謀が失敗してしまったので、それへの対応についての話し合いを兼ねてであった。 「舅は重忠にしてやられました。我が身を投げ出して無実の証をたてた重忠に心を寄せる者が多く、それゆえに焦って、あのようなことを:」 そこへ、「朝雅どのへ火急の報せにございます」 という声。一礼してから立ち上がった朝雅は門へと向かう。 門前には屋敷で召し使っている小舎人童が:。「何事か」「鎌倉より誅罰の特使が馳せ上って来た由にございます」「わかった」 朝雅は驚きの色は見せずに部屋に戻ると、上皇にその旨を告げ、「この朝雅、院を煩わせ奉る訳には参りませぬので、御…

  • 畠山重忠285(作:菊池道人)

    (あなたが好きだった) 識之助の言葉で秀子は悪夢から覚めた。 蝋燭に点いた火にふうと息を吹きかけて消すと、燭台を下に捨てた。 識之助は秀子が今まで燭台を持っていた手をさっと握りしめると、目で語りかける。「これから逃げるのだ」 が、そこへ現れたのは牧とその兄の時親である。 識之助の後ろへ逃れる秀子。識之助も半身に構えた。「秀子、おまえは裏切るつもりか」 牧が声を上げたその時である。「時親どの、いつぞやは無礼を致し申した」 双方の間に左近が現れた。「突然で恐縮でごさるが、妹に会いに来たのでござる」 秀子は驚いた表情だが、声は出ない。時親から腹違いの兄についての話は聞いたが、まさか、このような日に会…

  • 畠山重忠284(作:菊池道人)

    やがて日は西に傾いていく。それでも姿を見せない左近に識之助は焦りを感じ始めていた。 日が落ちる頃には、実朝が入る湯殿に火がつけられる。かつての思い人が極悪を為す時が訪れるのだ。 いたたまれなくなった識之助は南の方角すなわち名越邸に向かって足を踏み出した。 と、その時である。 琵琶を担いだ男がこちらに向かって来る。「師匠」 識之助は駆け寄った。「遅くなった。申し訳ない」 識之助はいきなり、食いつくように左近の耳に口を寄せて、名越邸での話を伝えた。「わかった。おぬしは兎に角、あってはならぬ事が起こらぬようにするのだ」 左近が言うなり、識之助は走り出す。それを見届けた左近は、速足に大倉館に向かった。…

  • 畠山重忠283(作:菊池道人)

    すっかりお手の物である。識之助は築地にひらりと上ると、名越邸内に音もたてずに忍び込んだ。 頃は閏七月十八日の宵。蟋蟀や鈴虫は驚いて鳴き声を止めはしたものの、それ以外は誰にも気づかれることはなかった。 母屋から灯が漏れる。 音もなく忍び寄った識之助の視界に男と女が二人ずつ。 上座には北条時政、牧夫妻。その左脇に大岡時親、そして下座で北条夫妻に相対しているのはかつて識之助が思いを寄せていた秀子である。 前栽の陰に隠れた識之助は固唾を飲んで耳を澄ます。「なまじ武者など使えば、義朝どのを討った長田忠致のように名が残り、面倒なことになるからのう」 そう言いながら時政は傍らの時親に目配せをしてみせた。 時…

  • 畠山重忠282(作:菊池道人)

    五辻殿の寝所。 夜更けに、後鳥羽上皇は目を覚ました。 障子の外が異様に明るい。 火でも焚いているかのようだ。「我が姿を見たまえ」 という声。「何者ぞ」「我が姿を見たまえ」 繰り返し呼ぶ声に、上皇は障子を開けた。「あっ」 驚きの声を出したきり、上皇の声は途絶えた。 中庭には馬二頭分くらいの大きさの大蛇がとぐろを巻いている。頭と尾が八つずつ。目は真っ赤である。物心つく頃から話には聞いていた八岐大蛇である。「治天の君よ」 八岐大蛇は語りかけるが、櫂を片手に盗賊追捕の指揮をとる程の豪胆もなりを潜めて、上皇はただ沈黙するばかりである。「かの須佐之男命が我が尾を斬りとって、霊剣としたが、今は我が尾として戻…

  • 畠山重忠281(作:菊池道人)

    黄昏の六角東洞院。 識之助は平賀朝雅邸に鋭い視線を注いでいる。日が暮れ切ったところで、邸内に忍び込み、この館の主を討つ。 そう意を固めていた。 先の三日平氏の乱では、朝雅の軍勢に長滞陣ゆえの気の緩みが感じられたので、奇襲を建言するも却下された。結果的には、平家残党による反乱軍は鎮圧され、識之助は辛くも戦場を脱したのであったが、もし自分の策を用いてくれたならばという悔しさは如何ともし難い。(こうなったのなら、生き延びた俺が朝雅を不意討ちにすれば良いのだ) 識之助は乾坤一擲の勝負に出ていた。人通りもすっかり途絶えている。(先ずは塀を乗り越えて) と、その時である。 背後からぐっと肩をつかむ者が:。…

  • 畠山重忠280(作:菊池道人)

    終章 左近山異聞 山並を逆さに映す広沢池。 蜩の声とともに、琵琶を弾いて調子をとりながらの歌声。「仏は常にいませども うつつならぬぞあはれなる 人の音せぬ暁に ほのかに夢に見えたまふ」 畔にて、歌い奏でているのは左近である。 この歌を氏王丸という少年に教えてやった。狩の際、わざと水鳥を逃がしたことに仏の姿を見た。 そのことが思い出されてくる。「もし」 背後からの声に我に返る。声の主は静遍である。小脇に冊子を抱えていた。「魂を込めて歌われておられるのう」 心のうちを見透かされたようである。が、すでに母についてのことを知っているこの僧には余計な取り繕いは無用である、という心境になっていた。今となっ…

  • 畠山重忠279(作:菊池道人)

    翌二十三日の未の刻(午後二時頃)に鎌倉に戻った義時は、関戸から引き上げて来た三浦義村とともに、大倉館にて、時政に前日の重忠討伐を報告した。 重忠主従は僅か百数十人であったこと、味方は一万を超える大軍であったにもかかわらず、午の刻(正午前後)に始まった戦いが申の刻も終わろうする頃(午後五時)までかかってしまったのは、多くの者たちが重忠は無実ではないかと思ったことによる戦意の低下が原因ではないかと付け加えた。「父上、それなりの覚悟がおありでしょうな」 温厚な義時には珍しく、かなりきつい調子である。 時政は唇を噛みながら、無言のうちに少し下を向いた。我が子の問いに、肯定の返事をしたつもりなのか、それ…

  • 畠山重忠278(作:菊池道人)

    鎌倉へ行く道は二俣川の南側に聳える岡を越える。そこを通るはずの敵に備えていた下河辺行平の心は揺れていた。 重忠主従が僅か百数十名。しかも次々に倒され、林が多いこともあり、今や将たる重忠の姿を見つけるのも困難なくらいである。それくらい少ない人数であるという話が漏れ聞こえてきたことで、謀反の意ありとは虚言ではないかという疑念が強まってきたのである。 以前に梶原景時が風聞を頼朝に耳に入れた時、重忠とは幼少の頃から親しんでいる自身が審問の使者に選ばれたのに、今回はそうしたことは一切しないということも腑に落ちなかった。 (今からでも、本陣の義時どのに一言、申し上げるべきか) そう考えだしたところへ、馬蹄…

  • 畠山重忠277(作:菊池道人)

    視界に川が入ってきた。 義時の本陣はこの川を越えたところであろうか。 (貴殿を信じておるぞ) 比企一族との対立が深刻化していた頃、義時に向かって言った自身の言葉が思い出された。(だが、義時どのは俺を信じ切ることはなかった。信じ続けていた俺が馬鹿なのか)しかし、頼朝の最期の言葉も思い出される。(人を信じるということこそ真の勇気がいることなのだ) そうだ、そのことを義時に伝えよう。そのために、今、馬を走らせているのだ。 重忠は決意を新たにした。 と、その時である。 突如、月虎の喉に矢が刺さった。悲鳴を上げてもんどりうつ馬から重忠は転がり落ちた。 甲冑を身に着けていない体には相当な衝撃だが、横向けに…

  • 畠山重忠276(作:菊池道人)

    重秀は飽間太郎と激しく太刀をぶつけ合ったが、勝負はつかずに組み合いとなる。双方とも馬から転がり落ち、互いに上になり、下になりを繰り返す。 近常はいきなり鶴見平次に額を斬られたが、二の太刀は鍔元でしっかりと受け止めた。 そこへ月虎に跨った重忠が近づいてきたが、近常は額から鼻の上に血をしたたらせながらも、「殿っ、前へ。我らにはお構いなく」 我が子も苦楽を共にした郎党も見捨てるのは後ろ髪引かれる思いではあるが、敵を倒すのが目的ではなく、鎌倉に駆けつけ、謀反が無実であることを明らかにすることこそが本懐なのだ。「父上、重保が待っていますぞ。早く」 敵に組み敷かれながらも、重秀も叫んだ。 重忠は足で月虎の…

  • 畠山重忠275(作:菊池道人)

    眉間にやや皺を寄せながらも、眦をしっかりと上げている重忠。 すでにいささかの動揺も感じられなかった。「父上」 重秀が馬を前に進めながら、「父上はいつか謀反の風聞あるはむしろ武士にとっては誉れとおっしゃいましたね」 「そうだ」「然らば、我らが謀反人と呼ばれようとも、どうして恥じることがございましょうか。菅谷に引き返した上で、総力挙げて、謀反人の名を挙げるもまた武士の道かと」 が、重忠は、「重保は上洛の折、平賀どのと口論に及んだ。その理由は実朝公を侮辱されたからである、と申しておったが、どのようであったかのう、あ奴の最期の様子は:」 重忠は柏原太郎の方を向く。 柏原は目に涙を浮かべながら「此度も由…

  • 畠山重忠274(作:菊池道人)

    雲の見えぬ空から照りつける日差し。 重忠は汗をにじませながら、月虎を歩ませている。武蔵国鶴ヶ峰(横浜市旭区内) 。坂は多いが、相模との国境はもうすぐである。二十二日のうちには鎌倉に着くはずであった。 それにしても、菅谷館を出立する時の三日月の悲しげな瞳はなかなか脳裏から離れない。すでに鎌倉へ連れて行くのは無理と思えるくらいに足は衰えている。 齢三十という稀なる高齢ゆえ、最期が遠くないことを察しているのであろうか。 もしや、次に菅谷に戻った時には、もういないのか。 仮定のこととはいえ、悲しみに胸を締めつけられる。 そして、三日月とともにした日々の記憶が鮮明に蘇る。 初めて上洛した時のこと。宇治川…

  • 畠山重忠273(作:菊池道人)

    二十二日の寅の刻(午前四時頃)。「謀反人だっ、由比ヶ浜の方だぞ」 外からの声で重保は目を覚ました。 物心つくかつかぬうちに仕込まれた武士の習性で、素早く飛び起きるや、刀を手にして、外へ飛び出した。 単身でも現場に駆けつけんとの意気である。宿直の郎党たちを起こす暇もなかったが、それでも三人、後に続く。 鶴岡八幡宮の東側を通り抜け、若宮大路をひた走る。周囲は御家人屋敷が多いが、変事が起きたにも関わらず、なぜか寝静まっているようだ。 それを奇異とも思わずに、重保と三人の郎党は南の方角すなわち海側へ走った。 ようやく武者たちが集まっているのが見えた。 すでに東の空は白み、人の顔も見えるくらいの明るさで…

  • 畠山重忠272(作:菊池道人)

    六月二十一日になって、時政は義時とその弟である時房を名越邸に呼び寄せ、初めて重忠に謀反の疑いがあることを告げた。 稲毛重成からの報告によるということも強調した。「これまで誠を尽くして励んで来た者が何ゆえに謀反を起こすとお考えですか」 納得しかねている義時に時政は、「このわしが武蔵の者たちを掌握しようとしているのが不満らしい。しかし、わしは鎌倉殿のためにしたことじゃ。それに逆らうというのであれば、過去に武勲があるといえども、許すわけにはいかぬ」 時房も、「以前にも同様のことがあり、本人に問い糺したところ、無実であったというではないですか。此度も先ずは十分に吟味すべきかと」 義時はさらに、「稲毛は…

  • 畠山重忠271(作:菊池道人)

    重忠に謀反の気配あるゆえ、備えあるべしとの触れは時政から密やかに御家人たちに伝えられていった。 結城朝光や下河辺行平のように謀反の噂に懐疑的な者たちばかりではない。 むしろ、重忠は北条に反感を持っているので、そうしたことも無きにしも非ず、と受け止めている者も少なくはなかった。江戸、葛西、河越など重忠と同じ秩父一族の者たちにも触れは届いたが、重忠に注進する者はいなかった。 北条が実権を握る鎌倉政権の意向に従うことが生き残りのための基本的な手段であるとの認識が定着しつつあり、まして、武蔵の豪族たちは時政に対して二心を抱かぬという誓いを立てたからには、敢えて重忠に味方しようと考える者はほとんどいない…

  • 畠山重忠270(作:菊池道人)

    いつしか梅雨が明けたかのような濃い青空を海原が映している。 下河辺行平と結城朝光が稲村ケ崎の浜辺で馬を走らせていた。「少し休ませるか」 行平が言って、二人は馬の脚を止めさせた。「それにしても、武蔵での話は:」 馬から降りながら、朝光が呟く。重忠に謀反の噂があることである。確かな情報はまだ把握していないが、それだけに不安の方が先行していた。「我々下総の人間には武蔵のことはよくわからぬし、時政どのが児玉党を意のままにしていることを根に持っているとも言われているが、重忠どのは我を張り通す男ではない」 幼少の頃から知っている行平の率直な感想である。以前にも同様なことがあった際には、行平、朝光ともに重忠…

  • 畠山重忠269(作:菊池道人)

    夕方になって、時政が状況確認のために大倉館に遣わした郎党が戻って来た。 長い間蟄居していた稲毛重成が従者を連れて鎌倉に来たので、これは余程の事態が起こったのであろうと、人々が噂したため、とるものもとりあえず、武士たちが集まったのであると言う。 鎌倉屋敷で御家人たちの留守を預かる郎党たちの中には、早々と国元の主に報せた者もいるので、しばらくは騒ぎは続くであろうが、それもいずれ真相がわかれば収まりそうだということであった。「これはとんだ事をしてしまいましたな」 重成は済まなさそうな表情をしてみせる。「いや、そもそもこのわしが招いたのだ」 時政は苦笑いを浮かべる。 義村はしばらく考え込んでいるような…

  • 畠山重忠268(作:菊池道人)

    久方ぶりの鎌倉である。亡き妻の供養のために相模川に架けられた橋の落慶の帰りに頼朝が病に倒れ、そのことに対する申し訳なさ、というよりは世間の目を気にして、稲毛重成は本拠地の武蔵国稲毛荘(川崎市北部)に蟄居していた。 その重成が北条時政に招かれて、不意に鎌倉を訪れた。元久二年(1205)四月十一日のことである。「初夏の海風というものは心地良いものですな」 名越邸の時政の前で愛想良く笑みを浮かべてみせる重成であるが、何ゆえに招かれたのか、その理由が皆目見当がつかずに内心では不安である。 「この時政も婿の朝雅どのが上洛し、武蔵の留守を預かるようになって、一度、貴殿にも声をかけねばならぬと思うておりまし…

  • 畠山重忠267(作:菊池道人)

    時政は密かに三浦義村を自邸に呼び、二人きりでの会談の席を設けた。 珍しいことである。 義村は義時とは世代的にも近いこともあり、酒を酌み交わしながら語り合うことがよくあったが、その父からわざわざ呼ばれるということはあまりなかった。 一体、どういうつもりなのか、とその意を探り兼ねている義村に時政は、「こうして貴殿を見ていると、義明どののことを思い出すのう。どこか面影が似ておられる」 頼朝挙兵時にその命を散らした義村の祖父の話を持ち出した。そして、どうやらその話を続けたいようである。「誠に惜しい方であったが、貴殿らもよう耐え難き事を耐え忍んだものよのう」「いえ、これとても、大義ゆえでござる」 「なる…

  • 畠山重忠266(作:菊池道人)

    いささか春めいた日差しが菅谷館の厩に差し込む。 齢三十になる三日月がけだるそうな眼差しをしている。馬の寿命は大体、二十数年であるから、長生きである。 今は牧に放たれても、若い馬たちからはぐれて、所在なさそうにしている。隻眼となった鬼栗毛など同世代の馬たちは皆、他界していた。厩の中の方が居心地が良さそうなのである。「随分と年月が過ぎたものだな」 老馬のたてがみをなでながら、重忠は話しかける。三日月はそれに応じるかのように、ぶるると小さく身震いをしてみせた。「三日月は達者かい」 重忠の母が現れた。 母の頭もすっかり白くなっていた。「この馬が生まれた時のことを思い出しますね」 母も感慨深げな表情にな…

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